弘前大山岳現役とイグルー山行/津軽半島北端 靄山〜四ツ滝山
- GPS
- 32:00
- 距離
- 17.1km
- 登り
- 990m
- 下り
- 990m
コースタイム
→林道左岸へ渡る(尾根取り付き)14:00→コンタ221イグルー(15:30-17:00) 制作おわり18:00
二日目 イグルー発(06:30)→四ツ滝山(11:50-12:30)→イグルー(14:30-15:30)→林道(16:30)→林道起点(17:30-18:00)。
天候 | 吹雪ときどき陽光。マイナス7〜8度 |
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過去天気図(気象庁) | 2012年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 タクシー
|
写真
感想
弘前大山岳部、探検部、ワンゲルの学生に講演会の翌日、山岳部学生4人と今年の卒業生八雲のカンノ君、1986年以来のイシダさん、1989年以来のホンダ君と津軽シリーズの山越え山行に。
函館からの夜行急行が大雪で遅れて五所川原での合流が遅れ、朝7時半発が9時になった。青森からの路線も雪かきでタイヘンらしい。8人載せてジャンボタクシーで脇本まで。13550円、バスより少し高い程度。バスは汽車との乗り継ぎが悪く使えなかった。
計画では市浦脇元の靄山から、磯松川林道、四ツ滝山から伸びてくる西尾根に取り付いて四ツ滝山を越え、増川岳を越えて津軽海峡冬景色を歌ひつつ三厩に降りて寿司をつまんで津軽線で帰還という青写真だったが、メンバーのスキーシールが不備で四ツ滝山往復にとどまる。
弘大山岳部は過去にとても活躍していたが現在はOBからの繋がりが途切れ、技術も経験も継承されていない。それでも部員が何人もいて山に行きたい学生は多い。北大山岳とワンゲルOBのホンダ君、イシダさんが今、巡り巡って弘前大にいて、山好き学生を山に、という企画で今回はイグルー泊まりもやった。
【シール問題】
問題はスキーシール。学生4人の足はワカン、スノシュー、テレマーク、ファンスキーとみな違う。社会人4人は全員ジルブレッタ300,400,500の山スキー。
持って来たテレマークのシールは全然利かないものだった。始めシールワークの問題かと思ったが欠陥だった。後半はシュリンゲを板に巻き付けて荒縄式で登る。初日も二日目も通常の3倍以上の時間をかけて登った。疲れただろうが体力は元気。
札幌秀岳荘の「スノーハイク」というファンスキーは、バンド式シールの尾部が、Y字式で掛け難くはずれ易く、金具の幅より広く扱いにくいテープバンドといい、不良品だった。このY字バンドのエッジにあたる部分は結局両足分ともすり切れた。反対の足のエッジが丁度かしゃかしゃ当たる部分にあるため設計ミス。途中、寒い中、糸で縫ったりもしたが外れやすいのは致命的。
テレマークにしろファンスキーにしろ、踵が10センチくらいしか上がらないから深い雪の急斜面で全然ラッセルもできないしシール利かして登るキックターンもできない。スキー場で滑って遊ぶか、そこらの公園で遊ぶ程度のものだ。今はいろんな新しい道具ができてそれなりに理由があるのだろうとは思うが、そういうものは登る道具としては全然役に立たない。以前は山に行く前にセンパイがチェックしてくれたから現場で発覚という事は山岳部では無かった。教えてくれるセンパイのいなくなった部がいかに辛いものかと知った。山行前に僕の装備を全部見てくれた、今は亡き宮井さんの事など思い出した。受けた恩は後輩に返さなければと思った。この二人は結局シールを諦め、シュリンゲを荒縄みたいにぐるぐる巻きにして全行程。スキーの形をしたワカンになった。
ワカンとスノシューの二人はこつこつと登る。
【ルート・初日】
アイヌ語でぽこんとした山を指す「モヤ」、靄(もや)山は海側が全山カシワの茶色い山。イシダさんによればカシワは海風に強いそうだ。山頂は脇本を見おろし雪雲の日本海を真下に見るよい山。でもシールトラブルのメンバが全然登ってこないので1時間くらいお社の風下で震えて待つ。東側に、地図にない車道があったが、磯松林道めがけて直下降する。
林道一時間進んで左岸にわたったあたりの左岸尾根がちょうど四ツ滝山への登路に最適に思えた。杉の植林がコンタ300台までは時々続いたが密なところもそれほどなく、地図に無い小地形もあるが地図読みに慣れるのにも良い尾根。もっと標高を揚げたかったが、時間切れでコンタ220あたりで泊まる用意する。
【イグルー】
イグルーも予定の標高500mまで天場を揚げられなかったので、またも悪条件での設営。8人なので3人用×3基の連結式。小さめに二つ作ったが三つ目はうっかり大きめに作ってしまい、またも屋根塞ぎにヒバの下枝を使った。一基40分勘定で作るから三つで二時間近くかかった。できる人が何人かいれば同時にできて早いはず。ホンダは遅いメンバーに付いていたためイグルー出来上がる頃までいなかったので。今回はイグルー二度目のカンノ君が良いブロックの取り方を飲み込んでくれていたため、屋根塞ぎが早かった。もう冬にテントは要らない域だろう。イグルー作りに重要なのは、積み師に並んでブロック切り師なのである。それにしても三連式は僕も初めて。それに雪不足の場所なので広く作れずどれも狭くて体を伸ばせない窮屈な夜だった。
すごく大量の野菜と肉でキムチ鍋。イグルー三つは中では繋がっているけど、声が通らないのでそこが少し寂しい。でも大人数ならテントでもこんなものか。酒飲んだら僕はすぐ眠りこける。
【ルート・二日目アタック】
翌日のルートは、快適な傾斜のまま。400m,500m台になるとヒバが増え、500を超えるとブナ林になってさらに快適。ブナ林帯くらいになると雪も多く、風もあって、イグルー適地。・594からは行く手の全貌、十三湖、日本海などが展望視野に入る。途中、小泊半島が真正面に見えたりする。・594から先、遠そうに見えてもあっという間だ。しかしシールトラブルで足並みそろわず。寒い中ツエルト張って待ったりしながら時間読みの2.5倍かかる。結局四ツ滝山を12時で引き返す事になった。雪雲の中見え隠れする増川岳を恨めしく眺める。津軽半島山地屈指のグレートサミッツ。ここからの山越え登頂が最も美しい計画なのだが残念。四ツ滝山は、夏は樹林で展望が無いそうだが、冬季は良い。雪雲がなければ三厩湾や平舘山脈、それに岩木川のかなたに岩木山がド〜ンのはずだ。群青色の日本海が見えただけでも良し。青森県はこの数週間毎日雪で列車も止まる豪雪の冬だが、一日中ホワイトアウトではなく、20分周期で吹雪と晴れを繰り返す。標高1000以下のこのクラスの山なら、どんな天気予報でも楽しめる。
【メンバ】
イシダさんもホンダも20年前のまま体力もちろんリーダー力もパワーダウンしていない。隊列が離れてしまうが、その初年目メンバーのケアや間の取り方、先の読み方、ルートの取り方など上級生の呼吸そのままだ。これだけの人数の確実なリーダースタッフがいないとやはり新人は育って行けないと思う。
メンバーを待つ間、イシダさんに樹の見分け方を聞く。86年に一緒にネパールヒマラヤを歩いた時もフィールド研究者らしい人だったが25年経ってまさにフィールド研究者のプロフェッショナルになっていた。冬の落葉樹の樹種鑑定は難しい。幹の表面だけでは決め手に欠くことが多いが、小枝の広がる形や、冬芽の特徴、少しだけ残っている実の影形から判断する過程は職人芸。普通の人が「それはすでに知っている〈冬枯れの木〉だ」と片付けてあとは見えないものにしてパスするものに、体系と宇宙を見出すという点で、彼はすでにデルスウ・ウザーラのレベルである。
若者たちは経験と技能はこれからだけど登る気はまんまん。青森県には八甲田と岩木山だけじゃないことを知ってもらって、山行自作の喜びも知ってほしい。
【下り】
下りも時間がかかった。先頭と最後しんがりのホンダとで互いに電話が通じ、遅いメンバの確認ができるというのも驚きだが、こっちに降りないつもりだったので最終バスの時間をかみさんに確認してもらったり、駄目そうだからまたジャンタクを2時間前に手配したりしているうち、電池も切れた。最後尾が明るいうちに林道に降り、普通なら一時間の林道を帰る半ばで陽が落ちて、雪明りの杉林、時折思い出したように吹雪いたりするのが美しい。遠くに灯りが見えてきて、「シーハイル」を鼻歌で。イシダさんも同じこと連想していたのでジャンタクで「まちにはちらほ〜ら灯りがついた〜」を合唱唱歌する。若者は地元なのに知らないそうで…。
五所川原駅前商店街で一件だけやっていた津軽っぽいラーメン屋で打ち上げして、大雪で30分遅れの汽車に乗る。途中川田で弘前組と分かれ青森行きに乗り換えると、青森ではちょうど函館行きはまなすの発車時間だった。カンノ君を北海道に見送り解散。早くカンノ君に、まっとうな40分制作イグルーを見せてやりたいもの。
コメント
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シビアな現場に持ち出す前に、自分で一度もフィールドで
チェックしてないのが、不思議です。
たにがわさん
何度か使ったそうですが、経験のない人には、自分が未熟なのか道具が欠陥なのかわからないということもあります。
遊び用の道具は遊びフィールドのチェックではわからないでしょう。今回は「シビアな現場」の手前山行ですから、こういう認識にはふさわしい山行ではあります。
このたびも、ため息つきまくり(ウラヤマシくって)の山行記録、ありがとうございます。
山岳部のワカモノたちへの深い愛情、感動しました。
こうやって、「岳人」は育って行くんですね。
yoneyamaさんの「山への想い」、そして同行する「仲間への想い」、おすそ分けに預かりました。
ごちそうさまでした。
私には到底経験のできない雪山の素晴らしさ。
これからも、レコを通して少しでも感じさせて下さい。
あぁ、でも「イグルー」一度でいいから泊まってみたいです。憧れます
りかろんさま
馴染みのない山域の記録におつきあいくださりありがとうございます。日本列島雪さえあればどこでも良い山になると思います。
イグルー、いま青森にくれば、ウチの庭でも作れますよん。今年の雪は豊作です。
yoneyamaさん、こんばんは。
私にとって「馴染みのない」山行記録、でも、そこから
ヒシヒシと感じられる山の素晴らしさ。
「いつか行ってみたい。」「でも、行けないかもしれない」
日本にはいーっぱい山があって、四季折々、その人その人の「楽しさ」がある。
そんなことを感じさせてくれる「ヤマレコ」っていいなぁ。
「ヤマレコ」万歳
四ツ滝山、お疲れ様でした。
弘大山岳部とお山へ行くというので、山行記録が出来上がるのをとても楽しみにしていました。
>弘大山岳部は過去にとても活躍していたが現在はOBからの繋がりが途切れ、技術も経験も継承されていない。
話は聞いていました。
そのOB達、何人か知っていますが弘前にいない人が多いのでそれも原因なのでしょうね。
でもyoneyamaさんの様な方が青森にいて良かったと思います。山のアルバイトで知り合ったのでしょうか?
それにしても学生さん達、とても楽しそうです。
りかろんさん
再来週もヘンな山行計画しています。お楽しみに!
しとらすさん
青森の場合、不景気すぎて卒業生が県内に就職できないという大問題があるんですね。でも山やる気満々眼光炯々たる若者に、支援を惜しみません。きっかけは、僕の北大山岳部後輩のホンダ准教授が弘大山岳部の顧問になったためです。弘大学内の教授、准教授に弘大山岳部出身者がいなくなってしまったのだそうです。
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