新道峠


- GPS
- 01:19
- 距離
- 5.3km
- 登り
- 404m
- 下り
- 404m
コースタイム
過去天気図(気象庁) | 2023年08月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
鳳凰三山を下山してきたのが14時半頃だろうか。時間も少し余裕があったので青木鉱泉の日帰り温泉につかる。こじんまりとした内風呂だ。黒々とした湿気と歴史が隅々まで綺麗にこびりついている。
その日はボイラーが故障しているらしく水道のお湯は出ないそうだ。たくましい番頭?山小屋主人?から注意深く説明を受ける。湯船から桶ですくって身体を綺麗にする昔の入り方だ。少し温度が暑めだったが、地蔵ヶ岳の全く進まない山頂の砂地の疲れを癒すには充分だ。頭を整理する間もなく自動販売機で買ったコーラをお土産にして鉱泉を去る。またあのワイルドな道が待っていると思うと気持ちが億劫だ。
小一時間ほど脳が左右に揺られ、重い身体ごと跳ね転がっている間に…段々と富士山への情熱が込み上げてきた。やっぱり眺めたい。
車で1時間ほど走らせた新道峠という場所に真新しい富士山がよく見える見晴台があった事を思い出した。思い出す頃にはもう車の先端はそちらに向かっている。
市街地を抜けて段々とハンドルを握る手に力が入るようなくねくねと蛇のような峠道になってきた。今日はどうもそういう日らしい…。
山頂まであと少しのカーブを曲がり切ったところで突然通行止めの車止めに鉢合わせた。見晴台の近くまで車で行けると思っていたが、どうも手前までしか行けないようだ。仕方なく手前で車を停めて…しばらく考え込む。だが一度「見る」と決めるとどうしても曲げられない性格なのだ。温泉で綺麗にした重たい身体にムチ打つように登山靴の紐を結ぶ。見晴台まで5kmぐらい。時刻も17:30…日の入時間にもギリギリだ。
わざわざ行かなくてもいいのに…と思うより1秒ほど早く右脚が出ている。
富士山に登ったのは…もう10年ぐらい前だろうか。世界遺産になってすぐぐらいだったと思う。その頃はまだ本格的に登山にのめり込む前で、新幹線で通る度に「あそこ登ったぜ」と言いたいという薄っぺらい動機と仲のよかた友人からのお誘いもあったからだ。
10年間はあっという間だ。人が離れ、新しく出会い、生まれて死んでいくには十分な年月だ。あの頃3776mにあった岩や砂は年間数十万人の登山客によって蹴り落とされて海抜0mまで転がり落ちて削られて姿カタチも変わっているだろう。
新道峠の見晴台までは綺麗なアスファルトの登り坂で難しいことはないのだが、夕暮れが迫る山道。少し駆け足になりながら急いで登る。一度下山してから再び登る5kmは富士山に匹敵するしんどさだ。
そんなことを思いながら新品の真新しい階段に辿り着き、見晴台へと辿り着いた。目の前一面に広がる広大な河口湖と市街地、その先から天へと昇る富士山…は全て真っ白いガスの中。今日はどうやら縁がない日らしい…。浅間神社に祀られる美人なコノハナサクヤヒメにふられてしまったらしい。長い間、会いに行けなくてすっかりご機嫌斜めなのだろうか。
実は昨年に富士登山の計画があったのだが、一緒に登る相手とすれ違いがあってキャンセルさせてもらったのだ。相手の気持ちや考え方がわからなくなり、疑問とモヤモヤが募って嫌になったのだ。今思えば気にしすぎだったし、僕にも余裕がなかったのだと思う。
時間が経って僕自身の考え方も人間関係も、目の前で富士山を覆い隠すモヤのように刻々と変化し続けている。
日も暮れてきた。帰ろうと思って立ち上がると気まぐれに富士山の山頂が垣間みれた。
そろそろ海抜0mの小石を蹴りながら富士山の標高を3776.01mにするために登りに行ってもいい気がしてきた。
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