記録ID: 81098
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雪山ハイキング
日光・那須・筑波
雲竜渓谷
2010年02月13日(土) [日帰り]



- GPS
- --:--
- 距離
- 12.1km
- 登り
- 757m
- 下り
- 757m
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
「雲竜瀑(うんりゅうばく)」・・・あれは渓父川上さんが存命で中尾さんが営むしなそば屋「麺坊」の店舗がまだ新築移転する前だから確か2005年の初めだ。川上さんや中尾さんらと「麺坊」でとある署名運動の集計をしていた時に「いや〜、今回はバリエーションルートを満喫して来ましたよ!」と富山の大ちゃんや舟木さん、しみたか(清水孝)が店内に雪崩れ込んで来た。聞けば雲竜瀑を見学に行ったのはよいがルートを間違えて早々と沢に下りてしまい数ある砂防堰堤の高巻きに疲れ果てて帰って来たと言う。思えばそれから早5年が過ぎて漸く私自身が雲竜の氷瀑を訪ねたわけである。 今回のメンバーはしみたか、酒田のじっちゃんに加えて森ちゃんと高野さん。高野さんは2005年のバリエーションルート探検隊に参加していたメンバーの一人でもあり、今回はリベンジを掛けての再挑戦である。 女峰山を源頭に七滝沢とアカナ沢という二つの沢が合流したすぐ下流で左岸から合わさる水流が、ついその上部で100mに近い落差の滝を作っている。それが雲竜瀑であり、その一帯の渓谷が雲竜渓谷と呼ばれている。国土地理院発行の1:25000図「日光北部」にもしっかりとその名が記されているが、この滝はある意味では知る人ぞ知る日光の隠れた名瀑とされていた。何故に隠れた名瀑かと言えばこの雲竜瀑の見どころは全面結氷した氷瀑にこそあり、冬季限定に加えてそこまでの3時間を越える雪道のアプローチの長さから一部の変わり者くらいしか訪ねて来ないためだった。しかし近年では我々のようなプチマニアも増え、更には「雲竜氷瀑ツアー」などというツアー客も訪れるようになり結構賑やかな週末を迎えている様子である。 車止めで身支度を進める間も引っ切り無しに雪が舞う天候。新雪サラサラの林道は積雪5cm強といったところ。高野さんと森ちゃんはスノーシューを持っていないのでツボ足歩行で我々の後ろを進む。 九十九折れの林道を延々と歩く。二時間も歩いた頃だろうか、酒田のじっちゃんとしみたかが「もうすぐ峠だ!」「いや、もう少しだ!」「あと二回も回り込めば・・・」「いやいや、まだだ!」と小休止の度に意見を違えて言い合っている。この手の「もう少し・・・」ほど当てにならないのは長年の経験で知っている。五月蝿く言い合っている二人に「そんなのどうでもいいよ、現にまだまだ先は登ってるし、着く時は着くのさ・・・」と心の中で耳を塞いでいる。 3時間も歩いただろうか林道が分岐するので右に下る林道を進む。案内表示は無かったような気がしたがその辺は不明で単純に雪に残る足跡の多い方が右だった。そして分岐から5分ほどで雲竜渓谷の見晴台で行き止る。ここからは階段を下って沢沿いに進む。 手すりがあるからそうと分かるだけでこの時期は階段とは名ばかりの雪と氷の斜面をスノーシューから軽アイゼンに履き替えて下る。10人以上は居たと思われる一段が帰って来る。話を聞けば手前のゴルジュで引き返して来たとの事。12本爪のアイゼンを付けてなかりの経験者揃いに見えたので我々一同は6本爪の自分の足元を眺めてから不安な視線を絡め合うのだった。 沢に下りて100mも進むと両岸が見事に氷結した噂のゴルジュに行き当たる。帰還後に知ったのだが、この場所の氷壁を「友知らず」と呼ぶらしい。ここは右岸を低く高巻くか沢を渡渉するかしなければ前には進めない。右岸に足跡があるので先行者は低く高巻いた様子であるが、低いとはいえどうも落ちたら「痛い」じゃ済まなそうである。ここで酒田のじっちゃんは撤退するという。無理に誘っても仕方ないので見晴台で待っていて貰うことにして先に進む。 沢を右に左にと渡り返したところで30mほどの氷壁をやっつけているクライマー3人に出会う。氷の壁にアイスバイルとクランポンを突き刺して登っている姿はカマキリの様だ。ガッシリと凍りついた氷壁とはいえ暖冬と噂される昨今、よくもまあこんな遊びをするものだと感心してしまう。 彼らの後ろを通り抜け雲竜瀑へと向けて巨岩帯であろう川原を登って行く。巨岩帯であろう・・・というのは一面が雪で覆われていて雪の下の様子は分からないが時折大きく雪を踏み抜く事からの予想である。時期を遅らせると雪が緩んでこの部分の歩きは危険となりそうだ。 巨岩帯を登り越えると小さな沢が右に分かれる。沢の上部に薄っすらと見えているのが雲竜瀑である。が・・・本当に薄っすら。降りしきる雪が白いベールとなって氷瀑を隠してしまっている。本来ならここからの眺めで十分に満足出来る筈なのである。 ここから雲竜瀑の滝つぼまで行くには左岸を大きく高巻かなければならない。時間は丁度12時である。往復で1時間以上は掛かりそうな高巻きは酒田のじっちゃんを待たせている状況では無理である。ここで撤収と決めて帰路に着くことにする。 今回は雲竜瀑の景観を楽しむことは出来なかった。しかし「友知らず」の氷壁や氷柱こそ見事であると言う人々もいる。そんな点では我々も大変満足することが出来たので良かったと思っている。岸壁を上から下まで覆う氷の造形は見事の一言。考えれば氷柱にしても氷壁にしてもその姿は一朝一夕には出来るものではなく、この冬を通して少しずつ形作られたものである。同じ様に見えてけして毎年同じではあり得ない2010年バージョンのその造形を目にする事が出来ただけでも満足である。 ここからは余談になるが、今回、寒い季節に寒い場所に行く酔狂をあるコミュニティーで問われた。「そこに山があるから?」と登山家マロリーの名言を例えて問われたのだが、マロリーの場合は未踏峰エベレストという探検家としての一つの目標があったわけで、単に山があったから登ったという薄っぺらな表面だけの捉え方で発した言葉ではないと思っている。だからそれに例えて私に寒い季節に寒い場所に行く理由を問われても答えに窮するしかない。それほどの探究心や信念からの行動ではなく、言ってみれば問い掛けた側が思っているであろうマロリーの名言だけが先に走っている薄っぺらな方の解釈に近いものだろう。そんな意味から言えばこの問い掛けは的を射ていると言えなくも無いが、マロリーの名言に探検家の真髄を感じて世の探検家の存在はその精神に尽きると考えている私には「う〜ん・・・」と唸ってしまうものだったわけだ。 何にしてもこの酔狂は楽しいから行くのであってその楽しさを感じられる同じ価値観でなければ理解は難しい。多分、ここにいくら力説しても理解されない、それは半日も歩いて岩魚釣りに行くのと同じで趣味の同志と呼べる仲間でのみ理解されるものなのだろうなぁ・・・。 |
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