笊ヶ岳(大黒偃松尾尾根↑ランカン尾根↓)


- GPS
- 20:55
- 距離
- 25.5km
- 登り
- 3,171m
- 下り
- 3,258m
コースタイム
- 山行
- 9:15
- 休憩
- 2:11
- 合計
- 11:26
天候 | 晴 一時 雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
自転車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
◻︎大黒這松尾尾根 1382m標高点前後、標高2330mなど岩っぽいところはあるが、薮は大したことない。 踏み跡は薄く、下りはGPSが必要と思われる。 ◻︎ランカン尾根 2261m標高点先のコルが岩っぽいが、薮は大したことない。 大黒這松尾尾根よりは踏み跡がある。 ・大金山 東側から登った方が楽らしい ・老平分岐以降 標高1060~1080mの林道は避けられない。尾根北側のワイヤーを伝って下った。特に標高1000m以下で林道などが近い箇所は薮が濃く時間がかかる。電波塔跡~大上双里三角点までは良い道がある。GPSはあった方が良い。 |
写真
感想
梅雨の前、最後の週末。まだそこまで暑くないので、標高の低いところを含むルートに行っておきたい。最近少し忙しかったこともあって遠出する元気は出ず、宿題になっていた地元の名尾根、ランカン尾根にターゲットを定めた。地理院地図を見ると、ランカン尾根の途中には大金山があるが、その北にはそれと対をなすように大黒山の名前がある。相方には大黒偃松尾尾根を選び、それぞれ尾根先端まで歩くことにした。
□1日目
今朝は2時半には起きていて、3時発の4時登山開始だと意気込んでいたのだが、トラブルがあって家を出るのが遅れ、下山地点への自転車のデポもあって、登山開始はなんだかんだで6時になってしまった。車は白石トンネル手前の広い空き地に駐車させてもらった。
すっかり明るくなったあたりを見渡すと、遥か標高差2000m上の稜線は到底見えず、そこへと続く巨大な尾根の末端がドカドカと置いてあり、登るなら登れと言っている。またこの山域に来てしまった。今日は大変な日になる。
大黒尾根の取り付きには、通常白石集落の最奥まで車道を辿るようだが、せっかくなので先端を極めたい。そこで今回は、駐車スペースから少し下ったところで保川に架かる小さな橋を渡った。この先は釣り堀の「やまめぴあ」の敷地になるようで、無断入場禁止と張り紙に書いてあったが、よく見ると禁止されているのは渓流への立ち入りのようだった。ただでさえマイナーな尾根ルートの先端にこだわる人間のことなど微塵も考慮されていない。正しい対応だと思います。
「やまめぴあ」付近は当然何も手が入っておらず薮っぽかったが、集落最奥の民家が見える頃には立派なヒノキ林になっていた。下層植生が人に刈られ、鹿に食い尽くされていて歩きやすい。
里から離れるにつれアセビが目立つようになり、間を縫って歩こうとしても行く手を阻まれることが増えてきた。こんなところで薮をこぐつもりはなかったのだが……。樹間には、ランカン尾根の向こうに七面山がまだ高く見えている。
樹種がアカマツやカラマツになると陽射しが入るようになり、暑さもじわじわ効いてきた。たまらず日陰で休憩をとる。
麓から標高差900mの急登の末、初めてのピークにたどり着いた。アセビの中に戸屋平三角点を見つけ、その先の平らな地形へ久しぶりの下り坂を下りる。
平和で良い地形だな〜とのんきなことを考えながら歩いていると、突然前方でガサガサと何かが動く音がした。どうせシカだろうと思いつつも目を凝らし、その音の発生源が何か理解した瞬間背筋が凍り付いた。真っ黒でころころとして、100m先にいる分には可愛らしい姿をしたそれは間違いなくツキノワグマだった。鈴の音に気が付いたのか、そそくさと尾根を横切り、斜面の奥へ消えていった。
突然の出来事に状況がなかなか飲み込めなかったが、しばらくしても現れないので、注意しながら進むことにした。ペッパースプレーをすぐ撃てるように右手に持ち、鈴を左手でジャラジャラ鳴らし、クマが消えていった斜面を睨みつけながら慎重に歩いた。
1380m圏ピークを越えた先のコルは両側がザレているが、足の幅ぶんの地面が残っているので通過に問題はない。危険箇所を越えたことと、クマもここを越えて来ないだろうことに肩の荷がおりた。
人工林も見られなくなり、コメツガシラビソや広葉樹が主になってきた。人が経済的に利用するのも難しいのだろう。
その先の1382m標高点の登りも、岩の混じったかなりの急斜面だった。その後も緩急をつけながらじわじわ標高を上げる。薮は少なく歩きやすい。急傾斜を登りきると大黒山三角点がある。そこから緩く登って大黒山山頂に達した。
地理院地図に名前のある山頂なので何かその名前を示すものがあるかと思ったが、古いタイプの恩賜林の標柱を除いて人工物は見当たらなかった。薮山ではなるべく人工物と出逢いたくないので、これくらいでちょうど良い。
その先の崖上でやっと笊ヶ岳の山頂が見えた。そこへ至る尾根の上には偃松尾山が、ここまで標高を1600m上げてもなお高く聳えている。下りで使うランカン尾根にも、厳しいアップダウンを予想させるボコボコが並んでいる。まだまだ先は長い。
次第にコメツガ、シラビソ、カラマツにシャクナゲが混じってくる。足下にはイワカガミが満開で、上を歩くのがはばかられたり、写真を撮ったりしていてペースは上がらない。細かいアップダウンや、だんだんうるさくなってきた薮にも苦しめられる。
その他にもう一つ伏兵がいた。眠気である。4時間睡眠からの2時半起きから約11時間が経ち、だいぶ瞼が重くなってきている。幸い時間には余裕があるので、地べたがふかふかしているところで30分ほど仮眠を取った。
目覚めるとお目目はぱっちり、頭もすっきり、そしてこれまで晴れていたはずの空には雲が低く垂れこめていた。偃松尾山までは標高差300mを切り、アップダウンも残すところわずかだが、まだこの先も急傾斜が残っている。
雨が降り出す前に白峰南嶺縦走路へ抜けたいと思っていたが、ポツポツと雨粒が葉を叩く音が聞こえるようになってきた。このときは幸いすぐに止み、樹林帯の中では濡れることもなかった。
しかし安心するにはまだ早く、肝心の岩と薮が牙を剥いてくる。岩の積み重なったような急斜面で、歩けるところもコメツガシラビソの幼木やシャクナゲがうざったい。それでもこのあたりの薮にしては普通のレベルでどハマりすることもなく、3年前に逆側から来たときは辟易して巻いたハイマツは山頂直下まで見ることすらなく、無事に偃松尾山までたどり着いた。
山頂からは、ここまではちらちらとしか見えなかった荒川岳をはじめ、BIG3と上河内岳が遮るものなく見えた。まだ少し雪を残した山肌がとても美しい。
山頂付近のハイマツは背が低く、ここまで来たので今回は尾根を通して歩いて見ようと上に乗ってみたが、みるみるうちに背が高くなり、10mも進まないうちに背丈ほとになってしまった。これを200mもやっていては大変なので、仕方なく前回も利用した尾根南側の樹林の中の踏み跡を辿って縦走路まで出た。
縦走路に出ると、すぐ上に人がいた。そういえば縦走路には登山道があり、登山道には登山者がいるんだった。ここまで人と会わなすぎて、驚きのあまり「うわあ!こんにちは」と言ってしまった。さっきのクマも同じような気持ちだったんだろう。話をすると、今日畑薙を発って青薙山から稜線に乗り、伝付峠まで行くという。すごい人がいるものだ。
さて、ここまで来てしまえば今日は終わったようなものだ。天気もどうやら持ちそうだ。笊ヶ岳までは一登りあるが、時間はあるのでゆっくり片付けた。
笊ヶ岳と言えば小笊に上に富士山が見えるコミカルな画面が有名だが、 山屋的には南アルプス南部の展望台としての楽しみが大きい。特に眼前に迫るBIG3と上河内岳の眺めは随一だろう。そこから北には塩見、仙丈が続き、北岳がキッと立ってひときわ目を引いた。白峰南嶺の稜線からは思い入れのある大きな尾根が何本も早川に落ちている。八ヶ岳は鳳凰に隠れて見えないが、奥秩父、御坂山地、天子山地など、山梨県中西部の山々が一望できた。
笊ヶ岳山頂には1人先客がいた。この方は山頂のすぐ南側にツェルトを張ったという。荷物を置いてあたりを偵察すると、そのさらにすぐ南にもテントがもう1張あり、山頂のすぐ近くには他にテントを張れそうなスペースはないようたった。仕方なく山頂北側徒歩2分の広い平坦地に我が家を建てることにした。地面が平らで柔らかく良いところだ。
湯を沸かし、夕飯のアルファ米がお湯でふやけるのを待っていると、ちょうど日没の時間になった。湯たんぽ代わりにアルファ米を持って山頂に行くと、先程のツェルトの方も山頂に来ていた。考えることは同じだ。暮れる空と山を眺めながら、甲府盆地に街明かりがすっかり灯りきるまで、山談義に花を咲かせた。20時就寝。
□2日目
2時半起床。外気温11℃。起きたときは雨がテントを叩いていたが、いつの間にか止んでいた。朝食を摂り、日の出に合わせて撤収し、山頂へ向かう。やはり考えることは同じで、朝は山頂付近に泊まった3人が揃った。昨日会えなかったもう一人はヤマレコユーザーで、なんと同じランカン尾根を下るという。
布引山に泊まったという6人パーティーも到着し、賑やかになってきたので、惜しみながら山頂を後にした。
ここから先は、昨日見たとおりの急傾斜とアップダウンが待っている。近くに見える小笊へも、50mのアップダウンがある。ひーひーと喘ぎながら登り、振り返ると笊ヶ岳山頂にはまだ人が見えた。
小笊ヶ岳付近にはハイマツやシャクナゲの薮漕ぎがあるが、すぐに終わる。朝方の雨にかかわらず、薮は濡れておらずありがたい。記録が多いので登山道のようになっているかと思っていたが、踏み跡に張り出してくるシャクナゲやコメツガシラビソの枝の数は大黒尾根と大差ない。
何ヶ所か岩っぽいところがあったが、特に2261m標高点先のコルへ下りる手前の標高2080m付近が一番難しかった。なんということのない、痩せた尾根の上にある大岩のへつりだが、16kgの荷物を背負い、バランスを確かめながらだとなかなか緊張する。
次の登り返しを終えたところで、また寝不足から眠くなってきたため、2085m圏ピークで15分ほど仮眠をとった。起きて行動食を食べていると、朝笊ヶ岳山頂で会った方が現れた。ランカン尾根を下りるような物好き同士、会話は弾んだ。
その先も急傾斜とアップダウンが続く。久しぶりに履いた靴が合わずに小指が痛み、下りのペースが上がらない。標高を下げるにつれ、次第にシャクナゲが減り、アセビが増えてきた。薮感は差し引きやや増したくらいだ。こんな状況のルートでもさすがはランカン尾根、日帰りで登るという人と2組3人すれ違った。
標高1420mでザックをデポし、大金山のピストンに入る。分かりやすい尾根を100mちょっと下り、林道に出た。大金山山頂に向けて林道脇の斜面に取りつくが、やはり薮がひどい。林道から離れるとややマシになるが、それでも這って進むようなところがある。
薮の中をもがきながら、微妙な地形の中を高い方へ進んでいると、赤いテープの巻かれた木が1本あった。GPSを見ると、ちょうど1310m標高点の位置を示していた。ここが山頂ということだろう。念のため、あたりを徘徊して地形の高まりをいくつか確かめたが、似たような高さでよく分からない。同じように薮と格闘して林道に戻った。
デポ地点に戻り、ランカン尾根の続きを下る。尾根が広くて分かりにくく、たまに間違えてはトラバースして復帰した。
標高1080m地点で行く手に地図にない新しい林道が現れた。法面は70°ほどの草付きで、まともに下れたものではない。シカの足跡を見つけたので追ってみたが、薮の中に戻ってしまっていた。うろうろしていると、林業用のワイヤーが転がっていた。長さはちょうど下まで届く。 端がどうなっているかは地面の中に潜っていてよくわからないが、体重をかけた感じでは信頼できそうだ。ありがたく使わせてもらい、林道に下りることができた。
下りた先の斜面を覗き込んだが、まだ林道は続いていた。幸い1回のターンでその下に林道は見えなくなったので、また尾根に戻った。
標高を下げるにつれ、薮が激しくなってくる。尾根が細いと逃げることできず、枝を押し分け、体をよじって潜り抜ける。
標高950mでまた林道に出た。おおよそ尾根沿いに道が続いているが、ピークを巻いているのでストイックに尾根通しに歩く。林道から遠ざかると薮は多少マシになった。
気温が上がり暑くなってきた。アップダウンのアップが苦しい。高戸屋の三角点で休憩。その先の電波塔からはかつての林道跡なのか、尾根上の木が広く切られていた。
その後も鉄塔の巡視路が付いており、調子よく進む。最後の鉄塔の先からは斜面が広く、適当に歩いていたら尾根を外してしまうこともあった。
急斜面を下りきったコルには石碑があった。人間の領域に近づいていることを感じる。ここまで来てしまえばアップダウンも少なく余裕だと思っていたが、それは間違いだった。
急斜面に挟まれた細い尾根上には潅木が所狭しと並んでいる。岩や崩壊もあり、ランカン尾根全体の中でも上位の歩きにくさだった。どうにか祠のある尾根先端までたどり着き、最後の急斜面を下りて道まで出た。
デポしてあった自転車にまたがって車まで戻る。車道は薮がなく、アップダウンも少なくて快適だった。
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