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更新日:2025年06月10日 訪問者数:124
ジャンル共通 技術・知識
道迷いからの遭難を防ぐ【前編:認識編】
SoSo3
中学の頃に地元の山で道に迷って苦労して以来20数年、道なき道も道ある道も道であった道も色々歩いてきました。道迷いに関して、歩き重ねる中で認識したことを記します。

なお、読み手の想定は、ある程度山慣れていて、テント泊くらいできる/それなりに地形図が読める、というイメージなので、全くの初心者は鵜呑みにしないほうがいいかもしれません(笑)
道迷い=遭難ではない
まず、山で起こす問題を切り分けて考えると、「道迷い=遭難」ということではない。たとえ道を間違えたり、一時的にどこにいるか分からなくなったとしても、想定の時間内に怪我なく下山できれば、問題ないと言えるだろう。では何が問題かと言うと、

●道迷い → 時間オーバー → 臨時ビバーク → 会社や学校に行けない
●道迷い → 時間オーバー・悪天候 → 臨時ビバーク(道具がない)・食料が足りない → 飢えや寒さで動けなくなる
●道迷い → 急斜面・崖など危険箇所を通ろうとする(+疲労) → 滑落
とかではないだろうか。

道迷いはきっかけで、最終的な遭難に至るまでに別の問題を起こしている。
結局は、時間・天候・危険箇所回避の問題であり、準備や意識である程度回避できる。

即ち、
・行程に予備日を設け、その分の水や食料、ビバーク道具を持っておく。
・登る山でその時期に発生しうる天候、気温(の概ね最悪)を想定し、防寒具などを持っておく。
・滑落しそうな箇所を無理して進まない。後述するが、滑落しそうな程危険な箇所は、登山道ではないと判断して引き返すべきである。

こういう基本的な準備をしておけば、道に迷っても大丈夫。心おきなく道迷いからの脱出を楽しめる、というものですよ(笑)
持つべき認識1:道について
ここからは、道迷いしないための認識や行動について記します。
敵を知り己を知れば百戦危うからず、といことでまずは敵(?)、登山道について考える。

で、登山道を作ることを想像してみましょう。(私も作ったことはない)

どこかの山の林道の終点から山頂まで、標高差500m、水平距離もそこそこあって片道3-4時間くらいの道を考えてみる。
まずは地形図を見ながら、どこに道を通すか経路を設計する。
崖や岩場は避けねばならないし、急斜面もさけたい。
避けるべきポイントを決めた後、歩きやすい・通しやすい経路を決めることになる。山の斜面に沿って谷地形をいくつも横切るとすると、アップダウンの道にするよりは等高線に沿ってトラバースしたほうが楽そうである。
経路全体を見て、危険個所がないように通すところを決めないといけない。

地図上で経路を設計したら、現地を視察して具体的な道の敷設箇所を決めるだろう。
道は、人が歩けるように作らねばならない。人は1mの段差・岩を乗り越えるのは大変だし、45度の斜面は普通には登降が難しい。急斜面は直登よりも九十九折れのほうがよさそう。岩場を道にするとしても、ボルダリングしないと通過できないところは選ばない。滑りそうなところはロープや鎖を付けたい。崖沿いでも、最低限人が通れる幅を確保したいし、道の資材を運べるようにもしとかないといけない。
作りやすい、壊れにくい地形を選ぶ必要もある。微地形の谷筋・尾根筋は比較的平坦で道にしやすそう。トラバースでは、できるだけ標高変化を一定にしたい。橋を架けるなら川幅が狭いところにしよう。
。。。

と、その山その山に応じて、色々なことを考えて経路を決め、そして現地の開墾・資材敷設をして道になっていくのでしょう。知らんけど(笑)

こうやって考えて、実際の登山道を見てみると、そうそう突飛な/危険な登山道はない。少なくとも最善は尽くされているはずだ。
だから、踏み跡が薄かったり崩落等で道が消えて進むべき先に迷った時、設計者・施工者の考えに思い馳せると、ある程度道の続きの予測が立つのである!
逆に、ここは道にはしないだろうと思える箇所は、踏み跡が濃くても、間違っている可能性ありと思えるようになる。
持つべき認識2:問題になる心の性質
道に続いて、次は己について考える。人間が持つ心の性質の中で、登山において道迷いの原因になるものを挙げてみる。自己を律してこれらを少しでも抑えられるとよい。

●正常性バイアス、自己正当化
山を歩いていて、道に少し違和感や不安を感じても、「きっと正しい道を歩いている」と言い聞かせてしまうことはよくある。踏み跡など「今の道が正しい理由」を探し、結局今の道を進んでしまう。道迷いへの第一歩として、陥りがちなことだと思う。

踏み跡が薄いところでは、周囲の少し木の間隔が広いところや、斜面の傾斜が緩いところ等は、「道を探そう」とするとどこでも道に見えてしまう。
道迷いしないために大事なのは、道から外れたことに早く気付くことであり、そのためにはある種の自己否定が必要となる。

●損得勘定で動く
今の道は正しいと思いたくなる要因として、「せっかくここまで登ったのだから、引き返すのはもったいない」「これだけ下ってしまったので登り返すのは面倒」と思う気持ちがある。
自分の苦労の大きさと、今いる場所の正しさは関係がない。
割り切ってフラットに、道の正しさを判断するしかないのである。

●身体の生理的状態に、心が連動する
疲労が溜まると判断力が鈍ってくるし、足さばきが雑になってくる。ランナーズハイ的な状態になると、イケイケ気分で問題に気付きにくくなる。
人も生物なので御し難いことではあるが、だからと言ってそのせいで死ぬわけにはいかない。
特に、疲労時には心に喝を入れ、表情を引き締めて、しっかりとした足取りとクリアな思考を維持しなければならない。
身体と心は連動するものだと認識しているだけでも、大分違うとは思う。

文が長くなったので一旦切ります。後編は具体的行動についてです。
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