(はじめに)
この5−2章では、「ヴァリス山群」注1)の主な山々の地質について説明しています。
「ヴァリス山群」は説明したい山々の数が多いのと、一つ一つの山の地質構造が複雑で、説明内容が長くなるため、複数回に分けて投稿しています。
前の回(その1)では、「ヴァリス山群の概要」、および「マッターホルンの地質」について説明しました。
この回(その2)では、ツェルマットの南側、イタリアとの国境稜線にそびえる、「モンテローザ」、「ブライトホルン」などの4000m級の山々の地質、およびツェルマットのすぐ脇にある「ゴルナーグラート台地」(仮称)付近の地質について説明します。
※ 注;なお、当初の投稿 「5−2章(その1)」初稿では、自分で読み返してみると、
内容が長すぎて読みづらいため、初稿を2つに分割することとしました。
具体的には初稿のうち、「ヴァリス山群の概要」と「マッターホルン」までの部分を(その1)(改)とし、「モンテローザ」以降の部分を、この(その2)(新)へと、2分割しました。
この回の投稿は、その2分割したうちの後半部です。説明の内容は、初稿とほぼ同じです。悪しからずご了承ください。
「ヴァリス山群」は説明したい山々の数が多いのと、一つ一つの山の地質構造が複雑で、説明内容が長くなるため、複数回に分けて投稿しています。
前の回(その1)では、「ヴァリス山群の概要」、および「マッターホルンの地質」について説明しました。
この回(その2)では、ツェルマットの南側、イタリアとの国境稜線にそびえる、「モンテローザ」、「ブライトホルン」などの4000m級の山々の地質、およびツェルマットのすぐ脇にある「ゴルナーグラート台地」(仮称)付近の地質について説明します。
※ 注;なお、当初の投稿 「5−2章(その1)」初稿では、自分で読み返してみると、
内容が長すぎて読みづらいため、初稿を2つに分割することとしました。
具体的には初稿のうち、「ヴァリス山群の概要」と「マッターホルン」までの部分を(その1)(改)とし、「モンテローザ」以降の部分を、この(その2)(新)へと、2分割しました。
この回の投稿は、その2分割したうちの後半部です。説明の内容は、初稿とほぼ同じです。悪しからずご了承ください。
5−2章―第(3)節 「モンテローザ」の地質
「モンテローザ」(Monte Rosa;4634m)注2)は、ヨーロッパアルプスの中では、「モンブラン」(Mont Blanc;4810m)に次ぐ標高を誇り、また、主稜線部だけで約10kmの長さをもつその巨大な山体は、いくつものピークを擁し、一つの山というよりは、巨大な山塊という感じの山です(文献12)。
頂上稜線やスイス側山腹に山小屋があり、「マッターホルン」を凌ぐ高峰ながら、スイス側、イタリア側いずれからも良く登られている山のようです(文献9)、(文献10)。
「ツェルマット」付近の展望台、「ゴルナーグラート」(Gorner-grat)からは、その北側を覆う氷河を含めた全容が望めますが、孤高の尖峰である「マッターホルン」とは対照的で、大横綱のような風格です(写真1)。
「モンテローザ」の主稜線は、スイス/イタリアの国境稜線ともなっていて、イタリア側の地質は、スイスのオンライン地質図のうち、(文献2A)では描かれていません((文献2B)では多少描かれている)。また山体の広い範囲が氷河で覆われていることもあり、この山の地質は、氷河の間から断片的に露出している岩場の地質が頼りです。
以下、地質図(文献2A)、(文献3)や、(文献4)、(文献5)などをもとに、「モンテローザ」の地質を説明します。
なお、同じスイスのオンライン地質図であっても、(文献2A)と(文献2B)では地質説明が少し違っています。以下では説明が詳しい(文献2A)を元に主に説明します。(文献2B)は補足程度で多少触れます。
具体的な地質の説明の前に、まず「モンテローザ」とその周辺のテクトニックな位置づけについてですが、(文献1−2)、(文献3)、(文献4)、(文献5)、(文献11)などによると、この一帯は、「モンテローザ・ナップ」(Monte Rosa nappe(英)/ Monte Rosa Decke(独))と呼ばれる古い(大陸性の)「地塊」からなります。テクトニックマップ(図3)もご参照ください。
(文献4)、(文献5)や、(文献1−2)の古地理図によると、この「地塊」は、「ペニン系」地質グループのうち、「ブリアンソン・ライズ系」(Briançon rise)(=中部ペニン系)に属しています。
(※ なお、「モンテローザ・ナップ」の帰属については、「ブリアンソン・ライズ系」ではなく、「ヨーロッパ大陸ブロック」の一部である、という仮説もあります(文献6))
この「ブリアンソン・ライズ」と呼ばれる、中生代の「ペニン系地質区」(Penninic realm)に存在した海台状の地域の帰属には諸説ありますが、いずれにしても大陸性の基盤岩体からなり、「アルプス造山運動」の際には、「白亜紀」から「古第三紀」初頭に形成されていた沈み込み帯から地下深部に沈み込み、高圧型の変成作用を受けています。
「モンテローザ・ナップ」もその際、かなり地下深部に沈み込んだようで、最大で「エクロジャイト相」(eclogite facies)相当の変成作用を受けています(文献4)。
「モンテローザ」は先に述べたとおり、スイスとイタリアとの国境をなす稜線が長く続き、多数のピークを持つ山塊ですが、そのうち最も高いピークは、「デフィールシュピッシェ」(Dufour spitze;4634m)と呼ばれています(文献10)、(文献12)。
この周辺の地質を、地質図(文献2A)で見てみると、以外と構成は単純で、2種類の地質体が分布しているだけです。添付の図6もご参照ください。
具体的には、以下の2種類です。
(a);「古い変成岩類」
(b);「花崗岩類由来の変成岩類」
まず、(a);「古い変成岩類」ですが、山腹も含めた山体のあちこちに分布しています(図6でのベージュ色部分)。
(文献2A)によると、岩石の種類(岩相)(lithology)としては「片麻岩」類(Gneis (独))です。(原岩が形成された)時代(chrono)の項は、原生代〜古生代、と書かれており、「ヘルベチカ系」の「外側地塊」(external massifs)とも類似した、大陸性の基盤岩体です。
この「地塊」は、複数回の変成作用を受けていると推定されていますが、「アルプス造山運動」においても変成作用を受けています。
次に(b);「花崗岩類由来の変成岩類」ですが、これも山体のあちこちに分布しています(図6でのピンク色部分)。
(文献2A)によると、岩相としては、「マグマ的片麻岩」(Gneis;magmatisch(独))と書かれており、「マグマ―>深成岩(花崗岩類)―>変成岩」、という経歴を意味していると思われます。
(文献5)では、270〜330Ma(「石炭紀」〜「ペルム紀」)に貫入した「花崗岩類」、と説明されています。また(文献2A)では、時代の項に「石炭紀」(Karbon(独))と書かれています。これはおそらく、深成岩体として形成された時代を意味していると思われます。
この連載の2−2章で説明しましたが、古生代後半期に生じた「ヴァリスカン造山運動」の少し後の「石炭紀」〜「ペルム紀」にかけては、「ポスト・ヴァリスカン期」(post-Variscan)と呼ばれ、「アルプス地域」(the Alpine Domain)では、広範囲に火成活動が活発化した時代です。
(文献5)の説明も踏まえると、この「モンテローザ・ナップ」における、変成した花崗岩類も、年代的には、この「ポスト・ヴァリスカン期」の火成活動に関連したものではないか、と思われます。
補足として、地質図(文献2B)に基づいての説明をします。(文献2B)でも、
(a)’ ;「アルプス造山運動」以前の基盤岩(pre-Alpine basements)としての変成岩類、
(b)’;古生代の「ヴァリスカン造山運動」に関連した「変成花崗岩」類(meta-granitoids)
の2種類の岩石が分布している、という点では、(文献2A)とほぼ同じです。
違うのは岩相(lithology)の項で、(a)‘ も、(b)’ も、「雲母片岩」(mica-shists)とされています。
「モンテローザ・ナップ」という「地塊」については、この地塊を含む推定地質断面図、図7もご参照ください。この図は、(文献5)のFig.4から引用しました。
頂上稜線やスイス側山腹に山小屋があり、「マッターホルン」を凌ぐ高峰ながら、スイス側、イタリア側いずれからも良く登られている山のようです(文献9)、(文献10)。
「ツェルマット」付近の展望台、「ゴルナーグラート」(Gorner-grat)からは、その北側を覆う氷河を含めた全容が望めますが、孤高の尖峰である「マッターホルン」とは対照的で、大横綱のような風格です(写真1)。
「モンテローザ」の主稜線は、スイス/イタリアの国境稜線ともなっていて、イタリア側の地質は、スイスのオンライン地質図のうち、(文献2A)では描かれていません((文献2B)では多少描かれている)。また山体の広い範囲が氷河で覆われていることもあり、この山の地質は、氷河の間から断片的に露出している岩場の地質が頼りです。
以下、地質図(文献2A)、(文献3)や、(文献4)、(文献5)などをもとに、「モンテローザ」の地質を説明します。
なお、同じスイスのオンライン地質図であっても、(文献2A)と(文献2B)では地質説明が少し違っています。以下では説明が詳しい(文献2A)を元に主に説明します。(文献2B)は補足程度で多少触れます。
具体的な地質の説明の前に、まず「モンテローザ」とその周辺のテクトニックな位置づけについてですが、(文献1−2)、(文献3)、(文献4)、(文献5)、(文献11)などによると、この一帯は、「モンテローザ・ナップ」(Monte Rosa nappe(英)/ Monte Rosa Decke(独))と呼ばれる古い(大陸性の)「地塊」からなります。テクトニックマップ(図3)もご参照ください。
(文献4)、(文献5)や、(文献1−2)の古地理図によると、この「地塊」は、「ペニン系」地質グループのうち、「ブリアンソン・ライズ系」(Briançon rise)(=中部ペニン系)に属しています。
(※ なお、「モンテローザ・ナップ」の帰属については、「ブリアンソン・ライズ系」ではなく、「ヨーロッパ大陸ブロック」の一部である、という仮説もあります(文献6))
この「ブリアンソン・ライズ」と呼ばれる、中生代の「ペニン系地質区」(Penninic realm)に存在した海台状の地域の帰属には諸説ありますが、いずれにしても大陸性の基盤岩体からなり、「アルプス造山運動」の際には、「白亜紀」から「古第三紀」初頭に形成されていた沈み込み帯から地下深部に沈み込み、高圧型の変成作用を受けています。
「モンテローザ・ナップ」もその際、かなり地下深部に沈み込んだようで、最大で「エクロジャイト相」(eclogite facies)相当の変成作用を受けています(文献4)。
「モンテローザ」は先に述べたとおり、スイスとイタリアとの国境をなす稜線が長く続き、多数のピークを持つ山塊ですが、そのうち最も高いピークは、「デフィールシュピッシェ」(Dufour spitze;4634m)と呼ばれています(文献10)、(文献12)。
この周辺の地質を、地質図(文献2A)で見てみると、以外と構成は単純で、2種類の地質体が分布しているだけです。添付の図6もご参照ください。
具体的には、以下の2種類です。
(a);「古い変成岩類」
(b);「花崗岩類由来の変成岩類」
まず、(a);「古い変成岩類」ですが、山腹も含めた山体のあちこちに分布しています(図6でのベージュ色部分)。
(文献2A)によると、岩石の種類(岩相)(lithology)としては「片麻岩」類(Gneis (独))です。(原岩が形成された)時代(chrono)の項は、原生代〜古生代、と書かれており、「ヘルベチカ系」の「外側地塊」(external massifs)とも類似した、大陸性の基盤岩体です。
この「地塊」は、複数回の変成作用を受けていると推定されていますが、「アルプス造山運動」においても変成作用を受けています。
次に(b);「花崗岩類由来の変成岩類」ですが、これも山体のあちこちに分布しています(図6でのピンク色部分)。
(文献2A)によると、岩相としては、「マグマ的片麻岩」(Gneis;magmatisch(独))と書かれており、「マグマ―>深成岩(花崗岩類)―>変成岩」、という経歴を意味していると思われます。
(文献5)では、270〜330Ma(「石炭紀」〜「ペルム紀」)に貫入した「花崗岩類」、と説明されています。また(文献2A)では、時代の項に「石炭紀」(Karbon(独))と書かれています。これはおそらく、深成岩体として形成された時代を意味していると思われます。
この連載の2−2章で説明しましたが、古生代後半期に生じた「ヴァリスカン造山運動」の少し後の「石炭紀」〜「ペルム紀」にかけては、「ポスト・ヴァリスカン期」(post-Variscan)と呼ばれ、「アルプス地域」(the Alpine Domain)では、広範囲に火成活動が活発化した時代です。
(文献5)の説明も踏まえると、この「モンテローザ・ナップ」における、変成した花崗岩類も、年代的には、この「ポスト・ヴァリスカン期」の火成活動に関連したものではないか、と思われます。
補足として、地質図(文献2B)に基づいての説明をします。(文献2B)でも、
(a)’ ;「アルプス造山運動」以前の基盤岩(pre-Alpine basements)としての変成岩類、
(b)’;古生代の「ヴァリスカン造山運動」に関連した「変成花崗岩」類(meta-granitoids)
の2種類の岩石が分布している、という点では、(文献2A)とほぼ同じです。
違うのは岩相(lithology)の項で、(a)‘ も、(b)’ も、「雲母片岩」(mica-shists)とされています。
「モンテローザ・ナップ」という「地塊」については、この地塊を含む推定地質断面図、図7もご参照ください。この図は、(文献5)のFig.4から引用しました。
5−2章―第(4)節 「ブライトホルン」とその周辺の地質
この第(4)節では、スイス/イタリアの国境稜線をなし、「マッターホルン」(Matterhorn)と「モンテローザ」(Monte Rosa)という両巨頭の間にある、4000m級の山々の地質について説明します。
具体的には、西側から順に、「クラインマッターホルン」(Kline Matterhorn)、「ブライトホルン」(Breithorn)、「ポリュックス」(Pollux)、「カストール」(Castor)、「リスカム」(Liskamm)の各山々です。
以下、それらの山々を、3つの項に分けて、その地質を説明します。
具体的には、西側から順に、「クラインマッターホルン」(Kline Matterhorn)、「ブライトホルン」(Breithorn)、「ポリュックス」(Pollux)、「カストール」(Castor)、「リスカム」(Liskamm)の各山々です。
以下、それらの山々を、3つの項に分けて、その地質を説明します。
4−A項) 「ブライトホルン」と「クラインマッターホルン」
「ブライトホルン」(Breithorn)という名の山は、「ヨーロッパアルプス」にいくつかありますが、ここでは「ヴァリス山群」の「ブライトホルン」(Breithorn; 4160m)(文献13)について説明します。
この山は、山頂の西側にある「クラインマッターホルン」(Kline Matterhorn;3883m)注8)という小さな岩峰まで、麓のツェルマットからロープウエイが伸びており、そこを起点とすると、雪原歩きで、4時間程度で登頂、往復ができる、お手軽な4000m峰として知られています(筆者も登りました)。
この山は、西側から見ると丸っこい雪山の姿ですが、その北壁は迫力ある険しい絶壁となっています(文献10)、(文献11)、(文献13)、(写真2)、(写真7)。
地質図(文献2A)を見ると、「ブライトホルン」の山頂部や険しい北壁、及び「クラインマッターホルン」付近は、広範囲に「蛇紋岩」(serpentinite(英))が分布しています。
なお(文献2B)や(文献7)によると、山稜の南側(イタリア側)にも、この蛇紋岩分布域が広がっています。図8の地質図、および(写真2)、(写真3)、(写真4)、(写真5)もご参照ください。
このほか、北側山腹の一部には、堆積物由来の変成岩である「石灰質雲母片岩」(kalkig glimmer-Schiefer(独))などが小規模に分布しています。
この岩体は、(上部ペニン系)とは書かれていますが、蛇紋岩体との関係は良く解りません。(文献5)の説明からみると「ピエモンテ海」の海底に堆積した堆積物が、その起源のようです。
テクトニクス的には、この蛇紋岩分布域は、「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」(Zermatt Saas-Fee zone)と呼ばれる「地塊」の一部とされています(文献4)、(文献21)。添付の図3(テクトニックマップ)もご参照ください。
「蛇紋岩」という岩石は、上部マントルを形成している岩石である「カンラン岩」(peridotite)が、地中で水分(H2O)と反応してできた、一種の変成岩です(文献23)。
さらに「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」の蛇紋岩体は、周辺の「ペニン系」地質体と同様に、地下深部に沈み込み、高圧型変成作用を受けています(文献4)、(文献21)。
(文献4)によると、「エクロジャイト相」(eclogite facies)に相当する変成作用を受けています。ただし「後退変成作用」により、見かけ上は「緑色片岩相」(green-schist facies)から「青色片岩相」(blue-schist facies)になっています(文献21)。
この蛇紋岩体は、「ペニン系」地質グループのうち「ピエモンテ海系」(=「上部ペニン系」)に属し、「ピエモンテ海」(the Piemonte ocean)を構成していた海洋プレートのうち、最下層にあたる、リソスフェアマントル由来の岩体だと解釈されています(文献4)、(文献5)、(文献21)。
この山は、山頂の西側にある「クラインマッターホルン」(Kline Matterhorn;3883m)注8)という小さな岩峰まで、麓のツェルマットからロープウエイが伸びており、そこを起点とすると、雪原歩きで、4時間程度で登頂、往復ができる、お手軽な4000m峰として知られています(筆者も登りました)。
この山は、西側から見ると丸っこい雪山の姿ですが、その北壁は迫力ある険しい絶壁となっています(文献10)、(文献11)、(文献13)、(写真2)、(写真7)。
地質図(文献2A)を見ると、「ブライトホルン」の山頂部や険しい北壁、及び「クラインマッターホルン」付近は、広範囲に「蛇紋岩」(serpentinite(英))が分布しています。
なお(文献2B)や(文献7)によると、山稜の南側(イタリア側)にも、この蛇紋岩分布域が広がっています。図8の地質図、および(写真2)、(写真3)、(写真4)、(写真5)もご参照ください。
このほか、北側山腹の一部には、堆積物由来の変成岩である「石灰質雲母片岩」(kalkig glimmer-Schiefer(独))などが小規模に分布しています。
この岩体は、(上部ペニン系)とは書かれていますが、蛇紋岩体との関係は良く解りません。(文献5)の説明からみると「ピエモンテ海」の海底に堆積した堆積物が、その起源のようです。
テクトニクス的には、この蛇紋岩分布域は、「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」(Zermatt Saas-Fee zone)と呼ばれる「地塊」の一部とされています(文献4)、(文献21)。添付の図3(テクトニックマップ)もご参照ください。
「蛇紋岩」という岩石は、上部マントルを形成している岩石である「カンラン岩」(peridotite)が、地中で水分(H2O)と反応してできた、一種の変成岩です(文献23)。
さらに「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」の蛇紋岩体は、周辺の「ペニン系」地質体と同様に、地下深部に沈み込み、高圧型変成作用を受けています(文献4)、(文献21)。
(文献4)によると、「エクロジャイト相」(eclogite facies)に相当する変成作用を受けています。ただし「後退変成作用」により、見かけ上は「緑色片岩相」(green-schist facies)から「青色片岩相」(blue-schist facies)になっています(文献21)。
この蛇紋岩体は、「ペニン系」地質グループのうち「ピエモンテ海系」(=「上部ペニン系」)に属し、「ピエモンテ海」(the Piemonte ocean)を構成していた海洋プレートのうち、最下層にあたる、リソスフェアマントル由来の岩体だと解釈されています(文献4)、(文献5)、(文献21)。
4−B項) 「ポリュックス」と「カストール」
「ブライトホルン」の東隣りには、「ポリュックス」(Pollux; 4089m)と「カストール」(Castor;4223m)いう双耳峰があり、2つ合わせて、「双子(峰)」を意味する、(Zwillinge(独)/「ツヴィリング」)とも呼ばれています(文献14)、(文献15)。(写真6)。
ところで、冬から春の夜空に浮かぶ星座である「双子座」の、α星、β星の名前も「ポリュックス」と「カストール」ですが、この双子峰の名前も、双子座の星の名前も、ギリシャ神話が由来だそうです。(文献16)
(文献10)によると、この2つのピークは「ブライトホルン」と同様、「クラインマッターホルン」のロープウエイを使って、比較的容易に登れる4000m峰として知られています。
まず「ポリュックス」の地質ですが、地質図(文献2A)によると、「ポリュックス」の山頂部や「ブライトホルン」から続く北壁には、「蛇紋岩」に加え、(変成)玄武岩(basalt(英))(「角閃岩」(Amphibolite(独))とも)、(変成)「ハンレイ岩」(gabllo(英))や、変成岩の一種「プラシナイト」(prasinit(独))が分布しています。(なお、地質図(文献2B)では、まとめて「変成玄武岩類」(meta-basaltic rocks(英))としている)
(文献1―1)や(文献2A)によると、「ブライトホルン」から続く「蛇紋岩」や、「変成玄武岩」、「変成ハンレイ岩」類はまとめて、海洋プレート断片を意味する「オフィオライト岩体」(ophiolite)(文献22)と呼ばれるものです。
この「オフィオライト岩体」は、まとめて「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」(Zermatt-Saas-Fee zone(英))、(文献21) という「地塊」に属しています。添付の図3,図4(テクトニックマップ)もご参照ください。
次に「カストール」ですが、「ポリュックス」と近接した山頂で、2つ合わせて双耳峰をなしています。が、この2つのピークの間に、明瞭な地質境界があります。従って、地質的にも、テクトニックユニットとしても、全く異なります。
つまりこの2つの峰は、地質学的には双子とはいえず、せいぜいが、遠縁の親戚程度の関係です。
地質図(文献2A)によると、「カストール」の地質は、「モンテローザ山塊」から続く、「モンテローザ・ナップ」(Monte rosa Decke(独))という「地塊」に属する、「古い片麻岩」類(gneiss(独))からなっています。(なお、地質図(文献2B)では、岩相としては「雲母片岩」(mica-schist)としている)。
ところで、冬から春の夜空に浮かぶ星座である「双子座」の、α星、β星の名前も「ポリュックス」と「カストール」ですが、この双子峰の名前も、双子座の星の名前も、ギリシャ神話が由来だそうです。(文献16)
(文献10)によると、この2つのピークは「ブライトホルン」と同様、「クラインマッターホルン」のロープウエイを使って、比較的容易に登れる4000m峰として知られています。
まず「ポリュックス」の地質ですが、地質図(文献2A)によると、「ポリュックス」の山頂部や「ブライトホルン」から続く北壁には、「蛇紋岩」に加え、(変成)玄武岩(basalt(英))(「角閃岩」(Amphibolite(独))とも)、(変成)「ハンレイ岩」(gabllo(英))や、変成岩の一種「プラシナイト」(prasinit(独))が分布しています。(なお、地質図(文献2B)では、まとめて「変成玄武岩類」(meta-basaltic rocks(英))としている)
(文献1―1)や(文献2A)によると、「ブライトホルン」から続く「蛇紋岩」や、「変成玄武岩」、「変成ハンレイ岩」類はまとめて、海洋プレート断片を意味する「オフィオライト岩体」(ophiolite)(文献22)と呼ばれるものです。
この「オフィオライト岩体」は、まとめて「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」(Zermatt-Saas-Fee zone(英))、(文献21) という「地塊」に属しています。添付の図3,図4(テクトニックマップ)もご参照ください。
次に「カストール」ですが、「ポリュックス」と近接した山頂で、2つ合わせて双耳峰をなしています。が、この2つのピークの間に、明瞭な地質境界があります。従って、地質的にも、テクトニックユニットとしても、全く異なります。
つまりこの2つの峰は、地質学的には双子とはいえず、せいぜいが、遠縁の親戚程度の関係です。
地質図(文献2A)によると、「カストール」の地質は、「モンテローザ山塊」から続く、「モンテローザ・ナップ」(Monte rosa Decke(独))という「地塊」に属する、「古い片麻岩」類(gneiss(独))からなっています。(なお、地質図(文献2B)では、岩相としては「雲母片岩」(mica-schist)としている)。
4−C項) 「リスカム」
「リスカム」(Liskamm;4532m)は、前記の「カストール」の東側、「モンテローザ」からみると、その西側に位置し、約5kmもの長い頂上稜線を持つ高峰です。(文献17)、(写真1)。
(文献10)によると、細い主稜線の南側(イタリア側)は険しい岩壁で、北側(スイス側)も岩と氷の絶壁です。また稜線部には雪庇ができやすく、難易度の高い山、とのことです。
さて「リスカム」の地質ですが、地質図(文献2A、2B)によると、前述の「カストール」や、その東にある「モンテローザ」と地質的にはほぼ同じで、テクトニックユニットとしては、前述の「モンテローザ・ナップ」という「地塊」に属します。
具体的には、地質図(文献2A)によると、原生代から古生代に起源を持つ、「古い片麻岩」類(gneiss(独))から成ります。(なお、地質図(文献2B)では、岩相としては「雲母片岩」(mica-schist)としている)。
(文献10)によると、細い主稜線の南側(イタリア側)は険しい岩壁で、北側(スイス側)も岩と氷の絶壁です。また稜線部には雪庇ができやすく、難易度の高い山、とのことです。
さて「リスカム」の地質ですが、地質図(文献2A、2B)によると、前述の「カストール」や、その東にある「モンテローザ」と地質的にはほぼ同じで、テクトニックユニットとしては、前述の「モンテローザ・ナップ」という「地塊」に属します。
具体的には、地質図(文献2A)によると、原生代から古生代に起源を持つ、「古い片麻岩」類(gneiss(独))から成ります。(なお、地質図(文献2B)では、岩相としては「雲母片岩」(mica-schist)としている)。
5−2章―第(5)節 「ゴルナーグラート」とその周辺の地質
「ゴルナーグラート」(Gorner- grat)とは、山の名前ではなく、「ツェルマット」東側の、台地状の地域にある観光拠点です(文献18)。
(※ ”grat” は、ドイツ語で「岩稜」の意味で、この一帯の地形図を見ると、「ゴルナーグラート駅」がある辺りの東西に伸びる岩稜に(”Gorner-grat”)という名前が付いている)。
「ツェルマット」からの登山鉄道の終着駅が、標高 約3100mの「ゴルナーグラート駅」で、そこは、「マッターホルン」や「モンテローザ」など、「ツェルマット」周辺の4000m級の山々を望む人気の展望台となっています。
またその周辺の、2500〜3000mの標高を持つ、台地状の部分(※ 以下、説明のため「ゴルナーグラート台地」と仮称します)は、夏にはお花畑となり、小さな氷河湖もある上、周辺の4000m級の山々の展望も楽しめるので、多くのハイキングコースがあります(文献8)、(文献9)。
この第(5)節では、観光客、ハイカーが多く訪れる、「ゴルナーグラート」とその周辺の地質について、スイスのオンライン地質図(文献2A)などを元に説明します((文献2B)は参考程度にします)。添付の地質図、図9や、写真7,写真8も、ご参照ください。
「ゴルナーグラート台地」付近の地質を、地質図(文献2A)で詳しく見ると、地形的には、氷河性堆積物(モレーン;moraine)が広範囲に広がる穏やかな高原ですが、見た目の穏やかさとは違い、地質的には、かなり複雑な地質構造になっています。
まず「ゴルナーグラート」駅付近や、そこから西へ続く岩稜(grat)、及びその岩稜の一角である「リッフェルホルン」(Riffelhorn;2930m)辺りの地質を、地質図(文献2A)で見ると、第(3)節の「ブライトホルン」の項で説明したのと同じく、「蛇紋岩」(serpentinit(独))から成っています。
この蛇紋岩体は「ゴルナー氷河」(the Gorner glacier)を間に挟んでいますが、「ブライトホルン」と「ゴルナーグラート」との中間部分にも点々と分布しており、氷河で覆われている部分も含め、かなり広い範囲に分布しているようです。
第(3)節でも説明したとおり、この蛇紋岩体は、海洋プレートの最下部を形成していた「カンラン岩」が変成作用を受けてできたもので、「ピエモンテ海」由来(=上部ペニン系)のものです。
「ゴルナーグラート台地」(仮称)は、広い範囲で氷河性堆積物(moraine)の岩屑に覆われていますが、それ以外の部分の地質は、「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」(Zermatt-Saas-Fee zone)(文献21)に属する「オフィオライト岩体」(ophiolite(英))(文献22)が分布しています。おそらく、氷河性堆積物の下にも同じように広がっているのでしょう。
第(1)節、第(3)節では簡単に説明しましたが、ここで「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」と「オフィオライト岩体」について、やや詳しく説明します。
(文献4)、(文献5)、(文献6)、(文献21)によると、「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」は主に、「上部海洋地殻」由来の「変成玄武岩類」(meta-basalts(英))、「下部海洋地殻」由来の「変成ハンレイ岩」(meta-gabbro(英))、及び リソスフェアマントル(原岩は「カンラン岩」)由来の「蛇紋岩」(serpentitite(英))の、主に3つの構成要素からなっています。(それ以外に、海成堆積物由来の変成岩も含む)。
これらはまとめて、海洋プレート断片を意味する、「オフィオライト(岩体)」(ophiolite(英)、Ophiolit/Ophiolith(独))(文献22)、(文献24)と呼ばれるものです。
「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」の大部分を占める、この「オフィオライト岩体」は、中生代には「ピエモンテ海」(Piedmont Ocean/ Piemonte-Liguria Ocean)の海洋プレートを構成していたもので、形成時代は主に「ジュラ紀」と推定されています。
(文献4)、(文献5)、(文献6)によると、「白亜紀」後期から「古第三紀」にかけ、この「オフィオライト岩体」は、海洋プレート沈み込み帯にて地下深部に沈み込み、「エクロジャイト相」相当の高圧型変成作用を受けています。上昇時の「後退変成作用」により、多くが「緑色片岩相」レベルとなっていますが、部分的には「エクロジャイト」岩体が存在します。
地質図(文献2A)で詳しく見ると、この「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」には、「蛇紋岩」、「変成ハンレイ岩」(meta-gabbro)、「変成玄武岩」類(meta-basalts)、及び「プラシナイト」(prasinite)と呼ばれる変成岩(「結晶片岩」の一種)が分布しています。
これらの変成岩の一部は、実際には「角閃岩」(amphibolite)となっているようです。また場所によっては、「エクロジャイト質の結晶片岩類」(Eclogit - Schiefer(独))も分布しています。その他に、堆積岩由来の変成岩である、「石灰質片岩」(Kalgig-schefer(独))などが点在しています。
(なお(文献2B)では、「変成ハンレイ岩」などに対応するものとして、「変成玄武岩類」(meta-basaltic rocks)と書かれていますが、同じものを意味していると思われます)
さて、「ゴルナーグラート」の東側には、南側の「ゴルナー氷河」に沿うように岩稜が続き、「ストックホルン」(Stock horn;3532m)(文献19)、(写真9)という山に続いています。
この辺りの岩稜の地質は、地質図(文献2A)で見ると、「雲母片岩」(glimmer-schiefer(独))や「花崗岩質の結晶片岩」(granit-schiefer(独))が分布しており、前述の「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」とは岩石の種類が異なっています。
(なお(文献2B)では主に「雲母片岩」(mica-schist)と書かれている)。
地質図(文献2A)のうちのテクトニックマップや、(文献4)、(文献5)によると、このゾーンは「ストックホルン・ナップ」(Stock horn nappe(英)/Stock horn Decke(独))と呼ばれる、東西 約6km、南北で最大3kmサイズの、独立した小さな「地塊」です。
(文献4)、(文献5)によると、この「地塊」は、「ブリアンソン・ライズ系」(=中部ペニン系)に属する、とされており、「ピエモンテ海系(=上部ペニン系)である「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」とは別ものです。むしろ「モンテローザ・ナップ」(=中部ペニン系)に似ています。
次に「ゴルナーグラート台地」」の北東側には、「ウンターロートホルン」(Unterrothorn;3103m)と、「オーバーロートホルン」(Oberrothorn;3414m)という2つの山があります(文献20)、(写真10)。なお前者は山頂までロープウエイが通じており、後者も登山道があり、標高は3000mを越えていますが、ハイキング対象の山となっています(文献8)、(文献9)。
この2つの山の辺りの地質を、地質図(文献2A)で見ると、堆積岩由来の変成岩類が多く、具体的には、「石灰質の結晶片岩」(Kalgig-schefer(独))などが分布しています。(文献2A)によるとこれらは、「上部ペニン系」に属している中生代の堆積物由来の変成岩類です。また地質図(文献2A)のテクトニクスマップや、地質図(文献3)を見ると、この一帯は、5−2章―(2)節;「マッターホルン」の項でも出てきた、「ツァテ・ナップ」(Tsaté nappe)(文献4)に属しています。周辺の「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」とも、前述の「ストックホルン・ナップ」とも、所属が異なります。
なお、この山々の東面、南面には、「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」に属する「オフィオライト」岩体(「蛇紋岩」、「変成ハンレイ岩」、「変成玄武岩」)や、高度変成岩である「エクロジャイト」(Eklogit(独))が分布しています。
地質図(文献2A)を細かく見ると、「ゴルナーグラート・ナップ」(Gornergrat Decke(独))(文献4)、(文献5)という、幅が狭い「地塊」に属するとされる、「クオーツァイト」(quarzit(独))という石英質堆積物由来の変成岩や、(rauhwacke(独))という、「トリアス紀」の石灰岩質堆積岩も点在しており、なんとも複雑な地質構造となっています。
まとめると、「ゴルナーグラート台地」(仮称)と、その周辺の3000〜3500m程度の山々は、地形的にはハイキングに最適な高原状の穏やかな場所で、氷河性堆積物(モレーン)の岩屑に覆われていて険しい岩壁も少ないのですが、地質学的には、「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」、「ツァテ・ナップ」「ストックホルン・ナップ」、「ゴルナーグラート・ナップ」といった、複数の「地塊」が入り混じっており、具体的な地質構成も含め、非常に複雑な地質分布となっています。
(※ ”grat” は、ドイツ語で「岩稜」の意味で、この一帯の地形図を見ると、「ゴルナーグラート駅」がある辺りの東西に伸びる岩稜に(”Gorner-grat”)という名前が付いている)。
「ツェルマット」からの登山鉄道の終着駅が、標高 約3100mの「ゴルナーグラート駅」で、そこは、「マッターホルン」や「モンテローザ」など、「ツェルマット」周辺の4000m級の山々を望む人気の展望台となっています。
またその周辺の、2500〜3000mの標高を持つ、台地状の部分(※ 以下、説明のため「ゴルナーグラート台地」と仮称します)は、夏にはお花畑となり、小さな氷河湖もある上、周辺の4000m級の山々の展望も楽しめるので、多くのハイキングコースがあります(文献8)、(文献9)。
この第(5)節では、観光客、ハイカーが多く訪れる、「ゴルナーグラート」とその周辺の地質について、スイスのオンライン地質図(文献2A)などを元に説明します((文献2B)は参考程度にします)。添付の地質図、図9や、写真7,写真8も、ご参照ください。
「ゴルナーグラート台地」付近の地質を、地質図(文献2A)で詳しく見ると、地形的には、氷河性堆積物(モレーン;moraine)が広範囲に広がる穏やかな高原ですが、見た目の穏やかさとは違い、地質的には、かなり複雑な地質構造になっています。
まず「ゴルナーグラート」駅付近や、そこから西へ続く岩稜(grat)、及びその岩稜の一角である「リッフェルホルン」(Riffelhorn;2930m)辺りの地質を、地質図(文献2A)で見ると、第(3)節の「ブライトホルン」の項で説明したのと同じく、「蛇紋岩」(serpentinit(独))から成っています。
この蛇紋岩体は「ゴルナー氷河」(the Gorner glacier)を間に挟んでいますが、「ブライトホルン」と「ゴルナーグラート」との中間部分にも点々と分布しており、氷河で覆われている部分も含め、かなり広い範囲に分布しているようです。
第(3)節でも説明したとおり、この蛇紋岩体は、海洋プレートの最下部を形成していた「カンラン岩」が変成作用を受けてできたもので、「ピエモンテ海」由来(=上部ペニン系)のものです。
「ゴルナーグラート台地」(仮称)は、広い範囲で氷河性堆積物(moraine)の岩屑に覆われていますが、それ以外の部分の地質は、「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」(Zermatt-Saas-Fee zone)(文献21)に属する「オフィオライト岩体」(ophiolite(英))(文献22)が分布しています。おそらく、氷河性堆積物の下にも同じように広がっているのでしょう。
第(1)節、第(3)節では簡単に説明しましたが、ここで「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」と「オフィオライト岩体」について、やや詳しく説明します。
(文献4)、(文献5)、(文献6)、(文献21)によると、「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」は主に、「上部海洋地殻」由来の「変成玄武岩類」(meta-basalts(英))、「下部海洋地殻」由来の「変成ハンレイ岩」(meta-gabbro(英))、及び リソスフェアマントル(原岩は「カンラン岩」)由来の「蛇紋岩」(serpentitite(英))の、主に3つの構成要素からなっています。(それ以外に、海成堆積物由来の変成岩も含む)。
これらはまとめて、海洋プレート断片を意味する、「オフィオライト(岩体)」(ophiolite(英)、Ophiolit/Ophiolith(独))(文献22)、(文献24)と呼ばれるものです。
「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」の大部分を占める、この「オフィオライト岩体」は、中生代には「ピエモンテ海」(Piedmont Ocean/ Piemonte-Liguria Ocean)の海洋プレートを構成していたもので、形成時代は主に「ジュラ紀」と推定されています。
(文献4)、(文献5)、(文献6)によると、「白亜紀」後期から「古第三紀」にかけ、この「オフィオライト岩体」は、海洋プレート沈み込み帯にて地下深部に沈み込み、「エクロジャイト相」相当の高圧型変成作用を受けています。上昇時の「後退変成作用」により、多くが「緑色片岩相」レベルとなっていますが、部分的には「エクロジャイト」岩体が存在します。
地質図(文献2A)で詳しく見ると、この「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」には、「蛇紋岩」、「変成ハンレイ岩」(meta-gabbro)、「変成玄武岩」類(meta-basalts)、及び「プラシナイト」(prasinite)と呼ばれる変成岩(「結晶片岩」の一種)が分布しています。
これらの変成岩の一部は、実際には「角閃岩」(amphibolite)となっているようです。また場所によっては、「エクロジャイト質の結晶片岩類」(Eclogit - Schiefer(独))も分布しています。その他に、堆積岩由来の変成岩である、「石灰質片岩」(Kalgig-schefer(独))などが点在しています。
(なお(文献2B)では、「変成ハンレイ岩」などに対応するものとして、「変成玄武岩類」(meta-basaltic rocks)と書かれていますが、同じものを意味していると思われます)
さて、「ゴルナーグラート」の東側には、南側の「ゴルナー氷河」に沿うように岩稜が続き、「ストックホルン」(Stock horn;3532m)(文献19)、(写真9)という山に続いています。
この辺りの岩稜の地質は、地質図(文献2A)で見ると、「雲母片岩」(glimmer-schiefer(独))や「花崗岩質の結晶片岩」(granit-schiefer(独))が分布しており、前述の「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」とは岩石の種類が異なっています。
(なお(文献2B)では主に「雲母片岩」(mica-schist)と書かれている)。
地質図(文献2A)のうちのテクトニックマップや、(文献4)、(文献5)によると、このゾーンは「ストックホルン・ナップ」(Stock horn nappe(英)/Stock horn Decke(独))と呼ばれる、東西 約6km、南北で最大3kmサイズの、独立した小さな「地塊」です。
(文献4)、(文献5)によると、この「地塊」は、「ブリアンソン・ライズ系」(=中部ペニン系)に属する、とされており、「ピエモンテ海系(=上部ペニン系)である「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」とは別ものです。むしろ「モンテローザ・ナップ」(=中部ペニン系)に似ています。
次に「ゴルナーグラート台地」」の北東側には、「ウンターロートホルン」(Unterrothorn;3103m)と、「オーバーロートホルン」(Oberrothorn;3414m)という2つの山があります(文献20)、(写真10)。なお前者は山頂までロープウエイが通じており、後者も登山道があり、標高は3000mを越えていますが、ハイキング対象の山となっています(文献8)、(文献9)。
この2つの山の辺りの地質を、地質図(文献2A)で見ると、堆積岩由来の変成岩類が多く、具体的には、「石灰質の結晶片岩」(Kalgig-schefer(独))などが分布しています。(文献2A)によるとこれらは、「上部ペニン系」に属している中生代の堆積物由来の変成岩類です。また地質図(文献2A)のテクトニクスマップや、地質図(文献3)を見ると、この一帯は、5−2章―(2)節;「マッターホルン」の項でも出てきた、「ツァテ・ナップ」(Tsaté nappe)(文献4)に属しています。周辺の「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」とも、前述の「ストックホルン・ナップ」とも、所属が異なります。
なお、この山々の東面、南面には、「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」に属する「オフィオライト」岩体(「蛇紋岩」、「変成ハンレイ岩」、「変成玄武岩」)や、高度変成岩である「エクロジャイト」(Eklogit(独))が分布しています。
地質図(文献2A)を細かく見ると、「ゴルナーグラート・ナップ」(Gornergrat Decke(独))(文献4)、(文献5)という、幅が狭い「地塊」に属するとされる、「クオーツァイト」(quarzit(独))という石英質堆積物由来の変成岩や、(rauhwacke(独))という、「トリアス紀」の石灰岩質堆積岩も点在しており、なんとも複雑な地質構造となっています。
まとめると、「ゴルナーグラート台地」(仮称)と、その周辺の3000〜3500m程度の山々は、地形的にはハイキングに最適な高原状の穏やかな場所で、氷河性堆積物(モレーン)の岩屑に覆われていて険しい岩壁も少ないのですが、地質学的には、「ツェルマット・ザースフェー・ゾーン」、「ツァテ・ナップ」「ストックホルン・ナップ」、「ゴルナーグラート・ナップ」といった、複数の「地塊」が入り混じっており、具体的な地質構成も含め、非常に複雑な地質分布となっています。
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【注釈の項】
注1) 「ヴァリス山群」の範囲
(一つ前の投稿の)、5−2章―(1)節でも説明したので、ここでは簡単に説明します。この連載での「ヴァリス山群」(the Vallais Alps)の範囲は、スイスの「ヴァリス州」の山岳地帯、特に「ツェルマット」(Zermatt)や「ザースフェー」(Saas-Fee) 周辺の、4000m級の高峰群が集まっている地域という意味あいで使用しています。(だいたいの範囲は、図●をご参照ください)。
注2) 山々の標高について
この章で記載した山々などの標高は、スイスのオンライン地質図(文献2A)のうち、地形図レイヤーの値を採用し、記載しています。文献、ガイドブックなどによっては、数m程度違う値となっている場合があります。
注3) スイスのオンライン地質図について
スイスのオンライン地質図は、パソコン等で見る「ウエブ版」(文献2A)と、スマホのアプリとなっている「アプリ版」(文献2B)(アプリ名;“Swiss topo”)とがあります。
どちらも(Swiss topo)という機関がデータ元ですが、「ウエブ版」(文献2A)は、説明が詳しく、解像度も高い一方で、ポップアップの地質解説がドイツ語なのでちょっと解りにくい、という短所もあります。
一方「アプリ版」(文献2B)は、地質解説が英語で解りやすいのですが、解像度が低く、かつ、場所が違っていても似たような地質体をグループ化して説明している点は、短所だと思います。
また細かく見ると、地質説明に、けっこう違いがあります。
この章では、主に(文献2A)を参照し、(文献2B)は参考程度としました。
それぞれの地質図の使い方、見方などは、「参考文献」の項をご覧ください。
注4) 岩石の説明;
この章でも、色々な種類の岩石が出てきますので、(文献23)、(文献24)などに基づき、ザックリと説明しておきます。詳しくは上記の文献やしっかりした岩石図鑑などを、ご参照ください。
(1) 「片麻岩」類(gneisses):変成岩のうち、見た目が濃い色(黒っぽい)の部分と、淡い色(白っぽい)の部分が縞模様(片麻状組織)となっている岩石。どちらかというと、高温型の変成岩。日本では分布が限定的だが、「ヨーロッパアルプス」や世界各地の造山帯、及び古い地塊(クラトン)では良く見られる。
元となった岩石や、含まれる鉱物によって、細かく種類が分けられている。
原岩が花崗岩類(深成岩)と推定されるものは、「正片麻岩」(ortho-gneiss)、原岩が堆積岩(泥岩、砂岩など)と推定されるものは、「パラ片麻岩」(「準片麻岩」とも)(para-gneiss)という、2種類に区分するやり方も良く使われる。
(2)「雲母片岩」(mica-schist);変成岩のうち、「結晶片岩」類の一つ。結晶片岩類は「片理構造」と呼ばれる、ペラペラしたシートが重なったような構造をもつが、その中に雲母(mica)が多く含まれるものを雲母片岩と呼ぶ。
「結晶片岩」類は、多くの名称があって、文献によって同じものが別の名前で呼ばれることもあるが、(文献23)では、「白雲母片岩」(muscovite-schist)が「雲母片岩」類の代表として記載されている。日本では「泥質片岩」や「黒色片岩」と呼ばれる結晶片岩類も、白雲母が多く含まれることが多いので、「雲母片岩」と同類と言える。
(3) 「石灰質片岩」(calc-schist);「結晶片岩」類のうち、原岩が石灰岩類(ドロマイトを含む)と推定されるもの。日本では少ないのか、岩石図鑑(文献23)には載っていない。
(4)「角閃岩」(amphibolite);変成岩のうち、「角閃石」(類)(hornblende など)と呼ばれる鉱物が多い変成岩。新鮮面はグレー〜ダークグレーで、風化した表面はやや緑色を帯びる。赤茶色をした鉱物ザクロ石が表れている場合もある。
「角閃岩」の原岩は、「玄武岩」、「ハンレイ岩」などの苦鉄質の火成岩と推定されている。
「角閃岩」の一部は、海洋プレート沈み込み帯で、海洋プレート上部の玄武岩、ハンレイ岩が地下深部で変成作用を受けたもの、と解釈されている。
なお岩石としての「角閃岩」も、鉱物としての「角閃石」も、細かく言うと単一の名称ではなく、元素組成によって多数の種類に分類される。
また、原岩が「ハンレイ岩」(gabbro)であることが明確な場合は、「変成ハンレイ岩」(meta-gabbro)と呼ばれることもある。意味的にはほぼ同じである。
(5) 「エクロジャイト」(eclogite);「玄武岩」、「ハンレイ岩」などの苦鉄質火成岩が、地下深部(約50km以下)で高圧型変成作用を受けてできる岩石。
逆に高圧型変成作用(変成相としての「エクロジャイト相」)の指標となる岩石、という意味あいもある。
鉱物としては、緑色の「オンファス輝石」と、赤茶色の「ザクロ石」(ガーネット;garnet)からなる(文献23)。
地下深部の高圧化で安定な岩石であるため、地表に向かって上昇する場合、その過程で「後退変成作用」という変化が起きて鉱物組成が変化し、別の岩石となってしまうことが多く、「エクロジャイト」としての大きな岩体は、世界的にも少ない。
文献や地質図では、「エクロジャイト的な岩石」(eclogetic rocks)や、「エクロジャイト相」(eclogite fasies)(の変成岩)という感じで使われていることが多い。
(6) 「クオーツアイト」(quartzite);岩石図鑑(文献23)には載っていないが、地学事典(文献24)によると、いくつかの意味あいで使われている、岩石の名前。日本語では「珪岩」(けいがん)。
広義には「石英」(quartz)が多い岩石という意味あいで、この章では、おそらく、砂岩由来の、「石英」成分の多い変成岩という意味あいで使われている。
(7) 「プラシナイト」(prasinite);変成岩の一種で、鉱物組成として、アルバイト、緑れん石、バロア閃石からなるもの(文献24)。
この変成岩は日本には少ないのか、岩石図鑑(文献23)にも載っていない。インターネットで調べると「緑色片岩」の一種という説明がある。
(8) 「蛇紋岩」(serpentinite);上部マントルを構成している主な岩石である、「カンラン岩」が、水分(H2O)と反応して形成された、一種の変成岩。
地表では、新鮮な「カンラン岩」はあまりなく、部分的に蛇紋岩化していたり、完全に「蛇紋岩」となっていることが多い。外観は緑がかっており、白い部分もあって複雑な模様を呈していることが多い。鉱物組成としては、「蛇紋石」(serpentine)が主であるが、「カンラン石」(olivine)が残っている場合もある。
(9) 「カンラン岩」(peridotite);「カンラン石」(olivine)を主とし、「直方輝石」(ortho-pyroxene)、「単斜輝石」(clino-pyroxyne)を含む岩石。
見た目は、新鮮なもの緑色〜濃い緑色だが、通常は風化(鉄分の酸化)により、赤茶色をしていることが多い。
上部マントルは全て、この「カンラン岩」からできていると考えられており、いわゆる「プレート」(plate)も、その下部の「リソスフェアマントル」と呼ばれる部分は、「カンラン岩」で出来ていると考えられている。
「蛇紋岩」の項で述べたように、地中で水分(H2O)と反応して蛇紋岩となることが多いため、地表では、蛇紋岩化していない(新鮮な)「カンラン岩」を見かけることは少ない。
(10) 「花崗岩」類(granites);マグマが地下深くで固まった深成岩のうち、シリカ分(SiO2)が多い(=フェルシックな;felsic)深成岩。
鉱物組成としては普通、石英、長石類、黒雲母からなる。
「花崗岩類」と呼ぶ場合は、(狭義の)「花崗岩」(granite)のほか、「花崗閃緑岩」(grano-diorite)、「トーナル岩」(tonalite)、「石英閃緑岩」(quartz diorite)なども含む。
文献や地質図において、英語では(granites),あるいは(granitoids)と書かれている場合があるが、どちらも「花崗岩類」と訳した。
なお、花崗岩類が高度な変成作用を受け、片麻状組織を持つものは、片麻岩類の一種、「正片麻岩」(ortho-gneiss)と呼ばれる。「変成花崗岩類」(meta-granites、meta-granitoids)と呼ぶこともある。
(11) 「玄武岩」(basalt);マグマが地表や海底で固まった火山岩のうち、シリカ分(SiO2)が少ない(=マフィックな;mafic)火山岩。
見た目は普通、黒っぽい。
火山から噴出する場合も多いが、海洋地殻の上部は玄武岩からなっており、この章での「玄武岩」は、海洋地殻上部(海洋性プレート上部)由来の玄武岩である。
変成作用を受けた「変成・玄武岩」(meta-basalts)となっていることも多い。その場合、「角閃石」(hornblende、など)が主要鉱物であるもの、あるいは原岩が「玄武岩」か「ハンレイ岩」か不明な場合は、「角閃岩」(amphibolite)と呼ぶことも多い。
(12) 「ハンレイ岩」(gabbro);マグマが地下深くで固まった深成岩のうち、シリカ分(SiO2)が少ない(=マフィックな;mafic)深成岩。
海洋地殻の下部は「ハンレイ岩」で出来ている。
火山岩の「玄武岩」と化学組成的には同じ。
見た目は、白っぽい鉱物(主に長石類)と黒っぽい鉱物(角閃石や輝石類)が入り混じっている感じ。
地表では変成した「変成・ハンレイ岩」(meta-gabbros)となっていることも多い。この章での「ハンレイ岩」は、海洋地殻下部由来の「ハンレイ岩」である。
「変成・ハンレイ岩」は、「玄武岩」と同様に、「変成相」での「角閃岩相」の条件化で変成作用を受け、「角閃石」が主要鉱物であるもの、あるいは原岩が不明は、「角閃岩」と呼ぶことも多い。
注5) 「ヴァリス」(山群、州)の読み方、表記について
このスイスの州は、ドイツ語圏とフランス語圏にまたがっている為、以下2つの表記、読み方があります。
・ドイツ語では、”Wallis” 、読み方(日本語表記)は、(ヴァリス)
・フランス語では、”Valais” 、読み方(日本語表記)は、(ヴァレー)
この章では、日本語表記としては、(文献8)、(文献10)など日本のガイドブックでよく使われている、「ヴァリス」とし、現地語表記を併用する場合は、地質学の文献などで多く使われている、フランス語由来の(Valais)を使用します。
注6) [Saas-Fee]の読み方について
この地名は、日本語で表記する場合、「ザースフェー」とするものと「サースフェー」とするものの2種類があり、ガイドブック類(文献8)、(文献9)、(文献10)などでも読み方がマチマチです。(おそらく、英語読みとドイツ語読みの違い)
この章では、「ザースフェー」と表記します。
注7) [Tsaté nappe]の読み方について
ツェルマット付近やヴァリス州西部に広がる、「Tsaté nappe」という「地塊」は、ヴァリス州のフランス語圏にある小さな集落の名前がその名の由来のようですが、フランス語由来の為、日本語での表記は良く解りません。この章ではとりあえず「ツァテ・ナップ」と訳しました。
なおこの「地塊」は、文献によっては、「コンバン・ゾーン」(Combin zone)とも呼ばれています(例えば、地質図(文献3))。
注8) 「クラインマッターホルン」(Kline Matterhorn)という地名について
「クラインマッターホルン」は元々、ツェルマットからのロープウエイの終点にある小さな岩峰の名前です。
そこにあるロープウエイの駅名も、以前は「クラインマッターホルン駅」でしたが(文献9)、最近では、「マッターホルン・グレッシャーパラダイス(駅)」(Matterhorn Glacier Paradise)という、いかにも観光地的な名称に変更されています(文献8)。
この章では、地名も岩峰の名称も、「クラインマッターホルン」に統一しています。
注9) “Ma”は、百万年前を意味する単位です
(一つ前の投稿の)、5−2章―(1)節でも説明したので、ここでは簡単に説明します。この連載での「ヴァリス山群」(the Vallais Alps)の範囲は、スイスの「ヴァリス州」の山岳地帯、特に「ツェルマット」(Zermatt)や「ザースフェー」(Saas-Fee) 周辺の、4000m級の高峰群が集まっている地域という意味あいで使用しています。(だいたいの範囲は、図●をご参照ください)。
注2) 山々の標高について
この章で記載した山々などの標高は、スイスのオンライン地質図(文献2A)のうち、地形図レイヤーの値を採用し、記載しています。文献、ガイドブックなどによっては、数m程度違う値となっている場合があります。
注3) スイスのオンライン地質図について
スイスのオンライン地質図は、パソコン等で見る「ウエブ版」(文献2A)と、スマホのアプリとなっている「アプリ版」(文献2B)(アプリ名;“Swiss topo”)とがあります。
どちらも(Swiss topo)という機関がデータ元ですが、「ウエブ版」(文献2A)は、説明が詳しく、解像度も高い一方で、ポップアップの地質解説がドイツ語なのでちょっと解りにくい、という短所もあります。
一方「アプリ版」(文献2B)は、地質解説が英語で解りやすいのですが、解像度が低く、かつ、場所が違っていても似たような地質体をグループ化して説明している点は、短所だと思います。
また細かく見ると、地質説明に、けっこう違いがあります。
この章では、主に(文献2A)を参照し、(文献2B)は参考程度としました。
それぞれの地質図の使い方、見方などは、「参考文献」の項をご覧ください。
注4) 岩石の説明;
この章でも、色々な種類の岩石が出てきますので、(文献23)、(文献24)などに基づき、ザックリと説明しておきます。詳しくは上記の文献やしっかりした岩石図鑑などを、ご参照ください。
(1) 「片麻岩」類(gneisses):変成岩のうち、見た目が濃い色(黒っぽい)の部分と、淡い色(白っぽい)の部分が縞模様(片麻状組織)となっている岩石。どちらかというと、高温型の変成岩。日本では分布が限定的だが、「ヨーロッパアルプス」や世界各地の造山帯、及び古い地塊(クラトン)では良く見られる。
元となった岩石や、含まれる鉱物によって、細かく種類が分けられている。
原岩が花崗岩類(深成岩)と推定されるものは、「正片麻岩」(ortho-gneiss)、原岩が堆積岩(泥岩、砂岩など)と推定されるものは、「パラ片麻岩」(「準片麻岩」とも)(para-gneiss)という、2種類に区分するやり方も良く使われる。
(2)「雲母片岩」(mica-schist);変成岩のうち、「結晶片岩」類の一つ。結晶片岩類は「片理構造」と呼ばれる、ペラペラしたシートが重なったような構造をもつが、その中に雲母(mica)が多く含まれるものを雲母片岩と呼ぶ。
「結晶片岩」類は、多くの名称があって、文献によって同じものが別の名前で呼ばれることもあるが、(文献23)では、「白雲母片岩」(muscovite-schist)が「雲母片岩」類の代表として記載されている。日本では「泥質片岩」や「黒色片岩」と呼ばれる結晶片岩類も、白雲母が多く含まれることが多いので、「雲母片岩」と同類と言える。
(3) 「石灰質片岩」(calc-schist);「結晶片岩」類のうち、原岩が石灰岩類(ドロマイトを含む)と推定されるもの。日本では少ないのか、岩石図鑑(文献23)には載っていない。
(4)「角閃岩」(amphibolite);変成岩のうち、「角閃石」(類)(hornblende など)と呼ばれる鉱物が多い変成岩。新鮮面はグレー〜ダークグレーで、風化した表面はやや緑色を帯びる。赤茶色をした鉱物ザクロ石が表れている場合もある。
「角閃岩」の原岩は、「玄武岩」、「ハンレイ岩」などの苦鉄質の火成岩と推定されている。
「角閃岩」の一部は、海洋プレート沈み込み帯で、海洋プレート上部の玄武岩、ハンレイ岩が地下深部で変成作用を受けたもの、と解釈されている。
なお岩石としての「角閃岩」も、鉱物としての「角閃石」も、細かく言うと単一の名称ではなく、元素組成によって多数の種類に分類される。
また、原岩が「ハンレイ岩」(gabbro)であることが明確な場合は、「変成ハンレイ岩」(meta-gabbro)と呼ばれることもある。意味的にはほぼ同じである。
(5) 「エクロジャイト」(eclogite);「玄武岩」、「ハンレイ岩」などの苦鉄質火成岩が、地下深部(約50km以下)で高圧型変成作用を受けてできる岩石。
逆に高圧型変成作用(変成相としての「エクロジャイト相」)の指標となる岩石、という意味あいもある。
鉱物としては、緑色の「オンファス輝石」と、赤茶色の「ザクロ石」(ガーネット;garnet)からなる(文献23)。
地下深部の高圧化で安定な岩石であるため、地表に向かって上昇する場合、その過程で「後退変成作用」という変化が起きて鉱物組成が変化し、別の岩石となってしまうことが多く、「エクロジャイト」としての大きな岩体は、世界的にも少ない。
文献や地質図では、「エクロジャイト的な岩石」(eclogetic rocks)や、「エクロジャイト相」(eclogite fasies)(の変成岩)という感じで使われていることが多い。
(6) 「クオーツアイト」(quartzite);岩石図鑑(文献23)には載っていないが、地学事典(文献24)によると、いくつかの意味あいで使われている、岩石の名前。日本語では「珪岩」(けいがん)。
広義には「石英」(quartz)が多い岩石という意味あいで、この章では、おそらく、砂岩由来の、「石英」成分の多い変成岩という意味あいで使われている。
(7) 「プラシナイト」(prasinite);変成岩の一種で、鉱物組成として、アルバイト、緑れん石、バロア閃石からなるもの(文献24)。
この変成岩は日本には少ないのか、岩石図鑑(文献23)にも載っていない。インターネットで調べると「緑色片岩」の一種という説明がある。
(8) 「蛇紋岩」(serpentinite);上部マントルを構成している主な岩石である、「カンラン岩」が、水分(H2O)と反応して形成された、一種の変成岩。
地表では、新鮮な「カンラン岩」はあまりなく、部分的に蛇紋岩化していたり、完全に「蛇紋岩」となっていることが多い。外観は緑がかっており、白い部分もあって複雑な模様を呈していることが多い。鉱物組成としては、「蛇紋石」(serpentine)が主であるが、「カンラン石」(olivine)が残っている場合もある。
(9) 「カンラン岩」(peridotite);「カンラン石」(olivine)を主とし、「直方輝石」(ortho-pyroxene)、「単斜輝石」(clino-pyroxyne)を含む岩石。
見た目は、新鮮なもの緑色〜濃い緑色だが、通常は風化(鉄分の酸化)により、赤茶色をしていることが多い。
上部マントルは全て、この「カンラン岩」からできていると考えられており、いわゆる「プレート」(plate)も、その下部の「リソスフェアマントル」と呼ばれる部分は、「カンラン岩」で出来ていると考えられている。
「蛇紋岩」の項で述べたように、地中で水分(H2O)と反応して蛇紋岩となることが多いため、地表では、蛇紋岩化していない(新鮮な)「カンラン岩」を見かけることは少ない。
(10) 「花崗岩」類(granites);マグマが地下深くで固まった深成岩のうち、シリカ分(SiO2)が多い(=フェルシックな;felsic)深成岩。
鉱物組成としては普通、石英、長石類、黒雲母からなる。
「花崗岩類」と呼ぶ場合は、(狭義の)「花崗岩」(granite)のほか、「花崗閃緑岩」(grano-diorite)、「トーナル岩」(tonalite)、「石英閃緑岩」(quartz diorite)なども含む。
文献や地質図において、英語では(granites),あるいは(granitoids)と書かれている場合があるが、どちらも「花崗岩類」と訳した。
なお、花崗岩類が高度な変成作用を受け、片麻状組織を持つものは、片麻岩類の一種、「正片麻岩」(ortho-gneiss)と呼ばれる。「変成花崗岩類」(meta-granites、meta-granitoids)と呼ぶこともある。
(11) 「玄武岩」(basalt);マグマが地表や海底で固まった火山岩のうち、シリカ分(SiO2)が少ない(=マフィックな;mafic)火山岩。
見た目は普通、黒っぽい。
火山から噴出する場合も多いが、海洋地殻の上部は玄武岩からなっており、この章での「玄武岩」は、海洋地殻上部(海洋性プレート上部)由来の玄武岩である。
変成作用を受けた「変成・玄武岩」(meta-basalts)となっていることも多い。その場合、「角閃石」(hornblende、など)が主要鉱物であるもの、あるいは原岩が「玄武岩」か「ハンレイ岩」か不明な場合は、「角閃岩」(amphibolite)と呼ぶことも多い。
(12) 「ハンレイ岩」(gabbro);マグマが地下深くで固まった深成岩のうち、シリカ分(SiO2)が少ない(=マフィックな;mafic)深成岩。
海洋地殻の下部は「ハンレイ岩」で出来ている。
火山岩の「玄武岩」と化学組成的には同じ。
見た目は、白っぽい鉱物(主に長石類)と黒っぽい鉱物(角閃石や輝石類)が入り混じっている感じ。
地表では変成した「変成・ハンレイ岩」(meta-gabbros)となっていることも多い。この章での「ハンレイ岩」は、海洋地殻下部由来の「ハンレイ岩」である。
「変成・ハンレイ岩」は、「玄武岩」と同様に、「変成相」での「角閃岩相」の条件化で変成作用を受け、「角閃石」が主要鉱物であるもの、あるいは原岩が不明は、「角閃岩」と呼ぶことも多い。
注5) 「ヴァリス」(山群、州)の読み方、表記について
このスイスの州は、ドイツ語圏とフランス語圏にまたがっている為、以下2つの表記、読み方があります。
・ドイツ語では、”Wallis” 、読み方(日本語表記)は、(ヴァリス)
・フランス語では、”Valais” 、読み方(日本語表記)は、(ヴァレー)
この章では、日本語表記としては、(文献8)、(文献10)など日本のガイドブックでよく使われている、「ヴァリス」とし、現地語表記を併用する場合は、地質学の文献などで多く使われている、フランス語由来の(Valais)を使用します。
注6) [Saas-Fee]の読み方について
この地名は、日本語で表記する場合、「ザースフェー」とするものと「サースフェー」とするものの2種類があり、ガイドブック類(文献8)、(文献9)、(文献10)などでも読み方がマチマチです。(おそらく、英語読みとドイツ語読みの違い)
この章では、「ザースフェー」と表記します。
注7) [Tsaté nappe]の読み方について
ツェルマット付近やヴァリス州西部に広がる、「Tsaté nappe」という「地塊」は、ヴァリス州のフランス語圏にある小さな集落の名前がその名の由来のようですが、フランス語由来の為、日本語での表記は良く解りません。この章ではとりあえず「ツァテ・ナップ」と訳しました。
なおこの「地塊」は、文献によっては、「コンバン・ゾーン」(Combin zone)とも呼ばれています(例えば、地質図(文献3))。
注8) 「クラインマッターホルン」(Kline Matterhorn)という地名について
「クラインマッターホルン」は元々、ツェルマットからのロープウエイの終点にある小さな岩峰の名前です。
そこにあるロープウエイの駅名も、以前は「クラインマッターホルン駅」でしたが(文献9)、最近では、「マッターホルン・グレッシャーパラダイス(駅)」(Matterhorn Glacier Paradise)という、いかにも観光地的な名称に変更されています(文献8)。
この章では、地名も岩峰の名称も、「クラインマッターホルン」に統一しています。
注9) “Ma”は、百万年前を意味する単位です
【参考文献】
(文献1) O. A. Pfiffner 著 “Geology of the Alps”, 2nd edition ,Wiley Blackball社刊,
(2014); (原著はドイツ語版で、2014年にドイツの出版社刊)
(文献1−1) (文献1)のうち、第5−2章 「中部アルプスのテクトニックな構造」
(Tectonic structure of the Alps ; the Central Alps)の項
(文献1−2) (文献1)のうち、第3−2章
「中生代のアルプス地域におけるテクトニックな進化」
(the Alpine domain in the Mesozoic; Plate Tectonic evolution)の項の、
図3-16,図3-28(「ジュラ紀」、「白亜紀」の古地理図)。
(文献2A) スイスのオンライン地質図(ウエブ版)
https://map.geo.admin.ch/
※ 地質図は、メニューより、 > Geocatalog > Nature and Environment > Geology
> GeoCover Vector Datasets 、より見ることができる。
※ 断層、テクトニック構造、「地塊」分布図などは、メニューより、> Geocatalog >
Nature and Environment > Geology > Tectonics 500 、より見ることができる。
※ 地形図も兼ねているので、地形図レイヤーより、山名、標高なども確認できる。
※ 地図自体は(EN)を選ぶと英語表記になるが、ポップアップの地質解説はドイツ語
なので、ちょっと解りにくい。
※ 利用したバージョンは、v 1.59.0
(文献2B) スイスのオンライン地質図(スマホアプリ版)
※ スマホに、“Swiss topo” というアプリをインストールして利用する。
※ メニューより、”geology” > “Gological Map” を選ぶと地質図を見ることができる。
※ 地図自体も、ポップアップの地質解説も全て英語なので、解りやすい。
※ 利用したバージョンは、v 1.19.1
(文献3) スイスのテクトニックマップ(紙媒体)
“Tectonische Karte der Schweiz”
50万分の1 図幅、”Swiss topo”発行、(発行年度不明)
ISBN 3-906723-56-9 (“Swiss topo” のインターネットサイトより購入)
(文献4) スイスの地質に関する解説サイト
“ Strati CH;Lithostratigraphic Lexicon of Switzerland ”
https://www.strati.ch/en/
のうち、(Monterosa-Decke)、(Zermatt Saas-Decke)、(Tsate-Decke)、
(Arolla Gruppe)、(Stockhorn-Decke (Zermatt))、
(Gornergrat-Decke) などの各項
(文献5) A. Steck、 H. Masson、 M Robyr 、共著
“Tectonics of the Monte Rosa and surrounding nappes (Switzerland and Italy):
Tertiary phases of subduction, thrusting and folding in the Pennine Alps”
Swiss Journal of Geosciences誌、vol. 108, p3?34 (2015)
https://sjg.springeropen.com/articles/10.1007/s00015-015-0188-x
(DOI; 10.1007/s00015-015-0188-x)
※ 上記のサイトから、PDF版が無料でダウンロードできる。
※ 「モンテローザ」地塊と、その周辺の地質構造についての論文
(文献6) N.Froitzheim 著
“ Origin of the Monte Rosa nappe in the Pennine Alps ; a new working hypothesis”
Geological Society of America Bulletin誌、vol. 113、 page 604-614、 (2001)
https://www.researchgate.net/publication/249527067_Origin_of_the_Monte_Rosa_nappe_in_the_Pennine_Alps-A_new_working_hypothesis
(DOI; 10.1130/0016-7606(2001)113<0604:OOTMRN>2.0.CO;2)
※ 上記のサイトから、PDF版が無料でダウンロードできる。
(文献7) M. Marthaler、H. Rougier 著、
“ An Outstanding Mountain: The Matterhorn”
(意訳;「マッターホルンの地質と地形」))
書籍;“Landscapes and Landforms of Switzerland ”、pp.187-199 (2021)
https://www.researchgate.net/publication/342847689_An_Outstanding_Mountain_The_Matterhorn
(DOI; https///www.DOI:10.1007/978-3-030-43203-4_13 )
※ このサイトより、PDFファイルが無料でダウンロードできる。
(文献8) 「地球の歩き方;スイス(2024-2025年版)」 Gakken社 刊 (2023)
(文献9) 小川 清美 著
「ヨーロッパアルプス ハイキングガイド(2);ツェルマット、周辺を歩く」
山と渓谷社 刊 (2000)
(文献10) リヒャルト・ゲーデケ著、島田荘平、島田陽子 共訳
「アルプス4000m峰 登山ガイド」 山と渓谷社 刊 (1997)
(文献11) 近藤 等 著 「アルプスの名峰」 山と渓谷社 版 (1984)
(文献12) ウイキペディア英語版の、(Monte rosa)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Monte_Rosa
(2025年10月 閲覧)
(文献13) ウイキペディア英語版の、(Breithorn)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Breithorn
(2025年10月 閲覧)
(文献14) ウイキペディア英語版の、(Pollux)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Pollux_(mountain)
(2025年10月 閲覧)
(文献15) ウイキペディア英語版の、(Castor)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Castor_(mountain)
(2025年10月 閲覧)
(文献16) ウイキペディア日本語版の、「双子座」の項、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B5%E3%81%9F%E3%81%94%E5%BA%A7
(2025年10月 閲覧)
(文献17) ウイキペディア英語版の、(Liskamm)の項、
https://en.wikipedia.org/wiki/Lyskamm
(2025年10月 閲覧)
(文献18) ウイキペディア英語版の、(Gornergrat)の項、
https://en.wikipedia.org/wiki/Gornergrat
(2025年10月 閲覧)
(文献19) ウイキペディア英語版の、(Stockhorn (Zermatt))の項、
https://en.wikipedia.org/wiki/Stockhorn_(Zermatt)
(2025年10月 閲覧)
(文献20) ウイキペディ・ドイツ語版の、(Oberrothorn)の項、
https://de.wikipedia.org/wiki/Oberrothorn
(2025年10月 閲覧)
(文献21) ウイキペディア英語版の、(Zermatt-Saas zone)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Zermatt-Saas_zone
(2025年10月 閲覧)
(文献22) ウイキペディア英語版の、(ophiolite)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Ophiolite
(2025年10月 閲覧)
(文献23) 西本 著「観察を楽しむ、特徴がわかる 岩石図鑑」 ナツメ社刊 (2020)
のうち、「蛇紋岩」、「片麻岩」、「エクロジャイト」、「カンラン岩」、
「ハンレイ岩」、などの各項
(文献24) 地質団体研究会 編 「新版 地質事典」 平凡社 刊(1996)のうち、
「オフィオライト」、「プラシナイト」、「クオーツアイト」、「雲母片岩」
などの各項
(2014); (原著はドイツ語版で、2014年にドイツの出版社刊)
(文献1−1) (文献1)のうち、第5−2章 「中部アルプスのテクトニックな構造」
(Tectonic structure of the Alps ; the Central Alps)の項
(文献1−2) (文献1)のうち、第3−2章
「中生代のアルプス地域におけるテクトニックな進化」
(the Alpine domain in the Mesozoic; Plate Tectonic evolution)の項の、
図3-16,図3-28(「ジュラ紀」、「白亜紀」の古地理図)。
(文献2A) スイスのオンライン地質図(ウエブ版)
https://map.geo.admin.ch/
※ 地質図は、メニューより、 > Geocatalog > Nature and Environment > Geology
> GeoCover Vector Datasets 、より見ることができる。
※ 断層、テクトニック構造、「地塊」分布図などは、メニューより、> Geocatalog >
Nature and Environment > Geology > Tectonics 500 、より見ることができる。
※ 地形図も兼ねているので、地形図レイヤーより、山名、標高なども確認できる。
※ 地図自体は(EN)を選ぶと英語表記になるが、ポップアップの地質解説はドイツ語
なので、ちょっと解りにくい。
※ 利用したバージョンは、v 1.59.0
(文献2B) スイスのオンライン地質図(スマホアプリ版)
※ スマホに、“Swiss topo” というアプリをインストールして利用する。
※ メニューより、”geology” > “Gological Map” を選ぶと地質図を見ることができる。
※ 地図自体も、ポップアップの地質解説も全て英語なので、解りやすい。
※ 利用したバージョンは、v 1.19.1
(文献3) スイスのテクトニックマップ(紙媒体)
“Tectonische Karte der Schweiz”
50万分の1 図幅、”Swiss topo”発行、(発行年度不明)
ISBN 3-906723-56-9 (“Swiss topo” のインターネットサイトより購入)
(文献4) スイスの地質に関する解説サイト
“ Strati CH;Lithostratigraphic Lexicon of Switzerland ”
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のうち、(Monterosa-Decke)、(Zermatt Saas-Decke)、(Tsate-Decke)、
(Arolla Gruppe)、(Stockhorn-Decke (Zermatt))、
(Gornergrat-Decke) などの各項
(文献5) A. Steck、 H. Masson、 M Robyr 、共著
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Tertiary phases of subduction, thrusting and folding in the Pennine Alps”
Swiss Journal of Geosciences誌、vol. 108, p3?34 (2015)
https://sjg.springeropen.com/articles/10.1007/s00015-015-0188-x
(DOI; 10.1007/s00015-015-0188-x)
※ 上記のサイトから、PDF版が無料でダウンロードできる。
※ 「モンテローザ」地塊と、その周辺の地質構造についての論文
(文献6) N.Froitzheim 著
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https://www.researchgate.net/publication/249527067_Origin_of_the_Monte_Rosa_nappe_in_the_Pennine_Alps-A_new_working_hypothesis
(DOI; 10.1130/0016-7606(2001)113<0604:OOTMRN>2.0.CO;2)
※ 上記のサイトから、PDF版が無料でダウンロードできる。
(文献7) M. Marthaler、H. Rougier 著、
“ An Outstanding Mountain: The Matterhorn”
(意訳;「マッターホルンの地質と地形」))
書籍;“Landscapes and Landforms of Switzerland ”、pp.187-199 (2021)
https://www.researchgate.net/publication/342847689_An_Outstanding_Mountain_The_Matterhorn
(DOI; https///www.DOI:10.1007/978-3-030-43203-4_13 )
※ このサイトより、PDFファイルが無料でダウンロードできる。
(文献8) 「地球の歩き方;スイス(2024-2025年版)」 Gakken社 刊 (2023)
(文献9) 小川 清美 著
「ヨーロッパアルプス ハイキングガイド(2);ツェルマット、周辺を歩く」
山と渓谷社 刊 (2000)
(文献10) リヒャルト・ゲーデケ著、島田荘平、島田陽子 共訳
「アルプス4000m峰 登山ガイド」 山と渓谷社 刊 (1997)
(文献11) 近藤 等 著 「アルプスの名峰」 山と渓谷社 版 (1984)
(文献12) ウイキペディア英語版の、(Monte rosa)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Monte_Rosa
(2025年10月 閲覧)
(文献13) ウイキペディア英語版の、(Breithorn)の項
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(2025年10月 閲覧)
(文献14) ウイキペディア英語版の、(Pollux)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Pollux_(mountain)
(2025年10月 閲覧)
(文献15) ウイキペディア英語版の、(Castor)の項
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(文献16) ウイキペディア日本語版の、「双子座」の項、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B5%E3%81%9F%E3%81%94%E5%BA%A7
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(文献17) ウイキペディア英語版の、(Liskamm)の項、
https://en.wikipedia.org/wiki/Lyskamm
(2025年10月 閲覧)
(文献18) ウイキペディア英語版の、(Gornergrat)の項、
https://en.wikipedia.org/wiki/Gornergrat
(2025年10月 閲覧)
(文献19) ウイキペディア英語版の、(Stockhorn (Zermatt))の項、
https://en.wikipedia.org/wiki/Stockhorn_(Zermatt)
(2025年10月 閲覧)
(文献20) ウイキペディ・ドイツ語版の、(Oberrothorn)の項、
https://de.wikipedia.org/wiki/Oberrothorn
(2025年10月 閲覧)
(文献21) ウイキペディア英語版の、(Zermatt-Saas zone)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Zermatt-Saas_zone
(2025年10月 閲覧)
(文献22) ウイキペディア英語版の、(ophiolite)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Ophiolite
(2025年10月 閲覧)
(文献23) 西本 著「観察を楽しむ、特徴がわかる 岩石図鑑」 ナツメ社刊 (2020)
のうち、「蛇紋岩」、「片麻岩」、「エクロジャイト」、「カンラン岩」、
「ハンレイ岩」、などの各項
(文献24) 地質団体研究会 編 「新版 地質事典」 平凡社 刊(1996)のうち、
「オフィオライト」、「プラシナイト」、「クオーツアイト」、「雲母片岩」
などの各項
【書記事項】
・経緯;元の投稿;本内容は、2025年10月10日に、「5−2章 ヴァリス山群の地質(その1)」(初稿)として投稿
それとは別に、(その2)として、「ヴァイスホルン」などの説明を、2025年10月18日に投稿。(ー>この投稿分は、後に(その3)と改題)
△改訂1;元の(その1;初稿)の分量が多すぎて読みづらいので、2分割することとした。
2分割のうち、(その1;改)は、初稿のうち、第(1)節、第(2)節とした。
よってこの投稿;(その2;新)は、(その1;初稿)のうち、第(3)、(4)、(5)節をまとめ直したものである。
・ 2025年10月20日 投稿
それとは別に、(その2)として、「ヴァイスホルン」などの説明を、2025年10月18日に投稿。(ー>この投稿分は、後に(その3)と改題)
△改訂1;元の(その1;初稿)の分量が多すぎて読みづらいので、2分割することとした。
2分割のうち、(その1;改)は、初稿のうち、第(1)節、第(2)節とした。
よってこの投稿;(その2;新)は、(その1;初稿)のうち、第(3)、(4)、(5)節をまとめ直したものである。
・ 2025年10月20日 投稿
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「ヨーロッパアルプスの地質学」;5−2章 「ヴァリス山群」の地質 (その2、新);「モンテローザ」、「ブライトホルン」、及び「ゴルナーグラート」付近の地質 2 更新日:2025年10月20日
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「ヨーロッパアルプスの地質学」;5−2章 「ヴァリス山群」の地質(その3);ヴァイスホルンとその周辺 3 更新日:2025年10月19日
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「ヨーロッパアルプスの地質学」;5−2章 「ヴァリス山群」の地質(その1(改));ヴァリス山群の概要、及び「マッターホルン」の地質 4 更新日:2025年10月20日
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