(はじめに)
この5−2章「ヴァリス山群の地質」は、説明したい山々が多いので、複数回に分けて連載しています。
この回(その4)では、山としては2つの4000m峰を取り上げます。
ひとつは「ヴァリス山群」の「ダンブランシュ」(Dent Blanche;4356m)で、もう一つは、「ヴァリス州」の西部、この連載では「スイス南西部」(仮称)とよぶ地域にある唯一の4000m峰、「グランコンバン」(Grand Combin;4314m)です。
この5−2章(その4)では、個々の山の地質というより、より広域的な地質構造にも注目し、以下2つのゾーンの地質構造も説明します。
一つは、「スイス南西部」地域の地質構成、及び、これまでの連載でも出てきた、「ダンブランシュ・ナップ」(Dent Blanch nappe)という「地塊」の地質構造、地質学的歴史(仮説)について、説明します。
まず、「スイス南西部」の広域的な地形図を、図1に示します。主な山の位置はこれでご確認ください。
また、「スイス南西部」の広域的なテクトニックマップを、図2に示します。非常に多数の「地塊」(nappe)、「地帯」(zone)が、ごちゃごちゃと分布しており、地質的には非常に複雑になっていることがわかります。
特に「ダンブランシュ・ナップ」(地塊)と、「モンブラン地塊」との間は、いくつもの「地塊」/「地帯」注3)が、南北方向に細長く、帯状に分布しています。
この地域の、各「地塊」、「地帯」については、第(9)節の「スイス南西部」の項や「補足説明1」の項で説明します。
また、「ダンブランシュ・ナップ」という「地塊」については、色々と謎が多く、議論も多い「地塊」です。筆者個人の興味もあるので、第(11)節の項、及び「補足説明2」の項で説明します。
※ この回で紹介する山は、あまり(日本人には)知名度が高くないことに加え、「スイス南西部」(地域)の地質構成、及び「ダンブランシュ・ナップ」(地塊)の説明は、かなり細かい内容となります。
どちらかというと、筆者個人の興味によって色々調べたものです。
あらかじめご承知ください。
この回(その4)では、山としては2つの4000m峰を取り上げます。
ひとつは「ヴァリス山群」の「ダンブランシュ」(Dent Blanche;4356m)で、もう一つは、「ヴァリス州」の西部、この連載では「スイス南西部」(仮称)とよぶ地域にある唯一の4000m峰、「グランコンバン」(Grand Combin;4314m)です。
この5−2章(その4)では、個々の山の地質というより、より広域的な地質構造にも注目し、以下2つのゾーンの地質構造も説明します。
一つは、「スイス南西部」地域の地質構成、及び、これまでの連載でも出てきた、「ダンブランシュ・ナップ」(Dent Blanch nappe)という「地塊」の地質構造、地質学的歴史(仮説)について、説明します。
まず、「スイス南西部」の広域的な地形図を、図1に示します。主な山の位置はこれでご確認ください。
また、「スイス南西部」の広域的なテクトニックマップを、図2に示します。非常に多数の「地塊」(nappe)、「地帯」(zone)が、ごちゃごちゃと分布しており、地質的には非常に複雑になっていることがわかります。
特に「ダンブランシュ・ナップ」(地塊)と、「モンブラン地塊」との間は、いくつもの「地塊」/「地帯」注3)が、南北方向に細長く、帯状に分布しています。
この地域の、各「地塊」、「地帯」については、第(9)節の「スイス南西部」の項や「補足説明1」の項で説明します。
また、「ダンブランシュ・ナップ」という「地塊」については、色々と謎が多く、議論も多い「地塊」です。筆者個人の興味もあるので、第(11)節の項、及び「補足説明2」の項で説明します。
※ この回で紹介する山は、あまり(日本人には)知名度が高くないことに加え、「スイス南西部」(地域)の地質構成、及び「ダンブランシュ・ナップ」(地塊)の説明は、かなり細かい内容となります。
どちらかというと、筆者個人の興味によって色々調べたものです。
あらかじめご承知ください。
5−2章―(8)節 「ダンブランシュ」の地質
「ダンブランシュ」(Dent Blanche ;4356m)注1)という山は、「マッターホルン」の北西、約8kmの位置、「オーバーガーベルホルン」の西側 約4kmに位置している4000m級の山です(文献9)。
「ヴァリス山群」の観光の中心地「ツェルマット」(Zermatt)や、そこに隣接する「ゴルナーグラート」付近からは、4000m級の高峰、「オーバーガーベルホルン」(Ober gaberhorn)が手前にあるため、「ダンブランシュ」は良く見えません。
また、その他の方向からもあまり良く見えない「奥山」なので、日本の観光ガイドブックでも多少取り上げられている程度で、知名度は高いとは言えません。(文献16)
しかし、いくつかの衛星峰で回りを囲い、氷雪と岩壁からなる巨大なピラミッド状をしたその姿は、写真などで見ると、なかなかの名峰です(文献14)、(文献15)。添付の(写真1)もご参照ください。
なお「ダンブランシュ」という名前のうち、”dent”は、「歯」を、“blanche”は、「白い」を意味するフランス語です。
なので、直訳すると「白い歯」となり、ハミガキ関係のコマーシャルに出てきそうな感じになってしまいます。 ”dent”を「牙」とし、「白き牙」と訳すとカッコよくなり、実際のこの山のイメージに合います。
「ダンブランシュ」は、交通も不便な場所にある「奥山」なので、「ツェルマット」周辺の山々より、総合的な難易度も高くなります。
(文献14)、(文献15)によると、一般的には北側の「エラン渓谷」(Val d'Hérens)を遡って、さらに氷河を越えてピラミッド状の本体に取りつくようですが、どのルートも険しい岩と雪のルートのようです。
さて前置きばかり長くなりましたが、「ダンブランシュ」の地質について説明します。
この山は、山としての難易度に相反して、地質構造は非常に単純です。
具体的には、「ダンブランシュ・ナップ」(地塊)のうち、「アローラ・ユニット」(Arolla unit)に属する、(Arolla ortho-geneiss)と呼ばれる、「ペルム紀」の深成岩体である、花崗岩類由来の「片麻岩」類だけが分布しています。
主峰の周りを囲んでいる衛星峰もみな、同じ岩石です。添付の地質図、図3をご参照ください。
「ダンブランシュ」の地質構造がこのように単調なのは、この山が「ダンブランシュ・ナップ」(Dent Blanche nappe(英)/Dent Blanche Decke(独))(文献11)という「地塊」のほぼ中心部にあることも要因となっています。
実際には、逆に「ダンブランシュ」という山の名前が、「ダンブランシュ・ナップ」という「地塊」の名前となっています。
「ダンブランシュ・ナップ」という「地塊」は、なかなか複雑な話になるので、第(11)節でまとめて説明します。
「ヴァリス山群」の観光の中心地「ツェルマット」(Zermatt)や、そこに隣接する「ゴルナーグラート」付近からは、4000m級の高峰、「オーバーガーベルホルン」(Ober gaberhorn)が手前にあるため、「ダンブランシュ」は良く見えません。
また、その他の方向からもあまり良く見えない「奥山」なので、日本の観光ガイドブックでも多少取り上げられている程度で、知名度は高いとは言えません。(文献16)
しかし、いくつかの衛星峰で回りを囲い、氷雪と岩壁からなる巨大なピラミッド状をしたその姿は、写真などで見ると、なかなかの名峰です(文献14)、(文献15)。添付の(写真1)もご参照ください。
なお「ダンブランシュ」という名前のうち、”dent”は、「歯」を、“blanche”は、「白い」を意味するフランス語です。
なので、直訳すると「白い歯」となり、ハミガキ関係のコマーシャルに出てきそうな感じになってしまいます。 ”dent”を「牙」とし、「白き牙」と訳すとカッコよくなり、実際のこの山のイメージに合います。
「ダンブランシュ」は、交通も不便な場所にある「奥山」なので、「ツェルマット」周辺の山々より、総合的な難易度も高くなります。
(文献14)、(文献15)によると、一般的には北側の「エラン渓谷」(Val d'Hérens)を遡って、さらに氷河を越えてピラミッド状の本体に取りつくようですが、どのルートも険しい岩と雪のルートのようです。
さて前置きばかり長くなりましたが、「ダンブランシュ」の地質について説明します。
この山は、山としての難易度に相反して、地質構造は非常に単純です。
具体的には、「ダンブランシュ・ナップ」(地塊)のうち、「アローラ・ユニット」(Arolla unit)に属する、(Arolla ortho-geneiss)と呼ばれる、「ペルム紀」の深成岩体である、花崗岩類由来の「片麻岩」類だけが分布しています。
主峰の周りを囲んでいる衛星峰もみな、同じ岩石です。添付の地質図、図3をご参照ください。
「ダンブランシュ」の地質構造がこのように単調なのは、この山が「ダンブランシュ・ナップ」(Dent Blanche nappe(英)/Dent Blanche Decke(独))(文献11)という「地塊」のほぼ中心部にあることも要因となっています。
実際には、逆に「ダンブランシュ」という山の名前が、「ダンブランシュ・ナップ」という「地塊」の名前となっています。
「ダンブランシュ・ナップ」という「地塊」は、なかなか複雑な話になるので、第(11)節でまとめて説明します。
5−2章―(9)節 「スイス南西部」の地質
この第(9)節では、「グランコンバン」も含む、「スイス南西部」(仮称)の地質について説明します。
この(9)節では、有名な山はほとんどでてきませんし、筆者の個人的興味により調べた内容をまとめたものです。なので、読み飛ばし頂いても問題ありません。
また、詳細な内容は、「補足説明」の項で説明し、この本文では大まかに説明します。
さて、ここでいう「スイス南西部」とは、説明用に区分したゾーンですが、大まかに言うと、「ヴァリス州」の西部にあたります。
この一帯は、4000m級の山である「グランコンバン」を除くと、山々の標高も2500〜3500m程度と低くなり、登山対象となる山も少なく、日本の観光ガイドブック(文献16)や登山ガイドブック(文献14)、(文献15)などでもほとんど紹介されていない、地味な地域です。
しかしながら、地質的には、非常に複雑なゾーンでもあります。
「スイス南西部」の具体的な地質構造を、地質図(文献2A)のテクトニックレイヤーや、テクトニック地質図(文献3A)で見ると、添付の図4,図5に示すように、多くの「地塊」(地帯)が分布する、非常に複雑な構造になっています。
「地塊」(地帯)を、東側から順にみると、「ダンブランシュ・ナップ」(地塊)の西には、「ツァテ・ナップ」(Tsaté nappe)(地塊)、「モンフォール・ナップ」(Mont Fort nappe)(地塊)、「シヴィエ・ミシャベル・ナップ」(Siviez-Michabell nappe)(地塊)、「ゾーン・ウ−イエ」(Zone Houillère (仏)/Houillere Zone(英))(地帯)(注4)、 「シオン・クールマイヨール・ナップ(ゾーン)」(Sion-Courmayeur nappe(zone)(英))(地塊/地帯)と、5つの「地塊」(地帯)が、北東―南東走向に細い帯状に並んでいます。注2)
その西側の縁は、「ドーフィネ系」地質グループ(Dauphinois nappe system)の中の「外側地塊」(external massif)である、フランスの「モンブラン地塊」(massif of Mont Blanc)に接しています。
これらの「地塊」(地帯)は、地質図(文献2A)のテクトニックレイヤーで見ると、幅が、約5〜20kmと非常に狭くなっています(図5)。
地下構造を含めて考えると、この地域のテクトニック地質構造は、より複雑です。
(文献6)の、この地域の推定地質断面図(Fig.2)(添付の図6)を見ると、それぞれの「地塊」(地帯)の間は、スラスト断層(thrust fault)で区切られていて、それぞれの「地塊」は、薄い「スラストシート」(thrust sheet)状となっており、それらが重なり合って、「ナップスタック構造」(nappe stacks structure)(注5)を取っている、と推定されています。
その薄い「スラストシート」の端面が地表に顔をだしているのが、地質図(テクトニックマップ)(図5)における、細長い「地塊」(地帯)として表れている要因だと思われます。
なお、上記の「地塊」(地帯)の帰属ですが、「ツァテ・ナップ」から「シオン・クールマイヨール・ゾーン」までは全て「ペニン系」地質グループ(Penninic nappe system)に属します。
〜〜〜〜〜
以下、各「地塊」(地帯)について、(文献3B)、(文献4)などを元に説明します。より詳細な内容は、「補足説明」の項で説明していますので、ご興味のある方はご覧ください。
A) 「ツァテ・ナップ」(Tsaté nappe)
この「地塊」は、「上部ペニン系」(=ピエモンテ海系)に属し、「ピエモンテ海」が沈み込みを行っていた時代(白亜紀)に形成された「付加体」(accuratory wedge )由来の「地塊」と解釈されています。
具体的な地質体としては、大部分が、変成した堆積岩類(meta-sediments)で、一部には海洋プレート断片である「オフィオライト岩体」(ophiolite)が混じっています。
B) 「モンフォール・ナップ」(Mont Fort nappe)、及び
「シヴィエ・ミシャベル・ナップ」(Sivies Mischabll nappe);
この2つの「地塊」は、「中部ペニン系」(=ブリアンソン・ライズ系)に属し、大陸性の基盤岩体(crystalline basement)と、それを覆う中生代の堆積物が変成作用を受けた「変成・堆積岩類(meta-sediments)からなります。
具体的な地質体としては、片麻岩類、変成花崗岩類、結晶片岩類、変成堆積岩類です。
C) 「ゾーン・ウーイエ」(Zone Houillère) 注4)
この地帯(ゾーン)は、「中部ペニン系」(=ブリアンソン・ライズ系)に属してはいますが、「古生代」後半期から「中生代」の堆積物を元とした、変成した堆積岩類(meta-sediments)からなります。
なお、「ウーイエ」(Houillère)とはフランス語で、辞書によると「石炭を含む」という意味です。実際に部分的ですが、「石炭紀」に形成された石炭(coal)が含まれています。
D) 「シオン・クールマイヨール・ゾーン(ナップ)」 (Sion-Courmayeur-Zone/nappe);
この「地塊」(地帯)は、「下部ペニン系」(=ヴァリストラフ系)に属し、「ヴァリストラフ」(Valais trough)という深海渓谷に堆積した、主に中生代のフリッシュ性堆積物(砂、泥など)が、変成作用を受けた、変成堆積岩類(meta-sediments)からなります。 具体的な地質構成はかなり複雑です。
この(9)節では、有名な山はほとんどでてきませんし、筆者の個人的興味により調べた内容をまとめたものです。なので、読み飛ばし頂いても問題ありません。
また、詳細な内容は、「補足説明」の項で説明し、この本文では大まかに説明します。
さて、ここでいう「スイス南西部」とは、説明用に区分したゾーンですが、大まかに言うと、「ヴァリス州」の西部にあたります。
この一帯は、4000m級の山である「グランコンバン」を除くと、山々の標高も2500〜3500m程度と低くなり、登山対象となる山も少なく、日本の観光ガイドブック(文献16)や登山ガイドブック(文献14)、(文献15)などでもほとんど紹介されていない、地味な地域です。
しかしながら、地質的には、非常に複雑なゾーンでもあります。
「スイス南西部」の具体的な地質構造を、地質図(文献2A)のテクトニックレイヤーや、テクトニック地質図(文献3A)で見ると、添付の図4,図5に示すように、多くの「地塊」(地帯)が分布する、非常に複雑な構造になっています。
「地塊」(地帯)を、東側から順にみると、「ダンブランシュ・ナップ」(地塊)の西には、「ツァテ・ナップ」(Tsaté nappe)(地塊)、「モンフォール・ナップ」(Mont Fort nappe)(地塊)、「シヴィエ・ミシャベル・ナップ」(Siviez-Michabell nappe)(地塊)、「ゾーン・ウ−イエ」(Zone Houillère (仏)/Houillere Zone(英))(地帯)(注4)、 「シオン・クールマイヨール・ナップ(ゾーン)」(Sion-Courmayeur nappe(zone)(英))(地塊/地帯)と、5つの「地塊」(地帯)が、北東―南東走向に細い帯状に並んでいます。注2)
その西側の縁は、「ドーフィネ系」地質グループ(Dauphinois nappe system)の中の「外側地塊」(external massif)である、フランスの「モンブラン地塊」(massif of Mont Blanc)に接しています。
これらの「地塊」(地帯)は、地質図(文献2A)のテクトニックレイヤーで見ると、幅が、約5〜20kmと非常に狭くなっています(図5)。
地下構造を含めて考えると、この地域のテクトニック地質構造は、より複雑です。
(文献6)の、この地域の推定地質断面図(Fig.2)(添付の図6)を見ると、それぞれの「地塊」(地帯)の間は、スラスト断層(thrust fault)で区切られていて、それぞれの「地塊」は、薄い「スラストシート」(thrust sheet)状となっており、それらが重なり合って、「ナップスタック構造」(nappe stacks structure)(注5)を取っている、と推定されています。
その薄い「スラストシート」の端面が地表に顔をだしているのが、地質図(テクトニックマップ)(図5)における、細長い「地塊」(地帯)として表れている要因だと思われます。
なお、上記の「地塊」(地帯)の帰属ですが、「ツァテ・ナップ」から「シオン・クールマイヨール・ゾーン」までは全て「ペニン系」地質グループ(Penninic nappe system)に属します。
〜〜〜〜〜
以下、各「地塊」(地帯)について、(文献3B)、(文献4)などを元に説明します。より詳細な内容は、「補足説明」の項で説明していますので、ご興味のある方はご覧ください。
A) 「ツァテ・ナップ」(Tsaté nappe)
この「地塊」は、「上部ペニン系」(=ピエモンテ海系)に属し、「ピエモンテ海」が沈み込みを行っていた時代(白亜紀)に形成された「付加体」(accuratory wedge )由来の「地塊」と解釈されています。
具体的な地質体としては、大部分が、変成した堆積岩類(meta-sediments)で、一部には海洋プレート断片である「オフィオライト岩体」(ophiolite)が混じっています。
B) 「モンフォール・ナップ」(Mont Fort nappe)、及び
「シヴィエ・ミシャベル・ナップ」(Sivies Mischabll nappe);
この2つの「地塊」は、「中部ペニン系」(=ブリアンソン・ライズ系)に属し、大陸性の基盤岩体(crystalline basement)と、それを覆う中生代の堆積物が変成作用を受けた「変成・堆積岩類(meta-sediments)からなります。
具体的な地質体としては、片麻岩類、変成花崗岩類、結晶片岩類、変成堆積岩類です。
C) 「ゾーン・ウーイエ」(Zone Houillère) 注4)
この地帯(ゾーン)は、「中部ペニン系」(=ブリアンソン・ライズ系)に属してはいますが、「古生代」後半期から「中生代」の堆積物を元とした、変成した堆積岩類(meta-sediments)からなります。
なお、「ウーイエ」(Houillère)とはフランス語で、辞書によると「石炭を含む」という意味です。実際に部分的ですが、「石炭紀」に形成された石炭(coal)が含まれています。
D) 「シオン・クールマイヨール・ゾーン(ナップ)」 (Sion-Courmayeur-Zone/nappe);
この「地塊」(地帯)は、「下部ペニン系」(=ヴァリストラフ系)に属し、「ヴァリストラフ」(Valais trough)という深海渓谷に堆積した、主に中生代のフリッシュ性堆積物(砂、泥など)が、変成作用を受けた、変成堆積岩類(meta-sediments)からなります。 具体的な地質構成はかなり複雑です。
5−2章―(10)節 「グランコンバン」の地質
「グランコンバン」(Grand Combin;4313m)(文献10)は、前の(9)節で説明した「スイス南西部」のうち、唯一の4000m級の山です。
この山は、主峰が4300m台ですが、周囲に多数の衛星峰を持ち、それらの山々も3800〜4100m台の標高を誇り、それらを含めて巨大な山塊を形成しています。
また、周辺は氷河で覆われ、そこから岩の塊が突き出ている山容をしており、登頂には難易度の高い山だと言われています。(文献15)。
添付の(写真2)、(写真3)もご参照ください。
「グランコンバン」(Grand Combin)とその周辺の地質を、地質図(文献2A)により、詳しく見てみると、図5に示しているように、山頂部やその北側、西側は「モンフォール・ナップ」(Mont Fort nappe) に属しており、具体的な地質としては、「片麻岩」(Gneis(独))、「結晶片岩類」(Schifers(独))、「プラシナイト」(Prasinit(独))といった変成岩類からなります。
形成年代は「古生代」前期の、「カンブリア紀」〜「オルドビス紀」と推定されています。
第(9)節で説明したとおり、「モンフォール・ナップ」は、大陸性の古い「地塊」です。
よって(文献2A)に書かれている形成時代は、基盤岩体(basement)としての形成時代を指していると思われます。最新の変成作用を受けた時代は、「アルプス造山運動」の時代と思われます。
一方、「グランコンバン」山頂のすぐ南東側に地質境界があります。山頂の東側、南側は「ツァテ・ナップ」(Tsaté nappe )に属しています。
具体的な地質としては、「石灰質片岩」(Kalkig-Schiefer(独))、「結晶質石灰岩(大理石)」(Marmor(独))、「(変成)礫岩」(Konglomerat(独))、「プラシナイト」(Prasinit(独);結晶片岩の一種)といった、堆積物由来の変成岩が大部分を占めています。
第(9)節でも説明したように、「ツァテ・ナップ」は、中生代に形成された「ピエモンテ海」が沈み込みを行った際にできた「付加体」由来の「地塊」であり、「付加体」としての形成時代は「白亜紀」です。
この山は、主峰が4300m台ですが、周囲に多数の衛星峰を持ち、それらの山々も3800〜4100m台の標高を誇り、それらを含めて巨大な山塊を形成しています。
また、周辺は氷河で覆われ、そこから岩の塊が突き出ている山容をしており、登頂には難易度の高い山だと言われています。(文献15)。
添付の(写真2)、(写真3)もご参照ください。
「グランコンバン」(Grand Combin)とその周辺の地質を、地質図(文献2A)により、詳しく見てみると、図5に示しているように、山頂部やその北側、西側は「モンフォール・ナップ」(Mont Fort nappe) に属しており、具体的な地質としては、「片麻岩」(Gneis(独))、「結晶片岩類」(Schifers(独))、「プラシナイト」(Prasinit(独))といった変成岩類からなります。
形成年代は「古生代」前期の、「カンブリア紀」〜「オルドビス紀」と推定されています。
第(9)節で説明したとおり、「モンフォール・ナップ」は、大陸性の古い「地塊」です。
よって(文献2A)に書かれている形成時代は、基盤岩体(basement)としての形成時代を指していると思われます。最新の変成作用を受けた時代は、「アルプス造山運動」の時代と思われます。
一方、「グランコンバン」山頂のすぐ南東側に地質境界があります。山頂の東側、南側は「ツァテ・ナップ」(Tsaté nappe )に属しています。
具体的な地質としては、「石灰質片岩」(Kalkig-Schiefer(独))、「結晶質石灰岩(大理石)」(Marmor(独))、「(変成)礫岩」(Konglomerat(独))、「プラシナイト」(Prasinit(独);結晶片岩の一種)といった、堆積物由来の変成岩が大部分を占めています。
第(9)節でも説明したように、「ツァテ・ナップ」は、中生代に形成された「ピエモンテ海」が沈み込みを行った際にできた「付加体」由来の「地塊」であり、「付加体」としての形成時代は「白亜紀」です。
5−2章―(11)節 「ダンブランシュ・ナップ」について
この5−2章では、「マッターホルン」、「ヴァイスホルン」、「ダンブランシュ」など「ヴァリス山群」の山々の地質説明で、「ダンブランシュ・ナップ」(Dent Blanche nappe (英)/Dent Blanche Decke (独))という「地塊」名が、何度もでてきました。
この「地塊」は、周辺の「ペニン系」の各「地塊」とはちょっと異なっており、個人的には気になる「地塊」なので、この第(11)節で、調べてみたことをまとめてみました。なお、一部は「補足説明2」の項に、まとめました。
この「地塊」は、周辺の「ペニン系」の各「地塊」とはちょっと異なっており、個人的には気になる「地塊」なので、この第(11)節で、調べてみたことをまとめてみました。なお、一部は「補足説明2」の項に、まとめました。
(11節−A項) 「ダンブランシュ・ナップ」の概要と「セーシア・ゾーン」との関係
「ダンブランシュ・ナップ」という地塊は、図7に示すように、「中部アルプス」の「ペニン系」地質グループ分布域のなかに、離島のように孤立している「地塊」です。
形状は、北東―南西方向に長軸をもつ紡錘形をしており、長軸方向の長さで約50km、幅は最大で20km程度です。
この「地塊」は、「ペニン系」に属する「地塊」群の上に、スラスト断層によって、のし上がった状態となっています。その厚みは、「マッターホルン」や「ヴァイスホルン」など、「ダンブランシュ・ナップ」の縁の部分では、せいぜい1km程度です。一方、(文献5)の推定地質断面図(Fig.6)からみると、中央部では最も厚くなっており、約5〜7kmの厚みがあるようです。
南東側には20kmほど離れたところ、「ヨーロッパアルプス」のイタリア側山麓部に、地質学的に類似しているとされる、「セーシア・ゾーン」(Sesia zone) (文献12)、注7)、という「地塊」があり、後述しますが、「ダンブランシュ・ナップ」と関連のある「地塊」です。
これとは別に、「東部アルプス」には「オーストロアルパイン系」地質グループ分布域が広がっています。その西端から「ダンブランシュ・ナップ」の東端までは、約150kmの距離があります(図7)。こちらも後述しますが、「ダンブランシュ・ナップ」との関連が議論のまととなっている「地質グループ」です。
「ダンブランシュ・ナップ」(地塊)の地質構成は、地質図(文献2A)のテクトニックレイヤーなどによると、3つ〜4つの「ユニット」注3)に分けられます。ここでは、以下3つの「ユニット」に区分します。
1) 「アローラ・ユニット」(Arolla unit)
2) 「ヴァルペリーヌ・ユニット」(Valpelline unit)
3) 「モンマリー・ユニット」(Mont Mary nappes)
※ 注) 「モンマリー・ユニット」は、「上部」(upper)と「下部」(lower)の、2つの「サブユニット」に分けられることが多い。
このうち「アローラ・ユニット」と「ヴァルペリーヌ・ユニット」は、「マッターホルン」など、この5−2章で紹介した「ヴァリス山群」の主要な山の説明にも出てきたものです。
それぞれの「ユニット」を構成している実際の地質体は、やや細かい話なので、「補足説明2」の項にまとめました。いずれの「ユニット」も、古い「片麻岩」類や、深成岩由来の変成岩類、堆積岩由来の変成岩からなります。
(文献3B)や(文献5)では、「ダンブランシュ・ナップ」(地塊)と「セーシア・ゾーン」(地塊/地帯)の2つの「地塊」(地帯)は、かつてはひとつながりの「地質グループ」を形成していたものと考え、「サラシック・ドメイン」(“Salassic” Domain)と呼んでいます。
この2つの「地塊」は、現在は20kmほど離れた位置にありますが、(文献5)によると、元々は、両者はつながっていて、その途中の部分が褶曲により隆起し、その結果として浸食により失われたため、2つの「地塊」に分離した、と推定しています。
添付の図8に示す、推定地質断面図に、この2つの「地塊」の対応関係を示していますので、ご参照ください。
形状は、北東―南西方向に長軸をもつ紡錘形をしており、長軸方向の長さで約50km、幅は最大で20km程度です。
この「地塊」は、「ペニン系」に属する「地塊」群の上に、スラスト断層によって、のし上がった状態となっています。その厚みは、「マッターホルン」や「ヴァイスホルン」など、「ダンブランシュ・ナップ」の縁の部分では、せいぜい1km程度です。一方、(文献5)の推定地質断面図(Fig.6)からみると、中央部では最も厚くなっており、約5〜7kmの厚みがあるようです。
南東側には20kmほど離れたところ、「ヨーロッパアルプス」のイタリア側山麓部に、地質学的に類似しているとされる、「セーシア・ゾーン」(Sesia zone) (文献12)、注7)、という「地塊」があり、後述しますが、「ダンブランシュ・ナップ」と関連のある「地塊」です。
これとは別に、「東部アルプス」には「オーストロアルパイン系」地質グループ分布域が広がっています。その西端から「ダンブランシュ・ナップ」の東端までは、約150kmの距離があります(図7)。こちらも後述しますが、「ダンブランシュ・ナップ」との関連が議論のまととなっている「地質グループ」です。
「ダンブランシュ・ナップ」(地塊)の地質構成は、地質図(文献2A)のテクトニックレイヤーなどによると、3つ〜4つの「ユニット」注3)に分けられます。ここでは、以下3つの「ユニット」に区分します。
1) 「アローラ・ユニット」(Arolla unit)
2) 「ヴァルペリーヌ・ユニット」(Valpelline unit)
3) 「モンマリー・ユニット」(Mont Mary nappes)
※ 注) 「モンマリー・ユニット」は、「上部」(upper)と「下部」(lower)の、2つの「サブユニット」に分けられることが多い。
このうち「アローラ・ユニット」と「ヴァルペリーヌ・ユニット」は、「マッターホルン」など、この5−2章で紹介した「ヴァリス山群」の主要な山の説明にも出てきたものです。
それぞれの「ユニット」を構成している実際の地質体は、やや細かい話なので、「補足説明2」の項にまとめました。いずれの「ユニット」も、古い「片麻岩」類や、深成岩由来の変成岩類、堆積岩由来の変成岩からなります。
(文献3B)や(文献5)では、「ダンブランシュ・ナップ」(地塊)と「セーシア・ゾーン」(地塊/地帯)の2つの「地塊」(地帯)は、かつてはひとつながりの「地質グループ」を形成していたものと考え、「サラシック・ドメイン」(“Salassic” Domain)と呼んでいます。
この2つの「地塊」は、現在は20kmほど離れた位置にありますが、(文献5)によると、元々は、両者はつながっていて、その途中の部分が褶曲により隆起し、その結果として浸食により失われたため、2つの「地塊」に分離した、と推定しています。
添付の図8に示す、推定地質断面図に、この2つの「地塊」の対応関係を示していますので、ご参照ください。
(11節―B)項;「ダンブランシュ・ナップ」の帰属をめぐる仮説
「ダンブランシュ・ナップ」が、どの「地質グループ」(nappe system/Domain)に帰属しているのかについて、色んな文献を調べてみると、以下2つの「仮説」があるようです。
「仮説A」;(オーストロアルパイン系地質グループ)説
(文献1)、(文献8)、(文献11)が、この(仮説A)に基づいています。
(文献1)では、「ダンブランシュ・ナップ」についてあまり詳しくは説明されていませんが、「東部アルプス」に広く分布する「オーストロアルパイン系」(Austro-alpine)地質グループが、かつては「中部アルプス」の、この「ダンブランシュ・ナップ」地域まで分布しており、その後、隆起に伴う浸食により、両者の間の部分が失われ、結果として「ダンブランシュ・ナップ」は、孤立した「クリッペ」(klippe)となった、とする考え方です。
なお(文献11)では、「「ダンブランシュ・ナップ」は、ほとんどの研究者がオーストロアルパイン系のナップとみなしている」と、やや腰が引けた表現となっています。
この「仮説A]のイメージは、添付の図13のような感じです。
この仮説での問題点は、「東部アルプス」の「オーストロアルパイン系」地質グループでは、非変成、弱変成の地質体(例;「グレイワッケ」(Greywacke)、「クオーツ・フィライト」(quartz phyllite)、(いずれも、古生代の海成堆積物)が広く分布しているのに対し、「ダンブランシュ・ナップ」では、全ての地質体が、(かなり高度な)変成作用を受けて、片麻岩などの変成岩となっており、非変成、弱変成の地質体が存在していない、という明らかな違いです。
(文献1)、(文献8)、(文献11)、とも、この点について、明確な説明はありません。
(文献1)では、「ダンブランシュ・ナップ」についてあまり詳しくは説明されていませんが、「東部アルプス」に広く分布する「オーストロアルパイン系」(Austro-alpine)地質グループが、かつては「中部アルプス」の、この「ダンブランシュ・ナップ」地域まで分布しており、その後、隆起に伴う浸食により、両者の間の部分が失われ、結果として「ダンブランシュ・ナップ」は、孤立した「クリッペ」(klippe)となった、とする考え方です。
なお(文献11)では、「「ダンブランシュ・ナップ」は、ほとんどの研究者がオーストロアルパイン系のナップとみなしている」と、やや腰が引けた表現となっています。
この「仮説A]のイメージは、添付の図13のような感じです。
この仮説での問題点は、「東部アルプス」の「オーストロアルパイン系」地質グループでは、非変成、弱変成の地質体(例;「グレイワッケ」(Greywacke)、「クオーツ・フィライト」(quartz phyllite)、(いずれも、古生代の海成堆積物)が広く分布しているのに対し、「ダンブランシュ・ナップ」では、全ての地質体が、(かなり高度な)変成作用を受けて、片麻岩などの変成岩となっており、非変成、弱変成の地質体が存在していない、という明らかな違いです。
(文献1)、(文献8)、(文献11)、とも、この点について、明確な説明はありません。
「仮説B」;独立した「地質グループ」であるという説
(文献3B)、(文献5)が、この「仮説」に基づいています。
とくに、(文献5)は、この「仮説」に関して、様々な地質学的な証拠により、この「仮説」について詳しく検討した論文です。
またスイスのオンライン地質図(文献2A)のうち、テクトニックレイヤーそのものは、各「地塊」の帰属についての情報はありませんが、その解説書(文献3B)(2024年版)では、(前項でも述べたように)、「ダンブランシュ・ナップ」と、その南東側にある「地塊」(地帯)である「セーシア・ゾーン」を含めたものを、「サラシック・ドメイン」(Salassic Domain)注3)と呼んでいます。
詳細は省きますが、(文献3B)は基本的に、(文献5)と整合性のある内容です。
あくまでも私見ですが、上記2つの「仮説」を比較すると、「仮説B」に妥当性があると感じます。
とくに、(文献5)は、この「仮説」に関して、様々な地質学的な証拠により、この「仮説」について詳しく検討した論文です。
またスイスのオンライン地質図(文献2A)のうち、テクトニックレイヤーそのものは、各「地塊」の帰属についての情報はありませんが、その解説書(文献3B)(2024年版)では、(前項でも述べたように)、「ダンブランシュ・ナップ」と、その南東側にある「地塊」(地帯)である「セーシア・ゾーン」を含めたものを、「サラシック・ドメイン」(Salassic Domain)注3)と呼んでいます。
詳細は省きますが、(文献3B)は基本的に、(文献5)と整合性のある内容です。
あくまでも私見ですが、上記2つの「仮説」を比較すると、「仮説B」に妥当性があると感じます。
(11節―C項) 「サラシック・ドメイン」の地質学的進化
この項では、「ダンブランシュ・ナップ」と「セーシア・ゾーン」とを合わせた地質グループである、「サラシック・ドメイン」(Salassic Domain)の地質学的進化(tectonic evolution)について、(文献5)を元に説明します。
なお、前項で述べたように、この(文献5)の内容は、上記の「仮説B」に基づいたものです。
(文献5)ではかなり詳しく解説されており、時代ごとの、模式的な地質断面図も、計6つ掲載されていますが、説明が煩雑になるので、ここでは(文献5)の内容を要約して説明します。詳細を確認されたい方は、(文献5)を、直接ご覧ください。
また添付の図9〜図12もご参照ください。これらは、(文献5)からの引用です。
なお図9〜図12では、説明の都合上、「サラシック・ドメイン」のことを、「セーシア・ダンブランシュ・ナップ」(S-DB)としています。
〜〜〜〜〜〜
(1) 「ジュラ紀」後期;(約160〜140Ma)、(図9)
「ジュラ紀」は、超大陸「パンゲア」の分裂が進んだ時代であり、(文献1)によると、「ヨーロッパ大陸ブロック」と「アドリア大陸ブロック」との間に、複数のリフトゾーンが形成され、その結果「ペニン系地質区」(the Penninic realm)が、明確に形成された時代です。
(文献1)によると、「ペニン系地質区」は、北西側から順に、「ヴァリストラフ」(Valais Trough)(不完全なリフトゾーン)、「ピエモンテ海」(Piemont Ocean)(活動的なリフトゾーンを持ち、そこから海洋性プレートが生まれたゾーン) 注6)、及び上記2つのリフトゾーンに挟まれた大陸性地殻を有する「ブリアンソン・ライズ」(Brianson Rise)という地塊の、3つのサブ「地質区」からなります。
その南側は、「アドリア大陸ブロック」のマージン部(Adriatic continental margin)です。(文献1)では、このゾーンは、「オーストロアルパイン系」地質グループ(the Austro-alpine)と、「サウスアルパイン系」地質グループ(the South-alpine)の2つに分化したと考えています(仮説A)。
一方、(文献5)では、「アドリア大陸ブロック」のマージン部(Adriatic continental margin)は、上記の2つだけではなく、「サラシック・ドメイン」(the Salassic domain)を加えた、3つの「地質グループ」に分かれた、と考えます(仮説B)。
「サラシック・ドメイン」は、「アドリア大陸ブロック」のマージン部が、伸張場となって地殻が薄くなったことで、地理的には「アドリア大陸ブロック」から見て、北西側に位置し、やや独立した「地塊」となりました。
この様子は、添付の図9をご参照ください。これは、「ジュラ紀」後期(約160〜140Ma)における、模式的な推定地質断面図です。
また、時代は明確ではありませんが、おそらく「白亜紀」前期に、「アドリア大陸ブロック」と、離れ小島状となった「サラシック・ドメイン」との間に、「沈み込み帯」(subduction zone)が形成された、と(文献5)では想定しています。
(文献1)など(仮説A)では、「アドリア大陸ブロック」と「ピエモンテ海」との境界部に、「沈み込み帯」が形成された、と想定しますが、(文献5)(仮説B)では、「沈み込み帯」の形成された場所が違う、という点が大きな違いです。
(2) 「白亜紀」後期(85〜65Ma)、(図10)
(文献5)では、この時代には、「アドリア大陸ブロック」マージン部(おそらくは、「サウスアルパイン系」地質グループ分布域)の北西側に「沈み込み帯」(subduction zone)が形成され、まず「サラシック・ドメイン」(地塊)が、その沈み込み帯に飲み込まれて、その大部分が「アドリア大陸ブロック」の下へと沈み込んだ、と推定しています。
その結果、「サラシック・ドメイン」を構成している岩体は、最大で「エクロジャイト相」に相当する高圧型変成作用(圧力で約2GPa、深さ換算で50km以上)を受けました。実際にも「セーシア・ゾーン」の一部の岩体(”EMU”)は、「エクロジャイト相」に相当する変成レベルに達しています。
この様子は、添付の図10をご参照ください。この図は「白亜紀」後期(約85〜65Ma)における、模式的な推定地質断面図です。
(3)「古第三紀」(「暁新世」、「始新世」、「漸新世」)(約65〜30Ma)、(図11)
(文献5)によると、「白亜紀」後期の「サラシック・ドメイン」の沈み込みに続いて、「白亜紀」末から「古第三紀」の「暁新世」、「始新世」にかけて、「ピエモンテ海」(the Piemont Ocean)(海洋性プレート)、続いて「ブリアンソン・ライズ」(Brianson rise)(地塊)が、「アドリア大陸ブロック」の下へと順々に、「沈み込み帯」より沈み込んでいきました。
「ブリアンソン・ライズ」地塊が沈み込んだ「古第三紀・始新世」頃には、沈み込んだ各地塊の一部は、一転して上昇傾向となり、「サラシック・ドメイン」は、一部が地表まで上昇しました。
この様子は、添付の図11をご参照ください。これは「古第三紀・漸新世」(約35〜30Ma)における、模式的な推定地質断面図です。
(4) 「新第三紀・中新世」以降(約25Ma〜)、(図12)
(文献5)によると、「古第三紀・漸新世」末から「新第三紀・中新世」にかけての時代、「サラシック・ドメイン」の中間部分を褶曲軸として、「背斜構造」タイプの褶曲構造(上に凸の褶曲構造)が生じた、と推定しています。その結果、この褶曲軸付近は大きく隆起したことになります。
その結果、この隆起が著しかった中間部分は、隆起に伴う浸食作用を受け、「サラシック・ドメイン」に属する地質体は失われ、構造的下位にあった、「ペニン系」の地質体が地表に現れました。
また、2か所に残存したブロックのうち、北西側が「ダンブランシュ・ナップ」となり、南東側が、「セーシア・ゾーン」となった、と推定しています。
この様子は、添付の図12をご参照ください。これは「新第三紀・中新世」初頭(約25〜20Ma)における、模式的な、推定地質断面図です。
また、現世における、「ダンブランシュ・ナップ」と「セーシア・ゾーン」を含めた、推定地質断面図である、図8が、図12の続きになります。
なお、前項で述べたように、この(文献5)の内容は、上記の「仮説B」に基づいたものです。
(文献5)ではかなり詳しく解説されており、時代ごとの、模式的な地質断面図も、計6つ掲載されていますが、説明が煩雑になるので、ここでは(文献5)の内容を要約して説明します。詳細を確認されたい方は、(文献5)を、直接ご覧ください。
また添付の図9〜図12もご参照ください。これらは、(文献5)からの引用です。
なお図9〜図12では、説明の都合上、「サラシック・ドメイン」のことを、「セーシア・ダンブランシュ・ナップ」(S-DB)としています。
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(1) 「ジュラ紀」後期;(約160〜140Ma)、(図9)
「ジュラ紀」は、超大陸「パンゲア」の分裂が進んだ時代であり、(文献1)によると、「ヨーロッパ大陸ブロック」と「アドリア大陸ブロック」との間に、複数のリフトゾーンが形成され、その結果「ペニン系地質区」(the Penninic realm)が、明確に形成された時代です。
(文献1)によると、「ペニン系地質区」は、北西側から順に、「ヴァリストラフ」(Valais Trough)(不完全なリフトゾーン)、「ピエモンテ海」(Piemont Ocean)(活動的なリフトゾーンを持ち、そこから海洋性プレートが生まれたゾーン) 注6)、及び上記2つのリフトゾーンに挟まれた大陸性地殻を有する「ブリアンソン・ライズ」(Brianson Rise)という地塊の、3つのサブ「地質区」からなります。
その南側は、「アドリア大陸ブロック」のマージン部(Adriatic continental margin)です。(文献1)では、このゾーンは、「オーストロアルパイン系」地質グループ(the Austro-alpine)と、「サウスアルパイン系」地質グループ(the South-alpine)の2つに分化したと考えています(仮説A)。
一方、(文献5)では、「アドリア大陸ブロック」のマージン部(Adriatic continental margin)は、上記の2つだけではなく、「サラシック・ドメイン」(the Salassic domain)を加えた、3つの「地質グループ」に分かれた、と考えます(仮説B)。
「サラシック・ドメイン」は、「アドリア大陸ブロック」のマージン部が、伸張場となって地殻が薄くなったことで、地理的には「アドリア大陸ブロック」から見て、北西側に位置し、やや独立した「地塊」となりました。
この様子は、添付の図9をご参照ください。これは、「ジュラ紀」後期(約160〜140Ma)における、模式的な推定地質断面図です。
また、時代は明確ではありませんが、おそらく「白亜紀」前期に、「アドリア大陸ブロック」と、離れ小島状となった「サラシック・ドメイン」との間に、「沈み込み帯」(subduction zone)が形成された、と(文献5)では想定しています。
(文献1)など(仮説A)では、「アドリア大陸ブロック」と「ピエモンテ海」との境界部に、「沈み込み帯」が形成された、と想定しますが、(文献5)(仮説B)では、「沈み込み帯」の形成された場所が違う、という点が大きな違いです。
(2) 「白亜紀」後期(85〜65Ma)、(図10)
(文献5)では、この時代には、「アドリア大陸ブロック」マージン部(おそらくは、「サウスアルパイン系」地質グループ分布域)の北西側に「沈み込み帯」(subduction zone)が形成され、まず「サラシック・ドメイン」(地塊)が、その沈み込み帯に飲み込まれて、その大部分が「アドリア大陸ブロック」の下へと沈み込んだ、と推定しています。
その結果、「サラシック・ドメイン」を構成している岩体は、最大で「エクロジャイト相」に相当する高圧型変成作用(圧力で約2GPa、深さ換算で50km以上)を受けました。実際にも「セーシア・ゾーン」の一部の岩体(”EMU”)は、「エクロジャイト相」に相当する変成レベルに達しています。
この様子は、添付の図10をご参照ください。この図は「白亜紀」後期(約85〜65Ma)における、模式的な推定地質断面図です。
(3)「古第三紀」(「暁新世」、「始新世」、「漸新世」)(約65〜30Ma)、(図11)
(文献5)によると、「白亜紀」後期の「サラシック・ドメイン」の沈み込みに続いて、「白亜紀」末から「古第三紀」の「暁新世」、「始新世」にかけて、「ピエモンテ海」(the Piemont Ocean)(海洋性プレート)、続いて「ブリアンソン・ライズ」(Brianson rise)(地塊)が、「アドリア大陸ブロック」の下へと順々に、「沈み込み帯」より沈み込んでいきました。
「ブリアンソン・ライズ」地塊が沈み込んだ「古第三紀・始新世」頃には、沈み込んだ各地塊の一部は、一転して上昇傾向となり、「サラシック・ドメイン」は、一部が地表まで上昇しました。
この様子は、添付の図11をご参照ください。これは「古第三紀・漸新世」(約35〜30Ma)における、模式的な推定地質断面図です。
(4) 「新第三紀・中新世」以降(約25Ma〜)、(図12)
(文献5)によると、「古第三紀・漸新世」末から「新第三紀・中新世」にかけての時代、「サラシック・ドメイン」の中間部分を褶曲軸として、「背斜構造」タイプの褶曲構造(上に凸の褶曲構造)が生じた、と推定しています。その結果、この褶曲軸付近は大きく隆起したことになります。
その結果、この隆起が著しかった中間部分は、隆起に伴う浸食作用を受け、「サラシック・ドメイン」に属する地質体は失われ、構造的下位にあった、「ペニン系」の地質体が地表に現れました。
また、2か所に残存したブロックのうち、北西側が「ダンブランシュ・ナップ」となり、南東側が、「セーシア・ゾーン」となった、と推定しています。
この様子は、添付の図12をご参照ください。これは「新第三紀・中新世」初頭(約25〜20Ma)における、模式的な、推定地質断面図です。
また、現世における、「ダンブランシュ・ナップ」と「セーシア・ゾーン」を含めた、推定地質断面図である、図8が、図12の続きになります。
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【補足説明の項】
【補足説明 1】; 「スイス南西部」地域の、各「地塊」、「地帯」について
5−2章―(9)節の本文では、簡単に説明しましたが、「スイス南西部」に分布する、各「地塊」(地帯)について、(文献3B)、(文献4)などを元に、少し詳しめに説明します。
1−A項) 「ツァテ・ナップ」(Tsaté nappe)
(文献3B)、(文献4)などによると、この「地塊」は、中生代に存在した「ピエモンテ海」(the Piemont Ocean)注6)が、「アルプス造山運動」に関連して沈み込んだ際に、沈み込み帯付近に形成された、「付加体」(accuratory wedge / accuretory prism)由来の「地塊」、と解釈されています。
また、この「地塊」は、他の「ペニン系」と同じく、地下深部に沈み込んだ際に高圧型変成作用を受けて、その後、地上に上昇してきた、という地史を持っています。
具体的な地質体としては、「石灰質片岩」(calc-schist)、「シェール」(black shales)、「(変成)チャート」(meta-chert)、「結晶質石灰岩(大理石)」(marble)といった変成・堆積岩類(meta-sediments)からなり、一部には「ピエモンテ海」の海洋地殻由来の「オフィオライト岩体」(ophiolite)を含んでいます。
また、この「地塊」は、他の「ペニン系」と同じく、地下深部に沈み込んだ際に高圧型変成作用を受けて、その後、地上に上昇してきた、という地史を持っています。
具体的な地質体としては、「石灰質片岩」(calc-schist)、「シェール」(black shales)、「(変成)チャート」(meta-chert)、「結晶質石灰岩(大理石)」(marble)といった変成・堆積岩類(meta-sediments)からなり、一部には「ピエモンテ海」の海洋地殻由来の「オフィオライト岩体」(ophiolite)を含んでいます。
1−B項) 「モンフォール・ナップ」(Mont Fort nappe)、及び 「シヴィエ・ミシャベル・ナップ」(Sivies Mischabll nappe)
(文献3B)、(文献4)、(文献6)などによると、この2つの「地塊」は、「ブリアンソン・ライズ系」(=中部ペニン系)に属し、中生代に「ペニン系地質区」(Penninic realm)に存在した「ブリアンソン・ライズ」(Briancon Rise)と呼ばれる、大陸性地殻を持った半島状の「地塊」(「地質区」)がその由来です。
従って、この2つの「地塊」の地史も、具体的な地質も類似しています。
また図6に示すように、「シヴィエ・ミシャベル・ナップ」の構造的上位に、「モンフォール・ナップ」が乗っているような状態となっている、と推定されています。
この2つの「地塊」の基本構成としては、複数回の変成作用を受けたと推定される大陸性の「結晶質基盤岩体」(crystalline basement)と、この地塊が海洋域にあった「ペルム紀」〜「白亜紀」の海成堆積物からなる被覆層(cover sedinents)の2グループの地質体からなります。
この2つの「地塊」は地質構成が類似している為、かつては、まとめて「グラン・サンベルナール・ナップ」(Grand St. Bernard nappe)と呼ばれていました(文献4)。
この2つの「地塊」も、他の「ペニン系」地質グループと同時に、「沈み込み帯」より地下深部に沈み込んだ際に、高圧型変成作用を受けています。
地質図(文献2A)より、「スイス南西部」における、上記2つの「地塊」の具体的な地質構成を見てみると、「片麻岩」類(Gneises(独))、「結晶片岩類」(Schifers(独))、「プラシナイト」(prasinit(独))、などが分布しています。
なお「モンフォール・ナップ」については、(文献6)に、詳しい説明があります。
従って、この2つの「地塊」の地史も、具体的な地質も類似しています。
また図6に示すように、「シヴィエ・ミシャベル・ナップ」の構造的上位に、「モンフォール・ナップ」が乗っているような状態となっている、と推定されています。
この2つの「地塊」の基本構成としては、複数回の変成作用を受けたと推定される大陸性の「結晶質基盤岩体」(crystalline basement)と、この地塊が海洋域にあった「ペルム紀」〜「白亜紀」の海成堆積物からなる被覆層(cover sedinents)の2グループの地質体からなります。
この2つの「地塊」は地質構成が類似している為、かつては、まとめて「グラン・サンベルナール・ナップ」(Grand St. Bernard nappe)と呼ばれていました(文献4)。
この2つの「地塊」も、他の「ペニン系」地質グループと同時に、「沈み込み帯」より地下深部に沈み込んだ際に、高圧型変成作用を受けています。
地質図(文献2A)より、「スイス南西部」における、上記2つの「地塊」の具体的な地質構成を見てみると、「片麻岩」類(Gneises(独))、「結晶片岩類」(Schifers(独))、「プラシナイト」(prasinit(独))、などが分布しています。
なお「モンフォール・ナップ」については、(文献6)に、詳しい説明があります。
1−C項) 「ゾーン・ウーイエ」(Zone Houillère)
(文献3B)、(文献4)によると、この「地塊」(「地帯」)は、「ブリアンソン・ライズ系」(=中部ペニン系)に属してはいますが、「モンフォール・ナップ」、「シヴィエ・ミシャベル・ナップ」のように、片麻岩類を主体とする「大陸性地塊」ではなく、主に「石炭紀」から「トリアス紀」にかけての堆積物由来の「地帯」です。
具体的な地質体としては、(文献3B)によると、「黒色シェール」(black shales);
「ペルム紀」)、「礫岩」(conglomerates);「トリアス紀」)、「砂岩」(sandstone);
「トリアス紀」)、「石こう」(gypsum);「トリアス紀」)、「クオォーツアイト」(quartzite);時代不詳)などです。
これらは、実際には、変成作用を受けて、変成堆積岩類(meta-sediments)となっていると思われます。
(文献4)では他に、「雲母片岩」類(mica-schists)、「グラファイト質片岩」(graphitic schist)が挙げられています。また一部には「角閃岩」(amphibolite)の貫入岩体がある、とも記載されています。
この「地塊」(地帯)で特徴的なものとして「石炭」(”coal”;「石炭紀」)の存在が挙げられます(文献3B)、(文献4)。
「ウーイエ」(Houillère )とは、フランス語ですが、手持ちの日仏辞書によると、「石炭の」、「石炭を含む」という意味で、実際に過去にはこの地帯から石炭の採掘もおこなわれたそうです。
これらの地質体は、他の「ペニン系」と同様に、「アルプス造山運動」の過程で地下深部に沈み込んだ際、高圧型変成作用を受けています。ただし、(文献3B)、(文献4)では、変成作用のレベル(「変成相」)については記載がなく、不明です。
地質図(文献2A)で「スイス南西部」における具体的な地質を確認すると、「礫岩」(Konglomerat (独)、「ペルム紀」)、「石英片岩」(Quarz-schiefer (独)、「ペルム紀」)、「砂質片岩」(Sandstein-Schiefer (独))、(石炭紀)、「ドロマイト」(Dolomistein (独)、「トリアス紀」)などが分布しているのが確認されます。
具体的な地質体としては、(文献3B)によると、「黒色シェール」(black shales);
「ペルム紀」)、「礫岩」(conglomerates);「トリアス紀」)、「砂岩」(sandstone);
「トリアス紀」)、「石こう」(gypsum);「トリアス紀」)、「クオォーツアイト」(quartzite);時代不詳)などです。
これらは、実際には、変成作用を受けて、変成堆積岩類(meta-sediments)となっていると思われます。
(文献4)では他に、「雲母片岩」類(mica-schists)、「グラファイト質片岩」(graphitic schist)が挙げられています。また一部には「角閃岩」(amphibolite)の貫入岩体がある、とも記載されています。
この「地塊」(地帯)で特徴的なものとして「石炭」(”coal”;「石炭紀」)の存在が挙げられます(文献3B)、(文献4)。
「ウーイエ」(Houillère )とは、フランス語ですが、手持ちの日仏辞書によると、「石炭の」、「石炭を含む」という意味で、実際に過去にはこの地帯から石炭の採掘もおこなわれたそうです。
これらの地質体は、他の「ペニン系」と同様に、「アルプス造山運動」の過程で地下深部に沈み込んだ際、高圧型変成作用を受けています。ただし、(文献3B)、(文献4)では、変成作用のレベル(「変成相」)については記載がなく、不明です。
地質図(文献2A)で「スイス南西部」における具体的な地質を確認すると、「礫岩」(Konglomerat (独)、「ペルム紀」)、「石英片岩」(Quarz-schiefer (独)、「ペルム紀」)、「砂質片岩」(Sandstein-Schiefer (独))、(石炭紀)、「ドロマイト」(Dolomistein (独)、「トリアス紀」)などが分布しているのが確認されます。
1−D)項 「シオン・クールマイヨール・ゾーン(ナップ)」(Sion-Courmayeur-Zone/nappe)
(文献3B)、(文献4)によると、この「地塊」(地帯)は、「ペニン系」地質グループのうち、「ヴァリストラフ系」(=下部ペニン系)に属している「地塊」(地帯)です。
「ヴァリストラフ」(Valais Trough)とは、この連載の第2部でも解説しましたが、古生代末の「ペルム紀」に形成された「超大陸・パンゲア」(super-continent Pangea)が、「トリアス紀」〜「ジュラ紀」にかけ、分裂解体期に入り、その際に、「アルプス地域」(the “Alpine Domain”)に相当する場所に形成された、2つのリフトゾーンのうちの一つです。
もう一つのリフトゾーンは海洋底拡大が順調で、「ピエモンテ海」の形成につながりましたが、「ヴァリストラフ」はリフティング活動が不活発で、深海渓谷状のままに留まったと考えられている「地質区」です。
その「ヴァリストラフ系」(=下部ペニン系)に属する「シオン・クールマイヨール・ゾーン」は、「ヴァリストラフ」という深海渓谷に堆積した、フリッシュ性(flysch-type)(=タービダイト性)の堆積物が主な構成要素です。具体的には、「砂岩」、「泥岩」、「石灰岩」などです。
変成作用を受ける前の原岩(堆積物)の形成年代は、(文献4)によると、「白亜紀」が多いようですが、それ以外に、「石炭紀」、「ペルム紀」、「トリアス紀」、「ジュラ紀」のものも含まれています。
これらの地質体は、他の「ペニン系」地質グループと同様に、「アルプス造山運動」に関連し、地下深部に沈み込んだ際、高圧型変成作用を受けて、変成・堆積岩類(meta-sediments)となっています。
ただし、(文献3B)、(文献4)では、具体的な変成レベル(変成相)は書かれておらず不明です。
地質図(文献2A)で、「スイス南西部」地域における具体的な地質体を見てみると、「石灰岩」(Kalkstein (独))、「雲母片岩」(Glimmer-Schiefer(独))などが分布しています。
また(文献3B)、(文献4)によると、少量ですが「オフィオライト岩体」(ophiolite)も含まれており、これがかつての「リフトゾーン」であったことの重要な証拠となっています。
「ヴァリストラフ」(Valais Trough)とは、この連載の第2部でも解説しましたが、古生代末の「ペルム紀」に形成された「超大陸・パンゲア」(super-continent Pangea)が、「トリアス紀」〜「ジュラ紀」にかけ、分裂解体期に入り、その際に、「アルプス地域」(the “Alpine Domain”)に相当する場所に形成された、2つのリフトゾーンのうちの一つです。
もう一つのリフトゾーンは海洋底拡大が順調で、「ピエモンテ海」の形成につながりましたが、「ヴァリストラフ」はリフティング活動が不活発で、深海渓谷状のままに留まったと考えられている「地質区」です。
その「ヴァリストラフ系」(=下部ペニン系)に属する「シオン・クールマイヨール・ゾーン」は、「ヴァリストラフ」という深海渓谷に堆積した、フリッシュ性(flysch-type)(=タービダイト性)の堆積物が主な構成要素です。具体的には、「砂岩」、「泥岩」、「石灰岩」などです。
変成作用を受ける前の原岩(堆積物)の形成年代は、(文献4)によると、「白亜紀」が多いようですが、それ以外に、「石炭紀」、「ペルム紀」、「トリアス紀」、「ジュラ紀」のものも含まれています。
これらの地質体は、他の「ペニン系」地質グループと同様に、「アルプス造山運動」に関連し、地下深部に沈み込んだ際、高圧型変成作用を受けて、変成・堆積岩類(meta-sediments)となっています。
ただし、(文献3B)、(文献4)では、具体的な変成レベル(変成相)は書かれておらず不明です。
地質図(文献2A)で、「スイス南西部」地域における具体的な地質体を見てみると、「石灰岩」(Kalkstein (独))、「雲母片岩」(Glimmer-Schiefer(独))などが分布しています。
また(文献3B)、(文献4)によると、少量ですが「オフィオライト岩体」(ophiolite)も含まれており、これがかつての「リフトゾーン」であったことの重要な証拠となっています。
【補足説明 2】 「ダンブランシュ・ナップ」と「セーシア・ゾーン」の地質構成と変成履歴
2−A)項「ダンブランシュ・ナップ」の地質構成と変成履歴
「ダンブランシュ・ナップ」(Dant Blanche nappe)は、本文の(11節−A項)にも書いたように、「アローラ・ユニット」、「ヴァルペリーヌ・ユニット」、「モンマリー・ユニット」の3つの「ユニット」に分けられます。
「モンマリー・ユニット」は、さらに「上部ユニット」と「下部ユニット」という2つのサブユニットに分けられます。
これら「ダンブランシュ・ナップ」を構成する各「ユニット」ごとに、地質図(文献2A)の地質図レイヤー、および(文献3B)、(文献4)、(文献5)によって、「ダンブランシュ・ナップ」の地質構成及び変成作用の履歴を知らべました。
なお文献によって、多少、内容が異なります。
〜〜〜〜〜〜
A−1) 「アローラ・ユニット」;(Arolla unit)
a) 地質構成;
・「花崗岩質の正片麻岩」(変成花崗岩類);(meta-granitoids)、(“Arolla ortho-gneiss“);原岩としての花崗岩類の形成年代は、「ペルム紀」(文献3B)、(文献4)、(文献2A)
・ 「変成ハンレイ岩」(角閃岩)、(meta-gabbro)、(“Mont Collon gabbro”);原岩としてのハンレイ岩の形成年代は、「ペルム紀」(文献3B)、(文献4)、(文献2A) 。
b) 変成履歴;「白亜紀」に、「青色片岩相」相当の変成作用を受けている。その後、「後退変成作用」によって「緑色片岩相」相当の上書き(overprint)を受けている(文献5)。
A−2) 「ヴァルペリーヌ・ユニット」(Valpelline unit)
a) 地質構成;
・ 「パラ片麻岩」類(=堆積岩由来の片麻岩)(para-gneisses)、
(文献3B)、(文献4);形成年代は、原生代〜古生代(文献2A)
・ 「(変成)石灰岩類」(carbonate)(文献3B)、(文献4)
;形成年代は、原生代〜古生代(文献2A)
・ 「(変成)ハンレイ岩」(mafic rocks);形成年代は原生代〜古生代)(文献2A)
b) 変成履歴;「アルプス造山運動」以前の時期(pre-Alpine)((文献5)によると「ペルム紀」)に、「角閃岩相」〜「グラニュライト相」相当の、高温型変成作用を受けている。その後、「白亜紀」に、局所的には、「緑色片岩相」相当の上書き(overprint)を受けている(文献3B)、(文献4)、(文献5)。
A−3)「モンマリー・ユニット」;(Mont Mary nappes)
※ 「モンマリー・ユニット」は、「上部サブユニット」(upper unit)と「下部サブユニット」(lower unit)に細分化され、構成している岩石が少し異なる。
(文献3B)によると「上部サブユニット」は「ヴァルペリーヌ・ユニット」に地質構成は類似している、とある。
以下は「下部サブユニット」の地質構成。
a) 地質構成;
・ 「パラ片麻岩」 (para-gneisses)、(=堆積岩由来の片麻岩)、大部分を占める;形成年代は不明。(文献3B)、(文献4)
・ 「正片麻岩」(ortho-gneisses)、(=花崗岩類由来の片麻岩)、少量;形成年代は不明。(文献3B)、(文献4)
・ 「角閃岩」(amphibolites)、少量;形成年代は不明。
b) 変成履歴;「アルプス造山運動」以前の時期(pre-Alpine)に、「角閃岩相」相当の高温型変成作用を受けている。(文献3B)、(文献4)
「モンマリー・ユニット」は、さらに「上部ユニット」と「下部ユニット」という2つのサブユニットに分けられます。
これら「ダンブランシュ・ナップ」を構成する各「ユニット」ごとに、地質図(文献2A)の地質図レイヤー、および(文献3B)、(文献4)、(文献5)によって、「ダンブランシュ・ナップ」の地質構成及び変成作用の履歴を知らべました。
なお文献によって、多少、内容が異なります。
〜〜〜〜〜〜
A−1) 「アローラ・ユニット」;(Arolla unit)
a) 地質構成;
・「花崗岩質の正片麻岩」(変成花崗岩類);(meta-granitoids)、(“Arolla ortho-gneiss“);原岩としての花崗岩類の形成年代は、「ペルム紀」(文献3B)、(文献4)、(文献2A)
・ 「変成ハンレイ岩」(角閃岩)、(meta-gabbro)、(“Mont Collon gabbro”);原岩としてのハンレイ岩の形成年代は、「ペルム紀」(文献3B)、(文献4)、(文献2A) 。
b) 変成履歴;「白亜紀」に、「青色片岩相」相当の変成作用を受けている。その後、「後退変成作用」によって「緑色片岩相」相当の上書き(overprint)を受けている(文献5)。
A−2) 「ヴァルペリーヌ・ユニット」(Valpelline unit)
a) 地質構成;
・ 「パラ片麻岩」類(=堆積岩由来の片麻岩)(para-gneisses)、
(文献3B)、(文献4);形成年代は、原生代〜古生代(文献2A)
・ 「(変成)石灰岩類」(carbonate)(文献3B)、(文献4)
;形成年代は、原生代〜古生代(文献2A)
・ 「(変成)ハンレイ岩」(mafic rocks);形成年代は原生代〜古生代)(文献2A)
b) 変成履歴;「アルプス造山運動」以前の時期(pre-Alpine)((文献5)によると「ペルム紀」)に、「角閃岩相」〜「グラニュライト相」相当の、高温型変成作用を受けている。その後、「白亜紀」に、局所的には、「緑色片岩相」相当の上書き(overprint)を受けている(文献3B)、(文献4)、(文献5)。
A−3)「モンマリー・ユニット」;(Mont Mary nappes)
※ 「モンマリー・ユニット」は、「上部サブユニット」(upper unit)と「下部サブユニット」(lower unit)に細分化され、構成している岩石が少し異なる。
(文献3B)によると「上部サブユニット」は「ヴァルペリーヌ・ユニット」に地質構成は類似している、とある。
以下は「下部サブユニット」の地質構成。
a) 地質構成;
・ 「パラ片麻岩」 (para-gneisses)、(=堆積岩由来の片麻岩)、大部分を占める;形成年代は不明。(文献3B)、(文献4)
・ 「正片麻岩」(ortho-gneisses)、(=花崗岩類由来の片麻岩)、少量;形成年代は不明。(文献3B)、(文献4)
・ 「角閃岩」(amphibolites)、少量;形成年代は不明。
b) 変成履歴;「アルプス造山運動」以前の時期(pre-Alpine)に、「角閃岩相」相当の高温型変成作用を受けている。(文献3B)、(文献4)
2−B)項 「セーシア・ゾーン」の地質構成と変成履歴
「セーシア・ゾーン」(Sesia zone)は、各種文献によると、[GMU]ユニット、[EMU]ユニット、[2DK]ユニット、という3つのユニットに分割されます。
(文献3B)、(文献4)、(文献5)、(文献7)によると、各「ユニット」は以下のような地質構成、変成履歴を持っています。なお「セーシア・ゾーン」に関しては、文献による説明内容の違いが大きい感じです。
〜〜〜〜
Bー1) 「片麻岩・ミニューティ・ユニット」;(”Gneiss Minuti Unit”;”GMU”)
※ (文献5)、(文献7)では、(“Gneiss Minuti Complex”;”GMC” と呼んでいる)
a) 地質構成;
・ 主に「正片麻岩」(ortho-gneisses)、原岩は、「ペルム紀」の花崗岩類(文献3B)、(文献4)。なお、(“minuti”)とは、「小粒状」を意味するらしい。
・ その他、「苦鉄質な貫入岩体」(mafic layers)、(時代不詳)を少量含む。(文献3B)、(文献4)
b) 変成履歴;古い時代に高圧型変成作用を受けている。その後「白亜紀」に、「緑色片岩相」相当の上書き変成作用(overprint)を受けており、古い時代の変成作用は不明瞭になっている(文献3B)、(文献4)、(文献5)
B―2) 「エクロジャイト・雲母片岩・ユニット」(”Eclogite Mica-schist Unit“;”EMU”)
※ (文献5)、(文献7)では、(Eclogite Mica-schist Complex” ; “EMC” と呼んでいる)
a) 地質構成;
(文献5)、(文献7)によると、主に「雲母片岩」で、少量の「エクロジャイト」、「正片麻岩」を含む。なお(文献3B)では、主要構成岩石を「パラ片麻岩」としている。
b) 変成履歴;「アルプス造山運動」に関連する変成作用の変成相は、大部分が「エクロジャイト相」、後退変成作用では「緑色片岩相」だが、その影響は限定的で、「エクロジャイト相」の状態が良く残っている(文献3B)、(文献5)。
B−3) 「第2 閃緑岩・キンツィジャイト岩体」(Second Diolitic Kinzigite ;”2DK”)
a) 岩石構成;
(文献3B)によると、「片麻岩類」(Gneis(独))、「変成・玄武岩類」
(meta-basite(独) )、 「結晶質石灰岩(大理石)」(Marmor(独))からなる。注8)
b) 変成履歴;「ペルム紀」に、「角閃岩相」〜「グラニュライト相」に相当する高温型変成作用を受けている。「アルプス造山運動」に関連して、「青色片岩相」相当の高圧型変成作用を受けている(文献3B)、(文献5)。
(文献3B)、(文献4)、(文献5)、(文献7)によると、各「ユニット」は以下のような地質構成、変成履歴を持っています。なお「セーシア・ゾーン」に関しては、文献による説明内容の違いが大きい感じです。
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Bー1) 「片麻岩・ミニューティ・ユニット」;(”Gneiss Minuti Unit”;”GMU”)
※ (文献5)、(文献7)では、(“Gneiss Minuti Complex”;”GMC” と呼んでいる)
a) 地質構成;
・ 主に「正片麻岩」(ortho-gneisses)、原岩は、「ペルム紀」の花崗岩類(文献3B)、(文献4)。なお、(“minuti”)とは、「小粒状」を意味するらしい。
・ その他、「苦鉄質な貫入岩体」(mafic layers)、(時代不詳)を少量含む。(文献3B)、(文献4)
b) 変成履歴;古い時代に高圧型変成作用を受けている。その後「白亜紀」に、「緑色片岩相」相当の上書き変成作用(overprint)を受けており、古い時代の変成作用は不明瞭になっている(文献3B)、(文献4)、(文献5)
B―2) 「エクロジャイト・雲母片岩・ユニット」(”Eclogite Mica-schist Unit“;”EMU”)
※ (文献5)、(文献7)では、(Eclogite Mica-schist Complex” ; “EMC” と呼んでいる)
a) 地質構成;
(文献5)、(文献7)によると、主に「雲母片岩」で、少量の「エクロジャイト」、「正片麻岩」を含む。なお(文献3B)では、主要構成岩石を「パラ片麻岩」としている。
b) 変成履歴;「アルプス造山運動」に関連する変成作用の変成相は、大部分が「エクロジャイト相」、後退変成作用では「緑色片岩相」だが、その影響は限定的で、「エクロジャイト相」の状態が良く残っている(文献3B)、(文献5)。
B−3) 「第2 閃緑岩・キンツィジャイト岩体」(Second Diolitic Kinzigite ;”2DK”)
a) 岩石構成;
(文献3B)によると、「片麻岩類」(Gneis(独))、「変成・玄武岩類」
(meta-basite(独) )、 「結晶質石灰岩(大理石)」(Marmor(独))からなる。注8)
b) 変成履歴;「ペルム紀」に、「角閃岩相」〜「グラニュライト相」に相当する高温型変成作用を受けている。「アルプス造山運動」に関連して、「青色片岩相」相当の高圧型変成作用を受けている(文献3B)、(文献5)。
【注釈の項】
注1) 山々の標高について;
この章で記載した山々などの標高は、スイスのオンライン地図(文献2A)のうち、地形図レイヤーの値を採用し、記載しています。文献、ガイドブックなどによっては、数m程度違う値となっている場合があります。
注2) スイスのオンライン地質図について;
スイスのオンライン地質図は、パソコン等で見る「ウエブ版」(文献2A)と、スマホのアプリとなっている「アプリ版」(文献2B)(アプリ名;“Swiss topo”)とがあります。
どちらも、(Swiss topo)という機関がデータ元ですが、「ウエブ版」(文献2A)は、説明が詳しく、解像度も高い一方で、ポップアップの地質解説がドイツ語なのでちょっと解りにくい、という短所もあります。
一方「アプリ版」(文献2B)は、地質解説が英語で解りやすいのですが、解像度が低く、かつ、場所が違っていても似たような地質体をグループ化して説明している点は、短所だと思います。また細かく見ると、地質説明に、けっこう違いがあります。
この章では、主に、地質図(文献2A)を参照し、(文献2B)は参考程度としました。
それぞれの地質図の使い方、見方などは、「参考文献」の項をご覧ください
注3) 「地塊」、「地帯」という用語について
「ヨーロッパアルプスの地質学」において、テクトニック地質図や、(文献1)をはじめとした海外の各種文献では、類似した地質学的経歴をもつと考えられ、岩石の組み合わせも類似しているグループを、(nappe)(英)、(Decke)(独)、(zone)(英)、(独)、(仏)などと呼んでいますが、日本語的に解りにくいので、この連載では、(nappe)、(Decke)は、「地塊」と表記しました。(zone)は、「地帯」と表記しました。
両方を合わせた表現としては、「「地塊」(地帯)」と表記しました。
実際には、文献によって、同じものを(nappe)と書いたり、(zone)と書いたりしていることも多く、本質的な違いは無いようです。
なお、「地塊」(地帯)の下位区分としては、文献ごと、あるいは「地塊」ごとに、(unit)、(series)、(nappe)など、様々な呼び方で区分されていますが、この章では、「ユニット」(unit)という呼び方に統一しました。
更にその下位区分が必要な場合は、「サブユニット」(sub-unit)と呼ぶことにしました。
なお、「地塊」(nappe)、(Decke)や「地帯」(zone)の上位概念としては、(文献1)では、(nappe system)などと、(文献3B)、(文献5)などでは(Domain)と表記していますが、この連載では、「地質グループ」と表記しています。
※ まとめると、本章での「階層構造」は以下のように定義しています。
・第1階層; 「地質グループ」 (例;「ペニン系」地質グループ)
・英語文献での表記例; “nappe system”、“domain”、”complex”
・第2階層; 「地塊」(地帯) (例;「ツァテ・ナップ」(地塊)
・英語文献での表記例;”nappe”、”zone”
・第3階層; 「ユニット」 (例;「アローラユニット」)
・英語文献での表記例; “unit”、 “nappe”、”series”
・第4階層; 「サブユニット」
・ 英語文献での表記例; “unit”, "nappe"
注4) (Zone Houillère ) の呼び方、表記について
この「地塊」(地帯)はフランス語の名称です。手持ちの日仏辞書によると、日本語表記は、「ウーイエ」、あるいは「ウイエール」とされています。
この章では「ゾーン・ウーイエ」に表記を統一しました。
注5) 「ナップスタック構造」という用語について
「ナップ」群が重なり合っている状態について、文献、ネット上の説明、及び書籍によって、表記はマチマチです。
「ナップパイル構造」(nappe pile)と表記したり、「ナップスタック構造」(nappe stacks)としたり、「覆瓦状構造」(imbricated structure)としたり、と、海外の学術論文、専門書でさえ、用語の定義、使用基準はあいまいです。
そこで、この連載では、各「地質グループ」(“nappe system”, “domain”)が重なり合っている状態を「ナップパイル構造」(“nappe pile” structure)と呼ぶことにし、その下位の構成要素である「地塊」(地帯)(“nappes”、’zone”)が重なり合っている状態を、「ナップスタック構造」(“nappe stacks” structure)と呼ぶことにしました。
これは、説明に一貫性を持たせるための、あくまでもこの連載での定義であり、オーソライズされているものではありません。
注6) 「ピエモンテ海」について
この連載では、(文献1)の記載に基づき、「アルプス地域」(Alpine Domain)に、「中生代」に存在した、海洋性地殻を有する細長い海洋域を、「ピエモンテ海」(the Piemont Ocean)と呼んでいます。
但し、多くの文献では、「ピエモンテ・リグーニア海」(the Piemonte-Liguria Ocean)と呼んでいます。他にも「アルパイン・テティス海」(the Alpine Tethys)と呼ぶ文献もあり、名称は統一されていないようです。
注7) (Sesia zone)の呼び方について
この(Sesia zone)というゾーンは、イタリア北部にあり、恐らくはイタリア語の名前です。なので、日本語訳としてどのように表記するか、良く解りません。
この章ではとりあえず、「セーシア・ゾーン」と表記することとしました。「セージア・ゾーン」と発音するのかもしれません。
注8) 「キンツィジャイト」(Kinzigite)は、片麻岩の一種で、ザクロ石を含む(文献19)。
注9) “Ma”は、百万年前を意味する単位
この章で記載した山々などの標高は、スイスのオンライン地図(文献2A)のうち、地形図レイヤーの値を採用し、記載しています。文献、ガイドブックなどによっては、数m程度違う値となっている場合があります。
注2) スイスのオンライン地質図について;
スイスのオンライン地質図は、パソコン等で見る「ウエブ版」(文献2A)と、スマホのアプリとなっている「アプリ版」(文献2B)(アプリ名;“Swiss topo”)とがあります。
どちらも、(Swiss topo)という機関がデータ元ですが、「ウエブ版」(文献2A)は、説明が詳しく、解像度も高い一方で、ポップアップの地質解説がドイツ語なのでちょっと解りにくい、という短所もあります。
一方「アプリ版」(文献2B)は、地質解説が英語で解りやすいのですが、解像度が低く、かつ、場所が違っていても似たような地質体をグループ化して説明している点は、短所だと思います。また細かく見ると、地質説明に、けっこう違いがあります。
この章では、主に、地質図(文献2A)を参照し、(文献2B)は参考程度としました。
それぞれの地質図の使い方、見方などは、「参考文献」の項をご覧ください
注3) 「地塊」、「地帯」という用語について
「ヨーロッパアルプスの地質学」において、テクトニック地質図や、(文献1)をはじめとした海外の各種文献では、類似した地質学的経歴をもつと考えられ、岩石の組み合わせも類似しているグループを、(nappe)(英)、(Decke)(独)、(zone)(英)、(独)、(仏)などと呼んでいますが、日本語的に解りにくいので、この連載では、(nappe)、(Decke)は、「地塊」と表記しました。(zone)は、「地帯」と表記しました。
両方を合わせた表現としては、「「地塊」(地帯)」と表記しました。
実際には、文献によって、同じものを(nappe)と書いたり、(zone)と書いたりしていることも多く、本質的な違いは無いようです。
なお、「地塊」(地帯)の下位区分としては、文献ごと、あるいは「地塊」ごとに、(unit)、(series)、(nappe)など、様々な呼び方で区分されていますが、この章では、「ユニット」(unit)という呼び方に統一しました。
更にその下位区分が必要な場合は、「サブユニット」(sub-unit)と呼ぶことにしました。
なお、「地塊」(nappe)、(Decke)や「地帯」(zone)の上位概念としては、(文献1)では、(nappe system)などと、(文献3B)、(文献5)などでは(Domain)と表記していますが、この連載では、「地質グループ」と表記しています。
※ まとめると、本章での「階層構造」は以下のように定義しています。
・第1階層; 「地質グループ」 (例;「ペニン系」地質グループ)
・英語文献での表記例; “nappe system”、“domain”、”complex”
・第2階層; 「地塊」(地帯) (例;「ツァテ・ナップ」(地塊)
・英語文献での表記例;”nappe”、”zone”
・第3階層; 「ユニット」 (例;「アローラユニット」)
・英語文献での表記例; “unit”、 “nappe”、”series”
・第4階層; 「サブユニット」
・ 英語文献での表記例; “unit”, "nappe"
注4) (Zone Houillère ) の呼び方、表記について
この「地塊」(地帯)はフランス語の名称です。手持ちの日仏辞書によると、日本語表記は、「ウーイエ」、あるいは「ウイエール」とされています。
この章では「ゾーン・ウーイエ」に表記を統一しました。
注5) 「ナップスタック構造」という用語について
「ナップ」群が重なり合っている状態について、文献、ネット上の説明、及び書籍によって、表記はマチマチです。
「ナップパイル構造」(nappe pile)と表記したり、「ナップスタック構造」(nappe stacks)としたり、「覆瓦状構造」(imbricated structure)としたり、と、海外の学術論文、専門書でさえ、用語の定義、使用基準はあいまいです。
そこで、この連載では、各「地質グループ」(“nappe system”, “domain”)が重なり合っている状態を「ナップパイル構造」(“nappe pile” structure)と呼ぶことにし、その下位の構成要素である「地塊」(地帯)(“nappes”、’zone”)が重なり合っている状態を、「ナップスタック構造」(“nappe stacks” structure)と呼ぶことにしました。
これは、説明に一貫性を持たせるための、あくまでもこの連載での定義であり、オーソライズされているものではありません。
注6) 「ピエモンテ海」について
この連載では、(文献1)の記載に基づき、「アルプス地域」(Alpine Domain)に、「中生代」に存在した、海洋性地殻を有する細長い海洋域を、「ピエモンテ海」(the Piemont Ocean)と呼んでいます。
但し、多くの文献では、「ピエモンテ・リグーニア海」(the Piemonte-Liguria Ocean)と呼んでいます。他にも「アルパイン・テティス海」(the Alpine Tethys)と呼ぶ文献もあり、名称は統一されていないようです。
注7) (Sesia zone)の呼び方について
この(Sesia zone)というゾーンは、イタリア北部にあり、恐らくはイタリア語の名前です。なので、日本語訳としてどのように表記するか、良く解りません。
この章ではとりあえず、「セーシア・ゾーン」と表記することとしました。「セージア・ゾーン」と発音するのかもしれません。
注8) 「キンツィジャイト」(Kinzigite)は、片麻岩の一種で、ザクロ石を含む(文献19)。
注9) “Ma”は、百万年前を意味する単位
【参考文献】
(文献1) O. A. Pfiffner 著 “Geology of the Alps”, 2nd edition ,Wiley Blackball社刊,
(2014); (原著はドイツ語版で、2010年にドイツの出版社刊)
(文献1−1) (文献1)のうち、第1―4章 「アルプスの構造概要」
(Structure of the Alps)の項、及び 図1-10(アルプスのテクトニック地質図)
(文献1−2) (文献1)のうち、第5−2章 「中部アルプスのテクトニックな構造」
(Tectonic structure of the Alps ; the Central Alps)
及び 図5-2-1(中部アルプスの概略地質構造図)
(文献2A) スイスのオンライン地質図(ウエブ版)
https://map.geo.admin.ch/
※ 地質図は、メニューより、 > Geocatalog > Nature and Environment > Geology
> GeoCover Vector Datasets 、より見ることができる。
※ 断層、テクトニック構造、「地塊」分布図などは、メニューより、> Geocatalog >
Nature and Environment > Geology > Tectonics 500 、より見ることができる。
※ 地形図も兼ねているので、地形図レイヤーより、山名、標高なども確認できる。
※ 地図自体は(EN)を選ぶと英語表記になるが、ポップアップの地質解説はドイツ語
なので、ちょっと解りにくい。
※ 利用したバージョンは、v 1.59.0
(文献2B) スイスのオンライン地質図(スマホアプリ版)
※ スマホに、“Swiss topo” というアプリをインストールして利用する。
※ メニューより、”geology” > “Gological Map” を選ぶと地質図を見ることができる。
※ 地図自体も、ポップアップの地質解説も全て英語なので、解りやすい。
※ 利用したバージョンは、v 1.19.1
(文献3A) スイスのテクトニックマップ(紙媒体)
“Tectonische Karte der Schweiz”
50万分の1 図幅、”Swiss topo”発行、(2005年版)
ISBN 3-906723-56-9 (“Swiss topo” のインターネットサイトより購入、ドイツ語)
(文献3B) (スイスのテクトニックマップの解説書)
D. Bernoulli、D.Stephan、F.Roberto、G.Yver ほか 共著
“Tectonic Map of Switzerland 1:500 000 - Explanatory notes”
“Swiss topo” 刊 (2024年版)
https://www.researchgate.net/publication/383206443_Tectonic_Map_of_Switzerland_1500_000_-_Explanatory_notes
※ 上記のサイトから、PDF版が無料でダウンロードできる(英語版)。
(文献4)スイスの地質に関する解説サイト
“ Strati CH;Lithostratigraphic Lexicon of Switzerland ”
https://www.strati.ch/en/
のうち、(Dent-Blanche Decke)、(Arolla-Gruppe)、(Arolla Orthogneis)、
(Mont Collon Gabbro)、(Valpelline-Gruppe)、(Mont-Mary-Decke)、(Tsate Decke)、(Mont-Fort-Decke)、(Siviez-Mischabel- Decke)、(Houillere Zone)、(Sion-Courmayeur-Decke)、(Sesia-Decke)、(Eclogitic Micaschist Complex)、(Gneiss Minuti (Sesia))、(Zona Diorito-Kinzigitica_Seconda)、 などの各項
(文献5)
P.Manzotti、M.Ballevre、M.Zucali、M.Robyr、M.Engi 著
“The tectono metamorphic evolution of the Sesia-Dent Blanche nappes
(internal Western Alps): review and synthesis”
Swiss Journal of Geosciences誌、vol. 107, p 309-336 (2014)
https://www.researchgate.net/publication/267327349_The_tectonometamorphic_evolution_of_the_Sesia-Dent_Blanche_nappes_internal_Western_Alps_review_and_synthesis
(DOIアドレス;10.1007/s00015-014-0172-x)
※ 「ダンブランシュ・ナップ」の構成と地史に関する、新しい仮説を元にした論文
※ 上記のサイトから、PDF版が無料でダウンロードできる。
(文献6) A. Pantet、J.L. Epard、H. Masson 著
“Mimicking Alpine thrusts by passive deformation of synsedimentary normal faults: a record of the Jurassic extension of the European margin (Mont Fort nappe, Pennine Alps)”
Swiss Journal of Geosciences誌、vol. 113、p2-25, (2020)
https://www.researchgate.net/publication/344429761_Mimicking_Alpine_thrusts_by_passive_deformation_of_synsedimentary_normal_faults_a_record_of_the_Jurassic_extension_of_the_European_margin_Mont_Fort_nappe_Pennine_Alps
(DOIアドレス;10.1186/s00015-020-00366-2)
※ 「モンフォール・ナップ」とその周辺の構成と地史に関する論文
※ 上記のサイトから、PDF版が無料でダウンロードできる。
(文献7) A. Vho, D. Rubatto, P.Lanari , D. Regis 著
“The evolution of the Sesia Zone (Western Alps) from Carboniferous to Cretaceous: insights from zircon and allanite geochronology”
Swiss Journal of Geosciences誌、vol. 113、 (2020)
https://sjg.springeropen.com/articles/10.1186/s00015-020-00372-4
(DOIアドレス:10.1186/s00015-020-00372-4)
※ 「セーシア・ゾーン」、特に「EMU]ユニットにおける、変成作用に関する論文
※ 上記のサイトから、本論文のテキスト、図が無料で閲覧でき、ダウンロードもできる。
(文献8) ウイキペディア英語版の、(Geology of the Alps)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Geology_of_the_Alps
(2025年11月 閲覧)
(文献9) ウイキペディア英語版の、(Dent Blanche)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Dent_Blanche
(2025年11月 閲覧)
(文献10) ウイキペディア英語版の、(Grand Combin)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Grand_Combin
(2025年11月 閲覧)
(文献11) ウイキペディア英語版の、(Dent Blanch nappe)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Dent_Blanche_nappe
(2025年11月 閲覧)
(文献12) ウイキペディア英語版の、(Sesia zone)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Sesia_zone
(2025年11月 閲覧)
(文献13) ウイキペディア英語版の、(Nappe)の項 および解説図
https://en.wikipedia.org/wiki/Nappe
(2025年11月 閲覧)
(文献14) 近藤 等 著 「アルプスの名峰」、山と渓谷社 刊 (1984)
(文献15) リヒャルト・ゲーデケ著、島田荘平、島田陽子 共訳
「アルプス4000m峰 登山ガイド」、 山と渓谷社 刊 (1997)
(文献16) 「地球の歩き方;スイス(2024-2025年版)」 Gakken社 刊 (2023)
(文献17) 西本 著「観察を楽しむ、特徴がわかる 岩石図鑑」 ナツメ社刊 (2020)
のうち、「片麻岩」、「ハンレイ岩」、「花崗岩」、「角閃岩」などの各項
(文献18) 榎並 著 「現代地球科学入門シリーズ、第16巻、岩石学」
共立出版 刊 (2013)
のうち、変成作用、変成相に関する、第8章〜第13章
(文献19) 地質団体研究会 編 「新版 地質事典」 平凡社 刊(1996)のうち、
「キンツィジャイト」、「プラシナイト」などの各項
(2014); (原著はドイツ語版で、2010年にドイツの出版社刊)
(文献1−1) (文献1)のうち、第1―4章 「アルプスの構造概要」
(Structure of the Alps)の項、及び 図1-10(アルプスのテクトニック地質図)
(文献1−2) (文献1)のうち、第5−2章 「中部アルプスのテクトニックな構造」
(Tectonic structure of the Alps ; the Central Alps)
及び 図5-2-1(中部アルプスの概略地質構造図)
(文献2A) スイスのオンライン地質図(ウエブ版)
https://map.geo.admin.ch/
※ 地質図は、メニューより、 > Geocatalog > Nature and Environment > Geology
> GeoCover Vector Datasets 、より見ることができる。
※ 断層、テクトニック構造、「地塊」分布図などは、メニューより、> Geocatalog >
Nature and Environment > Geology > Tectonics 500 、より見ることができる。
※ 地形図も兼ねているので、地形図レイヤーより、山名、標高なども確認できる。
※ 地図自体は(EN)を選ぶと英語表記になるが、ポップアップの地質解説はドイツ語
なので、ちょっと解りにくい。
※ 利用したバージョンは、v 1.59.0
(文献2B) スイスのオンライン地質図(スマホアプリ版)
※ スマホに、“Swiss topo” というアプリをインストールして利用する。
※ メニューより、”geology” > “Gological Map” を選ぶと地質図を見ることができる。
※ 地図自体も、ポップアップの地質解説も全て英語なので、解りやすい。
※ 利用したバージョンは、v 1.19.1
(文献3A) スイスのテクトニックマップ(紙媒体)
“Tectonische Karte der Schweiz”
50万分の1 図幅、”Swiss topo”発行、(2005年版)
ISBN 3-906723-56-9 (“Swiss topo” のインターネットサイトより購入、ドイツ語)
(文献3B) (スイスのテクトニックマップの解説書)
D. Bernoulli、D.Stephan、F.Roberto、G.Yver ほか 共著
“Tectonic Map of Switzerland 1:500 000 - Explanatory notes”
“Swiss topo” 刊 (2024年版)
https://www.researchgate.net/publication/383206443_Tectonic_Map_of_Switzerland_1500_000_-_Explanatory_notes
※ 上記のサイトから、PDF版が無料でダウンロードできる(英語版)。
(文献4)スイスの地質に関する解説サイト
“ Strati CH;Lithostratigraphic Lexicon of Switzerland ”
https://www.strati.ch/en/
のうち、(Dent-Blanche Decke)、(Arolla-Gruppe)、(Arolla Orthogneis)、
(Mont Collon Gabbro)、(Valpelline-Gruppe)、(Mont-Mary-Decke)、(Tsate Decke)、(Mont-Fort-Decke)、(Siviez-Mischabel- Decke)、(Houillere Zone)、(Sion-Courmayeur-Decke)、(Sesia-Decke)、(Eclogitic Micaschist Complex)、(Gneiss Minuti (Sesia))、(Zona Diorito-Kinzigitica_Seconda)、 などの各項
(文献5)
P.Manzotti、M.Ballevre、M.Zucali、M.Robyr、M.Engi 著
“The tectono metamorphic evolution of the Sesia-Dent Blanche nappes
(internal Western Alps): review and synthesis”
Swiss Journal of Geosciences誌、vol. 107, p 309-336 (2014)
https://www.researchgate.net/publication/267327349_The_tectonometamorphic_evolution_of_the_Sesia-Dent_Blanche_nappes_internal_Western_Alps_review_and_synthesis
(DOIアドレス;10.1007/s00015-014-0172-x)
※ 「ダンブランシュ・ナップ」の構成と地史に関する、新しい仮説を元にした論文
※ 上記のサイトから、PDF版が無料でダウンロードできる。
(文献6) A. Pantet、J.L. Epard、H. Masson 著
“Mimicking Alpine thrusts by passive deformation of synsedimentary normal faults: a record of the Jurassic extension of the European margin (Mont Fort nappe, Pennine Alps)”
Swiss Journal of Geosciences誌、vol. 113、p2-25, (2020)
https://www.researchgate.net/publication/344429761_Mimicking_Alpine_thrusts_by_passive_deformation_of_synsedimentary_normal_faults_a_record_of_the_Jurassic_extension_of_the_European_margin_Mont_Fort_nappe_Pennine_Alps
(DOIアドレス;10.1186/s00015-020-00366-2)
※ 「モンフォール・ナップ」とその周辺の構成と地史に関する論文
※ 上記のサイトから、PDF版が無料でダウンロードできる。
(文献7) A. Vho, D. Rubatto, P.Lanari , D. Regis 著
“The evolution of the Sesia Zone (Western Alps) from Carboniferous to Cretaceous: insights from zircon and allanite geochronology”
Swiss Journal of Geosciences誌、vol. 113、 (2020)
https://sjg.springeropen.com/articles/10.1186/s00015-020-00372-4
(DOIアドレス:10.1186/s00015-020-00372-4)
※ 「セーシア・ゾーン」、特に「EMU]ユニットにおける、変成作用に関する論文
※ 上記のサイトから、本論文のテキスト、図が無料で閲覧でき、ダウンロードもできる。
(文献8) ウイキペディア英語版の、(Geology of the Alps)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Geology_of_the_Alps
(2025年11月 閲覧)
(文献9) ウイキペディア英語版の、(Dent Blanche)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Dent_Blanche
(2025年11月 閲覧)
(文献10) ウイキペディア英語版の、(Grand Combin)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Grand_Combin
(2025年11月 閲覧)
(文献11) ウイキペディア英語版の、(Dent Blanch nappe)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Dent_Blanche_nappe
(2025年11月 閲覧)
(文献12) ウイキペディア英語版の、(Sesia zone)の項
https://en.wikipedia.org/wiki/Sesia_zone
(2025年11月 閲覧)
(文献13) ウイキペディア英語版の、(Nappe)の項 および解説図
https://en.wikipedia.org/wiki/Nappe
(2025年11月 閲覧)
(文献14) 近藤 等 著 「アルプスの名峰」、山と渓谷社 刊 (1984)
(文献15) リヒャルト・ゲーデケ著、島田荘平、島田陽子 共訳
「アルプス4000m峰 登山ガイド」、 山と渓谷社 刊 (1997)
(文献16) 「地球の歩き方;スイス(2024-2025年版)」 Gakken社 刊 (2023)
(文献17) 西本 著「観察を楽しむ、特徴がわかる 岩石図鑑」 ナツメ社刊 (2020)
のうち、「片麻岩」、「ハンレイ岩」、「花崗岩」、「角閃岩」などの各項
(文献18) 榎並 著 「現代地球科学入門シリーズ、第16巻、岩石学」
共立出版 刊 (2013)
のうち、変成作用、変成相に関する、第8章〜第13章
(文献19) 地質団体研究会 編 「新版 地質事典」 平凡社 刊(1996)のうち、
「キンツィジャイト」、「プラシナイト」などの各項
【書記事項】
・2025年11月3日; 初版リリース
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