鳳凰三山


- GPS
- 30:20
- 距離
- 15.6km
- 登り
- 1,881m
- 下り
- 1,882m
コースタイム
- 山行
- 9:37
- 休憩
- 0:56
- 合計
- 10:33
天候 | 曇りのち雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2019年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
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コース状況/ 危険箇所等 |
危険個所等は特になし。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
ソフトシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
ゲイター
日よけ帽子
着替え
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
行動食
非常食
飲料
ハイドレーション
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ストック
ナイフ
カメラ
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感想
ドンドコ沢ルート高度2000m付近で見た鹿の親子
昨年台風で断念した白馬岳縦走を8月に計画している。その前にトレーニングを兼ねて7月にどこか2500mを超えるような山に一度行っておこうということになった。しかし、いざ行くとなると「行きたい山」という欲が出て来て、結局かねてから挑戦したいと思っていた鳳凰三山を目指すことになり、トレーニングと言うよりこれ自体が本格山行になってしまった。メンバーは、例によってリーダーと分岐マニア氏と筆者である。われらがリーダーは気合入りまくりで、長時間山行訓練やら高所順応やらでこの1ヵ月の間、山に行きまくり、鍛えまくっている。筆者は少々恐ろしさを感じたが、それは現実のものとなる。いずれにしても、金曜日に年休とか半休とか時間休とかをとって、金曜日の夕方に韮崎駅に集合し、そこからタクシーで前泊の青木鉱泉を目指した。タクシーの運転手さんは物腰の柔らかい方で、韮崎のオススメ温泉など教えてくれて、40分ほどで青木鉱泉に到着した(タクシー代は7000円台でした)。
青木鉱泉は古い印象的な建物である。母屋の土間のような食堂で夕食をいただいた。おかずの牛肉のすき煮は筆者がよくランチにいく飲み屋の牛丼の味に似ていてとても美味しかった。風呂もなかなかである。鉱泉というのは温泉法で25度以下で湧き出るものを言うらしいが、温泉との区別は微妙なものらしい。脱衣所に昭和時代のマッサージ機があって、リーダーには珍しかったようだ(若いことを自慢したいらしい)。
翌日は5時半に出発した。前の晩のうちに用意してもらったボリュームたっぷりの朝食を取り(「朝っぱらからよくそんなに食えるな」とリーダーには言われたが」)、いざ出発である。鳳凰三山に登るのであれば、このドンドコ沢コースを登り勇壮な滝を見たいと思っていたので、実現できて満足である。自家用車で朝出てきた人たちも続々到着してきた。出発してしばらく行くと川の法面工事のため迂回路が設置されていて、「法面で働く戦士たち」の写真入り立て看板が! お疲れ様です。バスの時刻表や「トイレも自由に使ってください」との記載もあり、とても親切であった。我々は登りだったが、ドンドコ沢を下りてきた人にとっては、ぎりぎりでこのトイレに救われる人とかもいるのではなかろうか。筆者のように悶絶した経験のある者には重要なことで、ことさら親切に思えてしまう。
のっけから尾籠な話で恐縮であった。しばらく行くと渡渉地点があって滝が現れた。あれ、もう南精進ヶ滝に着いたと思ったが、どうも違うらしい。それでも立派な滝だった。さらに行くと今度は葛飾北斎作「諸国滝巡り」の「下野黒髪山きりふりの滝」の小型版のような滝が現れた。地図には載っていない滝だがこういう滝は筆者の好みである。ところで北斎は1760年生まれのようなので、モーツアルトより4歳年下、ベートーヴェンより10歳年上だが、「冨嶽三十六景」やくだんの「諸国滝巡り」は1830年代の作なので、そのころモーツアルトはもちろん、ベートーヴェンも死んでいる。北斎はその代表作を70代で作成していることになり、創造的才能は必ずしも若さに頼ったものではないということが分かる。しかし福岡伸一先生も言っている。「誰もがモンドリアンになれるわけではない」。しかし北斎は老眼ではなかったのだろうか? 50代後半の筆者は最近老眼がきつくて困っているのに。まあ、世界を変えた1000人に唯一選ばれた日本人である北斎と比べてはいけないのだろう。そういえば、筆者はベートーヴェンの死んだ年齢とほぼ同じになった。ベートーヴェンは山のような傑作をものにしているのに、筆者は山の記録一つこんな駄文しか書けないのだ。チコちゃんに「ぼーっ生きてんじゃねえ」と叱られそうだが、まあ許してください。凡人はこんなもんです。ぼーっと山行を楽しむのも豊かな人生です。
ずいぶん話がそれた。沢道なので徐々に勾配は急になってくる。苦労しながら出発から3時間ほど掛けて南精進ヶ滝に到着。岩を這い上って近くで見ると迫力がある。いやあ、曇天だが来た甲斐があった。そこからも急登は続き、今度は鳳凰滝との分岐に出た。どのぐらいの距離があるのか分からなかったのでパスしてちょっと行くと、鳳凰滝まで200m・5分とある。サニブラウン選手なら20秒ちょっとだが我々はそういう訳にはいかないのでそのまま先に行くことにした。さらに急登は続き、リーダーは鍛えていることを勝ち誇るかのようにスピードを緩めない。といっても地図時間より遅いのだから筆者がいかにひ弱かということに他ならないのだが。そんなこんなで何とか白糸の滝に到着。確かに幾筋かに分かれて落ちて来ていて「白糸」の滝である。ここから最後の滝である五色滝を目指す。
五色滝が近くなって、筆者がバテているのを目ざとく見つけたリーダーが「調子悪い?」と言ってきた。鍛えまくっているリーダーの高笑いが聞こえてきそうだったが空耳だった。「調子悪いよ、ペース早いんだもん」と文句を言い、ペースを緩めてもらい五色滝で長めの休憩をとることにした。五色滝は滝つぼのそばまで行けるのでしぶきも味わえる。きっとマイナスイオンなるものがたくさん出ているのだろう。その効能だろうか、長めの休憩をとったら筆者もだいぶ回復してきたので(菓子パンの効果もあったと思う)、ゆっくりペースで出発することにした
しばらく行くと、なんとニホンジカの親子発見。標高2,000mまで上がってきているのか。最近では害獣のイメージが強いシカだが、彼らは彼らの事情があってこんな高いところまで登ってきているのだろう。分岐マニア氏からもらったレトルトの「鹿肉カレー」を食べるのを躊躇するような思いは全く起きなかったが。シカを見てからちょっと行くと勾配が緩やかになり河原?のようなところに出た。このあたりは晴れていれば地藏ヶ岳がドーンと見えるスポットのようだ、先行していた登山者が曇間からわずかに顔を出したオベリスクを熱心に撮影していた。
ここから鳳凰小屋まではすぐであった。到着!噂に違わずドンドコ沢コースはハードだったぜ(リーダーのペースが速かったせいもあるが)。なんとか雨も落ちてこないうちに山小屋に到着してよかった。当初の計画では1日目は鳳凰小屋までで、2日目に地蔵ヶ岳に登りそこから観音岳、薬師岳と回る予定だったが、翌日の予報が雨だったため、予定を変更するかどうか、リーダーと筆者で意見が食い違っていた。今日のうちに地蔵ヶ岳に登っておいて、明日雨なら降りるだけにしよう、というリーダーに対し、鍛えている体力を誇示しやがってとちょっとだけ思ったが(もちろん口には出さない)、小屋の人の意見を聞いたところ、「今日のうちに登っておいた方がいいかもしれませんねー」と言うことだったので、荷物を置いてカラ身で登ることにした。
出発直前に雨が降り出した。筆者の主張により雨具を着込んで出発。最初は林の中を行くが、しばらくすると花崗岩のザレ場に出た。これか、皆さんが苦労したというなかなか進まない道は。そういえば甲斐駒ケ岳の山頂直下もこんな感じだったなあ。ちょっと湿り気がある分マシだったのかもしれないが、それでもなかなか進まない。一歩足を出すと半歩ずり落ちる感じである。オベリスクが近づいてこない。急斜面なのでアキレス腱も伸びる。というか伸びなくなっていることを実感する。しかしここで慌ててはいけない。ゆっくりゆっくりである。そして到着。やったー!憧れの地蔵ヶ岳登頂。15時を過ぎていたせいもあって山頂にはほぼ人がいなかった。雨風もちょっと強くなってきたので賽の河原のお地蔵さんを眺め、記念写真をとり、早々に山頂を後にした。あ、もちろんオベリスクには登ってません。
小屋に戻り、夕食まではやることがない。あいにく雨が本降りになってきたので居る場所もない。鳳凰小屋は水は豊富に出るようだが、燃料の調達が難しいのだろうか、電気は夕食時のみだそうで、部屋も暗いのでヘッドランプが必要だった。しかし、そのような環境で夕食のカレーライスをいただけることに感謝である。食事のあとスタッフの方たちが冷たい冷たい南アルプスの天然水でお皿を洗ってくれているのを見て頭が下がった。
その日はやることがないので19時に寝た。意外に寝られるもんだが、21時に起きて、0時に起きて、1時半にトイレに行って、そこから寝られず、2時半ごろにまた眠ったようで、4時に起きた。朝ご飯は弁当にしてもらったので、筆者は食べて出発。またまたリーダーから「朝っぱらからよく食えるな」という顔をされ、”So What!” と心の中で言い、仲良く出発である。しっかり雨が降っているので、リーダーの主張通り、御座石コースを通ってそのまま下ることにした。三座縦走は今後の楽しみにとっておく。
雨具を着込んでの下山である。林の中を下山していくので雨は多少しのげるが蒸し暑い。緩やかに下っていくと2時間ほどで燕頭山に着いた。登り返すかと思っていたが、ほとんど下っただけで着いてしまった。そしてここから勾配が急になってくる。またまたほぼ登り返さずに旭岳到着。石碑があるだけの小さな山頂である。雨の中、蒸し暑い状況で下っているので、そんなに気分がいいわけでもなく、あまり書くことがない。途中「槍展望台」というところがあって、晴れたら北アルプスが見えるんだろうなあ、とか、デカいひきがえるがジャンプして飛び移るのを失敗するのを見たりとか、巨大な毛虫を発見して、分岐マニア氏が芋虫は大丈夫だが毛虫は苦手だということが判明したりとか、そのぐらいしかない。ということでゆっくり5時間かけて御座石鉱泉に到着した。
御座石温泉でも宿の人にとても親切にしてもらい、分岐マニア氏がちょっと足を痛めたこともあって、バスで青木鉱泉まで行った。予定より4時間ほど早く青木鉱泉に帰着したことになる。濡れたザックの中身を整理して、湯につかったら、もうバスに乗る時間だった。ビ、ビールが飲みたい・・・。よし、韮崎駅で飲むことにして、駅前の土産物売り場兼カフェテリアのようなところでビールとつまみを買おうとしたら、「カフェテリアでは飲酒できません」と言われ、ビールを買うのを止めた。お腹も減ったので鳳凰小屋で作ってもらった弁当(内容は朝食と同じ/おにぎりではなく、お米のご飯とご飯の友)をそこで食べたらお腹かが一杯になってしまい。帰りの特急の中でビールを飲む気が失せた。くそー、家に帰ったら絶対飲むぞ、と心に決めて、ビールを買って帰り、飲む前に泥々になった靴やスパッツを洗い、衣類の洗濯をしたら結構汗をかいた。やっとビールだ!地蔵ヶ岳にもビールにもなかなかたどり着かなかったが、たどり着いたときの喜びはひとしおであった。(完)
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