半国山☆音羽の滝より知られざる山上の池へ


- GPS
- 04:23
- 距離
- 11.2km
- 登り
- 647m
- 下り
- 649m
コースタイム
天候 | 雨のち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
下山後は猪倉の谷性寺へ |
コース状況/ 危険箇所等 |
良好に整備された一般登山道 |
写真
感想
日曜日の予報は雨となったり曇りとなったり安定しない。直前の予報では曇りとなり、どうやら大きく崩れることはなさそうだ。この日、山中の池か滝を見に行きたい気がした。手頃なところで思いつくのは比良のいくつかの池だが、残念ながら雨上がりのタイミングではヒルが多そうだ。鈴鹿の池に至っては論外だろう。むしろ雨上がりで水量の増加が期待できる滝を訪れることを考える。
当日、家内は昨日の長距離歩行の疲れのせいか脚と背中が痛いという。仕方がないので私一人で出かけることにする。山行先を散々迷ったが、亀岡の半国山を訪ねることにする。音羽川にある音羽の滝を訪ねるというのもあるが、今回はもう一つの目的があった。
先日、no2さんのコメントの応答で「滋賀や奈良には各所に石仏があるが、京都には石仏文化が発展しなかった」とレスさせて頂いたところだ。山と高原地図にはこの半国山の山頂に磨崖仏があることが記されており、果たしてどのような磨崖仏なのか興味があった。
家を出ると、雨の予報ではなかったものの、京都の北山のあたりは明らかに雨が降っているようだ。京都駅から山陰本線を西に向かうと、愛宕山にもしっかりと雲がかかっている。亀岡に到着し、観光案内所でバスの一日乗車券を購入すると、すぐに園部行きのバスに乗る。
亀岡の市街では晴れ空が広がり、日差しが降り注いている。残念なことにバスが向かう半国山のあたりには暑く雲がかかり、山が白く霞んでいるのは雨が降っているせいだ。湯の花温泉を過ぎると、たちまち驟雨となる。登山口のある赤熊でバスを降りると雨は傘がなくとも歩けるほどの小降りとなる。道路脇では雨に濡れた藪萱草が出迎えてくれる。
音羽川の川沿いに薄い踏み跡があるので、踏み跡を辿る。すぐに苔むした石積みの大きな遺構が現れる。炭焼き窯にしては大きいようだが、果たして何の遺構だろか。川沿いを進むと堰堤が現れたので、再び登山道に戻り堰堤を越える。
沢には小滝が連続して現れるようになる。「音羽の滝まで1.2km」という道標が現れたので、沢に滝が現れるたびに音羽の滝かと期待するが、なかなか現れない。
二段の滝が音羽の滝であった。下段は二条の滝となっている。登山道を少し戻り沢沿いに降りてから滝下にたどり着く。下段の滝のすぐ右手を登って上段の滝壺に登ることが出来る。驚いたのはそのすぐ右手に送電線巡視路の道標「火の用心」が現れる。しかし道標が示す先はおよそ巡視路とは思えない急斜面だ。この斜面の低木を掴みながら登山道に這い上がる。
音羽の滝を過ぎても沢にはまだまだ小滝が連続する。音羽川の沢沿いを辿るうちにやがて二俣にでる。二俣の手前でそれまで辿ってきた踏み跡が途絶えるが、対岸の樹に塗られた赤ペンキと踏み跡が目に入ったで渡渉する。しかし、薄い踏み跡は沢から離れて対岸の斜面を登ってゆく。これは明らかに違うルートだ。
左俣の沢沿いを少し上流に辿ったところで沢を渡渉すると、檜の植林の広々とした緩斜面に出る。林床には散乱する間伐材もなく、歩きやすい林が続く。右俣に出て沢を渡るとすぐにも明瞭な登山道が現れた。
登山道を少し下って、烏帽子岳への分岐に出る。当初、烏帽子岳から半国山を縦走しようと思っていたので、烏帽子岳に向かって歩き始めたものの、ここまで沢沿いで寄り道していたせいでかなり時間を消費している。烏帽子岳に寄ったところでこの雲では眺望も期待できないだろう考え、半国山に至る登山道を辿ることにする。
水量を増した沢から水が流れ込んでいるためか、登山道には小さな沢のように水が流れている。やがて登山道が沢から離れると歩きやすい植林の中の道となる。主尾根が近づくにつれ林の中には霧がかかり、単相な植林でも幻想的な雰囲気が漂う。
烏帽子岳から半国山へ至る主尾根に乗ると広々とした雑木林が始まる。尾根上には終始、涼しい風が吹いており、歩くうちに林の中に一瞬、木洩れ陽が落ちる。山頂が近づくと尾根には再び霧がかかるが、それはそれで美しい。
半国山の山頂に出ると本来は好展望が広がる筈ではあるが、眺望はすっかり雲に遮られている。電波が通じているので家内に無事に山頂にたどり着いたことを報告すると京都市内は清々しい天気だという。電話を切ると風が吹いてきて、雲の間から視界がわずかに開ける。
山頂の磨崖仏は小さな扁平な岩に線刻されたもので、右手の錫杖はわかるが頭部はすっかり不明瞭になってしまっている。岩の裏面に刻まれた文字を見ると昭和初期のものであった。
山頂を後に尾根を南に下ると、雲の下の出たせいだろうか、空気の湿度が急に低くなり、清々しく感じられる。雨後のせいか登山道はかなり滑りやすい。尾根の下降が終わり、平坦な植林に入ると、千ヶ畑へのルートの分岐に出る。左手の宮川への下山路に入ると、すぐにも平坦な植林の向こう側に紅白の送電線鉄塔が目に入る。送電線鉄塔からの展望を期待して、登山路を外れて鉄塔に寄り道してみることにする。
果たして送電線鉄塔の向こう側には送電線の下に広範囲に伐採されており、彼方に大阪湾が見える。ひときわ高い一本の高層ビルが目に入る。
送電線鉄塔を後にして再び登山路を目指すと右手の鬱蒼とした樹林の中に一箇所、緑の水溜りが見える。藻類が繁殖した池があるのかと思って近づいて見ると、遠目に見たその印象は大きく間違っていることに気がつく。それは驚くほど透明な水を湛えた池であり、緑色に見えているのは池の中の水草が綺麗てに見えているのだった。池の中央部だけは水草の種類が違うのだろう、明るい若緑色を呈している。
気まぐれに風が吹くと周囲の樹々から多くの水滴が落下し、それまで鏡のように滑らかな池の水面に上にいくつもの輪が描かれる。やがて風が水面の波紋を揺らし、水に映る周囲の木々のシルエットが印象派の絵画のようにぼかされる。池の水面に落下する水滴が描く線描と水面に映る樹々と空の景色が刻々と移り変わる様は見ていて退屈しない。
水に触って見ると湧き水のように冷たい。実際、池のどこかから水が湧き出ているのでなければこのように綺麗な透明な水が保たれないだろう。池というより泉と呼称した方がいいのだろう。
半国山にこのような池泉があるという話は聞いたことがなかったが、登山道から少し離れており、また薄暗い林の中にあるのでややもすると池に存在に気がつかずに通り過ぎてしまうところだろう。周囲の林相が檜が多いことがやや残念ではあるが、それでも林の中にあって池は十分に神秘的な空気を漂わせているのであった。
池の景色を楽しんだところで、再び下山の途につく。自然林の中の快適な登山道が続く。午前中の湿った空気と異なり、家内が言うようにすっかり清々しい空気が漂う。途中の展望地からは亀岡市街や京都の西山の好展望を広がっている。
金輪寺にたどり着くと、バス停のある宮川までは寺の旧参道を辿る。地面には随所に苔が現れ、その上を歩くのが贅沢でもあると同時に申し訳ない気がする。宮川の集落に出ると、次のバスが来るまでは1時間以上の時間があるが、それまでの時間の使い方はすでに予定がある。
猪倉にある谷性寺に向かう。この谷性寺は光秀寺とも呼ばれ、私自身は見たことがないが、現在、明智光秀を主人公とした大河ドラマ「麒麟がくる」が放映されているせいか、大勢の人が訪れている。初夏のこの時期は桔梗の花畑が広がり、桔梗寺とも呼ばれるところだ。もっとも寺そのものは光秀の首塚とされる小さな石塔があるばかりのこじんまりした小寺であるのだが。
桔梗や紫陽花が咲き乱れるお花畑を鑑賞するうちにバスの時間が近づく。谷性寺の花屋で思わず紫と薄ピンクの桔梗の鉢を買って帰路につくのだった。
コメント
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こんばんは。
雨の日が続く中でも、いつも魅力的な山行やハイキングを計画・実行されておられる様子を毎回楽しみにレコを拝見しています。
性谷寺は桔梗を観に訪問したばかりでしたが、近くにこんなに素敵な山があったのですね。
渓流や連続して現れる滝は長雨の影響(おかげ)で水量多く大迫力ですね。滝を見たいと出かけられて大満足された様子が目に浮かびます。
そして何よりも山中に突如現れる池が美しいです。透明で清らかで神秘的なことが写真からだけでもよく分かります。
仰るように湧き水を蓄えた池、まさに泉なのでしょう。
比良のオトワ池や長池、小女郎ヶ池などの魅力とはまたかけ離れた素晴らしい魅力を感じました。一度見てみたいものです。
素敵な泉を見られたからでしょう、美しい桔梗の花をお土産に奥様のもとへと急ぎ足で帰られたのに違いないと、レコの感想を読んで、深読みしてしまいました😁
谷性寺にウリさんが出かけられたのは六月の終わりでしたね。桔梗の花はもうしばらく続く感じでした。
音羽川に連続する小滝と桔梗の花咲く谷性寺だけでも十分に楽しめるところだと思って出かけましたが、この山上の池は実に素晴らしいです。
レコに書こうと思って書き忘れたのは、比良の池と違ってモリアオガエルの卵が一切、ないのです。このあたりにはモリアオガエルが棲息していないのかな。
ののさんご存知だったら教えてください。
桔梗の花のくだりは深読みしすぎです。
またまた新発見的なレコでした。半国山の山頂に磨岩仏があるなんて。というか罰当たりなもので気がつかなかったと言うのが正解でして… 写真を見ると何処か雰囲気が違う?? 両サイドの石碑が落下しているものかと想像します。(正面から見ているのに気が付いていない罰当たり写真添付です)
モリアオガエルについてですが…それどころかこの池が私のレコには出てきません。 関電巡視路ルートで千ケ畑へ下りる際のP718横の鞍部にあるようですね。ここもいずれ見に行かないと。
あまり京都西山・北山エリアは歩けておりませんが、モリアオガエルの卵を見掛けた記憶がありません。亀岡エリアは、お寺や神社の池などでは見かけることがあるそうですよ。
ここへバスにて行かれたんですね。以前縦走と言うか縦断しようと調べたことがあるのですが、時刻などに制約がありチャリデポスタイルで歩きました。
ののさん コメントをお待ちしておりました。
お写真もどうも有難うございます。ののさんが訪れられたのは冬の快晴の日ですね。
山頂は以前の様相とだいぶ変わっていますね。この摩崖仏は、かなり注意深くみないと、あるいは知っていないと、岩に線刻の像があるということはわからないでしょう。
この山は期待を遥かに越える魅力的なところでした。違った季節にも、またルートを変えて訪れてみたいものだと思いました。それにしても亀岡にもモリアオガエルがいるのに、この池に棲息していないというのは不思議ですね。もしかして、この池は梅雨の時期だけに山中に忽然と現れる幻の池だったりして
亀岡は私の家から京都市街をぬけるとかなり時間がかかるのですが、JRを使うと驚くほど速いですよね。ちなみに先日の大雨による土砂崩れせいで今、沓掛のインターチェンジが使えないので、京都からは亀岡まで国道9号線を使うことになるので、さらに時間がかかるので、JRとバスという手段しか考えられないのでした。
バスの一日乗車券を購入すると烟河に\300で入浴出来るので、次回は是非、ここに立ち寄らねばと思っているところです。
ニュースで写っていましたね。沓掛インターの崩落現場。利用度の多いICなので皆さん不便な思いをされているかと。隣の大原野ICは片道利用ICですものね。
山頂近くの池、地理院地形図には明記がありませんが、このヤマレコマップには池の姿が明記してありますね。私のレコを見ると池の上を通っているような赤線でした。
烟河に\300で入浴出来るのでのですね。それはいい。「里山ランチバイキング」も人気のようですが15:00までなので時間的にダメかな?
https://www.kyoto-keburikawa.jp/day/satoyama/
半国山の南側登山口「千ケ畑」へのバスは、亀岡駅発 8:01なので、9時前から歩き出せ縦断できるかも?? 関電巡視路ルートで上がると丁度その池の所に出てきます。ただ南側は、谷とか滝が無いですけどね。
>沓掛インターの崩落現場
京都市内から京都縦貫に入るのが不便ですね。
>山頂近くの池、このヤマレコマップには・・・
ゼンリンの地図に載っているということですね。なんと、ののさんに教えて頂いていま、気がつきました。
>半国山の南側登山口「千ケ畑」・・・
有難うございます。千ヶ畑ルートも辿ってみたいところですが、植林帯が長いかもしれませんね。再訪するときに瑠璃渓への縦走も視野に入れて計画したいと思っておりました。
yamanekoさん、こんにちは
何度か登りましたが、泉があるなんて驚きです。この時期だから出現しているのではなさそう、名もない池なんですよね。
萱山の池といい、こんなに神秘的な池が割と近くにあるのには本当ビックリです。
夜叉ヶ池などの池や湿原など、魅力的なところに行かれるのは流石にyamanekoさん。
滝の水も多いですね。秋の渇水期しか行ったことがないので全然別の滝のように見えました。
yamanekoさんのレコを見ていたらどんどん行きたいところが増えていきます。
この泉というか池の記述が見当たらなくて、失礼ながら、HBさんでもご存知なかったとは、やはり本当に知られざる池ですね。
でもゼンリンの地図に記載されているとno2さんからご指摘いただきましたが、灯台もと暗しとはこのこと。山上の池としては京都から最も近い池でしょう。
池の水をみて飲めそう・・・などと思うことはないのですが、この池の水は驚くほど透き通っていて、飲めそうな感じがします。水もあるし、喉が渇いていなかったので飲みませんでしたが、そうでなければ飲んでいたことでしょう。
意外なところに意外なものがあったので、これは山の神様が特別に用意してくれた幻の池かと思いました。
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