太平山中岳 秋田市内からよく見える尾根を登る


- GPS
- --:--
- 距離
- 9.8km
- 登り
- 926m
- 下り
- 915m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
秋田市東部から太平山を眺めると、正面にはスッキリとしたラインを手前に引く尾根が見える。中岳山頂から南西に延びるこの尾根を残雪期に登ってみたいと、昔から思っていた。青空をバックに、この白い稜線にピッケルを突き刺しながら一歩一歩登ったら、どんなに気持ちがいいだろう。
地図上では破線が引かれており、古いガイドブックでは上部で寺庭ルートとなることが記されているようだが、雪のない時期に中岳山頂付近を探しても、登山道らしきものは見つけることができなかった。太平山は秋田市郊外に最高峰奥岳を中心として1000mあまりのピークが馬蹄形に連なる山塊だが、屏風のように立つ尾根に取り付くまでのアプローチが、先端の前岳を除いて意外に長い。この中岳へも通常は前岳を経由して達する。南西尾根を登って中岳へ直接達するためのアプローチはどうしたらいいだろう。小黒沢から尾根に取り付くのが分かり易いが、尾根に取り付くまでの沢が長く、雪崩も心配だ。太平山スキー場オーパスへ行く良い道路から入り、金山滝から前岳に登る一般ルートは良く整備され、駐車場もある。ここから矢櫃沢の左岸尾根に上がって地図上の破線通りに歩けば、やがてこのスッキリとした尾根に辿りつける。中岳登頂後は、前岳経由の一般コースを下山すれば周回コースとなる。
この冬はこれまででも一・二の積雪に見舞われた年となったが、3月に入ってどんどん融けだしている。毎週末、悪天候や除雪作業等で山へ行きそびれていたら、もう3月も半ばになっているではないか。残雪期に好天をつかんで山へ行けるチャンスはおそらく多くて3回程度だろう。1,000mに満たないピークではあるが、雪消えが早いからなおさら優先、昔からの願いをかなえるべく、慣れない早起きをして出かけた。
金山滝への道はまだ雪で埋まっており、道路端のふくらみに車を停める。最初からワカンを付けたが、ツボ足でもよさそうな堅雪だ。昨夜は一時吹雪にもなり、寒気が雪面を締めてくれたようだ。前岳への登山道入口から逆、右手の急斜面を上がって杉林に出る。矢櫃沢を左下に見ながら回り込むように歩くと雪に埋もれた林道に出、サクサクと快適に歩く。すぐに終点となり、左手にトラバース気味に進んでから尾根に取り付いて上がる。尾根上に今度は作業道のような道がある。調子良く進むと左前方が明るい。おかしいな、左前方は前岳のはず・・と思ってコンパスを確認すると、危うく南に向かって進むところだったと気付いた。こういう杉林の小さい尾根・谷はうっかりすると迷いやすい。
改めて進むと、今度はしっかりとした明るい林道に出た。小黒沢方面から延びる林道のようだ。この林道と、今日のサクサク歩ける堅雪には助かった。それがなければ時間通りには歩けなかった。数日前に歩いたようなワカンの跡が残っている。この林道は標高400m強付近の尾根取り付きまで延びているようだ。雪が消えたら、改めて小黒沢方面から歩いてみたい。
尾根に取り付くと予想通りの急斜面。ロープも張られている。小黒沢からの尾根と合流するとさらに雰囲気のいいブナ林の尾根となる。尾根が細くなって小さな岩場にぶつかる。ワカンのままでは転びそうになったので外した。これからこんな細い状態が続くのかと思ったが、ここ一か所だけで、あとは幅広い雪堤が中岳山頂まで続いていた。
余談だが、最近夢の中で若い頃の記憶・感情がよみがえることがある。高校へ入学してすぐに授業についていけなくなり、未経験のサッカー部に入ってしがみつくように部活に打ち込んでいたあの頃。大学を卒業して新社会人となる一週間の研修からの帰路、これからの不安と「よし、やるぞ」という気持ちを抱えながら、バスの車窓から見えた白い峰。うまくいっている時もいかない時も、目線の先にこの稜線があって良かったなと思う。山にとっては、さもない一人の人生など関係なく、関心もない。だが私は、共にいてくれたという感謝の思いを込めて一歩一歩登る。
・・・と書こうと思っていたが、実際は喘ぎ喘ぎ。左手はまだ高さのあるブナ林で眺めはなかったが、右手は展望が開けている。距離こそ短いが、この幅広い雪面の登高は気持ちいい。やがて大きな反射板のある中岳に辿りついた。
主稜線上には、すでに今日奥岳へ向かったと思われる足跡が付いている。後方からサクサク歩いてくる年配の単独男性に声をかけられた。
「奥まで行ったすか」 (奥岳まで行ってきたのですか)
私「いえ、もう帰ります」
その方は足も止めず快調に主稜線を歩いて行った。ここは秋田の山好きが集まるメッカなのだ。
中岳から前岳への下山途中で、一度派手にころんだ。右手のピッケルで止まったが、左手を変に突いてしまったようで、肩周辺を痛めてしまった。急いでいたこともあるが、疲労が注意力を散漫にして転倒・滑落を引き起こしてしまう。スパイク無し長靴で歩くには、それなりの筋力も必要だと思い知らされる。
帰路、すれ違ったのはなんと30人を超えた。朝は私の車だけだったが、着いてみると道の片側にズラリと車が列をなしていた。前岳経由のルートに飽きた人には、今回の尾根ルートを薦めたいと思う。前岳経由では拝めない展望と、爽快な稜線登高が楽しめる。
11時過ぎに下山、あきた温泉で入浴後、13時からの国際教養大学 故中嶋嶺雄学長の大学葬に参列した。長野県松本市ご出身の先生は、山登りもお好きだったという。強いリーダーシップを発揮されて、秋田の片田舎に世界中で活躍する深い教養とコミニケーション能力・実践的行動力を備えた人材を輩出する大学を作り上げた先生に、敬意と感謝を表し、心からご冥福をお祈りしたい。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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様々なルートを四季を問わず訪れる人がいる山、宮城だと泉ヶ岳でしょうか。それいじょうに、kamadamさんの心の山だというのがよくわかりました。
周回ルートを取られたのもkamadamさんらしいですね。きれいな雪稜です。
長靴とワカンとピッケル、kamadamスタイルですね。今年は冬靴ならしもあって、長靴は一回も履きませんでしたが、やはり東北の冬山では最強ですよね
中嶋嶺雄さんが東京外語大から新設の秋田国際教養大学の学長にでられた時はびっくりしました。20年くらい前?全くオリジナルな英語教育をされて全国の高校生を集めましたね。今は早稲田にも国際教養学部がありますが、やはり先駆的大学だと思います。
中嶋先生が秋田の片田舎にできる新設大学の学長に就任されるまでの経緯は、大学葬での弔辞を伺っていて理解しました。奥様の一押しもあったようです。大学葬では教職員・在校生・卒業生の皆さんの中嶋学長への想いが溢れていて、部外者の私も感動を覚えました。
太平山が心の山だという人はたくさんおられると思います。でもかく言う私も実は知らないコースがほとんど
前回もコメントした記憶がありますが
太平山はスキー場とザ・ブーンの思い出しか・・・。
秋田に住んでいた頃は子育ての真っ最中ですべてが子供中心の生活。
山に目が向く事はありませんでした。
こんなに奥深い山だったんですね〜
積雪量の多さはやはり例年以上だったのでしょうか。
豪雪で大変でしたね。
kamadamさんのレコ久しぶりに拝見できてとても心温まりました。
秋田国際教養大学、マスコミも注目していますが留学と英語での専門授業、就職率は100%らしいですね。
素晴らしい〜
実は秋田に居ながらまだ足を踏み入れたことの無い山域です。
太平山という酒は飲んだことがありますが
写真を拝見するとまだ雪深そうですが、30人もの登山者がいらっしゃったというのは驚きました
山好きの皆さんはこの陽気を待ち構えていたと思います。
それぐらい今冬は週末のお天気、恵まれませんでしたからね。
僕も秋田の山好きが集まるメッカにそのうち行ってみたくなりました。
kamadamさんにご案内頂けたらうれしいな〜
わがまま言ってしまいました
おっしゃるような国際教養大学の方針は、言うは易し行うは難しのようで、中嶋学長の強力なリーダーシップがなければ実現できなかったと伺いました。この時代に就職率100%は驚きの一言です。いや、こんな時代だからこそ、ますます求められるのでしょう。
meikenさんが秋田にいらした頃は、スキー場オーパスも2月10日頃には終了していたかもしれませんね。今年は3月に入ってからも営業していたように思います。秋田市でこんなに積雪の多い年は記憶にありません。ドカ雪こそなかったものの、気温が低くて12月から融けずに残って積み上がったのですよ
今度は大きくなられた子供たちと、太平山登山にいらしてくださ〜い
実は帰路すれ違ったのは30人以上で、もう数えるのをやめたんです
秋田県人なら鳥海・栗駒・秋田駒の他、一度は太平山にも登らなきゃ
春、高気圧に覆われても上空に寒気が残っている時は、奥羽主脈は雲に隠れていることが多いですね。そんな日は太平山がねらい目ですよ。仁別の奥まで開通したら、tooleさんでも満足の馬蹄形縦走のチャンスです
遅いコメント失礼します
晴れた日の雪稜闊歩は楽しくてやめられませんね〜。
kamadamさんの念願叶って何よりです
山形からも太平山に日帰りで登りに行くハイカーがいるくらいなので、よほど面白い山なんだろうなとは思っていました。
すれ違った人数を聞いて納得しましたよ。
それにしても素敵なルートです。いつまでもマイナーでありますように
秋田温泉さとみ、竿灯見物のときに一度泊まったことがあります
秋田温泉さとみの隣りに日帰り入浴用の「あきた温泉」があって、そこに入ったのですよ。いつ行っても結構混んでます。
山形からも日帰りで太平山登山ですか
今日の秋田は良い天気になりました。中岳への稜線も白く輝いて見えます。私は今日は何もなく
分県ガイド・秋田のトップを飾っていた山だったので、私も宮城県でいうなら泉が岳?と思っていました。
とても美しい稜線をもつ山ですね。皆さんにとても愛されている地元の山なのですね。
余談として書かれたエピソード。私も若い頃に山に出会っていたならば、もっとぶれずに、そして今よりちょっと後悔が少ない生き方ができたのかもと思う事があります。
今、自分の芯がおぼつかない気持ちになった時、目の前に見えるどっしりとした山を見ると心が静かになるのです。「大丈夫」って言ってくれているような気もして。
先日山から帰る途中、主人と「昔から何度も通っている道なのに、山登りを始めるまでは、山はただの 風景 だったね」と話しました。山と人って出会うべくして出会うのだなぁとkamadamさんの記録を読んで思わずにはいられませんでした。
秋田の長い冬ももう終わりですね
丁寧な、気持ちのこもったコメント、ありがとうございます。年齢では一応私の方が上なのですが、keen2さんのコメントからは学ぶことが多いな-と、正直敬服しています。私の場合、ぶれたり後悔することなんていっぱい
富士山の姿は日本人のものの感じ方・考え方に少なからず影響を与えたというようなこと、聞いたことがありますが、山の姿はその周囲に住む人々の心に間違いなく影響を与えていると思います。それを考えると、今故郷に帰れない福島の人たちの気持ちはいかばかりかと・・
「大丈夫」と言ってくれる山、いつまでも大切にしたいですね。
秋田も陽光輝く春を迎えました。keen2さんたちも秋田の雪山へいらっしゃいな
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