テント撤退って何や⁉️ 乗鞍岳、剣ヶ峰は次回に持ち越し


- GPS
- 08:46
- 距離
- 12.9km
- 登り
- 1,014m
- 下り
- 1,422m
コースタイム
- 山行
- 4:45
- 休憩
- 3:25
- 合計
- 8:10
天候 | 意外に好天スタートだったが、結局幕営地の肩ノ小屋では猛吹雪 |
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過去天気図(気象庁) | 2023年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
コース状況/ 危険箇所等 |
基本的に難しい所は朝日岳直下くらいだが、道迷いと暴風に注意 |
その他周辺情報 | 湯けむり館に寄りたかったが、泣きながらブラック&ホワイトアウト撤退したので、ゴールしたのが午前9時前で、営業開始まで30分待てなかった |
写真
装備
MYアイテム |
![]() 重量:-kg
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感想
なんか頭が冷たいな
あまりの強風で全く寝れなかったが、少しうとうとしていた。しかし、なにか冷たいものが頭を強烈に圧迫していて目を覚ました。時計を見ると1時過ぎだった。ドライシームレスダウンハガー#1のトンネルフードを見ると凍り付いている。また結露が氷結して落ちてきているのかと思ったがそうではなかった。頭の後ろのテントの壁がもっこりとこちらに張り出していた。
なんじゃこりゃ!
すぐに風雪の吹き溜まりの雪のせいだと気が付いた。「やっぱりここ吹き溜まりやったか…。どうりで雪が多いと思ったんだよな…」。肩ノ小屋の剣ヶ峰側に幕営していた。「たしか、雪山登山(野村仁著)に、『寝ている間に除雪が必要になる場合がある』って書いてたな…」。雪山テン泊では珍しくないのだが、全く想定できていない事態にパニックになった。
乗鞍岳はテント設営場所が難しい。そもそもバックカントリーの人が多いせいか、今日もテン泊なのは僕ぐらいだった。場所の候補は、スタートしてすぐの樹林帯、肩ノ小屋口のトイレの辺り、肩ノ小屋、そしてウルトラCの山頂だ。今日は暴風予報なのでセオリーは樹林帯だった。一応、ツアーコースから外れ、樹林帯の中を物色してみたが、あまりにもスタートから近すぎる。眺望でもよければ考えたがそれもいまいちだった。またその辺りは若干雪崩リスクもある。最高に雪崩リスクを避けれるのは山頂に幕営することだが、強風プラス、みんなの迷惑にならないようにするためには、かなり設営を遅らせなければならない。必然的に肩ノ小屋が本命になった。
3000メートル峰21座(23座の説もある)のうち、乗鞍岳(剣ヶ峰)がまだ残っていた。勝手な先入観だが、夏に関しては登山というよりは観光に近いので、冬期に挑戦と思っていた。また、冬期でも日帰りだとあまり距離もないので、テント泊にすると面白いかもと思いレコを探していた。するとヨシさんの年末のレコがヒットした。中々にサバイバルなテントの写真に、「これは痺れるな〜…」と、やっと乗鞍岳に行きたいというマグマが臨界点に達した。
天気予報はあまり冴えなかった。とにかく風が強い。しかし、3連休の日から月の午前中にかけては何とか満足できるレベルの様に感じられた。直前まで仙丈ケ岳と悩んでいたが、「サバイバルなテント泊の経験を積みたいな」という気持ちで乗鞍岳を選択した。
乗鞍岳は最初、Mt.乗鞍スノーリゾートのリフトで1980m辺りまで標高を上げることができる。チケットセンターで、「乗鞍岳登山の場合、最初3つリフトに乗るって聞いたんですが、その3つ分ください」というと、親切にも「最初のリフトはここから少し下がったところが乗り場なんですが、2つ目のリフトからにしますか?」と聞いてくれる。「2番目のリフト(夢の平クワッド)までは歩いてどれくらいですか?」と聞くと、「5分くらいです」。「あー、では2番目のリフトからにします」。「1200円(600円の回数券2枚)になります」。夢の平クワッドは9時から営業開始だが、5分前の8時55分から動き始めた。ちなみに、下りはリフトは使えないので、ずっと上から歩くことになる。そのせいか、ヒップそりを持った登山者もいた。
夢の平クワッド乗り場までは本当にすぐだった。この2番目のリフトの次は3番目のかもしかリフトに乗る。これはペアリフトなのでデカザックの僕は少し乗り降りに緊張した。かもしかリフトを下りると広い平らなスペースになっている。「スキー場の管理はここまで」と書いた赤い看板が少し先に見える。今日は、最近買ったMSRのライトニングアッセントを持ってきていた。まだここでは付けないだろうと思っていたが、少し歩くと意外に沈み込むのでスタートしてすぐに立ち止まり装着する。このスノーシューはワカン(特にマジックマウンテンの)対比猛烈に付けるのが簡単だ。スリッパの様に足を入れ、かかとのバックルを締めるだけだ。
ここから「ツアーコース」というのが始まる。基本的にはゲレンデの延長のような感じだ。やはりバックカントリーの人が多く、純粋な登山者の方が少ないように感じた。さらに地形や雪崩などに対する知識が必要だろうが、下りるだけではなくて、登るツールとしてもスキーは有効なんだろうなと興味を持つ。近くにいた人が少し太いスキーを履いて登っていたので質問すると、彼は「スプリットボード」というのを履いているらしい。登るときは二つに分かれてスキーのようだが、滑るときはくっつけてスノーボードになるらしい。彼は僕の装備を見て、「今日は上は爆風だと思いますよ」と忠告してくれた。
暫く行くと、この時間にすでに下山している男性登山者がやってきた。軽装だったので、「もう下りて来たんですか?」と質問すると、「自分はリフト使わずに早く出たんですが、かなり風が強かったので山頂行くのはやめました。位ヶ原くらいまでしか行ってないんですが」という。かなりの見切りのよさやな…。それほど乗鞍上部の風はヤバイということか??とまたビビる。この辺りから樹林帯を物色し始めたが、あまりそそられる場所はなかった。樹林帯ではないが、ツアーコースの端の方に、かなり豪快に積まれたスノーブロックで囲まれたテント跡が現れた。眺望的には確かに高天ヶ原がよく見える。少し気持ちが揺れ動いたが、最初から「肩ノ小屋」が頭にあったので、スルーしてしまった。今考えればここでテン泊していれば、全く違った気持ちで下山できたかもしれない。
ツアーコースは1から6までの番号が振られていて、その6を越え少し行ったところに位ヶ原山荘との分岐がある。「雪山登山ルート集」では「6番から曲がると位ヶ原山荘」と書かれていたが違うようだ。ここからしばらく行くと樹林帯が消え、ものすごくスペイシーな空間になる。左手には高天ヶ原が白くてデカイ。その奧に少し雲がかかっていたのが剣ヶ峯だったのか。この辺りにも所々寂し気ではあるが樹木があった。一応ルートから外れ、スノーシューパワーで偵察に行ったが、やはり穂高方面の眺望はなかった。かなり勘違いしていたが、穂高方面の眺望は位ヶ原山荘から少し上がった雪原から拝めたようだ。しかし、そこにテントを張ると雪崩のリスクが高い。
結局、決め手がないまま肩ノ小屋口にあるトイレ棟までやって来た。そこには何人かの登山者がいて、これから帰るようだった。そこからは、富士見岳に登っている登山者が見えた。恐らくバックカントリースキーヤーなのか。富士見岳と言えば、大雪崩を引き起こしたことで有名だ。位ケ原山荘のWebサイトによれば、「富士見岳東面上部で発生したと思われる雪崩は、富士見沢を掛け降り、一部は緩やかな尾根を乗り越え鶴が沢に入り込み、車道を横切り、デブリ先端は山荘より下の標高2,300m付近にまで達した」とあった。それもあって、この影響を受けない肩ノ小屋にテントを張るというのが最終的に第一候補だった。
肩ノ小屋へ向かって沢筋のような地形を登っていく。今回はかなり雪崩の恐怖が頭にあったので、いちいち雪の感じが気になる。今日は何人か剣ヶ峰に登頂していたが、なぜだか小屋まであまりトレースはなかった。小屋よりも前に、自然科学研究機構 乗鞍観測所がかなり目立つのでまず視界に入ってくる。それからほどなく小屋が見えてきた。どちらが小屋の表か裏か分からないが、まず観測所側に登り着く。時刻は午後1時前だった。僕は、この時ですら穂高の眺望を期待していた。しかし、こちら側は何の眺望もない(その観測所があるのが摩利支天岳なのか?)ので、左から小屋の反対側に回り込む。こちらからは前に朝日岳、その奧に剣ヶ峰とおぼしき山が見えた。とりあえず、一番西側のちょっとした岩がある場所にザックを下ろす。南東の方角には何やら少し立派な山も見える。ここからテント場の物色にかなり時間を使う。まだこの時点では風はそれほど強くはなかったが、暴風が予想されているだけに、できるだけそれを防いでくれる風よけがありそうな場所がほしかった。眺望がそちらの方が良かったので、小屋に沿って東の方に歩いてく。するとそこは風が強いのか雪がほとんどなく地面が露出していた。「これはアカンな。普通のペグ持ってきてない…」。また、自分が下ろしたザックのさらに西側になにやら小屋のような構造物があった(東大宇宙線研究所観測所)のでそちらに歩いて行く。その建物の手前には「これより立ち入り禁止」のロープが掛けられていたが、その手前に何やらシェルターのものがあった。雪をグローブでこすり看板を見ると、「肩の小屋緊急避難場所」とあった。しかし、入り口とおぼしき部分には板が打ち付けれられていて、中に入れるかどうかもわからなかった。
結局、自分が最初にザックを置いた場所を整地していく。この場所だけやたらと雪の量が多いのが気になった。「もしかして吹き溜まりなのかな?」と自分で思ったことを覚えている。とにもかくにもスノーブロックを切り出さないといけない。しかし、雪が締まっておらず、密度の高いブロックが効率よく切り出せない。風は西側からと、南の剣ヶ峰からの吹き下ろしがきつかったので両方に積む必要があり、かなりの量のブロックが必要だった。地面を二段掘り下げ、1時間以上かけて、何とか切り出したブロックをテントの天井よりも高くなる位置まで積み上げた。スノーシューを再び履き、地面を踏み固める。これは効率がよかった。やっとテント設営の準備が整い、ステラリッジ2型をさっと組み上げた。今日はスノーフライを持ってきてたので、インナーテントにかぶせ、四角のポールをポケットに差し入れていく。これがコツが必要でなかなかスムーズにいかない。しかし、この時重要な忘れ物をしていることに気が付いた。「しまった!ガイラインをレインフライから付け替えてくるの忘れた!」。強風予想なのに何やってるんや…。とりあえず、四角にはローカスギアのEaston Gold 24を差し込む。各辺のセンターにあるループに竹ペグを使いかなり深めに埋め込むことでガイラインの代用とすることにした。普段はそこにMSRのブリザードステイクを単に縦方向に刺すが、あまり効いている感じはしていなかった。
やっとテントに入ってビールを飲み始めた時にはもう3時を回っていた。なんだかんだで2時間弱も設営に時間がかかってしまった。今回は冬期テント泊の設営手順を思い出すも目的の一つだったので、そこに時間をかけたとも言えるが、厳しい環境でもてきぱき張るスキルを身に付けないと危ない。朝食べて以来何も食べていなかったので、カレーの準備を始めた。アルファ米にテルモスの山専用ボトルに入れて来た湯を注ぐ。15分待つ間に、そのアルファ米のパッケージとカレーのパッケージをカレーの外袋に一緒に入れカレーを温める。やったことはないが、やはり鍋にカレーを出して温めた方がうまいだろう。そんなことをしているとあっという間に午後4時になった。さっきから気になっていたのだが、こんな時間なのにまだ空がかなり明るい。しかも今日で一番天気がいいように感じた。「アーベン見に行くかな…」。地図で時間を確認すると、剣ヶ峰まで往復してコースタイムで90分といったところだった。「帰りはヘッデンだけど、頂上から肩ノ小屋見えるだろうし問題ないだろう」
ビールも飲み、カレーも食べたばかりだったが、時間もないのでさっと身支度を整えテントの外に出た。さすがにこの時間だけに誰もいない。アイゼンとヘルメットを装着し、剣ヶ峰口からスタートした。風が強かったせいか、あまりトレースがはっきりしない。適当に行くとそこそこずぼり、結構な斜面の登りなので案外大変だった。雪質的に滑る感じではく、足がめり込む感じなので危険さはない。しかし、ここからの道は朝日岳直登とトラバースしてコルに直接出る方法があり、時折判別できるトレースがどちらに向かっているのか分かりにくい。右往左往しながら、結局朝日岳頂上直前でトラバースした。あまり手前からトラバースできるような斜面には見えなかったので、これが正規のトラバースルートかもしれない。このコルからの景色が最高だった。ピンク色に染まる空にやっと見えた穂高の白い山並が映える。朝日岳も中々の迫力だ。視線を左に移すと剣ヶ峰との間の空が真っ赤に染まっていた。もう目の間に剣ヶ峰が大きく見えているが、それなりの急登を登らないといけないように感じた。少しテント設営で疲れてしまったのと、明日の朝のモルゲンに楽しみを取っておこうと、敢えて剣ヶ峰には登らずにここで引き返した。これを最後まで悔やむことになる。
ここからの帰りは意外に恐怖だった。先は見えているものの、足元が分かりにくい。乗鞍岳登山道の特徴なのか、全てがだだっ広過ぎて、どこを歩いていいか分からない。しかも結構真っ暗になってきて、ヘッデンの出力があまり十分ではなかった。慎重に、時折カニ歩きで高度を下げ、何とか剣ヶ峰口の道標を目視し、テントに戻ることができた。「フゥ〜、意外に緊張するな…」
テントに入り、2缶目のビールを飲んだ。せっかく持ってきたウィンナーを焼いてなかったので、今回初使用のプリムスULTRA GASにプリムスウルトラバーナーP-153をセットする。もちろん点火トリガーは効かないのでライターで火を点けた。最初ガスの色はきれいなブルーだったのに、すぐに赤い色に変わって少しドキッとする。このULTRA GASはかなり特殊なガスで寒冷地でしか使えない。その初使用だったので、少し緊張していた。ウインナーを食べ、コーヒーを飲み終わるとかなり疲れを感じて来た。今日は入れたい放題詰めたザックの重量は27キロほどになっていた。しかも初めてのスノーシュー歩きと疲れて当たり前だった。明日はもうモルゲンを見て帰るだけなので、特段ルートを検討する必要もない。たっぷり寝るかなと7時半にはシュラフに潜り込んだ。
しかし、たっぷりどころか全く寝れなかった。予報通り風が猛烈に吹き始めた。スノーブロックはかなりいい感じに積み上げられているはずなのに、かなり危なげにテントが揺さぶられる。そうは言っても槍ヶ岳山荘の風が強い時くらいなのでどうということはないのだが、寝るには揺れが大きすぎる。やはり、厳冬期の北アルプスで標高2800mにテントを張っているのだから当たり前か。体を横向きにしながらなんとか少しうとうとしていたのだろうか。冒頭にあった頭の冷たさで目を覚ました。パニックになりながらも、雪かきをしないといけないと起き上がり準備をする。テムレスを付け、バラクラバをかぶり、ヘッデンを付けた。足にはもともと裏側がゴアテックスのテントシューズを履いていたので、そのまま外に出た。完全な猛吹雪だった。今まで見たこともないような荒れ狂い様でリアルに恐怖を感じる。実際には雪が降っていたか定かではないが、少なくとも強風に雪が舞いあげられ猛吹雪と同じ状態になっていた。気を取り直し、スノーショベルを取り、雪を取り除いていく。ここは恐れた通り猛烈な吹き溜まりだったようだ。とりあえず一番ひどかった頭側の雪を除雪していく。幸い積み上げたスノーブロック自体は無事だった。作業を終えヒーヒー言いながらテントに這い戻った。「オレ、とんでもない環境に一人でおるな…」。本当に恐怖を感じていた。月曜日の昼頃から天候が悪化する予報だったのだが、前線が通過するのが早まったのだろうか?ここは電波が入らないので、最新の天気予報をチェックする術はなかった。やはり、人間は自分の予想以上の恐怖を感じると、何でも悲観的に考えてしまうようだ。いったん除雪したのでテントの張り出しはなくなったが、全く眠るような気分にはなれなかった。もともと3時に目覚ましを掛けていたので、いまから2時間後にもう一度雪かきをしてからどうするか考えよう。もうモルゲンを見に行くことは頭から消え失せ、どうやって避難するのが最適かばかりを考えていた。雪かきをしているときも、指先が痛くなり、「凍傷になったらどうしよう」とどこまでなら凍傷でないかも知らないので変に不安になる。「これ、テントから1日出れない事態になりうるのかな…」。色んな不安に悶々としながらも体力回復のために横になり目を閉じる。「この吹雪の中、テントの撤収できるか?」「何時間くらいこういう吹雪の中にいたら人間は死ぬんかな?」「やっぱり誰もここでテント張ってないはずやな…」「オレ何のためにこんな恐怖味わってんねん…」
そんなことを考えているとまたうとうとしていたようで、目覚ましが鳴った。10分くらいして起きだし、頭の方のテントの壁を触ると、先ほどより小さいがまたしっかり張り出していた。外の様子を見るのを兼ねて雪かきにテントの外に出た。天候は2時間前と全く同じだった。僕は怖いくらいの雪煙の中に立っていた。あまり長い時間外にいたくないので、さっさと雪かきしてテントに戻った。昨日あらかじめシュラフの中に入れておいたあんパンをつまむ。昨日寝る前に水作りをし、沸騰させてテルモスを満タンにしておいた。そのお湯を使ってビーフシチューを作ったがお湯は熱々ではなかった。もともと入っていたお湯がそれなりあったのか。やはりお湯を使い切ってから沸騰したお湯を入れた方がいいかもしれない。シュラフの中に入れておいたナルゲンボトルの水を飲みながら考えた。日が出るまであと3時間はある。もちろん日が出るまで待って行動した方が安心感が増すが、その3時間で更に天気が悪化するリスクがある。ここまでの猛吹雪を見れば、天気予報が少し前ずれした(悪化のタイミングが早まった)と考える方が自然だろう。しかし一方で、この猛吹雪の中テントを撤収してしまうリスクもかなり恐ろしかった。色々考えた挙句、外に出て撤収している時間をなるべく少なくしながら、ブラック撤退するのが一番リスクが低いと結論付けた。まずはテント内でどんどん片付けていく。今回はモンベルのExpedition pack80を持ってきていたが、このザックはザックの下部からもザック内にアクセスできるのがありがたい。いつも最後に撤収するインナーテントをザックの下部に収納できず、一度テントの外で荷物をひっくり返していたが、それを今するわけにはいかないからだ。
何とか自分の中では猛烈に急いで撤収を終えた。コストとしてはMSRのブリザードステイクを一本とピッケルのピック&ブレードカバーを失くしたことくらいか。天候は一向に回復しないので、ブラック&ホワイトアウト撤退だった。コンパスでまずは肩の小屋口のトイレを目標に合わせた。ほぼまっすぐな道だが、逐一立ち止まり方向がずれていないかを確認する。もちろんYMAPとヤマレコも適宜チェックした。ちょっとした先も見えないので、慎重に歩き無事に肩ノ小屋口のトイレに辿り着いた。時折残っているトレースの跡を見るとぐっと気持ちが楽になった。ここからツアーコース終了点までが一番迷いやすいが、またコンパスを微調整し、それに従いきっちり歩くことができた。また時折残されいたトレースにも助けられた。この辺りまで来るとさすがに風も大分落ち着いてきた。少し前から月がキレイに見えているのに気が付いていた。少し前まで恐怖一辺倒で「生きて帰れるのか?」くらい大袈裟に思っていたのに、きれいな月を見て、「どっかでザックデポして、また剣ヶ峰行ってみようかな」とすら思い始めていた。もちろんそんなことはしなかったが。ツアーコースも下部に近づいて来たとき、樹林帯の木々の合間から太陽が見え始めた。いつも見るような燃えるような朝日だった。「いやぁ〜。厳冬期、北アルプス、テン泊なかなか痺れるわ〜」
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