戸屋林道〜ランカン尾根〜笊〜椹島〜聖東尾根〜聖〜椹島〜二軒〜大井川東俣・池ノ沢〜広河内〜白河内〜笹山〜奈良田

コースタイム
戸屋林道行き止まり445→915小笊920→940笊ヶ岳1200→1430椹島
7.31
椹島430→途中、樹林帯で1H横になる→930白蓬ノ頭1030→1230聖頂稜
8.1
聖頂稜600→640聖平800→1030椹島1245→1500二軒小屋
8.2
二軒小屋445→1045池ノ沢出合1200→1400池ノ沢池
8.3
池ノ沢池500→700稜線→720広河内岳800→915白河内岳→笹山(黒河内岳)1050→1330奈良田〜バス〜大島1500→徒歩→1800戸屋林道出発地点
| 天候 | 基本、晴れ 暑すぎ。 たまに夕立 |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2015年07月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
| コース状況/ 危険箇所等 |
笊 ランカン尾根 早川のメインストリートから雨畑方面に入り、しばらくして右折、戸屋林道に入る。どん突きまで行ってもそこまでの悪路ではないが、車高高い四駆に越したことはない。法面の崩落などは不安要素。 縦走する場合、車を回収する為にバス停から3時間ほど歩く。 しばらく廃林道を辿り、ある時から尾根を急に突き上げる。自分は時折ある赤テープは無視して、地形図に忠実にトレースした。(テープのないところから取り付いた) ルーファイはそんなに難しくはない。マーキングもある。 ただ急登の連続&ダウンもかなりあり、幼木やハイマツのヤブや、大岩の高巻きなど、なかなかにハード。 小笊と大笊の間もヤブ。 笊 椹島ルート いくつもの滝や静かな草原があり、原始の雰囲気を残す素晴らしいルート。 2008年の地図では破線扱いになっているが、歩きやすく一般ルートが妥当。 聖岳 東尾根 赤石沢に架かる橋を越えて、しばらく歩いて右側に取り付きがある。赤テープは垂れているが、標識などは何もない。 2000mを越えるまで、鬱蒼とした樹林帯のなかを、ジグザグしながら登る。足場はガレやザレなどが多い。マーキングはある。 上の方に行くにつれ、ハイマツが被さる。 奥聖に着く手前で、カール状のところをトラバースして突き上げると、奥聖に着く。 個人的には、ランカン尾根よりハードだったように思う。 大井川東俣 二軒小屋から蝙蝠岳の登山口までは普通の林道。 その後は、一瞬戸惑うような草ボーボーっぷり、崩落トラバースの廃林道、なばかりんどう、なごりんどうをゆく。 林道を覆う、アザミの群生がけっこう痛い。 林道を覆う植物たちは、夕立や朝露で濡れており、びっしょりになる。 沢沿いを中心に、ことごとく崩壊しているので、何度か際どいトラバースをする。 2箇所は致命的に危なく、ひとつは立って手を上に伸ばした状態でようやく届くようなトラロープのようなロープを頼りに、ガレの流れきった急斜面の緩土を高巻く。後に会った源流釣りの方たち曰く、5年くらい前から危なくて渡れないので、沢に下りて進んでいるらしい。また行くとしたら、ロープ持参か、河原におりる。自分は行けると思ったので渡った。状況により、行けないと思ったら辞めた方がいい。年々状況が変わるし、まじで死ぬようなところ。 沢靴に履き替え、池ノ沢出合いまで浸かりながら歩く。 池ノ沢 最初のうちはジャポジャポ遊んでいたが、沢初めて&泳げない自分には判断が難しく、高巻きに転じた。 下部は特に、倒木や幼木が密集しており、今まで歩いた南アルプスのバリの中では屈指の難ルートだった。 いちど緩土の高巻きトラバースで5mくらい滑落したが、下が危ない沢ではなかったので焦りはなく、冷静に止めた。 途中からやや歩きやすくなる。こんな水量の多いところから、本当にいきなり池が現れるのか?と思っていたが、本当に現れた。 池より上はやや分かりやすい高巻きだが、時折ハイマツのガシガシヤブに突っ込む。自分は、漫然と沢を詰めていたら、広河内の支稜線に上がってしまった。その後ハイマツヤブをこぎ広河内へ。 白峰南嶺(広河内〜笹山) ガスっていると難ルートだが、晴れていると割かし易しい。大籠の手前でいちど背丈の低いハイマツをこいだ。晴れていても、このようなことがあり、南嶺は甘くない。 笹山東尾根 ルート明瞭。ちょーあるきやすい。 登りに使うと単調で大変かもしれないが、下りに使うには最適なルート。 |
| その他周辺情報 | 今回は、甲府盆地に出て、国母駅前温泉に浸かった。 前から行きたいと思っていたが、前回行った時は休みだった。 泉質は、仄かなとろみとわずかに泡々で、緑っぽい黄色。 無臭で、飲み込みたくない味。 入った途端にすべすべになる。 町中なのでちょっと混んでいるが、いい温泉だった。 甲府盆地の温泉は、ロケーションはあれだが、泉質は外れがほとんどない。 |
感想
まず今回の山行の骨組みとして、7月31日のブルームーンが見られる晩に、どこか眺めのいい原に立っているということが思い浮かんだ。
すると、真っ先に思い浮かんだのが、未だ晴れ渡った時に頂に立ったことのない、聖の頂稜だった。
いい天気をつかめば、まず素晴らしい夜になるに違いないと思い、そこから組み立てた。
聖の頂に行くとしたら、未だ未踏の東尾根からだろう。
そして、今年は南アルプスの大縦走は念頭になかったので、好きな山をダイジェスト的に繋いで、コンパクトだけど充実した縦走にしようと思った。
聖沢沿いのルートは歩いたことがないから、よし通過。
あとは...白河内かな。晴れの時にあの広大な台地に立ったことがない。
白河内に行くには...池ノ沢池を辿って...がいいかもな。
ついでに、ランカンから笊に上がって、奥山をにらんで、モチベーションを高めていくか...
下りは、当然のごとく、笹山の新しくできた道か。
こんな感じで、割とあっさりルートが組み上がった。
若干短いけど...、けっこういいんじゃないか?と。
7.30
悪路を深々と入ったので、土砂崩落で帰れなくなることや、車へ歩いて帰ることを思うと、先行き不安な出発ではあった。
そんな中出発。廃林道を歩いている時点で、尋常じゃない量の汗をかく。
今回の山行を通して、汗のかきかたが半端じゃなく、単に暑かったからなのか、体調の問題なのかよく分からない。
笊は、初めてテントを張った地で、大好きな山なので、燃えまさね。
でも、急登の連続であるのと、単独行ゆえにボンミスが許されないので、冷静にルーファイしながら、手堅く登っていった。
小笊に出ると、ヤブに覆われた雑然とした頂。これが小笊か。感慨深い。
大笊へ繋ぐ。ヤブを掻き分けながら。
笊。去年も来たが、去年はなんも見えなかった。今年は...
おー見える!一気に興奮する。
上河内・聖・赤石・荒川が、ほんの頭だけ雲に隠しているが、大部分が見える。こんな遅い時間に、これだけ見られれば大満足です。山の神様、ありがとう。
7年ぶりの笊テントにも惹かれたが、明日の行程を考えると椹島に行っておきたい。
椹島への下降ルートは、自分の持っている地図では破線になっている。でも、写真で見た覚えでは山梨側より面白そうなところなので、楽しみだった。
枯れ沢の中を歩いたり、ずーっとトラバースが続くのだが、ちょー歩きやすくてひょいひょいゆく。
尾根を巻き滝におりの繰り返しなので、こまかなアップダウンが連続した。
滝が幾つも現れ、水飲み放題、浴び放題、緩い尾根に乗ってからは、静かないい原に出た。まるで青薙の辺りのような、楽園的な雰囲気で。
不意に1時間以上もぼうっと佇んでしまった。
この時、やっぱり登山は一人に限ると思った。
誰かと行くのも別のベクトルで愉しいけど、自分が求める本当のなにかは一人の時に得られるものらしい。
不意に、森の木々に、存在してくれていてありがとうと話し掛けていた。
あなたたちも僕も幸せだね。最高の瞬間。
この時、私の魂は、浮き世の沙汰から解放されて、どこまでも自由だった。愛と調和に満たされていた。
そこで眠りたくなったが、やはり先の行程を考え...次へ。
林道に降りるとくそ暑かった。やばすぎる。手ぬぐいの結び目を大きく開いて、首を覆う。
初めて椹島に行った。
なんか、上高地っぽい。人がたくさん居る。車とかもたくさんある。
そこの売店を覗いたら、見覚えのある顔が。
おととしの南北スルーの時に、百間洞の小屋で受付をしていた子である。
そこから話がはずみ、夕方一緒に飲んだりした。
生ビールに、チューハイに、スイカに、コーヒーに...ついでにバンダナもくれたり。
共通の知り合いが何人か居ることや、白馬移住組であること...近い波長の(自然派の)人であるのは違いないかんじで、なかなか愉しいひとときだった。
パートナーはガイドをしているそうで、今度一緒に白馬で山スキーしましょうと云っていた。たまには誰かと滑るのも愉しそう。
7.31
道中赤石沢の豪快な流れを橋下に見る。
取り付きは、目立たないと言えばそうな。
しばらくは、暑くて蒸し蒸しとした、ガレザレの樹林帯のつづら折れの急登が続く。
2100m辺りで頭が火照っているのを感じ、木陰に銀マットを敷き、上半身裸になって、ペットボトルの水を水枕にして昼寝することにした。
寝転がり、虫にたかられている時、あー俺は生きているぞと思った。
すこし回復。
その後、白蓬でも同じように昼寝した。楽しみにしていた白蓬からは、すかっ晴れの眺めは得られなかった。
その後、トレースはしっかりしているが、ハイマツが被さっている道が続き、遅々として進まなかった。
バリルートというのは、大概遅々として進まないことが多いので、着実に進む。
ようやく奥聖の天辺に着いて憩う。ひたすらのんびりする。
日中は暑かったので岩影で休んでいた。
夕方、月の出の18時30分になっても、ガスは切れなかった。
その後、ふと目覚めると...
煌々と真ん丸いお月さんが出ていた。
辺りもガスが切れ...山々が見える!
おー......! 久しぶりに大きな感動を受けつつ、月に明るく照らされた稜線を前聖の天辺へ歩いた。
やばい、月光で明るんだ南アルプスを独占状態。
こんな光景見たことがない。辺り一帯が、電気を点けたように明るい。
赤石や笊、富士山などが月光の中佇んでいる。
刻々と移ろいゆく神秘的な光景を、ずっと見ていたくて、何時間も外に立っていた。こんなに飽くなく、山の夜を堪能したのは、初めてのテント泊以来かもしれない。
満月の夜の、快晴無風の聖の頂上稜線を、月光平とよぼう。
夜の山は、あんなに幻想的な姿をしているんだな。
8.1
朝目覚めると日の出直前だった。
とりあえず外に出る。
日があがるのを見つめる。
辺りの色が変わってゆく。
昨夜より見える範囲が広がり、あらゆる山が見えている。仙丈や北アルプス、中央アルプスなども。
聖からは、こうやって見えるんだ。初めての晴れた聖を月光で体験し、朝なの最も美しい時間を頂上に居られる幸せを噛み締めていた。
後ろ髪引かれる思いだが、先は長いので下り始める。
ちゃちゃっと聖平まで下ると、小屋の人たちが居たので話し掛けた。
忙しい時間帯がおわって、ゆっくりする時間だろうに...とても柔和な雰囲気の山男、Kさんはフルポンを持ってきてくれた。
まさかこんな時間にフルポンをいただけるとは。3年連続フルーツポンチ。ありがとうございます。
小屋主のHさんともしばし話す。いい顔というか、体というか...いいオーラしてるなこの人はと思いながら。
この人が居るから、この小屋の人たちが集まってくるんだな。いい雰囲気の小屋だ。
聖平小屋でだいぶのんびりして出発。
聖沢沿いの高巻きみちをひょいひょい降りる。
途中から、右膝が痛くなったが、我慢して歩く。
八ツの天狗の庭で痛めた古傷がたまに痛むのである。
椹島に降り、売店の子に再び挨拶して(チューハイも貰って)、いざ核心を目指して出発。
歩き始めたはいいが、膝が痛く、かばいながら林道をゆく。途中天然シャワー(夕立)を浴びたりしながら、ようやく二軒小屋に着いた。
夕立が降ったり、ドラマティックな空色の夕暮れだった。また、二軒の緑の草原が絵になる。
8.2
今日から核心部なので、やや緊張して出発。
膝が悪化しないように、ゆっくり進む。
蝙蝠の取り付きまでは、去年も歩いているので難なく。
その後、ここを歩くのか?というかんじの、草ボーボー崩落トラバースだらけの林道を進む。
夕立で濡れた草々にびっしょり。アザミ畑がチクチク痛い。二箇所ほど、致命的に悪い崩壊トラバースがあり、一箇所目は慎重に足場とホールドを決め、集中して乗り越えた。
二箇所目は、ガレが落ちきったザレの急斜で、空中にロープが渡っている。なんかシュールだな。
こんなとこ行けんのか?と、撤退も浮かんだが、試しに一歩やってみると案外しっかり決まるので、結局渡ってしまった。結果オーライなかんじではある。そもそも、沢身も歩けそうだったので、わさわざわざ高巻かなくてもよかろうに。
その後も、際どいトラバースを幾度かこなして、途中から沢装備を身に付け、ジャブジャブ沢を歩きながら進む。
池ノ沢の出合に着いて一息。
さあ、ここからが核心。
最初は沢身を進んだ。
しかし、沢身を歩き切る確信が持てず、樹間に高巻きを求めた。
時折、うっすらと昔の踏み跡がみられるが、激しい倒木や幼木のジャングルに阻まれる。
途中、緩土の高巻きで足場が崩れ、滑落した。
しかし、沢身は大したことはなかったので、落ちても死なないと思われ、冷静に止めた。
その後も、延々と高巻きを繰り返し、水流の強さに本当に池が現れるのか半信半疑ながら、登り続けた。
左手樹間に入り、もいちど戻ると、急に池が現れた。
しかも、池辺で焚き火をしている人たちが居る。
まさか人が居るとは。
その3人パーティーは上から来たらしい。向こうも驚いていた。
焚き火にあたらせてもらいながら、共に飲み語らう。たまに山の歌も出る。
ペミカンのカレーと焼酎を頂いた。カレーが旨かった。3人がテントに入った後も、焚き火に辺りながら夢幻なる池を眺めていた。
8.3
谷合が明るくなった頃出発。
今日も沢沿いを高巻きである。下部よりだいぶ分かりやすく歩きやすい。
時折ハイマツのジャングルに突っ込む。
空が開けると、草の生えた枯れ沢をぐんぐん登る。
どうやら予定とは違った沢筋を詰めているようだが、稜線まで問題なく行けそうに全貌が見えていたので、躊躇することなく進む。
最後ハイマツの激ヤブを抜け、広河内の支稜線に這い上がった。そこがまた、すばらしい庭園で。返って誤った沢筋を登ってよかった。
なんと素晴らしい眺めだろう。これから歩く白峰南嶺や農鳥が大きく迫る。
広河内に登り詰め休止。ここからは塩見の姿が美しい。
この先は昨年苦しめられた南嶺の高峰群である。
しかし、今日は快晴なので、ルーファイは易しそうだ。
しかし、途中一度ルートを外し、ハイマツヤブを渡ったが、あとはスカイトレイルを楽しみながら、すいすいと進む。
今回の最終目的地である、白河内岳に着く。
ここからは、荒川の姿がすばらしい。すばらし過ぎる。
只々、膨漠としている頂。
あらゆる山を見渡す、大平原にただ一人。
最高に幸せな瞬間だった。
その後、黒河内までささっと歩き、奈良田への道をひた下る。
非常に歩きやすいのだが、ここに来て再び膝が痛くなり、ペースダウン。
なんとか、我慢のくだりで、下へおり着く。
吊り橋を渡り、奈良田のバス停へ着いた。
自販機でしこたまジュースを買い、車回収の長い林道に備える。
膝をかばいながらも、長い長い林道を登り返し、なんとか車へ辿り着いた。
総じて、今回は暑い日が続き、また割かしハードな道も歩いたので、大変ではあったが、とても充実していた。毎日のように出会いもあり濃密な日々だった。
聖の頂稜で過ごしていた時、これだから山はやめられないと思っていた。
一片の悔い無し、今年の夏も、記憶に残る素晴らしい山旅ができた。
pumemo



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