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Yamareco

記録ID: 1089176
全員に公開
ハイキング
丹沢

大室山-加入道山 〜猟犬と私〜 S10

2017年03月20日(月) [日帰り]
情報量の目安: S
都道府県 神奈川県 山梨県
 - 拍手
体力度
4
1泊以上が適当
GPS
06:26
距離
15.6km
登り
1,355m
下り
1,350m
歩くペース
速い
0.70.8
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

日帰り
山行
5:56
休憩
0:29
合計
6:25
距離 15.6km 登り 1,357m 下り 1,354m
8:55
9:03
72
10:15
10:20
23
10:43
52
11:43
11:46
8
12:29
14
12:43
5
12:48
8
12:56
13:04
13
13:42
8
14:02
14:07
13
14:20
10
14:30
10
14:40
16
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2017年03月の天気図
アクセス
利用交通機関:
電車 バス
新松田駅発7:20(富士急バス、往復乗車券2,120円)西丹沢自然教室着8:36
西丹沢自然教室発15:40(同バス)かなん沢バス停着16:48、東名松田バス停着16:55(小田急箱根高速バス、1,230円)
コース状況/
危険箇所等
融雪後の泥濘多かった。スパッツ必携。
大室山と加入道山の間、特に気持ちの良い尾根道だった。
1時間半前、新松田駅で立ち食いソバを食べ、気力も充実、予定どおり西丹沢自然教室を出発する。
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1時間半前、新松田駅で立ち食いソバを食べ、気力も充実、予定どおり西丹沢自然教室を出発する。
用木沢出合には、数台車が停まっていた。身支度を整え、登山道に入る。
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用木沢出合には、数台車が停まっていた。身支度を整え、登山道に入る。
沢沿いの道は爽やかで気持ちが良い。
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沢沿いの道は爽やかで気持ちが良い。
幾度となく渡渉を繰り返す。
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幾度となく渡渉を繰り返す。
広河原に出た。
犬越路までの距離中間地点。ここから登り始める。暑い。
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犬越路までの距離中間地点。ここから登り始める。暑い。
陽射しをいっぱいに浴びて、緩やかに登る。
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陽射しをいっぱいに浴びて、緩やかに登る。
丹沢名物、階段の始まりである。
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丹沢名物、階段の始まりである。
10時15分、犬越路に到達。コースタイムより30分早い。陽射し柔らかくのんびりしたかったが、5分休憩で出発する。
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10時15分、犬越路に到達。コースタイムより30分早い。陽射し柔らかくのんびりしたかったが、5分休憩で出発する。
大室山へはきれいな避難小屋の脇を通る。
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大室山へはきれいな避難小屋の脇を通る。
檜洞丸と石棚山稜。
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檜洞丸と石棚山稜。
檜洞丸と遠く蛭ヶ岳。
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檜洞丸と遠く蛭ヶ岳。
今日は会えました。
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今日は会えました。
気持ち良い尾根道が続く。
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気持ち良い尾根道が続く。
向う大室山。
雪解け泥濘の道。
2
雪解け泥濘の道。
稜線に出た。
11時43分大室山に到達。山梨県の道標も現れた。
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11時43分大室山に到達。山梨県の道標も現れた。
眺望は無い。今日は休憩時間を見込んでいない行程。3分の滞在で後にする。
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眺望は無い。今日は休憩時間を見込んでいない行程。3分の滞在で後にする。
稜線上は残雪多く、
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稜線上は残雪多く、
こんなのがいました。
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こんなのがいました。
著名なRPGを彷彿とさせる木道。
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著名なRPGを彷彿とさせる木道。
12時19分、すっかり霞んでしまった。
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12時19分、すっかり霞んでしまった。
鞍部通過。この、かけがえのない静けさ。
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鞍部通過。この、かけがえのない静けさ。
凍結個所を渡り終えて。
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凍結個所を渡り終えて。
クマヨケ板2枚目。
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クマヨケ板2枚目。
向う加入道山。
鞍部に下りてゆく。逆コースにしなくて良かった。この階段は登りたくない。
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鞍部に下りてゆく。逆コースにしなくて良かった。この階段は登りたくない。
12時56分、加入道山。ここで今日4人目の方と出会う。出会った全員、独りだった。
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12時56分、加入道山。ここで今日4人目の方と出会う。出会った全員、独りだった。
13時17分、白石峠に到達。尾根を離れ、沢伝いに下りる。
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13時17分、白石峠に到達。尾根を離れ、沢伝いに下りる。
渓床を下る。警告板にあったように、豪雨時は危険な道だ。
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渓床を下る。警告板にあったように、豪雨時は危険な道だ。
やがて枯れ沢へ。次第に開放的に。
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やがて枯れ沢へ。次第に開放的に。
何も聞こえない。大切な静寂。
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何も聞こえない。大切な静寂。
突如、猟犬が現れた。あまりの衝撃に笑いそうになるが、全く笑えない状況。立ち止まっていると、ゆっくり近づいてきた。
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突如、猟犬が現れた。あまりの衝撃に笑いそうになるが、全く笑えない状況。立ち止まっていると、ゆっくり近づいてきた。
どうやら道に迷ったらしい。(後でわかったことだが、週末放たれたらしい。心配無用だった)私の後を追いて来る。このまま一緒に下山しよう。
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どうやら道に迷ったらしい。(後でわかったことだが、週末放たれたらしい。心配無用だった)私の後を追いて来る。このまま一緒に下山しよう。
時々、前に行っては私を待つ。寄り道をしているかと思えば、不思議と戻って来る。徐々に可愛く思えてきた。
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時々、前に行っては私を待つ。寄り道をしているかと思えば、不思議と戻って来る。徐々に可愛く思えてきた。
獲物を見つけたらしく、猛スピードで走り、吠え始めた。あっという間に猟犬は猪を追って遠くへ行ってしまった。仕方なく独りで下山を続ける。
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獲物を見つけたらしく、猛スピードで走り、吠え始めた。あっという間に猟犬は猪を追って遠くへ行ってしまった。仕方なく独りで下山を続ける。
用木沢出合。振り返っても彼の姿はない。無事でいることを願い、ゲートを通過した。
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用木沢出合。振り返っても彼の姿はない。無事でいることを願い、ゲートを通過した。
15時、西丹沢自然教室に戻ってきた。はぐれた猟犬の話をすると、落ち着いた応えが返ってきた。
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15時、西丹沢自然教室に戻ってきた。はぐれた猟犬の話をすると、落ち着いた応えが返ってきた。
予約していた高速バスに乗るべく、大渋滞必至の東名へ。車中、彼のことばかり思い出していた。
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予約していた高速バスに乗るべく、大渋滞必至の東名へ。車中、彼のことばかり思い出していた。

感想

 これほど印象深い山旅になるとは思いもよらなかった。犬越路を通過したからだろうか。昨年、尾瀬で、熊と一瞬目が合った時よりも、はるかに怖くて愛おしい時間だった。たった20分、けれどもそれは今日一日分の時間だった。

 新松田駅でバス待ち30分、珍しく立ち食いソバが食べたくなった。「往復券1割引」の声に、窓口でチケットを購入する。7時20分、満席のバスは定刻どおり出発した。終着地まで1時間10分の旅、そう長くは感じなかった。
 久しぶりの丹沢、久しぶりに人の多い山域を歩こう。西丹沢自然教室で降りた人の数、すでに並んでいた多くの車から、予想は的中すると思えた。けれども結果、山中出会った人は4人、いつもどおり終始、静かな時間に包まれることとなった。
 用木沢出合まで舗道を歩き、スパッツを装着して泥濘に備える。沢伝いにゆっくりと、緩やかに上った。数度の渡渉を経て、犬越路までの中間地点に至る。そこから階段状の道を上がり、やがて沢から離れる頃、陽射しは穏やかさを過ぎ、暑さを感じるほどになっていた。
 登山道に入ってからおよそ1時間後、予定よりも少し早く犬越路に達した。思わず寝ころびたくなる。心地よさに動けなくなる気がして、その、のんびりとした時間の流れる場所をあとにした。
 尾根道はこの上なく快適な道だった。そして春霞の中に浮かび上がる富士山。知らず知らずのうちに気分は高まり、足早になる。大室山への1時間半は短かった。木々に囲まれた山頂は、残雪のせいか一層静かに感じられた。今日は大休止の得られない行程、予定どおりのバスに乗車するために長居はできなかった。
 分岐点に戻る。間もなく正午、空腹は覚えない。朝のソバが効いているらしい。ベンチを横目に通過した。伸びやかな、ほとんど高低差の無い尾根道を、両手を広げながら歩く。2時間後の出来事が無ければ、今日のハイライト、になるはずだった。
 微かな風の通る鞍部を過ぎ、加入道山への最後の登りにかかる。気力体力ともに充実、まだまだ登れそうに思えたが、ほどなく山頂に到着した。出発してから4時間半、ザックを下ろし、腰を下ろした。ここも眺望は得られないが、なぜか愛おしい空間だった。下山には2時間と少し見ておけば十分、もう少し居たい。けれども結局、8分の滞在で出発した。この何気ない判断が、のちに功を奏する。
 白石峠までは僅か、そこからは枯れ沢を経て、幾つもの沢を合せながら下りて行く。今日は、沢を登り沢を下る道だった。あまりの静けさに不安になり、時折熊鈴を鳴らす。樹林帯を抜け、明るさを感じ、空を見上げたその時、気配を感じた。戻した視線の先に、一匹の犬がいた。
 
 この衝撃を何と表現しよう。怯む、動揺する、どんな言葉も相応しくない。ただ動けなかった。よく見ると首輪をしている。逞しさから猟犬であることがわかった。一匹は一頭になった。けれども状況に変わりはない。問題は彼がいついかなる状況で人里を離れたのか、或いは飼主とはぐれたか、だった。数日間彷徨っていたのではないか、ネガティブな設定しか思いつかない。
 彼はゆっくりと近づいてきた。立ち尽くしているとにおいを嗅ぎ、ゆっくりと遠ざかった。襲われることのないことを知り、思わず撮った。瞬く間に怖れとか疲れとか一切合財消えていった。それにしてももう少し後に山頂を出ていたら、樹林帯で突然遭遇したかもしれない。これはこれで幸運だったのだ。
 そのまま何もなかったように歩き始めると、後ろから追いてくる。付かず離れず、絶妙な距離を空けて追いてきた。奇妙なパーティーだった。時折、私の前を行き、待つ。かと思えば急に沢の方へ行き、何かのにおいを感じて戻る。渡渉も訳ない。私より遥かにこの地を知っていた。後から確認すればたった20分の時間。けれども彼を愛おしく思えるには十分だった。麓まで一緒に下りたかった。
 突然それまでとは明らかに異なる速さで走り出した。吠えはじめた。ほどなくして草むらから小型犬ほどの大きさの猪が飛び出してきた。野生の猪を見るのは初めてだ。そのまま猟犬に向かって突進して行った。上手に躱すと今度は彼が攻勢に出る。気づくと瞬く間に遠くへ走り去っていた。視界から消えそうになり、急に不安になった。親が出てきても大丈夫なのだろうか。しばらく茫然としたのち、諦め、独りで下山を続けた。
 西丹沢自然教室に着き、所員の方に報告すると、ハンターが週末放って回収していない、GPSを付けているから居場所はわかる、人を襲うことは無い、などの説明をしてくれた。その時は気づかず、ふんふん聞いていたが、丹沢の週末は猟犬と遭遇する可能性があるのだ。やはり山では予備知識が有りすぎるということは無い。
 建物を出て、来た道を振り返った。彼が今にも追いかけて来るように思えた。

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コメント

物語の様
初めてコメします。あまりに流麗な文章を楽しませていただきました。ありがとうございました。
大室山の手前のベンチ大好きです。日当たりが良く、何時迄ものんびり過ごしたくなります。行きたくなりました。
そうは言われても、猟犬が野犬と気づくまでの緊張、感じました。
2017/3/22 7:18
Re: 物語の様
roadwalker様
 おはようございます。
 何度も丹沢には足を運んでいるのですが、初めての経験をしました。
 ハンターの方と一緒の猟犬とは、他の山域で時々遭遇するのですが、
 猟犬1頭のみで山中に放つことなど知りませんでした。
 西丹沢自然教室の方によると、20年前には野犬が多く、遭遇すると
 命の危機があったそうですが、今では1匹もいなくなったとのことです。
 知識は有って困ることは無いですね。
2017/3/22 8:55
驚きと楽しいひととき
kimichin2様
こんにちは。

空がかすみはじめました。
かすみの空の中でも富士山はほほえんでくれていますね!!
残雪もかろうじてありますが、季節は確実に春になってきているのですね…

猟犬との出会い、さぞかし驚かれたことと思います。
私も、去年石尾根で下山中、前方から首にGPSを3個くらいつけた犬が単独で歩いてきて驚いたことがありました。
猟犬とひととき一緒に歩かれた時の楽しそうな御様子が伝わってきました!!

レコを読ませていただいて、小さい頃の思い出がよみがえってきました。
父方の田舎が福島なのですが、帰省した時、飼い犬がいました。子供達だけで裏山に登りにいった時、彼は心配だったのか、一緒に来てくれました。先導したり、遅れた子がいると、戻ってきて、一番最後から来たりと、一生懸命面倒をみてくれました。

今年は福島で、週末、スキーの練習をしている時、結構磐梯山が見えました。
磐梯山が見える度に、kimichin2様の猪苗代スキー場から裏磐梯スキー場への磐梯山縦走のレコを思い出し、リフトに乗っている時、よく連れ合いに話しをしました。
福島で磐梯山を見ると最近うれしい気持ちになります。
(スキーの練習中で写真が撮れないのでちょっと残念です。)
kimichin2様が富士山が見える山域に行かれて、富士山が見えた時にうれしいと思われるお気持ちに似ているのかなあと思いました。

これからも、静かでおだやかなお山歩き満喫されてください。
2017/3/22 13:28
Re: 驚きと楽しいひととき
reochi19様
 こんばんは。
 実は私は7年前まで犬が苦手でした。特に吠えられるとダメで、なるべく近寄らないようにしていました。今でも取り立てて好きな訳ではないのですが、賢い犬には敬意を払いたくなります。
 独りで静かに登ることに慣れ、ちょっとした(今回は私にはちょっとしたことではないのですが)ことにも驚いてしまいます。花の名前は覚えようとしないし、動物とも出会いたくない、山での楽しみを半分くらい損しているような気がします。
 福島の空は変わらず高いのでしょう。磐梯山で、燧ヶ岳で、安達太良山で、見上げると空の青さだけが沁みてきます。でもあまり見上げてばかりいると、気配を感じますよ。
 スキー、存分に楽しまれることを!  
2017/3/22 19:13
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

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