丹沢・城ヶ尾峠から加入道山、大室山、神ノ川ヒュッテ


- GPS
- --:--
- 距離
- 22.4km
- 登り
- 1,477m
- 下り
- 1,829m
コースタイム
【月日】1999年8月17日(日帰り)
【メンバー】tanigawa、Aさん(60代後半)、Kさん(30代後半)
【行動タイム】
16日夜 丹沢・北山麓(津久井町)に集合、泊。
17日 津久井町(5:25)車→三ヶ瀬川の水晶橋上(6:04)→城ヶ尾峠
(6:50)→大界木山(7:38)→モロクボ沢の頭(8:33)→水晶沢の頭
(10:05)→白石峠(10:32)→加入道山(11:03〜31)→大室山
(13:07〜32)→犬越路(15:03〜10)→神ノ川ヒュッテ(16:2
6)車→津久井町(16:55)
仕事のたびに丹沢の北山麓に出かけると、大室山(1588メートル)は間近に
見上げることができる。近くの犬越路の峠までは何度か上がったことがあるのに、
頂上には登ったことがなかった。山の仲間のトレーニング山行にと声をかけられ
て、「ぜひ行きましょう」とのることにした。丹沢の北西部の稜線を縦走すること
になるので、うまくいけば富士山や遠望の山々も撮影できるかもしれない。
8月16日、あきる野市の自宅を夜8時すぎに発って、中央道相模湖インター経
由で、前夜のうちに津久井町の集合場所に入った。奥相模湖ダム(道志川)では、
2日前に大雨の増水で流された2人のキャンパーの捜索で、警察の人たちが投光器
で湖面を照らしていた。集落の中の消防団の建物も明々と灯がともっていた。
17日、早朝に車で道志川沿いの国道を登り、道志村に「道の駅」が川沿いにで
きたところから細い車道に上がっていく。三ヶ瀬川の水晶橋を渡って左の林道に入
ると、すぐに道志村キャンプ場で、支流の東沢沿いに100台ほどの車とテントが
キャンプ中だった。キャンプ場を抜けたところで林道の車止め(チェーン)に突き
当たり(標高940メートル)、6時04分、登り始める。
登り出してすぐに林道わきに長さ2センチほどの卵型の真っ赤な苺の実がいっぱ
いなっていた。葉も実も、ノウゴウイチゴに似ているが、こんな標高が低い場所に
あるのだろうか。
やや水量が多い東沢を2度渡渉すると、林道の右手に登山口が分かれる(6時2
0分)。尾根にまっすぐにつけられた登山道で一汗かき、山腹や小沢をトラバース
するとすぐで城ヶ尾峠着(1140メートル、6時50分)。朝食にする。
稜線はけっこう濃い霧に包まれていて、樹林の中ということもあって、登ってい
る山の形さえわからない状態。ときどき「ドドン、ドドン」と遠雷のような大きな
音がして、天気予報に反して雷雨まであるのかと、ちょっと気がめいったが、何度
も聞いているうちに「あれは、東(北)富士演習場の榴弾砲の射撃訓練の音だ」と
いうことがわかった。それにしても、この日はずっと音が鳴り響いていて、ちょっ
と興ざめでした。
ここからは、大界木山(1246メートル)、モロクボ沢の頭(約1200メー
トル)、水晶沢の頭(1278メートル)と、ブナの樹林の中をたどる。何も見え
ないだけでなく、行程の半分くらいではスズタケか何かの笹が道にかぶっていて、
露がズボンにふりかかり、下半身がぐっしょり濡れる。
それでも、雑木混じりのブナの森の道は涼しくて、キノコがつぎつぎに現れて、
なかなか楽しめる。水晶沢の頭の手前では、夏の終わりから出るキノコのチチタケ
の、珍しく大きめのものが1本見つかった。「このキノコは、なんていうの?」
「これはチチタケっていって、傘に傷をつけると牛乳のように白い乳が出てくるん
です。栃木県で珍重されているいいだしがでるキノコで、10本2000円くらい
で土産屋さんで売られていますよ」。
倒木にはニカワチャワンタケやキクラゲの仲間、幹が折れた朽木にまだ生えかけ
のウスヒラタケ、地面からはイグチの仲間、もう10日ほども適当にお湿りが続い
ているので、ほんとうにいろいろなキノコが現れる。笹ヤブの斜面の下の朽木に、
びっしりとクリーム色の元気なキノコが生え出しているのも見つかった。あれは硬
い体のキノコで、食べられないようだけれど、あんまり見事なので写真を撮りに行
きたい衝動にかられた。が、道からやや遠いので眺めるだけにした。
道脇には、白いオダマキの花も2株あった。
「あれは、なんだろう?」と3人で眺めたのは、ブナの幹の上部が二股に分かれ
るあたりから、垂れるようにして咲いている花だった。「ギボウシの花だね」「あ
そこに木に穴があいていて、そこに種が飛び込んだんだね」。高さ6メートルばか
り。
このブナの二股の高い場所にさくギボウシは、大室山からの下山の途中からも見
つかった。
白石峠では、道のところどころに白い岩、石が目立った。ひと登りで加入道山
(1418メートル)へ。11時を回っており、ここまで5時間もかかった。ト
レーニングとはいえ、小さなアップダウンが続く、長い稜線である。
丹沢にくわしいA氏によれば、加入道山は、「丹沢十山」に入るとのこと。前後
の樹間からの富士山を楽しみにしてきたけれど、残念ながらガスはまだ晴れてくれ
ない。かわりに道志山塊の稜線を見下ろすことができ、今倉山、菜畑山、巌道峠な
どを教えてもらった。ここらあたりまでくれば、登山者に出会うかなと思ったのだ
けれど、真夏の西丹沢には、誰もいない。下山するまでの10時間余り、まったく
誰にも会わない山行になった。
大室山へ続く稜線。薄紅色の細かい花が固まって咲くシモツケソウがところどこ
ろにある。仰々しくて好きになれないマルバダケブキ(丸葉岳蕗)も、湿った場所
に咲いている。山頂が近づくと、トリカブトがブナなどの木の下を一面におおっ
て、ちょうど咲き始めだった。それもちょっとやそっとの群生ではなくて、延々2
0分ほど、トリカブトの中の道が続くという感じ。花の独特の鮮やかな青色に、よ
けいに危険な印象を感じてしまう。
13時すぎ、大室山の山頂に着く。「登りだしてから7時間だよ。なかなか登り
がいのある山だったね」。丹沢では3番目に高い山だ。
実は下降し始めてから、この山の大きさをあらためて再認識させらることになる
のだったが。
国立市や立川市に住んでいた頃、富士山の左手前にいつも独立峰のような大きな
姿を見せていた大室山。ようやくその頂に立てて、うれしかった。
山頂からは新しく神ノ川ヒュッテに直接、下降する道も開かれていたが、3日前
の大雨・土砂崩れの影響を考えて、犬越路の峠を経由する、従来の道を選んだ。
犬越路までの下降の長かったこと。そして、犬越路からの下降もまた長かった。
なにしろ、大室山から神ノ川ヒュッテまでは、1000メートルも下る。4リット
ル担いだ水が大分、減っても、三脚や望遠レンズを持ってきたので、荷はけっこう
ある。左膝頭が、また痛みだした。
大雨がもたらした自然の猛威のあとが、登山道をあちこちで断ち切っていた。岩
屑が大小の雪崩となって落ち込んだあとを、何回もトラバースさせられた。
16時26分、神ノ川ヒュッテ着。コースタイム約8時間の縦走コースに10時
間20分をかけて、ちょっと長かった西丹沢の縦走が終了した。
*
アクセス |
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感想
丹沢の北山麓に出かけると、大室山(1588メートル)は間近に見上げることができる。近くの犬越路の峠までは何度か上がったことがあるのに、頂上には登ったことがなかった。山の仲間のトレーニング山行にと声をかけられて、「ぜひ行きましょう」とのることにした。丹沢の北西部の稜線を縦走することになるので、うまくいけば富士山や遠望の山々も撮影できるかもしれない。
8月16日、あきる野市の自宅を夜8時すぎに発って、中央道相模湖インター経由で、前夜のうちに津久井町の集合場所に入った。
奥相模湖ダム(道志川)では、2日前に大雨の増水で流された2人のキャンパーの捜索で、警察の人たちが投光器で湖面を照らしていた。集落の中の消防団の建物も明々と灯がともっていた。
17日、早朝に車で道志川沿いの国道を登り、道志村に「道の駅」が川沿いにできたところから細い車道に上がっていく。 三ヶ瀬川の水晶橋を渡って左の林道に入ると、すぐに道志村キャンプ場で、支流の東沢沿いに100台ほどの車とテントがキャンプ中だった。キャンプ場を抜けたところで林道の車止め(チェーン)に突き当たり(標高940メートル)、6時04分、登り始める。
登り出してすぐに林道わきに長さ2センチほどの卵型の真っ赤な苺の実がいっぱいなっていた。葉も実も、ノウゴウイチゴに似ているが、こんな標高が低い場所にあるのだろうか。
やや水量が多い東沢を2度渡渉すると、林道の右手に登山口が分かれる(6時2
0分)。尾根にまっすぐにつけられた登山道で一汗かき、山腹や小沢をトラバース
するとすぐで城ヶ尾峠着(1140メートル、6時50分)。朝食にする。
稜線はけっこう濃い霧に包まれていて、樹林の中ということもあって、登っている山の形さえわからない状態。ときどき「ドドン、ドドン」と遠雷のような大きな音がして、天気予報に反して雷雨まであるのかと、ちょっと気がめいったが、何度も聞いているうちに「あれは、東(北)富士演習場の榴弾砲の射撃訓練の音だ」ということがわかった。それにしても、この日はずっと音が鳴り響いていて、ちょっと興ざめでした。
ここからは、大界木山(1246メートル)、モロクボ沢の頭(約1200メートル)、水晶沢の頭(1278メートル)と、ブナの樹林の中をたどる。何も見えないだけでなく、行程の半分くらいではスズタケか何かの笹が道にかぶっていて、露がズボンにふりかかり、下半身がぐっしょり濡れる。
それでも、雑木混じりのブナの森の道は涼しくて、キノコがつぎつぎに現れて、なかなか楽しめる。水晶沢の頭の手前では、夏の終わりから出るキノコのチチタケの、珍しく大きめのものが1本見つかった。
「このキノコは、なんていうの?」「これはチチタケっていって、傘に傷をつけると牛乳のように白い乳が出てくるんです。栃木県で珍重されているいいだしがでるキノコで、10本2000円くらいで土産屋さんで売られていますよ」。
倒木にはニカワチャワンタケやキクラゲの仲間、幹が折れた朽木にまだ生えかけのウスヒラタケ、地面からはイグチの仲間、もう10日ほども適当にお湿りが続いているので、ほんとうにいろいろなキノコが現れる。
笹ヤブの斜面の下の朽木に、びっしりとクリーム色の元気なキノコが生え出しているのも見つかった。あれは硬い体のキノコで、食べられないようだけれど、あんまり見事なので写真を撮りに行きたい衝動にかられた。が、道からやや遠いので眺めるだけにした。
道脇には、白いオダマキの花も2株あった。
「あれは、なんだろう?」と3人で眺めたのは、ブナの幹の上部が二股に分かれるあたりから、垂れるようにして咲いている花だった。「ギボウシの花だね」「あそこに木に穴があいていて、そこに種が飛び込んだんだね」。
高さ6メートルばかり。
このブナの二股の高い場所にさくギボウシは、大室山からの下山の途中からも見つかった。
白石峠では、道のところどころに白い岩、石が目立った。ひと登りで加入道山(1418メートル)へ。11時を回っており、ここまで5時間もかかった。トレーニングとはいえ、小さなアップダウンが続く、長い稜線である。
丹沢にくわしいA氏によれば、加入道山は、「丹沢十山」に入るとのこと。前後の樹間からの富士山を楽しみにしてきたけれど、残念ながらガスはまだ晴れてくれない。かわりに道志山塊の稜線を見下ろすことができ、今倉山、菜畑山、巌道峠などを教えてもらった。
ここらあたりまでくれば、登山者に出会うかなと思ったのだけれど、真夏の西丹沢には、誰もいない。下山するまでの10時間余り、まったく誰にも会わない山行になった。
大室山へ続く稜線。薄紅色の細かい花が固まって咲くシモツケソウがところどころにある。仰々しくて好きになれないマルバダケブキ(丸葉岳蕗)も、湿った場所に咲いている。山頂が近づくと、トリカブトがブナなどの木の下を一面におおって、ちょうど咲き始めだった。
それもちょっとやそっとの群生ではなくて、延々20分ほど、トリカブトの中の道が続くという感じ。花の独特の鮮やかな青色に、よけいに危険な印象を感じてしまう。
13時すぎ、大室山の山頂に着く。「登りだしてから7時間だよ。なかなか登りがいのある山だったね」。丹沢では3番目に高い山だ。
実は下降し始めてから、この山の大きさをあらためて再認識させられることになるのだったが。
国立市や立川市に住んでいた頃、富士山の左手前にいつも独立峰のような大きな姿を見せていた大室山。ようやくその頂に立てて、うれしかった。
山頂からは新しく神ノ川ヒュッテに直接、下降する道も開かれていたが、3日前の大雨・土砂崩れの影響を考えて、犬越路の峠を経由する、従来の道を選んだ。
犬越路までの下降の長かったこと。そして、犬越路からの下降もまた長かった。なにしろ、大室山から神ノ川ヒュッテまでは、1000メートルも下る。4リットル担いだ水が大分、減っても、三脚や望遠レンズを持ってきたので、荷はけっこうある。左膝頭が、また痛みだした。
大雨がもたらした自然の猛威のあとが、登山道をあちこちで断ち切っていた。岩屑が大小の雪崩となって落ち込んだあとを、何回もトラバースさせられた。
16時26分、神ノ川ヒュッテ着。コースタイム約8時間の縦走コースに10時間20分をかけて、ちょっと長かった西丹沢の縦走が終了した。
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丹沢は南側からは全然登ったことがないので、全体はわからないのですが、丹沢山や蛭ヶ岳の稜線や北側の山腹にも、イヌブナの立派な樹林が残っていて、見とれたことがあります。
近郊では、奥多摩の雲取山の三条の湯近辺とか、三頭山一帯に、やはり森閑としたブナの自然林が残されています。いずれも晩秋には、ムキタケ、ヒラタケ、ナラタヶ、ブナシメジ、ヌメリスギタケなど、いいキノコが採れる場所です。三条の湯
では、登り出してすぐにブナハリタケやムキタケがびっしりついた倒木を見つけ
て、あちこち寄り道しながら登ったら、雲取山の小屋に着く前に真っ暗になってし
まったことがありました。
雨の日には枝ぶりを眺めて楽しめますし、新緑よし、秋の黄葉とキノコよしで、
ブナってほんとにいい樹木だと思います。
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丹沢は南側からは全然登ったことがないので、全体はわからないのですが、丹沢山や蛭ヶ岳の稜線や北側の山腹にも、イヌブナの立派な樹林が残っていて、見とれたことがあります。
近郊では、奥多摩の雲取山の三条の湯近辺とか、三頭山一帯に、やはり森閑としたブナの自然林が残されています。いずれも晩秋には、ムキタケ、ヒラタケ、ナラタケ、ブナシメジ、ヌメリスギタケなど、いいキノコが採れる場所です。三条の湯では、登り出してすぐにブナハリタケやムキタケがびっしりついた倒木を見つけ
て、あちこち寄り道しながら登ったら、雲取山の小屋に着く前に真っ暗になってしまったことがありました。
雨の日には枝ぶりを眺めて楽しめますし、新緑よし、秋の黄葉とキノコよしで、ブナってほんとにいい樹木だと思います。
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