再び小屋閉めの後の下ノ廊下


- GPS
- 28:02
- 距離
- 29.8km
- 登り
- 4,873m
- 下り
- 5,754m
コースタイム
- 山行
- 6:30
- 休憩
- 0:29
- 合計
- 6:59
過去天気図(気象庁) | 2019年11月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
ソフトシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
ゲイター
日よけ帽子
着替え
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
サブザック
昼ご飯
行動食
非常食
飲料
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
タオル
ナイフ
カメラ
ポール
テント
テントマット
シェラフ
ヘルメット
携帯トイレ
|
---|
感想
昨年も小屋の営業が終わってからテン泊で下ノ廊下に行った。あのときの紅葉した絶景が見たくて、今シーズンも行けないか、検討していた。小屋が営業している期間が激混みだろうから、昨年同様小屋泊が終了してから、しかも土日や連休はそれでも混むので少し外したい。他の用事も考えて11月1日〜2日に決定。しかし、今シーズンは天候が不順で、転落死亡事故が多く、多くはソロのテン泊らしい。その条件に私はピッタリ😅。落ちないために、荷物を小さくしたい。前回はパラゴン58だったが、持っていくものを厳選し、ズール40に収めることができた。しかし、重量は14kgと前回並み。何も変わってない。帰ったら反省しよう。
天気予報は2日とも晴れの予報だったが、直前の予報は1日目の午後に小雨になる見込み。阿曽原小屋に着く前に雨に降られそうだ。それまでに安全地帯まで行ければいいのだけれど。
夜行バスで扇沢に到着。明日から3連休なので、今日はヘルメット持参の登山者が多い。ヘルメットの登山者は下ノ廊下行きだろう。電気自動車で黒部ダムに着いて、降りたらそのまま前に直進。登山者の多くはダムに向かっていった。室堂へ行くんだろうな。下の廊下へは16-17名くらい。ダム下への下降口で、簡易ハーネス、カラビナを装着し、ヘルメットをかぶり、ビデオをセットして出発。その間に殆どの方が先に行かれた。もたもたしたかなあ😅。男女の3人組を残して先に出発。さらにソロ男性のお先を行かせてもらう。
ダムの下部は板の橋を渡るが、放流量は少なく、怖くない。でも、板は霜が着いているので慎重に。その後は川の左岸をアップダウンして進む。中盤から高度が出てきて転倒=死亡事故になるので慎重に行きたい。それまで、高度がないうちに、スピードを上げて時間を稼ぐ。男性の3人組の先を行かせてもらう。さらにソロの女性にも先に行かせてもらう。岩盤に掘られたルートは高さを上げ、紅葉が下部の水面に映えてきれいだ。上部を見れば、紅葉は真っ盛りとは行かないが、壁のようにそそり立つ岩に散りばめられた紅葉が綺麗だ。14kgの荷物はあまり気にならなくて良かったが、スピードアップしていると、右足首をグネッ。おっとっと、ローカットブーツならヤバかった。多少気になる程度で済んで一安心。でも、もう一度、同じところをグネッ😣。 足を置く石を注意深く見てなかった。もう一回、同じところをひねれば重症になるかも知れない。どうも、手術した右足親指をかばって足が内向して歩いているように思ったので、右足だけ指先を外側に開くようにして歩くと、それ以降、ひねることはなかった。
岩盤が掘れてないところは丸木の桟橋が設けられている。丸木は湿っており、横には滑らないが前後には滑るし、下が透けて見えるところもある。しかし、この桟橋がなければとても進めない。欅平から工事しながら今と比べて遥かに厳しい難路を進み、初めて黒部ダム(当時はなかっただろうか)が見えたときの感動はいかばかりであったろうか。当時を思いやる。
高度が十分に上がり、落ちれば助からない状態が続き、やがて大ヘツリのところまで来た。今シーズン終盤に落石で壊れたため、ヘツリなしでクラックの入った岩盤をトラバースする。人間が一人くらい乗っても大丈夫との情報であったが、崩落を懸念して大ヘツリが設けられていたのだからクラックの部分で崩落しないとは限らない。崩落して落下しないように、壁の番線にカラビナを懸けて素早く進む。距離は短いが無事で何より。
次は黒部別山谷を渡る。今シーズンは悪天候で増水した際に登山者が流されたらしい。事前に注意したいポイントと考えていたが今日に限っては杞憂だった。先の内蔵助谷も含め、今日の谷の水量は少なく、問題なく下降して渡り、登れた。そこから谷が狭まり、高度感のある素掘りのルートを進むと白竜峡。岩盤を掘ってあるが天井が低いので背の高い人は通りにくいだろう。私でも頭を下げて通るが、ザックが上部の岩にぶつかるくらい。白竜峡で初めて、対向してくる人に遭ったが、なんと白竜峡の核心部で三脚を置いて撮影している。今日は人が少ないから許されるのかなあ。指で合図しているので、そこで少し待って、撮影が終わるとすれ違うのだが、指定された場所は狭くて危険。何とか交差できたが、ちょっとまずいぞ。
ますます高度を上げて進むと懐かしい広場に出て、一段下がると十字峡へ下降する赤ペンキ。荷物をデポしてロープを頼りに下降する。さらに倒木をまたいて滑りやすい岩を降りて川に接近する。すべての音が激流の音にかき消されている。もう一段、降りられるかも知れないがロープが無いと不安だ。ここでドボンしたらお終いだ。まだ、先は長いし先に進もう。荷物を背負いなおして、吊橋を渡る。ここに来ると家内と来た31年前が懐かしい。亡くなってまもなく丸6年。七回忌。ルートの状況は以前と変わりないのだから、31年前も大変だったはず。家内もよく頑張って歩いたなあ。そんなことを思いながら絶壁の岩盤を歩く。陽があたって少々幻想的。真下に見える白波を立てた川の流れも美しい。そんなところを見ていると引き込まれそうだ。高度に慣れてしまって麻痺して、怖くないのが恐ろしい。作郎谷付近の絶壁が素晴らしい高度感だ。
まもなく、半月峡に来るとクラックの入った狭い岩を通過する。ここも岩が崩れそうな気配。続いてS字峡と名所の連続。ルート上に壁から滝のように水が落ちている。左手は番線をしっかり握り、右手で雨傘、これで凌ぐ。左手の手袋は濡れたが、服もザックも濡れずに済んだ。ここまで来ると下流に2つのジョーズの口のような黒四発電所が見えてくる。さらに近づくとブーンという高圧電線の音がしている。その先の激下りのあと東谷吊橋。ここは大きな吊橋だが、何回通っても怖い。このあたりから雨がぽつりぽつりと降り出した。今日の核心部分は終わったが、できれば雨具を着ないでたどり着きたかったが、橋を越えて仙人ダム手前のトンネル部分で強く降り出した。トンネルを出る手前では、十字峡で遊んでいるうちに先行されたソロの女性が雨具に着替えている。私も着替えて出発。ダムを越えて施設の中を通らせていただき、立派な宿舎の前に出る。その頃には雨は小振りになり、雨具の上着だけ脱いで最後の急坂を登る。ここに来ての急坂はきついのだが、今回はそれほどきつく感じなかった。その先も水平道で、トンネルを越え、左に回り込んで温泉小屋への下りに入る。このあたりで猿のけたたましい鳴き声がする。先行した彼女は大丈夫だろうか。下の方を降りている彼女が見えた。大丈夫なようだ。猿が近くを走っているようで、私も目を合わせないようにしていたが、叫び声を聞いて思わず「オゥ」って返事をしてしまった😅。でも、襲ってこなくてよかった😂。小屋に15時前に到着。昨年より50分くらい早く着いた。
早速、受付。お風呂とキャンプ場使用で1000円。入浴時間は男性は15−16時。女性が16-17時。17時以降は混浴となるが、受付時に、ダムから女性2人を含む3人組が遅れて来るだろうと話しておいた。テン場はまだ、7,8張くらいしかテントがなく、スペースは十分。温泉への下降点の近くに張ることにした。うん?、昨年と同じ場所だ。テントを張っていると、足の痛そうな男性がやってきた。膝を痛めたそうだ。明日は欅平に行くそうだが、厳しそうだ。再び雨が降ってきたので急いで荷物をテントに入れてやり過ごす。あいにく雨がひどいなってきたので15時からの入浴は諦めた。暖かいコーヒーを作って温まっていると、小屋の方からお主人が18-19時を女性の時間帯にすると大声で叫ばれた。マイクなしの肉声での放送だ。
先に、夕食に完熟トマトのスープパスタと尾西の赤飯を食べているうちに雨は止んだので、お風呂に行った。風呂への下降は10分余り。なかなかの下り。ソーラーランタンを行灯代わりにして下降するが少々明るさが不足していて見にくい。お風呂に到着すると、お風呂の周りに白い肌の人の姿。17時を過ぎているはずなので大丈夫なはずだが😲。「男性ですよね?」って聞くと「そうです」という声、つづいてオカマ声で「キャー」。”おいおい、バレてるで”。 近づくと紛れもなく男性でした😅。お風呂は少し熱め、でも、周囲が冷えてきたので丁度良い湯加減でした。
テン場は最終的には20張余り。ソロテントが多かったので30名くらいか。翌日は125名、60張くらいだったようなので、本日の宿泊で正解だった。
天気予報通り、夜の間に晴れ渡って満点の星空。ウイックロンZEOサーマルの上にアルパイン ダウンパーカーを着てモンベル#3のシュラフで寝た。震えることはなかったものの少々寒かった。フリースも着ておけばよかった。何度も目が覚めるが、寒そうだし、背中が痛いので、再び眠る。4時過ぎになると出発の準備の音が聞こえてきたので、ぼちぼち起きることにした。テント内は3℃。ただし、正確かどうかわからない。テントの外に置いていた水は凍ってなかった。お湯を沸かしてカップヌードルを食べて、コーヒーを飲んで、荷物の整理などしているともう5時50分。6時30分に出発予定なので、スピードを上げて片付け。外に出て立ち上がると背筋が痛くて、体が右に傾いてまっすぐならない。これは、いつも世話になっている整骨院では筋肉が悲鳴を上げて力が入らない症状らしい。昨年にここに泊まったときも同じようだったが回復したので、焦らずに少しずつ体を動かす。荷物を背負い、ウエストベルトを締め付けると体は真っ直ぐになった。右足の軽い捻挫もあるので、体をこれ以上、傷めないように慎重に進まないと行かないな。
出発は6時40分になってしまった。ここからしばらくは登り。体に負担がかからないようにゆっくりと登る。高圧電線を過ぎると、水平歩道の始まり、と言っても時々丸太の梯子の上り下りもある。ほどなく、昨日、話しかけてきてくれた膝の痛い男性に追いついた。ストックを持って丸太梯子を下降している。ここはストックは使わないほうが安全なのだが、膝が痛いので仕方ないか。お先に行かせてもらうが、その後、折尾谷や志合谷を曲がる際に後方を確認いたが、一度も見えなかった。無事だろうか。気になって仕方なかった。岩を削った地面は苔むして、湿った枯れ葉が乗っていて滑りやすい。ルートのすぐ隣は断崖が口を開けて待ち構えている。遥か下に流れが見える。高いビルの縁を歩いているのと同じで、設けられている丸太の桟橋の隙間の下はなにもない。それでも左に壁があり番線があり、掘削したルートでは天井もあるし、高度感を意識しにくい。周囲の紅葉に見とれていると、崖が牙をむく。今年もなんでも無いところで何人も落下して亡くなっている。今日は、後続に追いかけられることもなく、先行者に追いつくこともない。ずっと一人きりだ。ここで落ちても誰も気づかない。無論、気づいても落ちたら死んでいるから結果は何も変わらないなあ。
本日の1つ目のポイントの折尾谷のトンネルは短く、水も溜まってなかった。ここからの水平歩道には太陽の日が差し込んで、赤と黄色の葉が一層美しい。地面の枯れ葉まで美しい。枯れ葉に足を滑らせるとすべて終わる。曲りくねった細いいルートを進むと、さらに高度感のある断崖絶壁が見えてくる。大太鼓が近い。丸太がルートの右端にに固定されている。その外に足をやれば、などと考えてはいけない。大太鼓展望台は最高に高度感があり、流石に程よい緊張感が味わえる。ここでは対向者が来れば行き違いは不可。どちらかが交代する必要がある。幸い、まだ、誰も来なかった。ここから少しペースを上げて、志合谷に向かう。このあたりまで来ると、欅平駅からの警笛が聞こえてくる。俗世間に確実に近づいている。志合谷のトンネルは150mらしい。前半は完全に水がついており、ミドルカット以上の登山靴でないと浸水するだろう。途中からは水たまりを避けることができた。トンネルの外に出ても、高度感のある絶壁が続く。2つのトンネルを通ると硯谷。この付近でも落下して亡くなっておられて気を抜けない。ここから雪を懐いた白馬三山が見える。このあたりから対向者がやってきた。始発のトロッコ電車に乗ってこられたんだろうか。それとも祖母谷泊かな?ソロの男性が二人、ソロの女性が一人、・・・数えていたが、どんどん来られるので数えるのを止めた。欅平から登るのは少数なので、黒部ダムからの登山者はもっと多いだろう(前述の通り125名だったようだ)。中には、ストックを突いた年配の夫婦もいた。テン泊だからザックは大きくなるが、そろそろストックをしまわないと、この先は危険なんだけど。無事に小屋に到達できるのだろうか。少々気がかりであった。やがて、茶色の高圧鉄塔が見えてきた。そこで水平歩道は終了。その下でご夫婦が登ってきた。軽装なので心配したが、水平歩道まで行きたいらしい。遅れていた奥様は少々疲れているようだった。もう少し降りると若い男女。こちらはカメラを手にして軽快。女性も笑顔。もう少し先まで行くそうだが、この二人なら水平歩道まで行けそうだが、けしかけるの失礼なので止めておいた。更に下がるとトロッコ電車の展望ツアーの団体が登ってきた。近くの展望台まで行くツアーで、昨年も同じであったなあ。団体さんの中には、ひどく息を乱して苦しそうな年配の方も居た。もう少し、ゆっくり歩かないと心臓が持たないんじゃないか。大丈夫なんだろうか。人のことばかり心配しているが、自分は足首の痛みはひどくならず、背筋も歩いたら気にならない程度に軽減した。よく考えたら、阿曽原温泉で背負ったザックは5時間、一度も降ろさずに欅平まで来てしまった。
駅で12:28の電車の券を購入しようとすると、
👩「11:46ではダメですか?」
👨「??」
👩「12:28は混むので荷物は膝を上においてくださいね。今だったら11:46にも乗れますよ。」
👨「空いてます?」
👩「空いてますよ」
時計を見ると、11:43だ。
👨「今でも乗れます?」
👩「(笑顔で)乗れます」
👨「じゃあ、11:46で」
慌てて、ヘルメットをかぶったまま、ザックを背負い直してトロッコ電車にダッシュ。5号車は途中まで借り切りでした。おかげで、宇奈月温泉総湯でゆっくりできました。
2年連続で行ったけれど、また、行くことがあるかなあ。
阿曽原小屋のホームページ、登山情報でご主人が詳細な情報を日々更新いただいているので、混み具合や事故情報など迅速に得ることができます。つまずくだけで、死亡事故に直結するところ、そのようなルートが長時間続きますし、ペースが遅ければ危険性が更に増します。自分だけでなく、救援に向かわれる方々も生命の危険に晒すことになるます。自分の技量、力量をよく考えて、無理に突っ込まないようにお願いします。私ではなく😅、山小屋のご主人が、そのようにホームページで申されています。ご安全に!
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する