蓬莱山の白い羊たち☆権現山〜森山岳〜オシロ谷


- GPS
- 04:31
- 距離
- 10.3km
- 登り
- 888m
- 下り
- 1,028m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
下山後は葛川中村より江若バスで平へ |
コース状況/ 危険箇所等 |
権現山北東尾根、長池からの下山ルートに一般登山道なし |
写真
感想
前夜、帰宅すると微かに小雨がパラついている。明日の朝は比良でも久しぶりに霧氷が期待できるかもしれない。山行先を決めかねていたが、今年はもう比良に霧氷を見に行く機会は得られないかもしれない・・・山行先は比良に決定する。目指すは久しぶりに蓬莱山だ。
平(ダイラ)の先の林道の空地に車を停め、権現山の北西尾根に取り付く。尾根の取付きは一昨年の台風で夥しい数の倒木が生じたが、ここを通るたびに倒木の数は少なくなり、通りやすくなっているように思われる。
この尾根は急登が連続するが、平から権現山の山頂まで平からほぼ一直線に最短コースを辿ることがで出来る。尾根の前半は自然林が続く。尾根芯は明瞭げであるが、随所に濃密な馬酔木の藪が行く手を阻み、ちょっとした迷路のようだ。これまでに幾度となく夜間に登降したルートであはあるが、人には到底おすすめ出来るルートではない。
標高点?mのあたりからは杉の植林地の下端も一昨年の台風による倒木の集中地帯だが、ここも倒木はかなり整理されたようだ。とはいえ尾根芯は未だに大きな数本の倒木に塞がれているので、馬酔木の藪を漕ぎながら北東の斜面をトラバースする。ここを通過すると後は杉の植林地の中の登りが山頂まで延々と続く。
樹間から見上げる空には重苦しく雲が広がっている。今日はご来光はどうやら無理だろう。雲のせいでなかなか明るくならない、山頂直下でようやく少し明るくなり始める。
権現山の山頂直下では琵琶湖の南湖を夜の残滓のような街灯りが取り巻いている。山頂にたどり着いて琵琶湖が目に入ると紅に輝く東の空が目に入る。その雲の上では雲の合間から琥珀色の透明な空が顔を覗かせている。この山頂から壮大な光景が飛び込んでくる瞬間は感動的だ。再び琵琶湖の周囲に視線を落とすと街の明かりが幻影のように消えてゆく。
権現山からホッケ山に至る登山道を外れて山頂の西側に出るとイワヒメワラビの草原が広がっており、ここはホッケ山、蓬莱山を望む好展望地だ。夜明け前で光量が足りないので写真にはならないが、開放感のある草原はなんとも魅了的なところだ。鹿道を辿って再び権現山の北側の展望地に出る。
ホッケ山への山頂が近づき、樹木のない草原の登りになったところでいよいよ太陽が顔を出す。先ほどまでは空にかかっていた雲は南東の方角は消えている。蓬莱山の山頂部だけは笠雲に覆われている。
朝の光に照らされて全てのものが橙色に染まってゆく。小女郎峠へと向かうと、このあたりはいつも鹿の多いところだ。私の存在に気がついたのだろうか。鹿の群れが稜線へと大慌てで登ってゆく。
朝の光が差し込まむ前の小女郎ヶ池はそこだけ違う空気が流れている。やはり気温が暖かいのだろう。一月前に訪れた時には凍っていた池は水面に氷は全く見られない。ブルーグレーの水を湛えた水面は周囲のキャメル色の草原と綺麗なコントラストをなす。
蓬莱山の方向を見ると、緞帳が引き上げられたかのように蓬莱山にかかる雲が上がり、笹原の広がる斜面には白い羊の群れのような霧氷を纏った樹木が現れた。池の南側で蓬莱山が見渡せる斜面に登ってみると、雲が蓬莱山の山頂部が雲の中から朧げに現れ始める。
小女郎ヶ池を後に蓬莱山に向かうと、登山路の周りの南斜面ではそもそも樹木が非常に少ないのだが、霧氷がそれほど目立たない。鹿の踏み跡を辿って少し西側の斜面に踏み込むと途端に霧氷の樹々に現れる。わずかな風向きの違いによるものなのだろう。折しも上空の雲の切れ目からは大きく青空が広がり始めた。笹の藪を漕いで樹々の下に回り込んでは青空を背景に朝陽を浴びて、白銀に輝く霧氷にしばし時を忘れて見入るのだった。
蓬莱山の山頂にたどり着くと一気に武奈ヶ岳の展望が広がる。武奈ヶ岳のすぐ右手ではコヤマノ岳でも山頂部に霧氷がついているようだ。武奈ヶ岳の山頂部は笠雲の中に隠れてしまっている。
琵琶湖の対岸にはいつしか茫洋とした雲海が広がり、霊仙は雲海の上にわずかに顔を洋上の小島のように顔を出すばかりだ。伊吹山のすぐ左手に見えるの御嶽山だろう。伊吹山の右手の方で雲海の上に連なる山々は南アルプスに思われる。
リフト・トップではびわ湖バレイの職員達が慌ただしく雪を掻き出している。人工降雪機のせいで積もったものだろう。私と彼等との間には越えることができない見えないガラスの壁が横たわっているかのような、あるいは全く異次元の世界を見ているような気がした。観光客はいないものの、居心地の悪い思いがしてすぐさま山頂を後にする。
蓬莱山からの下山の前に山頂からヘク谷の源頭に向かって西に伸びる尾根に寄り道する。尾根の上部には樹木のない素晴らしい展望地がある。この周囲が霧氷がもっとも発達しているようだ。行動食で朝食をとり、しばしの間、休憩をとる。蓬莱山の山頂も展望はいいのだが、何しろ蓬莱山の人工物は一切目に入らない、また人からも全く視線に入らないこの展望地にいると安心して時間を過ごすことが出来るのが何とも有難い。
下山は、葛川中村から平に戻るための江若バスの時間に丁度良いタイミングと思われる。森山岳を経由して葛川中村に下ることにする。蓬莱山からの斜面を下り、自然林の快適な尾根になると、どこからともなく古道が現れ、森山岳の北側斜面に続いている。果たしてどこから来てどこへと続く道なのかいつも不思議に思う。森山岳から少し古道を辿ってみるが、北側の尾根に入ったところで古道は忽然と消えて、その先は見当たらない。尾根の下には植林地が続いているので、植林地の中に道の続きがあるのかもしれないが、今日はバスの時間もあるので下手な冒険するのはやめておこう。
斜面をトラバースして森山岳の西峰に出ると、ここは北側に大きく展望が開け、武奈ヶ岳の好展望が広がるが、山頂部は依然として笠雲がかかったままだ。森山岳と白滝山の間の山域を訪れるのは今回で丁度10回目になる。いくつもの小さくなだらかな丘陵が迷宮のような複雑な地形を繰り、その間に人目をはばかるかのようにいくつもの池がひっそりと佇む。
凍りついた池を見ながら丘陵の間の窪地を横切ろうとした時のことだ。土が柔らかい可能性はあるが、凍っているだろう。・・・と思って調子よく歩いていると、突然、足下の土が沈み始めた。その次に起こったことは泥の中に沈んだ靴が全く持ち上がらずに靴からすっぽ抜けた足が靴下と共に泥の中に踏み込む。そして反対の足も同様の事態に見舞われた。
ハイカットではなくローカットのトレッキング・シューズだったことが仇になったようだ。泥の中から手で靴を引っ張り出そうとするが容易ではない。なんとか両方の靴を泥の中から靴を取り出すと数歩、靴下で泥の中を歩くことになったが、なんとか硬い地面の上にたどり着く。もちろん、靴下も靴もそしてズボンも泥まみれである。替えの靴下は用意していなかったので、致し方なく泥まみれの靴下のまま靴を履く。
すっかりテンションが下がり、池の景色を楽しむ気持ちの余裕もなくなった。何故か頭の中で突然、童謡のメロディーが聞こえ始めると、そのまま何度もリフレインされる。「どんぐりコロコロどんぶりこ・・・」(どんぐりこではなくどんぶりこが正しいらしい)
長池のほとりを歩いて、鉄塔尾根を下降する。尾根の上部では杉の樹がかなり伐採されている。前回、晩秋に歩いた時にはそのようなことはなかったので、切り口からしてもかなり最近のことだ。
鉄塔尾根を勢いよく下るのは爽快ではあるが、最後の鉄塔からオシロ谷の徒渉地点へと下る斜面がかなり急峻なので、今回は早々に自然林と植林の境界を目指してオシロ谷の右俣へと下る。地形図から判断する限り斜面を下るよりもこの谷筋を下る方がはるかに降りやすいように思われたが、実際にそうであった。沢沿いに降り、渡渉点で右岸の杉の植林地に入るとあとは歩きやすい送電線巡視路をひたする下るだけだ。
中村に下るとまもなく江若バスが到着し、平まで運んでくれる。下山後は次の山行を考えていたが、この足の状態では如何ともし難い。帰宅して靴下と靴を洗うが、よくもこんなに泥が吸い込まれたものだと思うほど、繰り返し何度すすいでも大量の濁った泥水が靴からも靴下からも出続けるのだった。
ここを始めて訪れたのは11年前。その時から「底無沼に気をつけろ」と聞いていました。実際に突っ込んでしまった人を他に二人知っています。昔は沼だったところが何百年もかけて湿地化したんでしょうね。歴史を感じます。
蓬莱山の笹薮はずいぶん低くなってしまいました。11年前は腰のあたりまであって、森山岳から上がってくるとルートを見つけるのに苦労したものです。子女郎ヶ池のあたりも登山道を外れて歩くことはできませんでした。いずれ霊仙山のようになってしまうのでしょうか。今年は特に異常気象。野菜の高騰・米の不作等あるでしょうね。この先どうなるのか心配されるところです。
さて、今夜は寒波で少し積もるようです。今週末は用ありで遠出できないのが残念です。
足が沈み始めたところですぐに立ち止まることが出来ればよかったのですが、雪を踏み抜く時のように突然、沈み込みました。不快感を感じるも、残念ながら歴史を感じる余裕はありませんでした。
わたしも随分前ですがカシラコ池の辺りで片足だけでしたがやっちゃいました。靴は脱げなかっけど片足ドロドロのまま帰りました。
やっぱり雪はないのですね。今降っている雨も南小松観測点の気温(午後4時で9.0℃)からすると山上でも雪ではないでしょうね。flatwellさんがおっしゃられているように晩に冷え込むといいのですが。でもその後の気温がまた高い。
まちは春です。昨日は山に行く時間がなかったので、桂川沿いにRUNしてきましたが、菜の花は当たり前に、桜もちらほら、極めはムラサキツメクサが咲いていました。
明日の天気予報を見ていると北陸でも15℃と出ていてびっくりです。今季の冬は関西にいる機会がほとんどなく、雪の比良を一度も歩かずに冬が終わってしまうかと思うと残念でなりません。
権現山への直登ルート、参考になります。
好展望地へは、権現山の西側に小ピークが地理院地形図では確認できるんですが、ここを通る感じなんでしょうか。どこだったか左へ入っていくようなトレースを見た記憶はあるんですけど、ここなのかは定かではありません。
森山岳より長池へのルートでは大変でしたね。小さな池が結構あるとのこと。ログを見ると展望ピークから真っすぐ上がられたのですね。この辺りは広くて何処がメインルートなのかよくわからない箇所もあるんですが、私はここは西側のピークを2つ越えるルートを歩いていますので小さな池などの記憶が無いんです。
私の場合、ストックは杖というより、触覚・蜘蛛の巣払い用の道具に近いんです。谷や川原にて表面に砂利がよく見えて踏んでも大丈夫そうな所が「ズボッ」といったことがあるもので、つんつんして触覚的にも使ってます。とは言っても調子よく歩いている時はやっちゃいますよね。ナガオ尾根でやっちゃいました。スパッツしていて助かりましたけど。
オシロ谷の右俣へのルート案内もありがとうございます。これは前にもお礼言ったかな?? 近年、忘れっぽいもんですみません。
ののさん コメントどうも有難うございます。
ログを細かくみて下さり、恐縮です。
この日は意気消沈して、あまり池を巡らずに鉄塔尾根をさっさと下山してしまいました。
西側の尾根は尾根筋が明瞭で道迷いの心配がないのですが、池をあまり楽しめないんですよね。
ののさんにコメントを頂いた秋の池巡りではこまめに池を巡っておりますので、宜しければご参照下さい。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2073445.html
上記の山行ではオシロ谷から左岸を登って、送電線下の伐採地に早々と上がっているのでした。
レコに書きましたが、送電線鉄塔を下端まで下ってしまうとオシロ谷の渡渉地点に下るのが大変ですし、逆にこの渡渉地点から電線鉄塔に上がるのも積雪期は容易ではないんですよね。いいルートがないか、雪がないうちに谷筋のルートを確かめておきたかったというのが今回の秘かな目的でもありました。
積雪した裏比良も美しいのですが、今年はその機会がなさそうです。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2073445.html
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