銀杏峰と部子山☆アサギマダラと戯れて

- GPS
- 05:55
- 距離
- 11.6km
- 登り
- 1,107m
- 下り
- 1,096m
コースタイム
| 天候 | 晴れ時々曇り |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2020年07月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
自家用車
部子山は能楽の里牧場の下端に |
写真
感想
銀杏峰はこの時期、既にオオヤマレンゲが見られるともあって大人気の山だろう。既にオオヤマレンゲは終盤と思われるが、オオヤマレンゲの花を目当てにというよりも、この銀杏峰に進行している風力発電計画の発電機が建設される前にグリーン・シーズンの山の姿を確かめておきたいということもあった。
早朝に京都の自宅を出発したのは4時半前、湖北のあたりから眺める江越国境の山々には雲がかかっていたが、北陸自動車道を走っているうちに急に青空が広がってゆく。鯖江のICで高速を降りると、池田市から龍双の滝を経て宝慶寺いこいの森を目指す。池田町と大野市との市郡境界の峠が近づくと右手には雲ひとつない蒼空を背景に銀杏峰から部子山にかけての稜線がそびえる。
小葉谷の鳥居のある登山口にたどり着いたは7時過ぎであった。すでに3台の車が停められている。登山口の周囲では数多くのトンボが飛び交っている。
鳥居をくぐって尾根道を進む。早速にもところどころに山毛欅が混じる自然林の尾根となる。
登山道の周囲では多くのヤマアジサイが咲いている。尾根から背後には随所に展望が開ける。越前大野の市街の北側に見えるのは越前甲こと大日山だろう。
標高1100m、ひときわ大きな山毛欅の樹が現れる。山毛欅の樹には木製のプレートが架けられているが、残念ながらその文字は判読不能だ。しばらく急登が続く。この時間で既に上から降ってくる単独行の男性とすれ違う。駐車場に停められた軽トラックの主らしい。
標高1300mの道標を過ぎると徐々に傾斜は緩くなり、樹木の高さも低くなる。登山道の周囲の草木の葉はしっかりと朝露で濡れている。樹々は地面からほぼ水平に生え出しているものが多く、冬の豪雪を物語る。樹々の上からは西側に部子山が大きな姿を現す。
極楽平と呼ばれるなだらかな山頂台地の一角に出ると、登山道沿いには多くの花が見られ、トンボや数多くのチョウを見るようになる。赤紫色の薊の花にはヒョウモンチョウが群らがる。ピンク色のハクサンフウロも数多く見かける。しかし、なんとも残念なことには肝心のオオヤマレンゲを見つけることが出来ないうちに山頂にたどり着いてしまう。
山頂には山名標とともに可愛らしいお地蔵様の石仏を納めた祠がある。冬に訪れた時には一面の雪原であり、この祠も当然、雪の下であった。周囲の木々が全て雪の下に埋もれるとは数メートルの積雪があったのだろう。雪の上には霧氷を纏った低木があるように思われたが、実は雪の上に出た樹々の先端部であった訳だ。
山頂からは南に能郷白山の大きな山容が見える。越美国境の山々が南西に連なるはずだあが、空気が霞んでおり、これらの山々の姿を確認することは難しい。東の尾根の先には雲がかかっており、荒島岳の姿も見えない。もうすぐこの尾根にずらりと風力発電機が並ぶことになるのだろうか。
山頂からの下山は希望の鐘のある尾根の北側に回るコースに入る。丈の高いバイケイソウの花が多く目につく。忽然と色鮮やかなアサギマダラが姿を現す。黒い前翅と赤褐色の後翅、その間に広がる半透明の水色のまだら模様はなんとも幻想的な色合いをしている。浅葱色という色の名称はこのアサギマダラのまだら模様に由来するらしい。
他の蝶と異なり翅をあまり羽ばたかせることなくゆるゆると滑空するその姿は優美極まりない。ヒラヒラと宙を舞い、カラスザンショウの葉にとまる。数回羽を開いたり閉じたりしたが、その後は羽を閉じたままい動かなくなった。再び翅を開いてくれることを期待して数分の間、待ち構えるが一向に翅を開く気配もなく、じっとしている。
再びコースに戻ると、ここでも薊の花に吸蜜している二匹のアサギマダラが現れる。どうやら二匹はつがいのようだ。花から花へと頻繁に移動するが、美しい翅を開くのは花に停まった最初の一瞬のみで、吸蜜中は翅を閉じたままだ。翅をつついてみるが、一向に動じることはない。シャッター・チャンスが得られないうちに二匹は仲良く連れ立って去っていった。
アサギマダラの全く人を恐れることなく優雅に振舞う様は幼虫の食草に含まれるアルカロイドのためであり、外敵に襲われる心配がないことに起因するのだろう。この蝶が数千キロに及ぶ距離を飛ぶ渡り蝶であるということがにわかには信じ難い気がする。
極楽平の西端から部子山へと続く尾根へと踏み込んでみる。勿論のこと、踏み跡はなく、地面から水平に生え出す樹々と濃密な藪が広がっている。私一人であれば藪を漕いで部子山に向かったことと思うが、さすがにこの藪の中を進むことに家内が猛反対する。部子山は諦めて登山口に降りることにする。
くだり始めると次々と登ってくるパーティーとすれ違う。林道に降りるまでに10組以上すれ違ったのではないだろうか。すれ違う度、ほとんどの方に「オオヤマレンゲは咲いていました?」と聞かれるが、「残念ながら私達は見つけることが出来ませんでした」と答えるばかりである。
林道を横切る地点に降りると、再びアサギマダラが現れる。すぐ近くの花に停まったかと思うと優美に翅の開閉を繰り返す。お陰で今度は美しい翅の姿を写真に収めることが出来たのだった。
林道から登山口に向かって降り始めると道の周囲に大きな赤いキノコがある。タマゴタケだ。タマゴタケを見かけるのは九月の上旬が多いが、この初夏の時期にも発生が見られるらしい。
登山口に降りると駐車場には十数台の車が停められており、ほぼ満車の状態だ。まだ11時であるが、駐車場のあたりは既にかなり暑い。すぐに後から一人の男性が降りてこられたので、乗って行きますかと声をかけるが、健康のために歩きますとのことであった。
林道からは早朝は経ヶ岳の背後で雲に隠れていた白山がその姿を現す。
下山後は池田町を経て部子山を目指すが、その途中で稗田川沿いの龍双の滝(龍双ヶ滝)に立ち寄る。滝には多くの人達が訪れていた。早朝に通った時は山影であったが、この時間帯になると丁度、滝に陽射しがあたり、滝が明るく輝いている。岩肌をいく筋にも分岐しながら静かに流れ落ちる様は優美である。
滝の第一駐車場には滝見台と記された道標があるので、杉の植林の中に作られた遊歩道を辿ってみる。しかし滝見台の周りは樹木が生い茂り滝の姿は全く望むことは出来ないのであった。滝を後にするとR476から水海川に沿った県道に入り、部子山に向かう。県道からの分岐には能楽の里牧場まで12km、車で40分との道標がある。
牧場の下端のあたりに至ると、右手に入ってゆく細い道がある。道の中央には草が繁茂する林道を進むとすぐにも大きな広場に出るので、ここに車を停めて出発する。もう少し草が生えると、車は通行出来なくなりそうだ。勿論、我々の他には車も停められていない。
牧場の斜面をジグザグと登ってゆく道が見える。すぐにも道は草の中に埋もれるようになる。空はすっかり雲ってしまっているが、それはかえって有難い。ここで陽射しに照りつけられたら酷暑の中を歩くことになっただろう。やがて道は両側から背丈を越える笹が生い茂るようになり、笹藪の藪漕ぎとなる。牧場は既に廃業して久しいのだろう。
笹薮を越えて進むとなだらかな牧草地に出る。このあたりの広々とした牧草地は山上に草原や湿原を有する山と同様、夢幻的な世界を歩く贅沢な感覚がある。そこに放擲された牧場に独特のノスタルジーが漂う。実際には車で山頂直下までたどり着くことが出来るのだが、敢えてこの牧場の下端から歩き始めたのは正解だったと思う。しかし、これはこの牧場の雰囲気を期待してのことではなく、単にリサーチ不足でどこまで行けるか認識にしていなかっただけのことであるのだが。
尾根を見上げると、上の方には斜面から大きくせり出した箱のような建物が見える。かつての牧場の管理棟だろう。建物が近づくとようやく整備された道が現れる。出発地点からこのあたりまでは最早、歩く人もほとんどいないのだろう。建物の陰ではバイクの傍でお湯を沸かし、カップヌードルを食べている若者がいた。
ここからは車が通る舗装路を歩く。車道から左手の尾根に上がる道が見えるので、尾根に上がると半分崩壊しかけた小屋と反射板が現れる。尾根伝いに低木の樹林の中を歩くと舗装路の終点が現れ、数台の車とバイクが停められていた。山頂まで10分との道標がある。
良好に整備された登山道を歩くとすぐにも山頂にたどり着く。山頂からの景色は霞んでいるが、銀杏峰を東に望むことができる。山頂の東側の潅木の中には銀杏峰の方に向かって微かな踏み跡が続いているようだ。
山頂でブドウとジュースで休憩をとると下山の途につく。駐車場からは車で来られた人達が続々と登ってくる。この蒸し暑い日には部子山は涼を求めるのに格好の場所なのだろう。
駐車場のすぐ近くには冬に休憩した真新しい小屋があるが、小屋の扉が壊れている。再び牧場の斜面を下ると、笹原の中をガサゴソと慌てて降ってゆく動物の音がする。遠くで笹原の中から一瞬、黒い頭が見えた。どうやら仔熊のようだ。
眼下に牧場の草原を見ながらトンボが舞う斜面を下降すると、下りはかなり早く感じられた。時間と体力を考えると銀杏峰の山行の後で訪れるには程よい距離であった。家内は山頂直下まで車で行きたかったようだが、さすがに山頂まで10分足らずの歩行では山行とは言い難いだろう。
山行後、自宅でタマゴタケはリゾットにして料理する。珍しく子供達も食べたせいで、私たちの口に入る分は少なくなったが、少量でも濃厚な味がするのだった。
コメント
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山猫
yamaizu













同じ日に登った人が「オオヤマレンゲはなかった」と言っていましたので、見落としではないようです。また来年に期待しましょう。
ボーボーの牧場跡をよく歩きましたね。次回は雪原の牧場跡を散策してください。直登の廃林道がおすすめ。
無茶かな〜
そうですね、また来季は部子山に訪れたいと思います。風力発電機が建設される前に
こんにちは、天気よかったようですね。銀杏峰・部子山お疲れさまでした。
こちらも、flatwellさんから、いろいろ教えてもらって、17日の金曜に行ってきました(その時点、土日は天気悪いとの予報でした)
かろうじて、オオヤマレンゲの終わりには間に合ったのですけど、部子山は小雨・ガスで諦めました。
私が行った時も、極楽平の花畑は、蝶やトンボが舞い、楽園のようでした。とても気持ちよかったです。こんなところに手を入れなくてもと、残念に気持ちになりましたが…
通常は直近の天気予報はなかなか外れないのですが、最近は翌日の天気予報はかなり難しいのか、翌日の梅雨前線の位置すら大きく外れていたりします。
yonedaさんの仰る通り、この山上の楽園が少しでも存続することを心から願います。
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