両神山

- GPS
- --:--
- 距離
- 8.5km
- 登り
- 1,437m
- 下り
- 1,426m
コースタイム
(道草が多く凄く時間が掛かっています)
| 天候 | 晴れ -10℃ |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2013年01月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
| コース状況/ 危険箇所等 |
【日向大谷〜両神山】 ●登山口に水洗トイレありました。今の時期は凍結していて流せません。 ●両神山荘の並びに登山ポストがありました。 ●残雪(凍結)ありますが、アイゼンなしで大丈夫でした。(1/5現在) ●水場は枯れてしまっています。 ●清流小屋は避難小屋として開放されています。毛布あるが清潔でない。 |
写真
感想
(敬語省略します)
寝る前、睡魔を呼び込む為に、以前買った本『山で死んではいけない。遭難防止マニュアル』(山と渓谷社)をパラパラとめくっていると、羽根田治さんのレポートが載っていた。『日常が一瞬にして失われる遭難事故は決して他人事ではない』と題打ったそのレポート集の1番目に、両神山で遭難して14日後、奇跡的に救助されたAさん(本には実名が載っている)の本人談をまとめたものがあった。沢に滑落して開放骨折。沢から這い上がれず、助けのないまま14日間を生き抜く。……私はすっかり目が覚めてしまい、一気にその文章を読んだ。一体、人が遭難して九死に一生を得る山とは、どんな山なのか?遭難した現場は、スタンダードなコースからそう離れてはいない。そんな場所で遭難事故は起こるのだ。『決して他人事ではない』山の遭難事故。
人が遭難した場所を見に行くなど不謹慎だとは思いながらも、私の気持ちは両神山に向かっていた。
1月5日(土) 朝6時頃に自宅を出発。日向大谷という両神山登山口に着いたのが9時。無料の駐車スペースに4台ほどの車があった。私も空いている場所に車を停めて早速、登山道に向かう。登山口には、事細かに案内があり迷う事はない。登山ポストもあるので、ここで入れておく。登山道に入るとすぐに鳥居があり、その後も地蔵や石碑などが至る所にある。ここがとても信仰深い場所である事が分かる。
鎖場もあるが、あくまで安全を考えての補助程度の物だ。無理に使う必要もないだろう。(八丁峠方面は行っていないので分からない)
会所までは意外にも緩やかな下りが多く、帰りにはここを登り返さなければならない。帰りの足を残しておこうと思いながら歩いていると七滝沢方面への分岐に着いた。
ここから七滝沢方面へ100mほど行くと本にあった遭難の現場のはずだ。コースを外れるので足を踏み入れるのは止めておくが、さほど山深い場所でもなく、本当にどこにでもある山道に思える。強いて言うなら他の山道に比べて人が少ないと言う事か??この日、私が会った登山者はソロの方5名、男性の3人組、親子1組の合計10名。会った場所から言って七滝沢方面に行った可能性があるのは男性の3人組と親子だけだが、子連れで七滝沢へは行かないだろうから、3人組だけと言う事になる。それだけ通る人が少ない場所で身動きが出来なくなれば、助かる可能性は低い。しかし、どんな山でも死角になり得る場所はあるものだから、結局はそこで身動き出来なくなれば同じ事だ。そうならない様にくれぐれも気を付けなければならないなと思う。
さて、遭難に関する勝手な検証はこの位にして、後は純粋に山を楽しむ事にする。
分岐を左に下ると沢にぶつかり、そこが会所だ。ちょっとした広場になっていて、休憩するには丁度良い場所だ。ここからしばらくは沢を左へ渡り、右へ渡りを繰り返しながら進んで行く。今の時期は枯れてしまっている水場を過ぎると清滝小屋までは後一登りだ。
清滝小屋で少し休憩。と言うよりは清滝小屋周辺の散策を行う。清滝小屋の周りには幾つかの建屋があり私の興味をそそる。特に気になったのは廃道方面へ少し進んだ先にある小さな小屋だ。行ってみると昔使われていたトイレらしい。ちなみに清滝小屋付近ではその廃便所が1番景色が良かった。
清滝小屋から山頂方面へは一気に急登になる。頑張って登って行くと急登がひと段落した辺りに七滝沢方面への分岐がある。ここを行くと七滝沢を経て会所へ行ける事が分かる。道標には崩壊地との注意書きがあり、ならべく七滝沢方面へ行かないように促している。
ここから両神神社までは少々長く感じる。中弛みといったところか?鎖やロープがあるが鎖場というほどのものではない。
両神神社には狛犬の代わりに山犬があってとても興味深い。実は出発前に調べたのだが、よく分からなかった。そもそも信仰や文化と言うものは、長い年月の中で慣習化されて行くものなので、その詳細については、よく分からないと言うのが事実なのだ!!と、勝手に結論付ける。しかし将来、山犬の像が完全に風化してしまい跡形もなくなった時、人はまた山犬の像を造るだろう。人は育ててきた信仰や文化を大切にするのだ。たとえ像は風化しても、信仰や文化は風化しないのだ ( ̄▽ ̄)!!
神社を過ぎると山頂までは後少し。
急に視界が開けたかと思うと、山頂では素晴らしい景色が待っていた。
左から富士山、八ヶ岳、北アルプス、浅間山……と凄いパノラマだ。
地図では展望について触れていなかったので、正直期待していなかったのだが、意表を突かれた。これは来た甲斐があったというものだ。普段、山頂に長く留まらない事が多いのだが、今回は40分もいてしまった。
清滝小屋まで降りてくると1人の男性がいた。何でも今、日向大谷から上がって来たところで、今晩は避難小屋に泊まるらしい。男性にあったかいコーヒーをご馳走になった。
「明日は雪になるかも知れませんね」私が言うと
「ええ、楽しみです」と意外な答え。
「楽しみですか?」
「折角だから少しくらい降ってくれないとさみしいかな、と」この男性も山に魅了されてしまった1人なんだと思う。明日は八丁峠を経て坂本に降りると言っていた。
「ごちそうさま。楽しんでください」名残惜しいが、私は避難小屋を出発した。
会所を過ぎた辺りで物音に気付き、そちらを確認すると黒い生き物がいた。私に驚く事もなく草を食べている。狼でない事は確かだ。彼らは絶滅してしまった。しかし見た事のない動物だ。私の頭の中にあるイメージに合うのは『黒山羊』だ。だが何だか分からない。そこで、きっと山の主に違いないと結論付けた。そう考えると1番ドラマチックで、この旅の終わりに相応しい。
私は山の主に見送られ、両神山を後にした。
宮寺光生











両神山は毎年コンスタントに遭難が発生、近年では剱岳に次いで亡くなる方が多い山なのではないか、と思っています。
七滝沢を2回ほど歩いた事がありますが、まだ人に会ったことありません。とはいえ、2週間誰も通らないと言うほど歩く人がいないわけでもないようで、私の歩いた2回とも落ち葉や土の上に先人の足跡を判別する事が出来ました。
歩いていても気づかれない、あるいは気付いても面倒な事を避ける人が一部にいるのではないか、という可能性も考えざるを得ないのかもしれません。
一般道だからと言っても安全なわけではなく、登山口の神社すぎてすぐの路傍にはいつも花が供えられています。数年前に滑落された方の家族が今もお供えを絶やさない、と聞きました。
コメントありがとうございます。
私も登山道に入ってすぐの空に向かって供えられた花を覚えています。
両神山はそんなに事故が多いんですね。私の読んだ本の方は奇蹟的に助かったのですが、やっぱり亡くなられた方もいるんですね。
今回の私の山行は、ちょっと軽率だったかも知れません。
今後も安全にはくれぐれも気を付けて、良い旅を続けましょう。
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