芦原岳〜三国山〜明王の禿☆暁の雪原から快晴の展望尾根へ


- GPS
- 05:43
- 距離
- 10.8km
- 登り
- 996m
- 下り
- 978m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
日中は広い範囲で晴天が期待されるこの日、午後から仕事の都合で自宅に戻らなければならない。Web講習会なるものを受講する必要があるのだが、それがコロナ禍でわざわざ東京まで出張しなくても自宅で受講できるというのは有難い話ではあるが、よりによって一冬に幾度もないような好天の日になるとは、山好きにとっては無念極まりない。
かくなる上は午前中に下山する山行計画を考える他ない。問題は山行先だ。前日は雪を求めて百里ヶ岳を周回したのだが、スノーシューはほとんど出番がなく終わってしまったのだった。雪が残っている山で手軽にアプローチ出来る山・・・芦原岳が頭に浮かぶ。
先々週の週末、雨雲レーダーの予報から判断した雨の切れ目を狙って、この芦原岳の山麓まで来たものの、予報の雨雲の切れ目もなくなり、結局、山麓の在原で蕎麦を食べて帰ることになったのである。
この日は予報では朝のうちは曇り空ではあるが、琵琶湖の上で朧ろげであった月がマキノのあたりにくると煌々と光を放つようになり、早朝の好天を確信する。
マキノのあたりでは二週間前にはまだ残っていたメタセコイア並木の周囲の雪も完全に消失している。しかし、白谷集落を過ぎると突如として道路の周囲にはかなりの積雪が現れる。やはり、ここは期待通りだ。
白谷林道の入り口の手前の道路余地に車を停めて、街路灯の明かりで準備を整える。スノーシューをリュックに括り付けて出発するが、その作業は全くの無駄であった。林道はその入口からスノーシューがなければかなり足が沈み込むほど、十分に積雪していたからである。
東の夜空には少し欠けた上弦の月が浮かんでいる。月明かりでも歩けるほどに十分に明るいので、ヘッデンの光は最弱のモードにする。林道は斜面をジグザグと九十九折にのぼってゆくが、林道の折り返し点から植林の尾根を直登する。
尾根をのぼるにつれ、植林の樹々は早くも疎らとなり、気が付くと背後には月明かりに微かに照らされた江若国境の雪稜が見える。満月であれば月明かりに照らされた稜線を写真に撮ることが出来たかもしれないが、この時間帯に満月が登ことはあり得ない。
急登の斜面をのぼると途端に緩斜面の雪原に出る。疎らに生える樹々のシルエットが暁の空に浮かび上がる。気が付くと背後の三国山から大谷山へと至るまでの国境稜線は青一色のモノトーンに染まっているのだった。周囲の雪原も青一色だ。英語ではblue hourと云うが、元来はフランス語のl’heure blueの翻訳らしい。
雪原からは眼下に今津から高島の市街の明かりがみえる。その手前で等間隔に並ぶ明かりはメタセコイア並木の街路灯だろう。彼方の朝霧の中で島のように浮かび上がっているのは比良山地だ。その上で不夜城のように強い光を放っているのは蓬莱山のスキー場だ。ここまでは快足に登ってきたつもりだったが、この雪原の青い光景にすっかり魅了され、なかなか先に進めない。
雪原の緩斜面から雪庇の張り出した尾根を登ると、再び尾根は大きく広がり、今度は一面のブナの濃密な純林に入る。一様に端正な樹形のブナの若木がほぼ等間隔に立ち並ぶ樹林はまるで植樹された公園のようだ。先ほどまでの青い空は緞帳を引き上げられたかのように急速に消えてゆく。中空では月が取り残されたかのように寂しげに光を放つ。
広い尾根には左手から植林が現れる。右手の乗鞍岳のあたりでは空が明るい朱色に輝いているが、太陽が昇るはずの方角だけ帯状に雲が広がっている。この分ではご来光を拝むことは難しいだろうと思い、ブナの樹林をのんびりと歩く。
芦原岳の山頂の手前のブナ林に差し掛かると途端に樹高の高い壮麗なブナの樹林となる。突然、背後から光が差し込み、乗鞍岳への稜線の上から朝陽が樹林に差し込む。途端にピンク・ゴールドに輝く林床の雪の上にブナの細長く繊細なシルエットが現れる。
ブナの斜面をのぼりつめたその先は送電線鉄塔のある雪原となっていた。いつのまにか東の空にかかる雲の薄くなり、乗鞍岳へと続く稜線の上に朝日が昇ってゆく。あとわずかに早ければのご来光を拝むことが出来たことだろうが、この雪原から壮大な朝日の光景を眺めることが出来るだけでも十分に贅沢かもしれない。乗鞍岳の左に目をむけると横山岳、その彼方には左千方、三周ヶ岳、上谷山と江美国境から江越国境に連なる銀嶺を眺望することが出来る。
再びブナの小さな樹林をぬけて、芦原岳のピークとなる北端の送電線鉄塔広場に向かう。こここは二年前の無雪期にも長男を伴って赤坂山から縦走したところであり、送電線鉄塔までの道の両側は背丈ほどの低木が生えていたが、低木はすべて雪の下に埋もれている。送電線鉄塔の下からは正面に敦賀湾をはさんで、右に岩籠山、左に野坂岳、そして西にはこれから辿る三国岳への雪稜が目に入る。
尾根は複雑に蛇行を繰り返すが樹木のない雪原がいている。尾根が西向きに大きく向きを変えることになる小ピークのca810mには猫型の送電線鉄塔が立っているが、この送電線は尾根の西側のピークに立つ鉄塔との間にわずかに送電線が張られているだけである。どうやらここだけ建設して、延伸することを止めてしまったようだ。Ca810mからは未完の送電線鉄塔に沿ってブナの尾根を下降する。
未完の送電線の端の鉄塔に至ると再び広々とした雪原の尾根になる。下降してきた芦原岳を眺めながら尾根を南下すると猿ヶ番場山の山頂に至る。南の白谷に向かって疎林の尾根が下降してゆく。時間がなければこの尾根を下降するのも一興だと思っていたが、この日はまだ十分に時間の余裕がある。
夏道は猿ヶ番場山の北斜面をトラバースしているので、このあたりは歩いたことがないのだが、猿ヶ番場山から黒河峠に向かうと大きな雪庇の発達したやせ尾根が現われる。慎重にやせ尾根の通過すると樹高の高いブナの樹林にはいる。初夏の季節、黒河峠から尾根を東進するとすぐに現れるこのブナの森に圧倒された憶えがある。
P620のピークの北側は送電線鉄塔のために大きく切り開かれており、展望はよいのだが、かつてはここにもブナの美林が広がっていたことだろうと思うと少し切ない気分になる。
黒河峠に下ると丁度、林道をしたから登ってこられた山スキーの男性と遭遇する。この時間に東から尾根を下ってくる者がいることに驚かれたようだ。「一体、どこから来られたんですか?」と聞かれるので、コース取りをご説明すると、もう一度、驚かれる。
男性も三国山を目指されるようで、私が先行するが、すぐ後を登ってこられる。気温が高いせいだろう、雪質は急に腐りはじめたようだ。一息いれたところですぐに男性に抜かされる。
尾根の登につれて徐々に締まってくる。すぐ前を行く男性に雪質の変化の印象を伝えると「私も急に歩きやすくなりました」とのこと。スキーでも沈み込みが少ないと歩きやすいらしい。
Ca820mのあたりからはようやく三国岳の山頂部が大きく視界に入る。ここまでは東尾根を登ってきたが、尾根伝いに北尾根に回り込ん山頂を目指す。このあたりも無雪期は背丈ほどの灌木が繁茂しているところだが、雪が灌木を覆いつくした今の時期はどこでも自由に歩けるのが嬉しい。男性は休憩するというので一足お先に山頂へと向かう。
東側に大きく雪庇が出来た山頂は360度の大展望が広がる。東には辿ってきた芦原岳の彼方に金糞岳、その右手には伊吹山、霊仙、御池岳、左手には先ほどの芦原岳から見た江美国境の山々も見える。すぐにも後から先ほどの男性が登ってこられる。奈良から来られたそうだ。しばし男性と山談義を交わしたあと、男性とお別れして私は最後の目的地、明王の禿へと向かう。
三国岳と明王の禿との間は明瞭な稜線が続いているわけではなく、いくつもの小さな丘陵と襞が絡み合って複雑な地形を形成している。その丘陵の間を足の赴くままに彷徨うことにする。灌木を覆いつくす雪原が無雪期には知る由もなかった優美な地形を見せてくれる。
明王の禿に至ると赤坂山の方からワカンの跡がある。勿論、真新しいものではなく、昨日以前のものだろう。いよいよここで、江若国境の山のパノラマとお別れだ。迫力ある明王の禿の荒々しい岩肌を右手に眺めながら、次第に強さを増してゆく日差しの中を白谷に向かって下降する。最初はなだらかな稜線が続いているが、尾根は次第に傾斜を増してゆく。
下から山スキーで登ってこられる単独行の男性と出遭う。「この尾根を下る人と出遭うとは思いませんでした」と仰る。登りでは時に使われるが、下降は厳しい箇所があるとのこと、男性はよくこの尾根を登っておられるようだ。
男性とお別れすると、まもなくp470に向かって急下降となる。確かにここが難所なのだろう。このルートを下降するにあたっては新雪の中を登られたshikakuraさん達のパーティーのレコを参考にしたのだが、新雪のラッセルでこの急登を登られたshikakuraさん達は凄いと感心してしまう。
鞍部に下降し、わずかにp470に登り返すと、後は黒河林道に向かって緩やかに尾根を下降してゆく。先ほどの男性はおそらく既に黒河林道を下降したことだろう。積雪した林道の上には二筋のシュプールの跡があった。
最後は別荘地の中を歩いて車道に向かうと、丁度、車の上に出ることが出来た。雲一つない快晴の空の下に広がる白銀の稜線に後ろ髪を強くひかれながら、京都の自宅に向かって車を走らせるのだった。
ヤマネコさん、こんばんは。
まさに一期一会でしょうか。これは何度も出逢える景色では無いですよね。
暁の空の色。曙の空に浮かび上がる樹々の陰。ブルーアワーからピンクゴールドの世界に。無垢な雪庇、純白の雪原に映し出される樹々の影・・・そして山毛欅の美林へ。
どれもこれも美しいですね!憧れの風景、巡り合いたい情景、撮りたい写真ばかりでしした。羨ましい。
なかなか先に進まない・・納得です。
感動的なレコ、有難うございました😊
さすが、ウリさん、そのキャッチーなタイトル、山行の副題に頂けば良かったと思うようなキャッチーなタイトルですね。赤坂山から東になると途端に人が少なくなり、さらに黒河峠を越えるともっと少ないのですが、実に素晴らしい世界が広がっています。p620のあたり、それから芦原岳東面のあたりなども素晴らしいブナ林があります。ここもそのうち、人気の一般登山道になるのかもしれませんが。
こちらこそ、ご一緒させて頂き、有難うございました。楽しい山談義のひと時でした。
それから三国山では写真を撮って頂き、有難うございました。むさ苦しい髭親父ですが、折角、撮って頂いたので、遅ればせながら写真を載せることにします。
翌日、土蔵岳を訪れたのですが、すぐ隣の横山岳のあたりは雲がかかっていたので、yama_rodeveさんはどうだったのかな・・・と気になっておりました。
またどこかでお目にかかる機会がありますことを願っております。
お隣の山道?を歩かれてたんですね〜、と言ってもyamanekoさんは下山でゆるゆる隊は登りですが(朝に弱い我が家💦)
昼間の青空を思いっきり楽しんできましたが、ピンクゴールドの斜面いいですね、こんな景色を眺めたい‼️雪中テント泊したくなりました。昨年の荒島岳の雪中テント泊レコなど、羨ましい〜o(^o^)o
ちなみに荒島岳は秋に登り家族みんなへろへろになり2度目はないとの事。。。😅
レベルupして御池岳あたりで雪中テント泊を狙いたいものです。
koumamaさん コメント有難うございます。
ニアミス・・・実は少しスピードアップすれば、赤坂山まで・・・ということも考えたのですが、今回は明王の禿から未踏破の尾根を下降することも魅力的に思われたので、赤坂山まで行くことは諦めてしまいました。行っていたら、ほぼ間違いなくお会いできたか、と思うと残念です。私はDuo-Jetさんとは違って、気がついたらお声がけしますよ
御池、藤原、霊仙あたりでのテン泊いいでしょうね。
この時期の三国岳は実に素晴らしいところで、黒河林道を歩いて黒河峠から容易にアプローチ出来ます。koumamaさんのレコに余程、余計なコメントしようかと思ったのですが、夏は周囲は背丈ほどの灌木の藪なのですが、それが全て雪に覆われているので、どこでも自由気ままに歩ける素晴らしい雪山に変貌するのです。いつか機会があれば是非、どうぞ。
yamaneko0922 さん、お早うございます。
芦原に登る尾根、芦原付近の尾根は素晴らしいですね。無雪期には想像できない素敵な風景で、歩いて見たくなりました。
レコにも書きましたが、明王の禿からの下山のルートは年始のshikakuraさん達の(凄い)レコを参考にさせて頂きました。改めて御礼申し上げます。
芦原に登る尾根、私は林道をショートカットしましたが、林道を終点まで歩く方法もあります。例の雪原までは杉の疎林の急斜面ですが、明王の禿への急登を深雪のラッセルで難なくこなされるshikakuraさん達にはなんのそのでしょうね
猿ヶ馬場への尾根も良さそうです。
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