【敗退】剱岳 源次郎尾根



- GPS
- 11:44
- 距離
- 7.2km
- 登り
- 677m
- 下り
- 908m
コースタイム
- 山行
- 2:58
- 休憩
- 0:13
- 合計
- 3:11
天候 | 1日目:曇りのち暴風 2日目:強風のち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
予約できる山小屋 |
雷鳥沢ヒュッテ
|
写真
感想
数年前から行きたくて仕方なかった残雪期の剱岳源次郎尾根。
去年は無積雪期に2回も行ったので今年は是が非でも行きたかったけど。。。結果は敗退。
【初日】室堂から剣沢に入りテント泊予定。
早朝の立山駅。7時乗車なので駅に向かうがアナウンスがあり、前日に降った雪の除雪作業が入り運転を見合わせるとのこと。結局2時間弱遅れて乗車。スタートからつまずいた。
ケーブルカー、バスを乗り継ぎ室堂へ。そこから雷鳥平までは心配していた天気は穏やかで順調。
さて、雷鳥平からとりあえず剱御前小屋に向かいます。
予報では昼以降に稜線上は風が強くなるとのことだったので早めに抜けたいが、重荷に加え新雪で雪がうまく固まらずラッセル難儀。足を入れるごとにズボズボはまりペースが上がらない。
7割ほど登ったところで状況が一変。予報通り風も出始め雲も下りてきた。その後、剱御前小屋まであと少しといった所で吹雪かれる。
これまでに経験したことのない強い風雪。
気温が急激に下がり私の虚弱体質なiPhoneは瞬殺された。しかもホワイトアウトで視界は5mほど、さらにサングラスにも雪が張り付き、視界はほぼゼロ。天地左右の方向感覚がなくなり、途中から一緒になった若者のGPSを頼りに雪面をトラバース。ありがとうございました!しかし新雪が崩れ一歩進むにもひと苦労。普段なら何てこともない場所が四つん這いしないと進めない。加えて気温も急激に下がり手足の先の感覚が無くなってくる。バラクラバも張り付き上手く声も出せないし暴風で届かない。いよいよ命の危険を感じる。雪洞を掘る選択肢も視野に入れ、可能性のある限り進む。これまた途中から同行した軽荷のお2人が先行して道を作り我々もその後に続く。前を歩くぼんやりとしたシルエットを必死で追う。突然、目の前に鞍部のトイレが現れた。大袈裟だがそれを見た時に「生きている」と感じた。トイレから小屋までも突風が遮る。命からがら小屋に駆け込む。
体温が奪われて体の震えが止まらなく乾燥室に直行。沢山の衣類に囲まれてやっと助かったと思い安心感に包まれた。今日はこのまま小屋泊。
【2日目】
前日にかなり体力と気力を奪われたが予定通り源次郎尾根は決行することに。
2時に起床し3時15分に小屋を出発。
外に出ると空には星が出ていて予報通り晴れそうだが相変わらず暴風。
とりあえず剣沢まで向うために下って行くが、暗いのでルートを間違えないようこまめにGPSで位置を確認。
剣沢キャンプ場に着いたが思った以上に雪深く、剱御前小屋、別産方面から吹き下ろす暴風で剣沢にはかなり雪が吹き溜まっていそうだ。
本来ならここに不必要な荷物をデポして源次郎尾根に取り付く予定をしていたが、この暴風が運んでくるチリ雪でデポした荷物がすぐに埋まりわからなくなる可能性もあるので、風が収まるのを少し待つことにし、風除けを作りテントを設営。
何とかテントは設営できたが、四隅に人と荷物がないとテントが浮く。しかし、風を凌げるだけでも暖かく感じる。
何度も何度も突風が襲い、その度にテントがひしゃげます。いつポールが折れるか、生地が破けないかハラハラしながら体でテントを抑える。
なかなか風は収まらず、ただ時間だけが過ぎていく。
今後の予定を状況を踏まえ冷静に考える。
昨日のダメージがそれなりにあり、この天候でのラッセルは体力的にキツい。これから晴れて風も収まるとはいえ、今度は気温の上昇とともに雪崩のリスクがつきまとう。特に剣沢雪渓は右からも左からも後ろからもその危険があり、仮にそこを抜けてもルンゼの雪崩、ナイフリッジの通過と難所が続くので今の私の体力技量では難しいと判断した。その旨をメンバー伝え撤退とした。
テントを仕舞い、剣御前小屋に向け登り返す。
2人には道作りを頼み、私は後ろから着いていくのがやっと。
途中で自分の体力の無さ、計画力の無さ、判断力の無さ、想像力の無さ、挙げるとキリがないが総合的に全てが足りない。
本当に情けなく、メンバーに申し訳ない気持ちになり涙が溢れた。
雷鳥平キャンプ場でゆっくりする案もあったが、翌日は再び天気は下り坂、そして悔しくてこれ以上ここに居てるのが嫌になったので早く帰りたい気持ちになったので、この日で下山することに。
【感想】
初日にかなり吹雪かれたのが大誤算だったのですが文字通り命拾い。今回は小屋までの距離がそう遠くはなかったというのと、GPSで方向はわかっていた、尚且つ、トラバースだったので何とか小屋に近づくことができたが、これがこの時期の正式ルートである尾根を歩いていたら風で飛ばされていたか、雪庇を踏み抜いていた可能性もあるし、色々と運が良かった。かなり黒に近いグレーな遭難寸前だがとりあえず今は生きています。途中でご一緒した方に感謝。急な宿泊にも関わらず快く応じてくれた小屋に感謝。そしてメンバーに感謝。
今も右手の中指、薬指、小指の第一関節、左手の中指の先が痺れ感覚も鈍い。凍傷としては軽ーい部類だが(凍瘡というらしいが)、また治るのに数ヶ月かかるのでクライミングもボチボチかな。またやり直し。必ず登るその日まで鍛えないと。
御前小屋迄の200メートルで遭難とは、こんな事かなと覚悟しました。
コメントありがとうございます。
こちらこそ大変お世話になりました。改めてありがとうございました。
無事に小屋に着いて良かったものの、本当に『遭難』を覚悟しましたね。山の怖さを教えてもらい勉強になりました。
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