富士山

- GPS
- --:--
- 距離
- 11.3km
- 登り
- 1,344m
- 下り
- 1,327m
コースタイム
| 天候 | 晴れ |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2009年02月の天気図 |
| アクセス | |
| コース状況/ 危険箇所等 |
富士スカイラインにコンビニ有り。 雪は例年に比べ少ないそうです。 3合目より上はカチカチのアイスバーン、すべると基本的に斜面に止まるところは有りません。 |
写真
感想
正月に負った凍傷も9割がた癒え、天気、雪崩などいろいろ調べると、この日が好条件に思えたので初の冬富士の扉をノックしてみることにした。
2:30に自宅を出発し富士スカイラインで車が近づいていく。すると突然暗闇にぼんやりと月の光に照らされた白い富士のシルエットが浮かび上ってきた。
大きい。その静かでありながら微動だにしない重厚感。まさに霊山と呼ぶにふさわしい空気が漂っている。神妙な心持がしてきた。
暗闇の中ヘッドライトで進んでいると、もう一人の人影を感じた。よく見ると足元を照らしながら先の方を進んでいる単独の登山者?
標高1550m地点に在る大石茶屋で、先行している登山者の方が月明りの中写真を撮っている。少し話しかけると、冬の富士山も何回か訪れたことがあるそうだ。風がけっこう強いのでこのまま登るか考えているとのこと。
私は冬富士は初めてと告げ、今回の風の状態やアイゼンの装着ポイントなどを聞くと、この位だと、まだもうちょっと上にある次郎坊位までは大丈夫だろうと仰る。自分は歩みも遅く、風も今の時点くらいなら問題ないので「ゆっくり先に行ってます」と、出発する。
数100m位進み、高さが2m位の道標の柱が数10m位の間隔で立っている所まで来ると、風も強くなる。ちょうど真正面から受けているかたちだ。
ゴーグルもまだ着けていなかったので、顔を上に上げることが出来なくなってしまい、柱の風下側へ立ちしばらく様子を見ることにした。
足もとを猛烈な勢いでガスが抜けて行く。月明りの中ちょうどこの位か、もう少し強い感じでした。
http://blogs.yahoo.co.jp/fujisannwhale2008/10000136.html
一番上の動画が近い感じです。
温度計は−5℃を指している。しばらく、おおよそ20分位待ってもとても弱まりそうも無いし先程の方も登ってこない。
風上の方を目を細め一瞬見ようとするが、見ることが出来ない。もう一度試すと冷気と風に飛ばされている雪が目に当たり、目を開けていたのは、ほんの一瞬、2秒位なのだが、目と頭が急激に冷え痛くなってきた。
「・・・失明するは、ほんまに、、、」
この風の中、ザックを下ろして広げる気には、とてもなれないので、大石茶屋まで戻り仕切り直すことにした。
大石茶屋まで近づいた所で先程の方が登ってきた。私が下って来たことに気付くとお互い近づき合う。
「上の方、風がすごいですよ、なんか、もう、、地獄のようでしたよ、あっはっはっは(笑)」
「私も、もうそこでアイゼン着けましたよ、あっはっはっ」
「けっこう上の柱までは行ったんですけどね、はっはっは」
「私が登った中で、今日は一番風が強いですよ、はっはっ」
「下の風の無い所で荷物を広げようと思って、あっはっはっ」
「そうですか、私も1人だと不安だし、はっはっ」
「それじゃあ、あっはっは」
ずる〜い、アイゼンもゴーグルもフェイスマスクもやってるじゃん。
しかし、人間ある種、極度の緊張状態を超えると笑ってしまうらしい、、
脳にアドレナリン、ドーパミン、エンドルフィン大爆発といったところか、、
大石茶屋まで戻り重装備で身体を固める。そうしている内に朝日が昇ってきた。
再び上り始めるが風はそう変わりない、しかしゴーグルをしているので十分登っていける。風速10〜15m位?
上の方を見上げると先程の方が小さく見える。
二合八勺の辺りまでは足もとの雪もそれ程固くないが、4合目手前位からコチコチのアイスバーンが始まった。
まだ斜面はそれほど急ではないが、すべったら本当に滑落停止姿勢で止めることが出来るのだろうか?
はじめの2〜3秒が限度で、そこで止めないと、とても止るとは思えない。たった1歩のミスがとんでもないことになりそうだ。
4合目を越えた辺りから急に疲労の色が濃くなってきた。前日の体調の調整も失敗してしまった。
ここで2人組のパーティーが下山してきた。朝3時に出発して7合目まで行ってきたそうだ。
5合目まで到着し上を見上げると、先程の方は6合目を越えて、7合目に達しようとしている。
風も天気予報のとおり収まり始めている。今11:45分、彼は冬富士は頂上までは行ったことが無く3500mが最高だと言っていたが、ひょっとしたら今回は狙えるかも。
私もはじめ13:00をタイムリミットにしようと考えていたが、もうけっこう身体にガタが出てきた。
そして、今登ってきたカッチンカッチンのアイスバーンを下りなければならない。
これからの数千歩の内の一歩もミスが許されない状態だ。これ以上運動能力の落ちたヨレヨレの状態で帰れる道ではないので、ここで切り上げることにした。
スリングで道標の柱に身体を固定し、写真を撮り終え座ったまま飴玉を口に入れようとするが、重装備のためてこずってしまう。
ゴミを山に残すことに、とても苦痛を感じるので慎重に慎重にやっていたが、1つ下に落としてしまった。
初め落ちた所で止りそうにも見えたが、ゆっくりゆっくりと下へすべり始めた。そしてどんどん下へ落ちていく。
頭では飴玉1つ落ちただけと解っているのに、何か自分の身体の一部が下へ落ちていくような感覚を覚え、本能が反応したのか身体が震えだし、しばらく止らなくなってしまう。
落ち着いてから、気合を入れなおし下山を開始した。15:00位から曇るという天気予報も不安の種の一つだった。視界の無い中を下りるのは相当なリスクだ。しかし、この予報はおおむねはずれたよう。
14:00も過ぎた頃、比較的若い男性が鉄のスコップを持って登ってきた。話を聞くと雪崩や落石の調査をしているそうで、明日春一番が吹き、雨が降るので、まず間違いなく雪崩が起きるだろうとのこと。しばらく、いろいろ伺い話し込んだ後に下山した。
今回の大きなポイントの一つは、どの時点で下山を開始するかだったが、あまりの体力的な違いも歴然とし、早々に下山を判断したのは間違いなく正解であろう。
根拠の無い主観だが、日帰りで冬富士を目指すなら、いくら気象条件がそこそこ良くてもフルマラソンを楽に4時間を割るくらいの脚力がいるのではと思えた。
しかしまた是非挑戦したい山行であった。
PS ただ翌日思ったほど筋肉痛が出なかったので、軽く調整で走ろうと思い、平らなアスファルトを走っていると妙に調子が良く、5km位にするつもりが10kを51分で走ってしまった。
これは私の最近の新記録で、ランニングは登山の筋肉に近いと書いてあったが結構違うのか?高所トレーニングになったのか?不思議だ。
また下山してきた2人組のパーティーの内1人がアックスを片手に持ち、ピッケルを背中に挿していたが、上の方に氷壁でもあるのか?くらいに思っていたが、後日ICIスポーツに寄ってピッケルを見ていると、確かにアックスならあのコチコチのアイスバーンも初期なら十分に止りそうだ。今自分の使っている、かる〜いピッケルでは明らかに役不足だった。
jazzy




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