岳〜藤原岳〜御池岳〜三国岳〜五僧峠☆テン泊で賑わう山荘を経て静寂の尾根を縦走


- GPS
- 17:09
- 距離
- 37.0km
- 登り
- 3,111m
- 下り
- 2,891m
コースタイム
- 山行
- 6:15
- 休憩
- 0:38
- 合計
- 6:53
- 山行
- 9:01
- 休憩
- 4:14
- 合計
- 13:15
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス 自家用車
|
写真
感想
この週末の日曜日は数年前から参加させて頂いているネット・サークルのオフ会が鈴鹿北部で開かれる。会場はダイラの頭の北側の広がるダイラと呼ばれる緩斜面だ。週末の二日間はいずれも好天の予報であり、久しぶりに泊りがけの山行を試みることにした。まず初日の宿泊地は藤原岳に決める。テン泊にするか直前まで迷ったのだが、藤原山荘に一度、泊まってみたかったのと、スピード・アップのためにも今回は小屋泊の計画とする。
思案したのが藤原山荘へのアプローチだ。竜ヶ岳から鈴鹿主脈を縦走することも考えたが、奥永源寺の道の駅から岳に登りノタノ坂から茨川を経由して藤原岳に登ることにする。岳からノタノ坂に至る尾根を歩いてみたかったというのが理由だが、こんな機会でも無ければこの長い尾根を歩く機会はなかなかないだろう。
永源寺車庫で近江バスを降りる。ここから「ちょこっとバス」に乗って奥永源寺の道の駅「渓流の里」に向かう。バスの後ろには大量の胡瓜が積まれている。道の駅に到着すると、運転手が胡瓜を下ろす。
営業開始の9時まで少し待つ。バイクや自転車のツーリングの人達が道の駅が開くのを待っている。ここでキノコを手に入れることが出来ればと思っていたのだが、売られている椎茸はいずれも乾燥のものばかりだった。お弁当も色々と売られていたが、行動食のおにぎりとパンを手に入れるといざ出発だ。道の駅の反対側には黒尾山への登山口があるが、こちらには数台の車が停められている。
道の駅から見上げると送電線鉄塔が二基、国道を東に少し入って黄和田の集落から歩き始める。黄和田キャンプ場と書かれた案内があるので、近くにキャンプ場があるのだろう。集落の奥を進むと案内標があり、黄蘗城のことが記されている。この黄蘗という字の読み方が解らなかったが、後で調べると「きはだ」と読むらしい。黄和田の古い地名なのだろう。
植林の中に続く小径に入ると、すぐにも数段にもわたって続く壮麗な石垣が現れる。石の積み方が穴太積みで明らかに古い時代のもののようだ。黄蘗城の城址らしい。さらに樹林の奥へと進むと大きな杉の樹があり、その根本に祠が祀られている。
祠の手前から右手に登ってゆく尾根に取り付くと、すぐにも明瞭な道が現れる。二基の送電線鉄塔にたどり着く。二基の鉄塔を通り過ぎれると、足元には石灰岩が目立つようになる。
次第に尾根は傾斜を増し、かなりの急登となる。登りはまだ良いがこの急登の下降はかなり厳しいものがあるだろう。地図を確認するとca650mのあたりからは等高線がかなり混雑している。
山頂部は途端になだらかな平地が広がっている。満開のヤマツツジが歓迎してくれる。岳の山頂は展望はない地味なところだ。
尾根を北上すると、しばらくは自然林の快適な疎林となるが、まもなく植林が続くようになる。送電線鉄塔のある広場に出ると、西側には日本コバの大きな山容が広がる。東側には竜ヶ岳から藤原岳へと続いてゆく鈴鹿主脈の展望が広がるが、藤原岳はかなり遠くに感じられる。今日はかなり風が強いようだ。風に揺られる送電線が低い唸り声をあげ続けている。
山の神峠が近づくと右手に平坦な源頭が現れる。源頭では白い花をつけた樹が目立つので源頭をくだり、近づいてみるとヤブデマリであった。山の神峠は植林の中の地味な場所であり、峠の雰囲気は感じられない。送電線の番号を記した無機的な道標が立っているばかりであった。
三角点 旭山を過ぎると植林は少なくなり、快適な自然林が続くようになる。尾根は大きく東に向かって蛇行、支尾根には送電線巡視路が続いており、GPSで確認しないと主尾根がわかり難い。
ca800mが近づくと軽い足取りで降って来られる男性がおられる。こんな時間に南下しておられるとしたら一体どこから来られたのだろうかと思いきや、送電線巡視路を整備されておられるらしい。その先、R187の送電線を確認しに来られたとのこと。君ヶ畑から来られたらしいが、御池林道は御池川の右岸を走っているので、どこかで渡渉して来られたのだろう。
男性のすぐに見晴らしの良い送電線鉄塔にたどり着く。東側には静ヶ岳が大きく見える。送電線鉄塔からわずかに進むと樹林に囲まれたヒキノに出る。山頂広場の一角ではレンゲツツジが咲いていた。尾根を北上すると花盛りのレンゲツツジの群落が現れる。
快適な自然林の疎林が続くが、小さなピークが続き、アップダウンを繰り返す。ピークには次々と送電線鉄塔が現れ、そのたびに西には天狗堂、北に御池岳の展望が広がる。ノタノ坂手前の送電線鉄塔がたつp726は360度の好展望が広がるところだ。地味な尾根ではあるが鈴鹿北部の展望を眺めながらの静かな尾根歩きも悪くない。
ノタノ坂に下るとここからは茨川に向かって古道が続いている。まずは斜面のトラバース道から始まる。君ヶ畑の側は植林だった覚えがあるが、茨川の側は気持ちのよい自然林が続く。かつては茨川の集落から子供達が運動会に参加するためにこの峠を越えて君ヶ畑の小学校まで歩いたというエピソードを思い出す。
小さな谷に下降すると大きな炭焼き窯の跡がある。谷の左岸に渡ると斜面の下に茨川を見下ろすことが出来る。写真を撮っていると川の上流から左岸をマウンテンバイクに乗った男性が現れる。渡渉をどうするのかなと見ていると、自転車はこともなげに川の中を走って対岸に移動するのだった。
茶屋川の河岸に着地すると林道の終点には大きなオフロード・タイプと思われるSUVと軽トラックが停められていた。まずは対岸に渡渉し、二棟の廃屋を訪ねる。手前の建物は近江八幡工業高校の山岳部、奥にあるのは名古屋大学のワンゲル部の小屋となっている。
川は前日の雨で増水しているようなので川沿いを進むのは難しいと思い、茨川から迷い尾根を登ることにする。尾根は踏み跡が続いており、歩きやすい。それほど急な山道ではないのだが、疲労を感じる。この分で行けば遅くとも16時には藤原山荘に到着することが出来るだろう。急ぐ必要はない。治田峠からの鈴鹿主脈の登山道と合流しても登山道には行き交う人の気配はない。
孫太尾根との分岐点となる多志田山は急登の直登を避けて、躊躇なく山腹のトラバース道を選択する。登山道沿いには多数のバイケイソウが現れる。山頂が近づくと樹林を抜け出し、御在所岳、雨乞岳に至るまでの鈴鹿の山々を眺めながら石灰岩の間を縫って登ってゆく。眼下には岳から辿ってきた長い尾根が見える。
藤原岳から藤原山荘を眺めるとその周囲に張られた多くのテントが見える。山荘に到着すると途端に賑やかだ。山荘の前にもテントが二つ張られており、ベンチでは男性がビールの缶を空けている。ビールを3缶担ぎ上げられたそうだ。風が強いのでテントが数多く張られている小屋の裏手からここに退避してきたらしい。
山荘の一階は休憩所となっている。大きなテーブルが4つあるが、奥のテーブルでは四人の男子学生がカレーを調理していた。二階に上がる階段の下にあるテーブルでは男性2人、女性1人の若い人達がカードゲームに興じている。
二階に上がると誰もいないようだ。六畳ほどのスペースを1人で占有させてもらう。まずはビールを取り出すと、山荘の前で藤原岳を眺めながらビールを開ける。小屋に戻ると、カード・ゲームに興じていた若者達は牛肉のすき焼きを調理し始める。その美味しそうな匂いにつられて、時間は早かったが夕食に取り掛かることにした。
まずは牛肉とズッキーニ、新玉ねぎを炒める。ついで万願寺とうがらしを投入。後ろのテーブルには四人組のパーティーがお湯を沸かしているが、夕食は全員カップ麺のようだ。「美味しそう」「いい匂い」という声が聞こえるので、少し料理を差し上げると、非常に喜ばれる。万願寺とうがらしは京都以外では市場にあまり出回らないものであろう、三重から来られたパーティーで、男性2人は口にするのは初めてらしく「酒のアテにいいですね」と言いながら持参し来られた焼酎と共に楽しまれたようだ。こちらも持参した赤ワインと供にゆっくりと食事を楽しむ。
食後は夕陽を見に天狗岩に向かう。天狗岩の西側の展望地に出る。陽が沈む方向が御池岳が重なっており、御池岳に夕陽が隠れようとするところだった。日没は諦めて藤原山荘に引き返すと、西の空が美しい茜色に染まっている。
山荘に戻ると夕焼けはすぐにも色褪せていた。この時間になってもまだテン泊のために登って来られる方がおられる。山荘に戻るとテン泊の人たちが次々と夕食を作りに小屋にやってくるが、若いカップルが多いようだ。山荘の外に数年前に新しく作られたトイレがあるので人気なのだろうか。先ほどの3人の若者達は今度はトランプに興じていた。
夜のとばりが降りてくるので夜景を撮りに外に出る。北には大垣、南東には四日市方面の夜景が見えるが、やはり名古屋方面の夜景は煌びやかだ。小屋の中にいた若者達も「そろそろ夜景が綺麗な頃かな」と外に出る。パーティーの女性はこれからテントを張るようだ。
山荘では8時近くになっても、この時間から食事の用意を始めるパーティーがおられる。「うるさくて済みません」とお断りを下さるが、疲れているので階下の賑やかな声も気にならない。横になると早々に眠りに落ちる。
【二日目】
真夜中に目が覚めて星空の写真を撮りに外に出てみるが、生憎、空には所々に薄く雲がかかり、綺麗な星空は見えない。4時に起床すると東の空は既に明るくなり始めていた。テントからは多くの人が外に出て、東雲の空を眺めている。東の方角には雲がかかっているが、朝焼けの空に御嶽山や中央アルプスのシルエットが浮かび上がる。
小屋でお湯を沸かし、トマトポタージュとパンで朝食を摂る間にご来光の瞬間を逃したようだ。再び外に出ると既に朝日が出ていた。藤原山荘を丁度5時に出発する。朝の清々しい空気に満ちた樹林の中を進む。
天狗岩に至ると朝陽を浴びた御池岳の斜面が明るく輝いており、前日に眺めたシルエットとは全く違う雰囲気に感じられる。天狗岩から頭陀ノ平にかけてはなだらかな尾根に広がる疎林の間には所々に草原広がっている。送電線鉄塔の建つ頭陀ノ平からは大きく展望が広がり、北側には霊仙と伊吹山、目の前には御池岳が迫ってくる。
カタクリ峠を過ぎるといよいよ御池岳への登り返しとなる。登山道が途中で斜面を左手にトラバースするようになると小さな谷に湧き出したばかりの細い水の流れがあり、水を補給することが出来る。鈴北岳方面との分岐を過ぎると小さなバイケイソウの大群落が繁茂する小さな谷の中を御池岳の山頂へと登りつめる。
山頂に到着したのは7時過ぎ、山頂には既に二組の単独行の男性がおられた。この時間は人が少ないだろうと思っていたが、豈図らんや、ボタンブチにも数人の人影が見える。
まずはテーブルランドを周回する。グリーンシーズンの御池岳は久しぶりだが、草原に緑のカーペットが広がり始めた御池岳はここが山上であるということを忘れそうになるほどに牧歌的な雰囲気だ。
時折、木陰に身を隠すように小さな池が水面に蒼空や新緑の光を反射する。遠くに通り過ぎてゆく単独行者のシルエットを遠くに見かけたが、他にはひと気のないテーブルランドの朝の静謐な空気を満喫する。
再び御池岳の山頂に戻ると時間は8時半になっていた。オフ会の会場に11時に到着するためには三国岳に10時過ぎには到着したいところだ。
鈴北岳に向かうと、続々と登って来られる登山者達とすれ違う。日本庭園は苔が美しいところだが、既にテーブルランドでの光景を満喫したところであり、時間が気になるので先を急ぐ。
鈴北岳の山頂も数組の登山者たちで賑わっていた。今年の残雪期にuriuriさん、greenriverさんと共に歩いた時は登山道の周りは雪に覆われていたが、周囲に広がる美しい苔の中を霊仙山へと続く稜線を眺めながら下降してゆくのは格別の爽快感だ。しかし、中国人か韓国人と思しき若い男女が美しい苔の上に傍若無人に入りこんで写真を撮っているのを目にすると爽快感はすっかり消えてしまった。
鞍掛峠の祠にあるお地蔵様は丸いお顔がなんとも可愛らしい。焼尾山への登り返しがきつく感じられるが、ここは距離が短いのが救いだ。三国岳への尾根に入ると、細尾根からは随所に好展望が広がるが、三国岳への鞍部が深く感じられる。
前回歩きた時は随所に現れるカタクリの花々が登りの辛さを感じさせなかったように思う。この日は気温が上がり始めていたせいだろうか、三国岳への登りで水を全て飲み干してしまう。三国岳の山頂では3人の年配の方が休憩しておられる。ご挨拶すると「若い人はこの登り返しは堪(こた)えないのだろうか?」と仰る。どうやら「若い人」の範疇と見做されたようだが、「堪えないわけがありません」と即答する(若くはないのだから・・・)。
阿曽谷分岐からはまず谷に下降して水を汲む。谷の左岸に上がり、馬酔木や石楠花の間をぬって斜面をトラバースしながら進むと、ダイラに向かう薄い踏み跡が現れた。ダイラの緩斜面に入ると下生のない自然林の疎林が広がる快適な場所だ。オフ会の会場に到着したのは丁度11時。何故か参加者が少ない・・・と思いきや、私が開始時間を30分間違えていたのだった。
オフ会での時間は瞬く間に過ぎる。下山はkitayama-walkさんとbiwa爺さんとご一緒させて頂く筈だったのだが、お二人が登場されたのは会も終盤に近づいた頃だった。妛原から五僧峠へと通じる権現谷林道が大岩で塞がれて車で通行出来なかったためらしい。なんと大君ヶ畑に移動して五僧峠に来られたらしい。biwa爺さんは先週の天狗峠への山行にもお付き合い頂いたのだが、大病を患われ、頚椎の固定術の手術を受けておられるので首はカラーと呼ばれる固定具を嵌めたままの山行だ。
下山は阿曽谷の下降点まで戻るとダイラの頭を経て五僧峠まで県境尾根を縦走する。ダイラの頭からは東ヨコネにかけて地味に小さなアップダウンを繰り返す。東ヨコネの手前からはその山頂が立ちはだかるように聳える。実際、東ヨコネへの最後の登りはかなりの急登であった。
尾根上はほとんど展望が得られる場所が無かったが、東ヨコネからは辿ってきたダイラの頭と三国岳の双耳峰を望むことが出来る。東ヨコネからはひとしきり急下降を下ると、しばらくはなだらかな尾根が続く。
尾根が大きく北に向きを変えるca690mでは北側の斜面が伐採されたためだろか、霊仙から五僧峠へと続く県境尾根とソノドへと続く稜線の展望が広がる。五僧峠に向かって下降し始めると下から登ってくる2人の若い男性と出遭う。滋賀一周を試みているという、聞くまでもなく霊仙から南下して来られたのだろう。この日は行けるところまで行ってテントを張るというが、ダイラの頭〜東ヨコネの間では幕営適地は思い当たらないので、東ヨコネへの登りの手前の平坦地をお勧めする。
五僧峠に降り立つと自転車が一台デポしてある。果たして自転車の主は大丈夫だろうかと思っていると、上から熊鈴の音がして北から県境尾根を単独行の男性が下降して来られる。時山からソノドを経て霊仙を周回して来られたらしい。このために折りたたみ自転車を買ったとのこと。
五僧峠からはbiwa爺さんの車で近江八幡まで送って下さる。久しぶりの単独での二日間の山行はやはり泊りがけならではの充足感を実感する。またしばらく泊りがけの山行の機会がないのがなんとも残念だ。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
唯一の心残りは永源寺の温泉にご一緒できなかったことです。
東北の山は訪れる度に魅力を感じますが、長いことご無沙汰してしまっております。kitayama-walkさんが羨ましい限りです。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する