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Yamareco

記録ID: 5970990
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
比良山系

権現山〜武奈ヶ岳☆南比良へのご来光登山のつもりが

2023年09月24日(日) [日帰り]
 - 拍手
体力度
5
1泊以上が適当
GPS
04:57
距離
17.6km
登り
1,654m
下り
1,796m
歩くペース
とても速い
0.40.5
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

日帰り
山行
4:41
休憩
0:16
合計
4:57
距離 17.6km 登り 1,657m 下り 1,803m
4:53
44
スタート地点
5:37
17
5:54
5:55
16
6:11
16
6:27
6:32
5
6:42
6
6:48
6:50
16
7:06
7:07
2
7:09
6
7:15
8
7:23
9
7:32
6
7:38
13
7:51
5
7:56
10
8:06
23
8:29
4
8:33
8
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8:44
10
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8:59
5
9:04
5
9:09
9:11
9
9:20
12
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17
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9:50
0
9:50
ゴール地点
過去天気図(気象庁) 2023年09月の天気図
アクセス
権現山の山頂に
東の空には雲が広がっており、この日はご来光は全く期待できなさそうだ
2023年09月24日 05:38撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
3
9/24 5:38
権現山の山頂に
東の空には雲が広がっており、この日はご来光は全く期待できなさそうだ
琵琶湖の南湖を取り巻く市街地にわずかに街灯りが残っていた
2023年09月24日 05:38撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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9/24 5:38
琵琶湖の南湖を取り巻く市街地にわずかに街灯りが残っていた
権現山の山名標を確認して
2023年09月24日 05:38撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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9/24 5:38
権現山の山名標を確認して
ブルーグレイの空を映す北湖
2023年09月24日 05:41撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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9/24 5:41
ブルーグレイの空を映す北湖
法華山より比叡山を眺めて
市街地からは急速に街の明かりが消えてゆく
2023年09月24日 05:54撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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9/24 5:54
法華山より比叡山を眺めて
市街地からは急速に街の明かりが消えてゆく
法華山
2023年09月24日 05:56撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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9/24 5:56
法華山
法華山からは伊吹山の方角にわずかに朝焼けが広がる
2023年09月24日 05:57撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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法華山からは伊吹山の方角にわずかに朝焼けが広がる
わずかな朝焼けの空を映して、琵琶湖の湖面がラヴェンダー色に染まってゆく
2023年09月24日 05:58撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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9/24 5:58
わずかな朝焼けの空を映して、琵琶湖の湖面がラヴェンダー色に染まってゆく
苔の広がる法華山山頂より蓬莱山を眺めて
2023年09月24日 05:59撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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苔の広がる法華山山頂より蓬莱山を眺めて
この季節にしては珍しい花が咲いていた
狂い咲きのイワカガミだ
2023年09月24日 06:01撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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この季節にしては珍しい花が咲いていた
狂い咲きのイワカガミだ
蓬莱山への稜線ではススキが風にそよいでいた
2023年09月24日 06:04撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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蓬莱山への稜線ではススキが風にそよいでいた
雲の向こうで朝日が上がったようだ
上空の雲が黄金色に輝き始める
2023年09月24日 06:12撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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雲の向こうで朝日が上がったようだ
上空の雲が黄金色に輝き始める
小女郎峠の手前のお地蔵様
2023年09月24日 06:13撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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小女郎峠の手前のお地蔵様
蓬莱山へ
2023年09月24日 06:17撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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蓬莱山へ
琵琶湖の湖面に金属的な輝きが広がってゆく
2023年09月24日 06:18撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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琵琶湖の湖面に金属的な輝きが広がってゆく
蓬莱山の山頂手前のグリーンロード
2023年09月24日 06:23撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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蓬莱山の山頂手前のグリーンロード
雲の彼方で輝く太陽
2023年09月24日 06:23撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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雲の彼方で輝く太陽
蓬莱山山頂
2023年09月24日 06:30撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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蓬莱山山頂
琵琶湖の湖面に朝陽の反射
2023年09月24日 06:31撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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琵琶湖の湖面に朝陽の反射
伊吹山の左手には御嶽山、乗鞍岳
その左手には穂高連峰のシルエット
2023年09月24日 06:32撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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伊吹山の左手には御嶽山、乗鞍岳
その左手には穂高連峰のシルエット
武奈ヶ岳(左)を眺めているうちに武奈ヶ岳に縦走することを思いつく
坊村のバスの時間までタイムリミットは3時間と15分
2023年09月24日 06:36撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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武奈ヶ岳(左)を眺めているうちに武奈ヶ岳に縦走することを思いつく
坊村のバスの時間までタイムリミットは3時間と15分
比良岳にかけては複雑な地形に美しい林相が広がっている
2023年09月24日 07:00撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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比良岳にかけては複雑な地形に美しい林相が広がっている
ブナの樹林に朝陽が差し込む
2023年09月24日 07:03撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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ブナの樹林に朝陽が差し込む
比良岳より蓬莱山を振り返って
2023年09月24日 07:08撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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比良岳より蓬莱山を振り返って
比良岳の山頂には山名標が移設されていた
本来ここにあって然るべきものだろう
2023年09月24日 07:09撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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比良岳の山頂には山名標が移設されていた
本来ここにあって然るべきものだろう
広い山頂部の疎林を抜けて
2023年09月24日 07:11撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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広い山頂部の疎林を抜けて
まずは葛川越のアップダウンを経て烏谷山へ
左手に見える武奈ヶ岳の山頂が遠く感じられる
2023年09月24日 07:12撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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まずは葛川越のアップダウンを経て烏谷山へ
左手に見える武奈ヶ岳の山頂が遠く感じられる
琵琶湖の湖面に朝陽の反射が広がってゆく
2023年09月24日 07:15撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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琵琶湖の湖面に朝陽の反射が広がってゆく
烏谷山の山頂から
手前は堂満岳、金糞峠はその向こうだが・・・遠い!
2023年09月24日 07:26撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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烏谷山の山頂から
手前は堂満岳、金糞峠はその向こうだが・・・遠い!
岩姫蕨の広がる南比良峠
2023年09月24日 07:41撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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岩姫蕨の広がる南比良峠
奥の深谷の上流
ひと月前には橋はなかったのだが、どなたかが橋を架け直して下さったようだ
2023年09月24日 08:00撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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9/24 8:00
奥の深谷の上流
ひと月前には橋はなかったのだが、どなたかが橋を架け直して下さったようだ
対岸の芦生杉
2023年09月24日 08:01撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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9/24 8:01
対岸の芦生杉
コヤマノ岳に向かって
朝陽が差し込むブナの樹林に
2023年09月24日 08:28撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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コヤマノ岳に向かって
朝陽が差し込むブナの樹林に
コヤマノ岳山頂南側の草原
2023年09月24日 08:30撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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9/24 8:30
コヤマノ岳山頂南側の草原
シンボリックなブナのマザーツリーにご挨拶して
2023年09月24日 08:30撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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シンボリックなブナのマザーツリーにご挨拶して
コヤマノ岳の山頂から
朝の曇天が嘘のように消えて蒼い琵琶湖が広がっていた
2023年09月24日 08:32撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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コヤマノ岳の山頂から
朝の曇天が嘘のように消えて蒼い琵琶湖が広がっていた
後は一気呵成に武奈ヶ岳に
2023年09月24日 08:43撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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後は一気呵成に武奈ヶ岳に
百里ヶ岳方面
2023年09月24日 08:44撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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百里ヶ岳方面
山頂には珍しく誰もおられなかった
2023年09月24日 08:44撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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山頂には珍しく誰もおられなかった
琵琶湖の彼方に再び伊吹山(中央)を眺めて
写真では分かりずらいが、御嶽山、乗鞍山、北アルプスはまだ見えていた
2023年09月24日 08:46撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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9/24 8:46
琵琶湖の彼方に再び伊吹山(中央)を眺めて
写真では分かりずらいが、御嶽山、乗鞍山、北アルプスはまだ見えていた
釈迦岳の彼方に光り輝く琵琶湖
2023年09月24日 08:46撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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釈迦岳の彼方に光り輝く琵琶湖
蓬莱山・・・2時間前にはあそこにいたのか
2023年09月24日 08:48撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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蓬莱山・・・2時間前にはあそこにいたのか
残念ながらのんびりしてはいられない
早速にも西南稜の降りに
2023年09月24日 08:49撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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残念ながらのんびりしてはいられない
早速にも西南稜の降りに
秋色を帯びる西南稜
2023年09月24日 08:51撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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秋色を帯びる西南稜
西南稜より山頂を振り返る
2023年09月24日 08:53撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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西南稜より山頂を振り返る
急に日差しが眩しく感じられる
2023年09月24日 08:56撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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9/24 8:56
急に日差しが眩しく感じられる
満開のトリカブト
そういえば他にはイワカガミの写真しか撮っていなかった
2023年09月24日 09:02撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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満開のトリカブト
そういえば他にはイワカガミの写真しか撮っていなかった
明王院に下山
なんとかバスの時間に間に合った💦
2023年09月24日 09:49撮影 by  E-PL8 , OLYMPUS CORPORATION
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9/24 9:49
明王院に下山
なんとかバスの時間に間に合った💦
撮影機器:

感想

先週末の剣山の縦走から京都の自宅に戻ると義理の父の容態が急変し、その夜のうちに鬼籍に入ることになった。義理の父は晩年には琵琶湖を眺めることが出来る家に住みたいという希望があったそうだが、入院していた病院の病室からは琵琶湖の景色が広がっており、家内によると容態が悪化する前は良く琵琶湖の景色を眺めていたらしい。

この週末の日曜日は晴天が期待できそうだ。午後からはピアノのリサイタルを聴きにいく予定があるので、久しぶりに早朝の南比良の稜線からの琵琶湖の景色を眺めに行くことにする。

前夜に目覚ましをセットせずに就寝してしまうが4時過ぎに目が醒める。本来は4時には出発したいとところではあったが、今から身支度を整えて出発しても、権現山からの日の出の時間には十分に間に合うだろう。平の集落に到着したのは4時50分頃であった。近畿自然保歩道の林道の道路余地に車を停めて出発する。

平からは権現山の山頂にほぼ一直線に向かう尾根に取り付く。この尾根を通るのも既に20回ほどになっただろう。尾根には一般登山道やテープの類いはない。辛うじて細い踏み跡が続いているが、踏み跡を少しでも外すと馬酔木の濃厚な藪に捕まる羽目に陥る。何度か馬酔木の藪に進路を阻まれては踏み跡を探し求めて引き返すということを繰り返す。

尾根のほぼ中間地点、標高点752mのあたりは植林帯の下部に相当するが、数年前の台風による倒木の集中地帯がいまだに処理されないままになっている。尾根の左手を通過して倒木帯をバイバスすると、後半は植林の尾根の急登となり、一気に高度を上げる。尾根を登るうちに急に空が明るくなっていく。

権現山の山頂にたどり着くと琵琶湖を取り巻く市街地には夜の残滓のような街灯りがわずかに残っていた、東の空は完全に雲で覆われ、この日の朝はご来光どころか朝焼けする期待できないようだ。上空には雲がないのだが、太陽が東の空に広がる雲の上に顔を出すまでにはかなりの時間を要することだろう。

法華山に向かうと東の空がわずかに朝焼けに染まっている。その朝焼けの空を背景に伊吹山の左手に御嶽山のシルエットが浮かび上がっている。わずかな朝焼けの空を映して、琵琶湖の湖面がラヴェンダー色に染まってゆく。

小女郎峠への稜線ではところどころにススキの穂が風にそよいでいる。この時間帯に法華山から蓬莱山に向かうと小女郎峠あたりの笹原では草を食んでいる鹿の群れを数多く見かけることが多いのだが、この日はどうしたわけか鹿の姿を一頭も見かけない。やがて雲の彼方で朝日が上がったようだ。上空の雲が黄金色に輝き始め、琵琶湖の湖面には金属的な輝きが広がってゆく。

蓬莱山の山頂に到達すると、空気が澄んでいるせいだろう、御嶽山の左に視線を移すと乗鞍岳、さらにその左手に穂高岳と大キレットを挟んで槍ヶ岳の鋭鋒を認めることが出来る。さらに北には白山のシルエットが綺麗に見えるは云うまでもない。

山頂から武奈ヶ岳を眺めるうちに、当初はここで引き返して平に下山するつもりであったが、武奈ヶ岳まで縦走して坊村に下山する可能性を考える。坊村を通過する京都バスの時間は9時51分。武奈ヶ岳に8時半過ぎに到着すればバスの時間までに坊村に下山することだ可能だろう。時間は6時半過ぎ、果たしてここから武奈ヶ岳まで2時間でたどり着くことが出来るか。頭の中でコースタイムを計算する。あと30分あれば余裕があっただろうが、快足で飛ばせばなんとかなるかもしれない。無理と判断すれば金糞峠から大橋、牛コバを経て下山するか中峠を経てワサビ峠に向かうというエスケープ・ルートも考えられるので、とりあえず武奈ヶ岳に向かうことにする。

まずは打見山に向かう。リフトが営業している間は到底ここを歩く気にはなれないのだが、ここを気兼ねなく歩くことが出来るのも早朝のこの時間ならではと言えるだろう。鞍部から打見山に向かう登山道は工事のために通行止めとなっていた。リフトの西側の林道を歩いて打見山に向かう。

打見山からはゲレンデを一気に下降して、木戸峠に至る。ゲレンデを下るというのはなんとなく落ち着かないのだが、登山道に入るとなんとなく一安心する。比良岳にかけては短い区間ではあるが、南稜に刻まれた複数の小さな谷と丘陵のせいで、複雑な地形の妙を楽しめるところだ。下生のないブナの樹林の林床にはところどころに岩姫蕨の群生が広がり、比良山系の中でもとりわけ林相の良いところだと思う。表比良の縦走路は比良岳の山頂をバイバスしてその東側を通過することになるが、ここは勿論のこと比良岳のピークを目指す。

緩やかな斜面を比良岳を目指して登ってゆくと柔らかな朝陽の木漏れ日が樹林の中を明るく輝かせる。比良岳の山頂には山名標が設けられていた。以前はこの山名標はもう少し東の縦走路との分岐部に設置されていたものと思われるが、本来はこの山頂に設置されるべきものだろう。

比良岳からは葛川越を返して烏谷山への急峻な登り返しが待っている。烏谷山の山頂に立つと、南比良峠、コヤマノ岳を経て武奈ヶ岳へ至るルートの全容を俯瞰することが出来るが、金糞岳の向こうにある筈の金糞峠がなんとも遠く感じられる。時間を確認すると7時26分。当初の目論見よりも時間が遅れている。

荒川峠、南比良峠にかけて小さなアップダウンを繰り返す。一面に岩姫蕨の群生が広がる南比良峠からはいつもは堂満岳の南尾根を登るので、西側をトラバースする表比良縦走路を歩いた憶えがないのだが、この日はさすがに堂満岳に寄り道している余裕はない。アップダウンの少ないトラバース道を進む。金糞峠に到着すると数人の登山者が休憩しておられた。

時間は7時56分、ここは武奈ヶ岳を諦めるかどうかの分かれ目ではあるが、武奈ヶ岳までは45分ほどで到着できるだろうと見込む。8時40分までに山頂に到着することが出来れば、坊村までは1時間少々で下山できるという皮算用である。

ここから武奈ヶ岳にかけては先月、HB1214さんの還暦記念かつ武奈ヶ岳の百回目の登山に同行させて頂いた際に歩いたところだ。その時には奥ノ深谷の上流に架かる木橋が流されていたのだが、なんと立派な橋が新たに架け直されていた。橋を整備して下さった方に頭が下がる思いだ。

ヨキトウゲ谷を経て上林新道新道に入ると、前回は濃い霧の立ち込める幻想的な景色の中をkol-yosikokaさんの影を追いながら登っていったのだが、この日は湿度が低く、木漏れ日の落ちる樹林は全く違う雰囲気に包まれていた。高度が上がるにつれ微風がますます涼しく感じられる。

コヤマノ岳の山頂からは琵琶湖に反射する朝陽の反射が眩しく感じられる。朝の曇天が嘘のように思えるほど、上空には蒼穹が広がり、琵琶湖にも蒼い湖面が広がっている。あらためて自分もこの琵琶湖の景色が眺めるのが好きなのだということを再認識する。滋賀県の山々に大きな魅力を感じるのも、山々から眺める琵琶湖の魅力によるところが大きいのだろう。

あとは武奈ヶ岳まで10分ほどだろう。パノラマ・コースへの分岐ではトレラン・スタイルの男性と出遭うが、すれ違いざまに「比良トレイルに出るんですか?」と声をかけられる。なんのことか理解するまで多少の時間を要したが、どうやらそのようなトレランの大会があるようだ。私が先を急ぐのは大会の練習をしているのではなく、バスの時間を気にしているだけなのだ。

武奈ヶ岳まで一気呵成に登り詰めると、山頂にたどり着いた時には珍しく他の登山者は誰もいなかった。伊吹山の左手には相変わらず御嶽山と乗鞍岳が姿を見せており、その左手には槍・穂高のシルエットを確認することができる。この時間まで北アルプスが見えるというのは相当に空気が澄んでいるのだろう。霊仙山の左手には早朝には雲がかかっていたが、恵那山のシルエットを認めることが出来る。

武奈ヶ岳からの展望に見惚れているうちに瞬く間に時間が過ぎてゆくが、今朝はあまりのんびりしてはいられない。坊村のバスの時間までは1時間とわずか・・・とはいえ、急ぎ足であれば大概はそれくらいの時間で下降しているので、なんとかバスの時間に間に合うだろう。

樹木のない西南稜を降り始めると、急に太陽の陽射しが強く感じられる。この武奈ヶ岳に至るまではほとんどが樹林帯の中を歩いていたので、陽射しの強さが気にならなかったのだろう。この時間まで歩くつもりがなかったせいもあって、この日は焼け止めを携行してこなかったのであった。

明王院に至るまで続々と登ってくる登山者と数多くすれ違う。中には中学生と思しき数人の若者達もいた。私が初めて友人と山に登ったのも彼等と同じ年頃だったかと、ふと昔のことを思い出した。下るにつれて多少は気温が少々するが、それでも清々しい秋の空気は坊村に至るまで続いていた。

坊村のバス停に到着したのは9時49分、なんと丁度、堅田行きの江若バスが到着するところだった。昔は江若バスは京都バスよりも15分ほど後を走っていたのだが、ダイヤが改正されたらしい。利用者の立場からすると京都バスとは時間を空けて欲しいものだが、バス会社同士で融通を効かせるつもりはないのだろう。

平のバス停で降りるとバス停の前の露天で多くの野菜や漬物などが安く売られていた。万願寺とうがらし、よもぎもちに奈良漬、しば漬け、山椒味噌など色々と買い込む。この時間帯にここを通過することがなかったせいもあって、これまでにここで買い物をすることがなかったのだが、この露天を知ることが出来たのも今回のバスを使った周回山行の賜物といえるだろう。

午後になると陽射しはさすがに強く、街中には残暑が戻ってきたようだった。この日の午後のリサイタルは今年の春先にステージIVの進行肺癌が見つかり、その時点で余命一年半と宣告されたピアニストによるものだった。全ての演奏が終わってから「余命が限られるからこそ一日一日を丁寧に生きることになり充実感を感じる日々です」という言葉が心を打つ。私も余命を宣告されることがあったら、何をするだろうか・・・と考えてしまう。体力がある限り、まずは比良の山に朝の琵琶湖の景色を眺めに来るのではないだろうか。

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