女峰山〜日光の母は厳しくて優しかった〜


- GPS
- --:--
- 距離
- 17.9km
- 登り
- 1,240m
- 下り
- 2,029m
コースタイム
天候 | 快晴(風強し) |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・標高2000メートル辺りから雪がたっぷり残っています。夏道、雪道が交互に現れますのでアイゼン等を付けるタイミングが掴めませんが、朝の雪道はスリップしやすいです。今後しばらくは、軽アイゼンまたはチェーンスパイクは念のためお持ちになった方が良さそうです。あとストックは有効です。 ・道は概ね良好ですが、道迷いしやすい箇所があります:赤薙奥社跡のピークを下った所と、一里ヶ曽根の独標を下った水場と分岐する付近等。まだたっぷりと雪が残っており、トレースなどは雨に流されて分からない状況です。私も2〜3回迷いました。道迷いをしたなと思ったら、面倒でも見覚えのある場所まで戻り、木に巻き付けたテープ等を探すことです(目印は比較的少ないですが)。あと、黒岩尾根(通称バカ尾根)はよく踏まれ良い道ですが、一箇所だけ、八風から下りるガラ場。私は男体山の展望が良くてそっちの方ばっかり見ていたので、岩に付いた黄色の印を見落とし、ガラ場をそのまま下りてしまいました。黄色の印がなく、浮き石も多かったことから道迷いだと気づき、黄色の印の地点まで戻りました。道は左の方の岩を越えるようについていました。 |
その他周辺情報 | 小倉山温泉「ゆりん」(800円)に立ち寄り湯 |
写真
感想
20代前半の時に大学の学友達と登った男体山。そこから眺めた女峰山が私は忘れられない。その姿はその名前から想像するような優雅なものでなく、むしろ男らしい峻険な姿であった。烈しい美しさというのか。「あれに登らなくてはいけない」と多感だった青年時代の私の心を動かした。
それから30年近く経ち、その念願を果たすときが来た。日帰りでは比較的行程の長いこの山を登るには、日の長い5〜6月が適期であろう。7月以降は、雲竜渓谷から駆け上がる湿った南風により、私の大嫌いな雷が起きやすくなる。北関東の風物詩である夏の雷を起こす積乱雲はこの女峰山の山稜で生まれることが多いようだ。
山行前日は23時に自宅を発ち、翌日早朝3時に霧降高原の駐車場に到着。少し寝ようと思っても興奮で眠れない。小丸山で御来光を見ようと急に思い立ち、3時45分には霧降高原の名物の階段の一歩を踏み出した。
1445段の天空回廊は、良いウオーミングアップになった。小丸山展望台には4時21分に到着。少し早く着きすぎた。しかし、東の空はすでに明るい。立ち止まると寒いので、笹の尾根をゆっくり歩き、頻繁に振り返りながら御来光を待った。4時37分、ゆっくりと雲の隙間から赤黒い大きな太陽が昇ってきた。東の空には雲が広がっていたため、期待する程焼けなかった。その代わり、ある瞬間、雲の隙間から扇状に光線が差し込み、不思議な光景を目の当たりにした。まるで妖精が舞い降りているように感じる光景であった。
朝の風景に満足しながら、笹原の草原を気分良く歩いて行った。上々のスタート。赤薙山では巻き道をとった。巻き道には雪が残っていた。意外にスリップしやすい雪道であった。今日に関しては、チェーンスパイクは必要ないと判断し、持ってこなかった。「気を引き締めないと」と心に言い聞かせ、慎重に歩を進めた。赤薙山のちょっと先で朝食のおにぎりを食べた。赤薙山から先は樹林の中の小さなアップダウンを繰り返す。雪道と夏道が交互に現れてくる。標高が高くなるにつれ雪道の割合が増えてきた。
赤薙奥社跡先の鞍部や一里ヶ曽根先の鞍部には雪がまだたっぷりあり、トレースなども雨に流されたのだろうか見当たらない場所も多くあった。木に巻き付けたテープなどの印も少なく、勘に頼って進む箇所も出てきた。常に周りを注視し、ふと現れる夏道やテープを確認すると安堵し、また歩を進めることが多くなってきた。なかなか印や痕跡が確認できないときは、道迷いをしたと判断し、その印や痕跡のある場所まで引き返し、別の方向に歩いてみるの試行錯誤の繰り返し。油断をすると踏み抜きやスリップもあり、なかなかやっかいな道だ。それでも稜線上や独標などの景色の良いところに出ると、女峰山が確実に近づいてきたことが確認でき、緊張から解き放たれファイトが沸いてきた。
女峰山の最後の登りはきつかった。あたかも日光の母が厳しい試練を与えている様であった。その登りの途中で、背後からかすかな鈴の音が聞こえてきて、それがあっという間に大きくなってきた。女峰山山稜中での今日初めての登山者。かなりの健脚者と覚える。道を譲ろうと道を空け、手招きすると手を横に振った。顔を見るとかなり息が上がっている様子。私はゆっくりと歩を進めると、その登山者も私のペースに合わせて後ろから付いてきた。この登山者は5時半に霧降高原を発ったとのこと。4時間弱でもう女峰の直前なのだからやはり健脚だ。というか、私がかなりのろいのか?
女峰の頂きに9時23分到着。霧降高原から5時間40分もかかった。でもまだ9時半前。早立ちのメリットは大きい。展望は広い。やはり見物は、母を除く日光の山岳一家。父とその子供達3座、そしてまあるいドームの日光白根。父と子供達の背後には牛のような皇海山。新潟、福島県側の山々は頭が雲に隠れ、正確には把握できない。先ほどの登山者と証拠写真を撮り合った後、西北西側に聳えるひときわ目立つ山について議論を交わした。「あれは燧じゃないですか?」「いやいや方角的には至仏ですよ」「でも至仏はあんな鋭くはないんじゃないですか?」「至仏も方角が変わると見え方が変わりますし」などど、愉快な会話ができた。雲が取れて頂上部が分かれば判別ができるのだろうが・・・。今日は弱い冬型になっているから、致し方ないところだ。
さて、下山はどうするかだ。当初の予定は霧降高原往復だが、先ほどのやっかいな雪道はあまり歩きたくない。黒岩尾根(通称、女峰のバカ尾根)は、距離は長いが、南面に付いているので雪は少ないであろう。白樺金剛だの、稚児が墓だの、殺生禁断碑だの、いかにも歴史のありそうな道だし、時間もたっぷりあるので思い切ってこっちに下山しよう。実はそうゆう事もあろうかと、事前に東武日光駅から霧降高原までの路線バスの最終便の時刻もチェックしてある。15時45分だから、普通に歩けば間に合うであろう。もし間に合わない場合でも、タクシーを利用すればいい。風は強いし長居は無用だ。下山コースも決まったので早々に退散しよう。9時51分女峰山山頂を出発。昼食は唐沢小屋前で取った。
結論から言うと、バカ尾根を選択して正解であった。唐沢小屋までは急なガレ場だが、その先は基本的に草原の中に付けられた緩い散歩道であった。所々の急な道も心地よいアクセントとなった。何と言っても展望が第一級品だ。特に黒岩付近から雲竜渓谷を従える女峰山の壁は、筆舌に尽くしがたい絶景であった。この光景はこのバカ尾根上からしか見えないであろう。この先も基本的には常に日光市街に向かって広い草原の中に続く爽快な一本道であった。あまりに浮かれていたのだろうか、八風先のガラ場で、男体山に見とれていたあまりに正規の道を外れ、そのままガラ場を下りてしまった。なかなか黄色い印が出てこないし、浮き石も多くなってきたことから道から外れたと判断。再び登り返して、黄色い印のある所まで戻った。道はガラ場の左を巻いて岩を越えるようについていた。標高が下がると白樺の林相が美しい高原風情のある道となる。さらに進むと今度は赤やピンクの山ツツジのトンネルとなる。長い長い道のりだが、こんな気持ちの良い道はいくら歩いても疲れない。日光の母は、前半の試練を耐えた私に、ご褒美にこんな素敵な道をプレゼントしてくれたのだと理解した。
行者堂に到着したのは14時25分。女峰山から昼食休憩などを入れて4時間半であった。5月の日曜というのに行き交った登山者は10名程度。今日も贅沢な山旅を満喫した。外国人観光客の多い二荒山神社の西参道を経て、国道沿いの道を東武日光駅まで歩いた。東武日光駅到着15時20分。駅前ロータリーからは朝歩いた赤薙から女峰の稜線がくっきり見え、「よくぞ歩いてきたものだ」と満足感に浸った。
思惑通り15時45分の路線バスに乗る事ができ、早朝、霧降高原に駐車した車を回収した。隠れ家的な小倉山温泉「ゆりん」で、山ツツジが見事な露天風呂で山の汗を流し、佐野SAで佐野ラーメンを食べて、無事自宅に帰宅した。21時。
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