柄沢山〜コツナギ沢〜刃物ヶ崎山〜檜倉山


- GPS
- 12:19
- 距離
- 21.9km
- 登り
- 2,208m
- 下り
- 2,209m
コースタイム
合計12時間20分
※柄沢山山頂でガス待ち2時間20分
過去天気図(気象庁) | 2025年02月の天気図 |
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アクセス | |
その他周辺情報 | コツナギ沢は源頭部分は涸沢裏ノ沢と呼ばれる 『苗場 谷川 岩菅 集成図』(1965年版)参照 |
写真
感想
巻機山から朝日岳にかけて南北に連なる上越国境稜線はその東西の山域に明らかな相貌の異なりを見せる。西面の新潟県側は人の生活領域に属していてブナの森も人間活動の痕跡が色濃いのに対して、東面の利根川流域いわゆる奥利根側では人為の影響が薄く手付かずに近い広大な自然が広がる。この間の東面には北からトトンボ尾根、柄沢山北東尾根、刃物ヶ崎山尾根、布引尾根の4本の顕著な尾根が利根川へと標高を落としている。そのうちのトトンボ尾根を歩いた際に人の影響の少ない立派なブナ林に見惚れてしまった。奥利根側の尾根にはいずれも素晴らしい雰囲気のブナ林が広がるのではないかといずれ歩いてみたいと考えていた。何度か山スキーで登川源流周回や檜倉山への山行を続けるうち、檜倉山から刃物ヶ崎山へと連なり平穏さを感じさせる刃物ヶ崎山尾根の美しさに魅入られ、いずれ訪れようと計画を検討してきた。地形図とこれまでの山行から、柄沢山経由が最も合理的(という言い方はあまり好まないが)と思われ、山頂滑走からの刃物ヶ崎山登り返しを計画。上越国境稜線に戻ってからの行程はその時の条件次第。
今季は積雪も多く、山行当日は好条件が期待されてやりたい山行がいろいろあったが、その中でも特に奥深く静かな山を楽しめそうな刃物ヶ崎山へ行くこととした。他にいわゆるジャンクションピークからの北面滑走も捨てがたい案ではあったが、こちらは数年前に檜倉山に登ってあの斜面面白そうだねと話していたthe841さんが向かうとのことでその結果に期待。
3時過ぎに歩き始めると、すぐに今季の雪の多さを感じる。涸沢川沿いの最短ルートで上流へ。1つ目の堰堤はほぼ埋まっていたがスリット間が狭くシール直登が困難なため巻き上がり。2つ目の堰堤は雪に埋まり堤体上を越えることができた。これまでの経験で初。その上流はびっしりと雪に埋まっており、その雪は硬い。雪崩のデブリがこの堰堤まで流れてきていた模様。大量降雪の直後には涸沢川では大規模な雪崩跡が見られることが多いが、ここまで達しているのを見たのは初めて。右岸側から雪崩が落ちてきていると思われ、左岸側のかなり高い位置まで樹木がバキバキに折れていることもある。暗くてよく見えないが今季の雪崩によると思われる樹木の被害も散見された。今季も何度か大きな雪崩が生じていたのだろう。ちなみに1月末からの大量降雪が続いたあとの2月1日、この涸沢川に入山したパーティーが大きな雪崩とニアミスしたとのこと。少しタイミングがずれていたら人的被害も免れなかったかもしれない。自分も一応つながりがないとも言えなくもないので敢えて書いておくが、あの条件(麓で2日間に積雪1m程度)でここに入山するという判断はあまりまともとは言えない。事故となっていれば地元の山屋さんたちが何をやっているんだと呆れられていただろう。
積雪は多く新雪は深くないためとても登りやすい。気持ちよく足を進めるが左岸の尾根に乗り上げた時点でまだまだ暗くガスも漂い始める。ペースを落としてゆっくり進むが山頂に達してもまだガスの中。穴を掘って風をしのぎつつガスが切れるのを待つ。早出にして朝焼けを楽しむ算段だったが空振り。そこから長い待機の始まり。しびれを切らしそうになるがそこはなんとか我慢。確度の高い晴れ予報、このガスの中無理に下っても良いことはないし、ここで慌てて下っても後悔する可能性が高い。計画の時間的にも余裕を見てあるので回復をじっくりと待つことにする。
徐々に視界が広がり始め、やがてガスは流れ去り万全の条件。当初は尾根を下る予定だったが雪の状態を見てコツナギ沢を下ることに。この上ない滑りを味わうことができた。沢床に降りてからも奥利根の風景は優しく、緩斜面を滑りつつ刃物ヶ崎山への登り返しのルートを吟味。やはり地形図上で考えていたルートが最適と判断して登り返し開始。
そしてこの尾根もトトンボ尾根同様に素晴らしいブナの森があることを確認。歩いているだけで幸福な気分に満たされてしまう。山スキーは滑りも気持ち良いのだが、あっという間に景色が流れ去ってしまい、噛みしめることができない気がする。それが歩行時には風景に浸りながらじわじわと味わうことができる。刃物ヶ崎山の山頂下の広々とした真っ白な台地など泊まりたいと思わせられる場所がいくつもあった。
山頂は平凡な感じ。地形図で峻険な地形となっている東面がどんなものだか見てみたいが雪庇が怖くて覗き込めず。高桑信一氏の著作中で「怪峰刃物ヶ崎山」などと書かれていた気がするが、やはりいずれハモン沢へ滑り込んでみるべきだろうか。
刃物ヶ崎山尾根は檜倉山から見た印象よりも細め、木のない側はすでに雪庇上のため反対側をトラバースで進むも急傾斜のギャップとなり板を背負ってやり過ごす。国境稜線側から観察した際に1箇所だけいやらしそうな箇所があるように見えたがやはりここが悪かった。悪場を先行するKさんはやや密なヤブに悪態をつきつつも、その背中は喜びに満ちている。
その先は徐々に尾根が広がり、気分良く歩いて国境稜線へ。柄沢山方面へ登り返して西面の沢を下る案もあったが、諸々検討して自身5度目の檜倉山へ。
檜倉山の山頂からいわゆるジャンクションピーク北面を観察。上部は灌木についたミニ樹氷でガタガタの様相。その下部もなかなか起伏に富んだ斜面となっている。すでに昼過ぎでありthe841さんが滑り終えた後のはずだが滑走跡がよく見えない。雪が硬くて跡が残らなかったのかなと話しつつ写真をたくさん撮っておく。帰宅後にモニターで拡大してみるときれいなラインが刻まれていた。さすがです。
藤島玄は越後の山旅の中でこのピークを本谷山と呼んでおり、「独立峰でこそないが北方から仰望すると堂々たる山容の重要地点だ。本谷山と簡単明瞭な山名がよろしい。ジャンクションピーク(尾根の接合点の峰)と毛唐がクシャミしたようなのは場違いで頂けない」と述べている。まさにその通りで北面の山容は見事であり、独立した山名を与えねばと思わされる。あくまで通過点としての記号的な意味しか持たない現行の呼称はこの山に全くそぐわないし、ハクションピークは少々かっこわるい。国境稜線をさらに北に向かえば別の本谷山があるので紛らわしいかもしれないので、こちらを清水本谷山などとしてはどうだろうかなどと。
檜倉山からの下りは樹林帯の中の開けた沢へ。ここはいつ来ても気持ち良い滑りが楽しめる。Kさんも大喜びだったようで何より。
登川まで下ってからの川原歩きが少々だるくもあるがthe841さんのトレースがあるはずなのでさほど苦労もないだろうと。登りではまっさらな雪面を歩きたいのでトレースがあると意気消沈してしまうが、下山時の林道などでは人のトレースに期待してしまう軟弱山スキーヤーは、期待通りのトレースを見つけてたいそう喜んだことであった。
ペースが速い。無理に着いて行こうとせずに、マイペースで標高をあげる。上はガス。晴れ予報だったのに山頂に着いてもガス。ブロックを積んで待機。結局2時間20分もガスが抜けるのを待っていた。こんなに待つなら、イグルーでも作ればよかった。というか、5時半発でよかった。景色が見えると気持ちも晴れる。ガスが抜けていく様子が美しい。ハモンはずいぶん近い。
シールを剥がしたらコツナギ沢(涸沢裏ノ沢)へ滑り込む。素晴らしいロケーション、雪質で文句なし。こういう瞬間のために山をやっている。ガスが抜けるのを待っている間は「この程度の視界なら滑れなくは無いなあ」と思っていたが、本当に待ってよかった。滑っていくとぐんぐんとハモンが近づいてくる。千匹沢を過ぎたら登り返し。山奥に来た感じがする。「奥利根」という山域は、山を稜線によって区分けた言い方であり、恣意的な感じが強い。けれど、夏も冬も上越国境を跨ぐと、とたんに雰囲気が変わるのを肌で感じることができる。その奥深さからも、やはり特別な響きがある。
登り返しの尾根は素晴らしいブナの森で、大きく、太く、樹間が広い。美しい森に酔いながら歩みを進める。とてもいい場所で、こんなところを登るのは贅沢でしかない。高度をあげていくと柄沢山と滑ったコツナギ沢にシュプールが見えた。見渡す限りが山。小沢岳をはじめ奥利根の山々が近い。山頂手前に素晴らしい台地があった。ここに泊まりたい。刃物ヶ崎山の山頂は雪庇になっていた。東壁を確認したかったのだが、あまり近づきたくなく、諦めた。山頂のそばにある「傘松」というのはどこかわからなかった。
ここから灼熱の尾根歩き。尾根上は風に叩かれていて延々と片斜面をトラバースして足が痛くなった。一箇所板を担いだが、暑い以外は快適。千匹ノ頭を過ぎたあたりからは尾根も広くなってよかった。奈良沢流域や矢木沢流域は地形が険しくないので、沢を繋いだ旅をもっと積極的に行いたい。
檜倉山の山頂からは何度も来ているkawazakanaさんの案内で沢へ。素晴らしい斜面で大はしゃぎ。林道には結構トレースがあり板が走ってかなり楽をできた。
奥利根はやはり美しく、深い。日帰りで行くには本当にもったいない。もっと長く浴びていたかった。大移動がしたい。
コメント
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矢木沢から見んと刃物に見えん。。。
やっぱ、ダムからかなぁ〜〜〜💕
https://www.yamareco.com/modules/diary/3230-detail-324302
やはり刃物ヶ崎山は東面からの姿を見ないとですね。
朝ずっとガスってたので二人はガスの中奥利根落としたのかと思ってましたが
山頂で2時間20分の待機…さすがです。奥利根行ってみたくなりました。
Kawazakanaさん、JPの写真ありがとうございました。
お互い充実した山ができましたね。翌日の苗場と霧ノ塔も。笑
今季は雪が多いのでいろんな山行ができそうで楽しみです。
北面を滑る姿を撮影できたらベストでしたが、また別の機会に。
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