知床連山【羅臼岳→知床硫黄山】


- GPS
- 17:06
- 距離
- 23.6km
- 登り
- 2,462m
- 下り
- 2,436m
コースタイム
- 山行
- 8:43
- 休憩
- 1:58
- 合計
- 10:41
天候 | 8/13 午前羅臼岳山頂曇り、午後ほど晴れ。8/14 朝から晴れ。晴れたら山頂でも暑い。 |
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過去天気図(気象庁) | 2025年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
【ヒグマ】 入山から1時間後。600m付近に3人の関係職員が立っていた。 10日の大沢地点でのヒグマ目撃事例、前日にこの地点付近でヒグマ出没、スプレーをしても付き纏われた事例をこの時の職員たちとの会話によって知る。 登山ルートだけでなく知床全域がヒグマの「高密度生息地」だから、どこでも危険。 ヒグマは常に近くに潜んでいると思うべき。 だが、しっかり装備をしてきた自分のような人間だけではない。 軽装すぎて違和感しかない衆もいた。 【道迷い、藪漕ぎ、その他一般的な危険】 羅臼平から縦走ルートへ、百名山ルートから外れれば「道無き道を進む」感じだった。 目印はほぼないが、それでも迷わないで済むのはなんとなく踏み跡が道を作っているから。 縦走装備で重たいため、羅臼岳と硫黄山の山頂付近の岩場の傾斜はきつかった。 何度も荷物をデポしたい衝動に駆られたが、ここは「知床ヒグマ銀座」、デボは絶対にしてはいけないと自戒した。 この自戒が何のためになるのか。 人間の食べ物に味をしめたクマちゃんは、その味を求めて人に近づく。そして人身事故を起こして、殺されてしまう。クマちゃんたちには、そうなってほしくない。 羅臼平分岐後から南岳過ぎ辺りまでの道中8割は身長以上のハイマツのエグい藪漕ぎ。 ハイマツの枝が体や目に刺さる。押し返されるようで進まない。疲れているのに余計に体力を持ってゆかれる。 硫黄山が近くなってくると道は一変した。 薮はなくなったが、瓦礫が滑る。 御鉢周りは転落したら生きて帰れるか。 危険は常に隣にあった。 |
その他周辺情報 | 三段の湯。一番熱い湯は熱すぎて無理だった。 |
写真
時々青空が見えることもあるが、すぐに雲に飲まれる。
山頂にもツバメが数羽飛び交っていて、羽音がすごい。3コイン分の重さしかないツバメの凄さに驚く。クールダウンできて満足。
巻道とか考えてくれていない。暑くて水分消費が早い。3Lのポカリが底を尽きた。想定外というか知床とはいえやはり夏山、水分の重要性を舐めすぎた。
赤いザックの先行2名が先に到着してテントを設営し終えていた。
三ッ峰野営地よりも豊富な水源だったが、補水しなかったのを翌日後悔する。濾過フィルター付きのボトルを持っていたのに。
翌日2日目のために、残した水は2L。足りるだろうと思ってしまったが、全然足りなかった。
夜露で藪漕ぎして全身がびしょびしょに。朝、服を着替えなかったのは正解だった。
高台に登って硫黄山が近くなってくる。振り返ると二の池が見えるが、まだ先行者(今日は自分より後行者)のテントが見えた。
もう水分がゼロで、この暑さはヤバい状態。
ちょっと進んでは息が上がって、休まないと歩けない。
熱中症の始まり。
昨日の人と情報と同じ。自分の前に1人、後に2人、合計4名が硫黄山登山口へ縦走下山中。
この3名、岩尾別へ縦走すると言っていた、その後どうしたのだろうか?
さらに下山してゆくと、若夫婦と老父婦のような4名グループに出会ったが、その後どうしたのだろうか?
自分を最後として、硫黄山登山口は閉鎖された、とはいえ規制線を張ったくらいのもの、出られないわけではないはず。
バス停から一時間近く歩いた。熱中症気味なのにこの余計な徒歩は長かった。パトカーや関係省庁車両、報道車両、上空にはヘリコプターが道中ひっきりなし。岩尾別を中心に知床が非常事態で騒然としていた。
15時。車に戻った。昨日羅臼岳で話した職員の人が車で差し掛かる。声かけられる。さらなる詳細情報も得られた。後は報道の通り。
装備
個人装備 |
【知床仕様特別装備】
対ヒグマ鈴2つ
対ヒグマスプレー
対ヒグマ特殊警棒
対ヒグマ&蚊
その他虫除け線香(強力タイプ)
対ヒグマ音楽再生専用スマホ
|
---|---|
備考 | 水分不足。夏山はものすごく水分が必要になることを忘れていた。持参したのは氷水7L。その内3Lはポカリスエット。初日で5L消費した。羅臼岳往路の「銀冷水」は冷たくて美味しく、給水もしたが500ml程度と少なすぎた。重くなるからと控えめにならずとにかく水だけは多めに携行しなくてはいけない。「二の池」の水は十分飲めるものだったがためらったのが2日目で仇となった。 |
感想
【3年越しの目標達成】
ヤマレコマイページに設定した写真は知床五湖のある地点からの知床連山。
クマちゃんだらけの知床を「日本列島最期の秘境」だと勝手に位置付けた。
その秘境の山に自ら飛び込んで肉眼でそこにあるものを見ることに価値があると考えた。
知床連山を当面の目標に掲げた。
去年は台風でカーフェリーがキャンセルされ北海道に行けなかった。
その教訓から今年は新幹線、特急、レンタカーでアクセスした。
これまでの山行の中でも最高に気合を入れて臨んだ。
結果として、2日目で水分不足に陥ったものの、予定下山時刻13時に下山出来た。
今回の目標達成を通じて、自分の登山レベルを「中の上」から「上の下」に格上してもいいだろうと結論付けた。
【重大な反省点:夏山での水分不足・熱中症の危険】
・熱中症対策をしたのに、結果として熱中症になってしまった点
登山前日に氷を数キロ買っておいた。それらはクールボックスに入れて保管した。
一晩寝かせた氷はいい感じに溶け「小さい氷」と「冷水」を得ることができた。
それらをポカリスエット粉末と混ぜて「3Lポカリ」ウォーターパックを作った。道中立ち止まらずにチューチュー吸える。
それでなんとかなると思ってしまったのが、ダメだった。
知床とはいえ夏山なめんなと思い知らされた。その水分は1日と持たなかった。1日5Lくらいは簡単に消費してしまう。
そして、「ぬるい水」だといくら飲んでもクールダウン出来ないことも思い知った。
夏山では「冷たいスポーツ飲料が大量に必要だ」と思い知った。
但し、「氷」で水分を用意したのは良い思いつきだった。
【知床連山の印象】
・ハイマツの藪漕ぎ
羅臼岳(百名山)ルートを外れる羅臼平分岐地点から始まった。
序盤はそれでも腰高、胸高程度だったが、そのうち身丈となった。
縦走路に入ってまもない頃(三ツ峰に登ってゆく頃)すれ違った人から情報を得た。
「この先南岳まで藪漕ぎがこんなもんじゃない、エグいですよ」と教わり愕然とした。先行者が、1人→2人組→自分と続いているとも。
自分の後続がいたのかどうかは結局分からずしまい。
・道案内なんてものはない
肩幅程度の掘り下げてあるのがルートで、薮の下にあるが、それを頼りに足元が悪い中進むしかなかった。
マツの樹液で服はベトついたし、目や体に枝が刺さるのは当然で、ゴーグルが大活躍した。
但し、本当に迷いそうな場所にだけ、何かしらの「案内」は確実にある。
視界が悪いと怖い。
近くにいるはずのクマちゃんと不用意に出くわす可能性が増えるため鈴2つだけではなく、「独り言独演会」をしたり、音楽再生用スマホでG. ヴェルディの「オテロ」や「レクィエム」や「アイーダ」「リゴレット」など自分が知る限り最も賑やかな部類の音楽を、最大音量で垂れ流しながら進んだ。
・知床の山だって夏は暑い
誤算だったのは、思っていた以上に「暑い」「上り下りが多い」「ハイマツの薮が身体を刺す」「藪漕ぎが多すぎて全然進めない」という点。
水分を大量に消費して、大量に汗をかいた。
「重装備のせいでザックが重い」「汗でザックと腰ベルト周りが食い込んで擦り切れ激痛になった」など服装装備での課題も残った。
・コケモモパラダイス
これは写真に撮らなかったのを後悔している。
見渡す限り一面に赤い小さな実が展開している場面があちこちにあった。
そこにはシマリスがいたり、鳥がいたり。
そして、クマちゃんも食べていたりするのだろう。
コケモモを使った洋菓子が道の駅で見つけたのを会社への土産にした。
コケモモといっても分からないなら、IKEAで「リンゴンベリージャム」としてなら知っているかと。
【ヒグマパラダイス】
前回(3年前)にはなかった看板【Bear Country】を知床で多数見た。
それは北米でいう「クマの森・クマの土地」の意味らしい(出典「ヒグマの会」HPより)。
知床が世界自然遺産の地になって20年。
ヒグマと人間が近い距離にいながら棲み分けを成功させてきた自負があったはず。
今回の登山中に人身事故が起きたのだが知床に激震を与えた。
残念ながら8月14日に発生した件は翌日に人間の死とヒグマ3頭の射殺という結果に終わった。
今期の登山道を閉鎖した知床だが、関係者は相当ショックを受けていると思う。
野生のヒグマをウリにして世界遺産を成り立たせている意味をもう一度考えていると思う。
正直、制御しきれない観光客と相まって、限界が来ていたと思う。
やはり今のままでは人を襲うようになるヒグマを生み出してしまう。
それは一部のバカな人間(観光客)のせい。
「ご飯やり(えさやり)がクマを殺す」
一部の人間が善かれ悪しかれヒグマに人間の食べ物の味を覚えさせてしまうと、美味しい人間の食べ物を欲しがって人に接触するようになる。
そして、人を襲ったヒグマが銃殺されるという悲惨な結末になる。
これ「道の駅ウトロ・シリエトク」のトイレ小便器各所に「ソーセージの悲しい最期」(知床財団)という話が掲示してある例と同じ。
全ては人間がクマにエサやりをしたことが原因となってクマが殺される。
自分はヒグマが好きだから、ヒグマがやむなく殺されてゆくのが辛い。
今あちこちでクマちゃんによる人的被害が報道されている。
遅かれ早かれ、九州から根絶させたように日本全土からクマちゃんを絶滅させるだろう。
そうはなってほしくない。
だから、知床にはここで踏ん張ってほしい。
ヒグマパラダイス(ヒグマの楽園)を知床だけにでも残して欲しい。
「自然」の対義語は「都市」。
人間は都市を作って生活している存在。
そんな正反対のところから珍しきものを求めて自然にやってくる人間。
「郷に行っては郷に従う」べきだが、そんな自然を守ろうというルールを無視して都市のルールを持ち込む人間がいる。
何が言いたいのかというと「人間を制御しないと自然は守れない」というのが残念ながら事実だろうということ。
富士山は「世界自然遺産」にはなれず「世界文化遺産」として登録された。
入山時期を期間限定にするのは当然だったが、それ以外にも近年、入山料を徴収し始めたり、無茶な登山者を未然に排除するよう入山者への規制を強める傾向にある。
それは仕方ないと思っている。
自然を守るためのルールを守れない人間が後を絶たないせいだ。
今後、知床もそういう流れで動くのだろう。
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