杉野沢から焼山 雷雨の中で不時野営


- GPS
- 25:46
- 距離
- 21.2km
- 登り
- 1,540m
- 下り
- 2,356m
コースタイム
天候 | 一日目:うす曇一時晴れ 夕方雷雨 二日目:曇り一時雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー 自家用車
梶屋敷駅ー直江津駅ー妙高高原駅 えちごトキめき鉄道 1,320円 妙高高原駅ー杉野沢橋 タクシー小型 6,890円 |
コース状況/ 危険箇所等 |
焼山の登山規制は昨秋解除されましたが、火口2km以内の範囲に立入る場合は登山届けが義務付けられています。 http://www.pref.niigata.lg.jp/bosaikikaku/yakeyama.html 登山ポストは冬季に撤去されるため、プレシーズンの今は手堅くネットで提出しました。 焼山への登山コースは4本ありますが全て赤破線となっています。 長期にわたり入山規制されていたため登山道はほぼ未整備で、かなりの経験と体力、装備が必要です。 人が歩いていないため踏跡は薄く、草薮、笹薮、枝薮だらけです。 豪雪地帯の雑木は雪の重みで縦に成長することが出来ず、幹や枝が横へ寝て成長します。立った植物を分けることで進める一般の薮とは違い、横木による無数の通せんぼ状態で進入さえままならない凶悪な枝薮となってしまいます。 道標はほぼ無し。ペンキマークとピンクテープが少ないながらあり、重要な目印になります。 古いながらお助けロープのある箇所もありました。 残雪が非常に多く、夏道との接点を探すのに苦労しました。 もう雪が切れているので、雪上だけを進むことは出来ません。 ○杉野沢橋ー富士見峠 ・大きな沢だけでも4本を渡渉します。丸太一本も掛かっていません。 最上流の地獄谷は水深があり、特に苦労しました。 ・コース入口と途中に草薮があり、最後の渡渉が終わると枝薮に変わります。 焼沢の中間点、最後の水場あたりからコース上にも雪が出始めます。 ・最後の水場で登山道が西に折れ、山腹の斜行トラバースへ移りますが、このターニングポイントが非常に分かり辛いです。ピンクテープが有るのですが、このテープを“オンコース”と解釈してしまうと直進してしまいます。 全体に踏跡が薄いため、コースを外れても“らしく”見えてしまいます。 ・トラバース道に出てから雪渓を横切ります。当然ながら雪渓を直登してしまいますと富士見峠へ出ることが出来ません。富士見峠の南面は雪渓だらけで幅が広く、対岸の夏道との接点を探すのは簡単ではありません。 ○富士見峠ー泊岩分岐 ・富士見峠の稜線を挟んで前後には雪渓があり、稜線部分の幅十数メートルだけ雪が無い薮となっています。 ・裏金山と焼山間の最低鞍部より少しだけ焼山寄りに富士見峠はあります。 富士見峠から泊岩分岐(もしくは焼山)へ行く夏道は、峠からは稜線を外れて北へ向かいます。雪渓を使って富士見峠より焼山側へ出てしまった場合、稜線を越えて夏道へ合流しようにも激烈な枝薮に阻まれてほぼ不可能です。夏道を探すには富士見峠を見つけるのが最短の策だと思います。 ・泊岩分岐を見つけることが出来ませんでした。富士見峠から北へ向かい、笹薮を抜けると道が180度ターンして雪渓へ降ります。反対方向へは100mも行きません。 再び折り返して雪渓を下る(Z時形に歩く)のですが、この雪渓の下に泊岩分岐があると推測します。 ただ「山と高原地図」と国土地理院2万5千図では泊岩分岐の位置が微妙に違っています。どちらがより実態に近いのかは不明です。 ○泊岩分岐ー笹倉温泉側登山口 ・泊岩分岐からしばらく雪渓を下ると標高1900mくらいで幅が一気に広がります。このとき雪渓をトラバースするように等高線に沿って東側へ向きを変えながら薮の中の夏道の入口を探します。雪渓をそのまま下ってしまうと水無谷へ出てしまいます。 ・笹倉温泉側は杉野沢側に比べれば良く踏まれており、夏道上であれば迷うことは無いと思います。ただし夏道と薙(なぎ・成層火山特有の沢)が交差する部分は注意が必要です。 薙には深いものがあり、ロープで薙の崖を登降する箇所があります。薙内の雪渓には切立ったところもありました。 □全体的にルートファインディングが成否を決めます。経験者と同行するかGPSを使い、特定のポイントでは集中的にコースの痕跡を探すのが時間・体力の温存になります。どちらも無いとかなり悲惨です。 |
その他周辺情報 | ・高谷池ヒュッテは予約必須・午後三時必着です。今回はキャンセルしました。笹ヶ峰ダムが見える場所ならアンテナ二本立ちます(au)。 ・下山後は苗名の湯へ入りました。料金500円と割安。夕方入りましたがシーズンオフの今はガラガラ。内湯のみ。お湯はかなり熱かったです。休憩室はありますが食堂はありません。飲料の自販機は充実しています。綿棒・ティッシュ無し。シャンプー・ボディソープ・ドライヤー有り。 |
写真
しかし夏道が見つかりません。
焼山側へ寄り過ぎていたのです。
激しい薮で日本海側へ進むのは不可能。
高谷池ヒュッテへキャンセルの連絡をしました。
笹ヶ峰ダムが見えればアンテナが二本立ちます(au)。
中央左にはピンクテープがあります。
妙高側の雪渓を直登してからようやく見つけた登山道です。
雪渓をつなぎ合わせて移動しながらここまで来ました。
ザックの中身を出してマット代わりにし、足りない分はスパッツを敷きます。
岩の庇で雷雨の直撃は避けられましたが庇は十分でないのでシュラフカバーの1/3は雷雨に打たれました。
感想
以前から行きたかった妙高ー火打に入山規制が解除された焼山を加えて縦走しようと考えました。
当初は杉野沢橋まで車で行き、自転車で妙高高原駅、はねうまラインで関山駅、路線バスで燕温泉と進み入山。頸城三山を縦走して杉野沢へ戻る計画でした。
たまたま金曜日に代休を取ってあり、シーズン初期の平日もあって高谷池ヒュッテが取れました。しかし天候が思わしくない。そこで、いつまた規制されるか分からない焼山へ行き、火打を回って高谷池泊。翌日雨にならないうちに笹ヶ峰へ降りる計画にしました。
あとで思えばこの計画変更に救われた気がします。
今まで赤破線やバリエーションと呼ばれるコースを歩いてきましたが、ここは別格でした。渡渉と枝だらけの薮に加え、雪で途切れた夏道を繋ぎGPSを持たずにルートファインディングすることの難しさに時間と体力を消耗。最終的には見える情景と地形図を照らし合わせて現在地を推測しました。
小屋素泊まりのつもりで計画したので幕は持ちませんでした。高谷池ヒュッテが無理でも泊岩があるから大丈夫だろうと。しかしまさかの分岐見落としで泊岩にすら辿り着けませんでした。
夕刻が迫り雷鳴響く中、たまたまあった岩の下へ逃げ込んで野営となりました。
お守りで持ってきたシュラフカバーを広げ、靴を脱いでもぐり込みます。
もし全く屋根が無いとしたら靴にレジ袋を被せて履いて寝るつもりでした。
濡れない空間があれば着替えることが出来るし靴が脱げます。
庇は広くないので、大人が横になれば足は隠れません。このあと猛烈な雷雨になり膝から下の部分は雨に打たれました。しかし中まで浸水することはなく、そればかりかうっすら濡れた衣服は朝までにすっかり乾きました。ゴアのカバーの素晴らしさ!
夜は震える寒さでしたが、記憶が途切れているのでどこかで熟睡していたと思います。使い捨てカイロが非常に有難かったです。
翌日、再び稜線を越えて杉野沢へ戻るには富士見峠の雪渓から夏道を探さなければなりません。昨日歩いてきましたが夏道を完全にトレースしたわけでなく踏跡も薄いのでルートミスしたら立ち往生の可能性があります。
夏道を探すことは同じでも笹倉温泉側なら最も入山者が多いだろうし危険な渡渉も無い。遠回りでも確実に行けそうなコースへ切り替えました。
今日も夏道を探しながら雪渓を下りますが、どうもまた下り過ぎてしまったキライがあります。東寄りに雪渓を登り返しようやく夏道の接点を見付けられました。
あとは道を確実に下るだけ。避難シェルターの中で昼食を取り、長〜い林道を下って笹倉温泉へ出ることが出来ました。
もし最初の予定通りに焼山から杉野沢へ下っていたら…富士見峠へ行けたかどうか?そこから雪渓を下って夏道へ合流出来たか?はなはだ疑問です。
豪雪地の樹林帯の赤破線は格が違いました。確実なルート確認と時間の余裕は必須です。
ここからは山と関係無いので興味のある方だけ。
笹倉温泉発のバスは土曜日に4本しかありません。
残りはひとつ下の焼山温泉始発になります。
今回はたまたま笹倉温泉発の最終便一分前に間に合いました。
乗客は私を含め二人だけ。その後乗ったり降りたりありましたが基本空いていました。
そして乗客が私ひとりになったとき運転手さんが話し掛けてくれたのです。
路線バスの運転手さんと話すのは初めてです。
聞けば若い頃涸沢ヒュッテでバイトされた経験があるとのこと。
また立山黒部アルペンルートの高原バスも運転していたそうです。
スキー場や山岳観光施設は繋がりがあって人員を融通しているとか。
降りるバス停のふたつ前から知らせてくれたり、梶屋敷駅までの道を教えてくれたり、親切にしていただいてありがとうございました。
梶屋敷駅で列車を待っていたとき。
ひとつ前の糸魚川駅で乗客対応のため十分遅れとアナウンス。
乗った時点で直江津での接続は絶望的でした。
乗客に急患が出たためと車掌さんが教えてくれました。
しかし乗務員さんの気合の運行で直江津に四分遅れで到着!
乗継ぐ電車は既にホームの先で待機しています。
激疲れながら走って乗れました。
バトンタッチしたはねうまラインも凄かった。
寸暇を拾う運行で時間短縮しています。
二本木駅のスイッチバックでは箱乗りで最後尾から列車を操作。
一連の対応で関山駅までに遅れは解消しました。
全編プロフェッショナルな業務を見せてもらえました。
彼らにしてみれば日常のことかもしれません。
が、品質ってやはり人が作るものですね。
完
さらに余談
旧北陸本線を走る日本海ひすいラインの列車は少し変わってます。
電化されているのに気動車(ディーゼルカー)なんです。
そこにはローカル線ならではの事情があるようです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%88%E3%81%A1%E3%81%94%E3%83%88%E3%82%AD%E3%82%81%E3%81%8D%E9%89%84%E9%81%93%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%B5%B7%E3%81%B2%E3%81%99%E3%81%84%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3
車体は新潟トランシス、エンジンはコマツ製作所で地産池消です。
排気量15リッターの直列6気筒4バルブ直噴ターボディーゼル450馬力+5速セミオートマのミッションで40tの車体を100km/hまで加速させます。
4速まで目いっぱい引っ張って5速に入れ巡航。駅に近付くと各段でエンジンブレーキをフルに使い減速。
決してパワフルでない機材が自分の車とも重なり感情移入しちゃいます。
一生懸命感があって好きです。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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初めまして。
雷雨とは大変でしたね!
私はこの焼山真川ルートが好きで、毎年6月上旬に通っています。
(規制のところまで。)
年によって残雪量が大幅に変わりますが、今年は多かったように思いました。
渡渉もその時によって水量が大幅に変わりますが、今年は多くてスクラム渡渉が必要でした。
時々ハイカーの方が渡渉出来なくて引き返されるシーンを目にしています。
日帰りピストンなどで引き返す場合には、行きは渉れても午後になると雪渓が融けてもっと水が増えて厳しくなるので水量が多い時は注意が要ります。
一般登山者の方が計画するなら6月はツラいものがあるかもしれません。(6月は桃源郷なのですが
ビッシリ雪に埋まった5月か、あるいは7月以降が賢明かもしれません。
杉野沢橋から堰堤までは河原を通らなくてもお気楽な道がありますがどちらでも大差ないかと思います。
数年前にこの堰堤が出来たことで堰堤上部に土砂が堆積してダム状になってしまい、水が溢れて周辺の状況が変わってしまいました。
地獄谷のあたりは6月は本当に桃源郷のようで好きです
精力の付く葉っぱが一面にボウボウではありませんでしたか?!
mieeさん、はじめまして。
レスありがとうございます。
仰せの通り太平洋側の一般登山者には豪雪地赤破線の六月コースは厳しく、焼山の界隈を彷徨っていました。
お気楽に時間を費やし、富士見峠までは見付けたのですが頼みの泊岩の結界が破れず、図らずも野営という結末…
実は自分の登山暦の中で不慮の野営(幕を持たない)は初めて。それも単独で。
数km四方人が居ない、雷が迫る、現在地が正確には分からない中でも不思議と恐怖感がありませんでした。
日没で袋に入り日の出に起床。ライトは点けずに済みました。これは一生の思い出です。
同じ焼山の麓なのに南麓は北側と比べて情緒豊かでした。
人跡稀な地が雪解けを迎え、花が開き沢が走る。正に桃源郷ですね!
簡単には行けないだけに、殊更その価値が高いと思います。
多くない経験の中では黒部の「内蔵助平」がそれっぽい。裏剱の「平の池」も。
今年のお盆休みには三度目の正直で「黒部五郎カール」へ出掛けます。ここも桃源郷と呼ばれる奥深い地。
封印が解けているうちに焼山も再チャレンジしたいです。
ところで精力の付く葉っぱ?って何でしょ?探してみますね
再度の投稿すみません。
黒部五郎カール、一昨年でしたか(定かでないです)沢から上がりました。
いやはや、日本離れしたスケールの大きな景観にお口あんぐりでした
普段は越後だ会津だと泥まみれの生活を送っているのですが、ここはオシャレで、神様(八百万の和風の神では無く洋風のイエス様つまりGOD)が十字架を胸におわすのではなかという感覚がありました。
どうか桃源郷を楽しんでいらしてくださいね!
精力の付く葉っぱ…餃子にすると旨い!炒め物最高!巣ごもり玉子美味しい!お浸しナカナカ!そんなヤツです
重ねてレスありがとうございます!
五郎沢からカールへ行かれたんですね、いいなぁ。
自分の技量ですと奥ノ廊下はハードルが高そうで…
黒部五郎カールは洋風?にハイカラだそうで今から楽しみです。
さしずめ桃源郷よりシャングリ・ラ(香格里拉)ってところでしょうか。
平ヶ岳に登ってから北陸の山に魅せられました。
尾根を詰めて目の前が広がったかと思うと飛び込んでくる池塘!
プロフィール写真は玉子石にしています。
守門岳、中ノ岳、会津駒、朝日連峰など行きたいところばかりですが遠いのが難点。
時間は掛かってもいつか行ってみます。道中楽しみながら。
精力の付く葉っぱ…こごみではないですか?
まず余裕を持って歩けてからの課題ですね。
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