核心は下にあった! 甲斐駒ヶ岳-鋸岳縦走_六合目石室


- GPS
- 32:00
- 距離
- 15.1km
- 登り
- 1,620m
- 下り
- 2,641m
コースタイム
9/14:六合目石室(5:50)〜七丈ヶ滝分岐〜三ッ頭〜(6:55)中ノ川手前のピーク(7:05)〜(7:43)中ノ川乗越(7:55)〜(8:35)第二高点2,675m(8:47)〜鹿ノ窓(9:40)〜小ギャップ(20分待機)〜(10:25)第一高点2685m(10:55)〜(11:13)角兵衛コル(11:25)〜(12:20)休憩(12:30)〜(12:45)大岩下(13:00)〜(14:05)休憩(14:15)〜(14:55)戸台川分岐(15:20)〜(16:25)第二堰堤(16:35)〜(17:30)戸台河原P
天候 | 9/13:曇り夜間雨 9/14:早朝雨のち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2008年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
戸台大橋のバス停より乗車。 繁忙期には臨時便多数出るも全て満員で戸台大橋の門番?に申し出て席を確保する必要有り(乗車の意思を示す)。途中乗車は不利です。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
○戸台川原に登山ポスト有り ○北沢峠で登山ポスト探すも見つからず。後で聞いたら長衛荘にあるそうだが寄らなかったので不明。 ○双児山経由の道は直登なのでアゴが出る。 ○六合目小屋の水場は渇水期だと涸れる心配有り。この日も水量はわずかだった。ペットボトルでは口が沈ます難儀するので浅いシェラカップがあると良い。 昭文社地図では水場10分とあるがとんでもない。初日一番の激坂であり担いで来るべきか迷うほどの場所にある。(最初の核心) ○距離は伸びるが甲斐駒へは仙水小屋経由の方が(たぶん)傾斜が緩く水の補給も出来る。 ○甲斐駒山頂付近の直登コースは大岩を登る。ここが無理なら鋸に行かない方がいいでしょう。 ○六合目石室は屋根が葺き替えられて土間が半分床になった。10数名は入れる。土間にテント2〜3張り可能。周囲にもテン場有り。トイレ無し。水場は前出の通り。 壁が石積みなので中は暗い。雨漏りの心配は無くなった。 ○甲斐駒から第二高点までと第一高点から角兵衛沢出合〜戸台川原間は特段の危険箇所は無い(甲斐駒の道ほどは整備されていない)。道もはっきりしている。ただし道標は無い。 ○角兵衛コルから戸台側へ下るとガレで道が無いが、沢が狭いので沢なりに下ると踏跡が出てくる。 ○中ノ川乗越・第二高点直下・角兵衛コル・大岩下にテン場有り。 ○第二高点〜第一高点間が鋸の核心と言われるが、鹿ノ窓ルンゼと小ギャップには鎖がある。甲斐駒スタートで岩慣れた人ならノーザイルで鎖に掴まらなくても行ける(逆ルートで小ギャップの第一高点側と鹿ノ窓ルンゼをフリーで下るのは厳しそう)。 ○第二高点から戸台側に下り大ギャップを避けるが、大ギャップのルンゼと鹿ノ窓ルンゼをトラバースするのが最大の課題。急傾斜のザレで確実なホールドなど無い。常に落石があり速度も必要。(最大の核心) ○ここの難所で団体と遭遇すると非常に時間が掛かる。帰りもバスを利用するなら要注意。 ○角兵衛沢出合で戸台川を渡渉する。水量多く靴を脱いだ。 ☆下山後はやはり仙流荘が便利。風呂、食事、宿泊可能。高遠の温泉は泉質は良いが少々離れています。 |
予約できる山小屋 |
北沢峠 こもれび山荘
|
写真
砕石を伝って小屋に行きます。
小屋を見落としても稜線を外さなければ次の写真にある白砂の平地に出ます。
そこから50mほど戻れば石室です。
ここから戸台川・赤川原への道があります。
北沢峠の林道が開通するまでは黒戸尾根と並ぶ甲斐駒へのメイン登山道でした。
写真左側の壁に小窓があるだけで(写っていない)中は昼間でも暗いです。
10数人は入れそうです。
左側に写っている柱が小屋の中央です。柱は一本のみ。
第一高点側は鎖になっており、登りなら使わずに済みそうですが逆コースの下りではお世話になったほうが無難です。
感想
前々から行ってみたかった半バリエーションと言われる鋸岳縦走をしました。
12日(夜間移動)
定時に退社して精進湖を経由し中央道で伊那ICへ。無事戸台に到着。車道の脇の空き地に駐車して車中泊。
13日
たぶん4時台から時折ディーゼルの音がする。今日は戸台大橋6:10発のバスに乗るのでまだ眠れる。それでも何度かディーゼル車が通るので見てみるとバスだ。どうも北沢峠行きの臨時便らしい。三連休の初日ということもあるが大層な増発ぶりである。
5時前から支度を始め、戸台大橋のたもとにザックを置いて車を戸台河原の駐車場に置く。そこから空身で歩いて戸台大橋へ。
戸台大橋にはゲートがあって門番のおばちゃんが居た。バス乗車の希望を告げると無線で連絡しているようだ。ここでの乗車は自分一人だけであった。
バスは定時便の6:10に乗るようである。その間、何台の臨時便が通過したことだろう。
鈴なりの乗客でエンジン音が喘いでいるのが分かる。門番のおばちゃんが珈琲をご馳走してくれた。感謝!
定刻10分遅れで定時便が到着。おばちゃんにお礼を言って乗車。席は自分の分しか空いていなかった。しかも最前部の助手席。こちらのバスは中型で臨時便のマイクロバスより少し大きい。トルクもあるようで、それほど喘がずに満載の乗客を乗せてスーパー林道を登って行く。
スーパー林道は道幅が狭く、大型バスでは通過が困難だろう。途中に歌宿というバス停があるが、ここで降りる人は皆無。名前の由来や必要性はどうなんだろう?立派なトイレがあった。
このあたりから見る鋸岳は絶景!鹿の窓も肉眼で分かる。朝は逆光になるので鹿ノ窓から光が漏れるのである。車内アナウンスでも解説してくれる。
小一時間で終点北沢峠に到着。身支度を整えて甲斐駒ヶ岳に向けて出発。向かうルートは双児山を経由する直登ルートである。もちろん明日通る鋸岳の稜線を見るためである。
今回のコースは水場が極端に少ない。今日も北沢峠から六合目石室まで水場は無し。2Lの水が重たい。双児山の山頂辺りから森林限界を突破し視界が開ける。はるか彼方に鋸岳の稜線。目前に甲斐駒ヶ岳の白い巨体が居座る。天気は曇りで時々日が差す。ピーカンではなく絶好の登山日和である。
駒津峰を過ぎ甲斐駒ヶ岳の直登コースから昼前に甲斐駒ヶ岳の山頂に立つ。かなりの人出である。ガスが多いが、時折ガスが切れて地蔵のオベリスクや北岳が見えた。
昼食を取った後はそそくさと石室へ向けて出発する。立派な道標があった(要注意とある)。石室は定員が10数人程度と狭く場所取りは競争である。それに水場も遠い。好んで鋸岳へ行く物好きは少ないと思うが、何せこの人出と三連休。早出に越したことは無い。
石室へ向かう尾根はスーパー林道が開通する前は甲斐駒ヶ岳へ登る信州側のメインルートであった。しかし今は誰も居ない尾根である。草紅葉が始まっていた。
花崗岩のゴロゴロした尾根を下る。古い針金場と鎖場を下るが手掛かり足掛かりはしっかりあるので、とくに鎖に掴まる必要は無い。このあたりで後ろに4人ほどのパーティを発見。疲労した体にムチ打って先を急いだ。
13時過ぎに石室の赤い屋根を発見。正規ルートは良く分からないが、石伝いに中に入る。ネットで調べた通り改築されて雨風しのげる立派な山小屋になっていた。半分は板の間で半分が土間。板の間には5人ほどのパーティがすでに居たので、彼らの反対の端に場所を取る。後続のパーティは程なく到着し、土間にテントを張った。
まずはもう一頑張りして水汲みである。あわよくばポロシャツを洗濯しようとテント着に着替え、ペットボトルを持って水汲みへ出発。今日の夕食と明日一日分の水を調達しなければならないし、節水もしなければ。
水場へは急な樹林帯の下り。石室から一旦白砂の平地まで行き、そこから脇へ入りかなり下ってようやく水場があった。水はちょろちょろだが有るだけ非常に有り難い。水はここだけであり、上流にも下流にも流れは無い。よくも見つけたものである。
水が貴重なので洗濯の方は満足に出来ず、シャツを濡らして絞るだけとなった。来た道を登るのだが、まさに直登でテント着を汗にしないよう、ゆっくりと登る。石室から往復45分も掛かった。今日一番の激坂で最初の核心である。
平地にはテントを張って幕営するパーティも。
石室に戻って食事の支度をする。石室の中は暗いし他のパーティも居るので一人のんびり小屋の外で夕食タイム。
16時頃になって石室はほぼ満員。そこへまたパーティがやって来て「ツェルトは持っているが寝る場所は無いか?」と石室内の我々に問う。4人パーティだと言うが、とても全員が横になるスペースは無い。板の間を詰めて2人くらいは眠れそうだったが土間はテントで一杯である。
結局そのパーティは外で寝たのであろう。どういう計画かは知らないが自分に都合の良いように考え過ぎではないか?鋸岳へ行こうと言うのだから、それなりのスキルは持っているのだろう。ならば小屋の収容人数とか到着時間くらいは気にするのが普通ではないだろうか?
だいぶ暗くなったので18時にはシュラフに入る。明日の天気は思わしくないようだ。雨なら鋸の岩場は危険なので往路を戻るようにする。
14日
4:30に起床。雨である。あまり風は無いようだが雨足が強いときがある。
昨夜は疲れとテント着の心地良さでぐっすり眠れた。途中目が覚めたが寒いとは感じなかった。
5時前後から他のパーティが合羽にヘッドランプで次々と出発していく。どうも引き返したパーティは無いようだ。邪魔にならぬよう最後尾で出発することにする。
6時少し前、もうヘッドランプは要らない明るさになった。幸いにも雨が止んだ。計画通り鋸の稜線にチャレンジする。
石室を出てすぐの平地、昨日のテント組はすでに出発していた。歩き出しの尾根は普通の登山道で道もはっきりしており滑落の危険は無い。しばらくして三ッ頭、そして中ノ川のピークと進む。ここは両側が切り立っているが進行方向には上下が無い平らな道である。そこから少し下って中ノ川乗越。荒涼とした風景である。丸みの無い砕石のような茶色の岩で埋め尽くされた場所。左下に見える熊ノ穴沢もしかりである。今までの甲斐駒の地質とは明らかに違っている。落石があったら逃げ場が無いコルの最低部にテント一張り分の窪地があった。
中ノ川乗越から第二高点までガレを登る。ザレた道は歩きにくいが滑り落ちる危険は少ない。広いガレた斜面にジグザグに切られた道を少しづつ登っていく。斜面中間のやや上あたりでガレは終わり、密度が少ない樹林帯の登りになる。そして樹林が切れはじめ、テン場とおぼしき平地を二つほど過ぎると第二高点が見えてくる。
8時半過ぎに第二高点到着。気が付けば空は気持ちよく晴れていた。ガイドブックにある通り錆びた鉄剣が天空を向いて立っていた。
しばし休憩の後、尾根通しに行くものと思っていてガレ石の上でルートを探す。この先は大ギャップになるので一般人では行けず巻くしかない。それに気付いたのは事件後で、とにかく尾根通しのルートを探していた。
小さな浮石に足をすくわれ、タライ大の大石の上に尻餅をついてしまった。そのときである。そのタライ大の大石が落ち始めたのである。もう夢中で後ずさり。半袖の上腕は傷だらけ。石は大音響とともに大ギャップのルンゼへ落ちていった。命があって、そして他の通行者が居なくて本当に良かった。
冷静になって一旦第二高点へ戻りルートを見極める。すると何のことは無い、尾根筋から90度戸台側に折れて下るルートがあった。樹林帯の中を下る。意外にも足元は石ではなく土である。やがて大ギャップルンゼの崖が右手に見え、なおも樹林帯を下ると大ギャップのルンゼをトラバースするポイントに出た。
ここからは鹿ノ窓も第一高点も良く見える。いよいよ鋸の核心部である。山と高原地図では崖のバンド(岩棚)を探してトラバースするように案内されているが、最新のブログではバンドよりもさらに下の地点をトラバースするようだ。ここは崖の途中ではあるが崩れた土砂が山肌にもたれて積み重なった頂点であり、崖より角度が緩くなっている。足元は岩ではなく砕石であり踏み外す心配は少ない。ただ落石の直撃には要注意である。
大ギャップのルンゼを渡り、密着して隣り合っている鹿ノ窓ルンゼをトラバースする。こちらはほんの5m程だが崖の中間にルートが切ってあるだけ。ルートと言っても足跡が見える程度のものでストレートな崖なので滑ったら終わりである。
いわゆるザレなので確実なホールドなど全く無い。このルートの真の核心である。慎重に素早く渡る。
渡り終えたら鹿ノ窓ルンゼ右岸の草付の斜面。踏み跡もありまずは安堵。ここで対向者があり、しばし待つことになる。このルンゼの下りは大変だと思う。2人だが落石の危険回避で1人づつ下ってくる。かなり落石を引き起こしていたが、自分の所業を振り返ると何も言える立場ではない。
対向者を見送り、草付を登りに掛かる。鹿ノ窓ルンゼの中間あたりまでは一般登山道並みの踏み跡があり危険は少ない。そしてここからが鹿ノ窓の核心、20mはあろうかという鎖場である。登りなので鎖に頼らずフリーで登ってみることにした。ただホールドが有りそうなルンゼの溝と鎖は幾分離れており滑っても鎖に掴まることは出来ない。幸い滑ることも無く鹿ノ窓にたどり着く。それにしてもこんな風穴、風が開けたのだろうか?
鹿ノ窓は思ったより大きく屈まなくても余裕で立って通れる。穴を抜けて甲州側を少し巻き、すぐに稜線に上がる。そして小ギャップへの下りである。この下りと小ギャップの登りにも鎖が張ってある。が、第二高点側の斜面は高さこそ対岸より高いが凸凹のある斜面のため下るにしても鎖は要らない。
この難所で各々4名づつのパーティがすれ違っていた。どちらもザイルを出して1名づつ確保している。ここで20分の順番待ちである。
小ギャップの登りもフリーでやりたかったが時間をロスしたので鎖を使ってあっさり通過。程なくして念願の第一高点に着いた。山頂より家にメール。携帯が使える。三角点は無いが標識は立っていた。第一高点からは短いが急な下りで角兵衛のコルに立つ。
戸台川から登ってきたと思われるパーティとすれ違った。ここのコルにもテン場が2つあった。水場は無いので非常用である。
角兵衛沢の下降はべらぼうに長い。前半はザレた砕石の延々とした下り。最初は踏み後も無いので適当に下る。スパッツを持って来なかったのが大失敗だがすでに遅い。2、3度靴を脱いで小石を出すハメに。うんざりした頃に踏み後が見え始め樹林帯に入る。ようやく角兵衛沢中間点の大岩に着いた。確かに見上げ切れない大岩である。登山道から少し外れる脇道に入ると大岩下まで行ける。水場になっているのでシェラカップを持っていった。
大岩下はオーバーハングしており小型のテントなら3〜4張りは張れそうである。綺麗な水が湧き出しており、水場の少ない鋸山系ではまさにオアシス。さっそくいただいた。
さらに下ったところで今度は涸れ沢の中を歩くようになる。赤テープを探しながらの歩行で戸台川の川原に出るまで気が抜けない。
戸台川を靴を脱いで渡渉する。今日はよく靴を脱ぐなぁ。でも冷たい水が実に足に心地良い。少し川原で横になって休憩する。
一旦靴を脱いでしまうともう歩きたくないが歩かないことにはゴールは来ない。始めは戸台川の左岸に道が付いていた。そのうち所々で道が流出して川原を歩くようになる。最初の堰堤のあたりでは完全に川原歩きとなった。
川の水は伏流になり乾いた川原が続く。時折ある赤テープに導かれ左岸から右岸へ。やがて右岸の川原に車道(川原の未舗装路)が現れ幾分歩きが楽に。二番目の堰堤を階段で越えると広場があり、さらに歩いて戸台河原の駐車場に着いた。
仙流荘で汗を流しジュースを飲む。充実感と安堵が広がり落ち着いた。
危険な山ではあったが、より注意すればもっと安全に歩ける山行でもあった。
もっと修行しなければ。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する