錦繍の鈴鹿を縦断☆銚子ヶ口〜水舟の池〜熊の戸平〜イブネ〜コクイ谷〜武平峠


- GPS
- 10:22
- 距離
- 15.6km
- 登り
- 1,435m
- 下り
- 983m
コースタイム
- 山行
- 9:46
- 休憩
- 0:35
- 合計
- 10:21
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
下山後はBさんの車で武平峠より杠葉尾に |
コース状況/ 危険箇所等 |
杠葉尾登山口〜銚子ヶ口、上水晶谷〜コクイ谷出合は良好に整備された一般登山道 銚子〜イブネは登山道なし |
写真
感想
この日は某ネットサークルのオフ会が通称、鈴鹿の上高地と呼ばれ、神崎川上流右岸の上水晶谷とタケ沢の間の河岸段丘のあたりで開催される。朝明か武平峠からアプローチするのが近いのだが、杠葉尾から銚子ヶ口を越えて会場に向かうことにする。このルートにはイブネや銚子ヶ口といったピークの他に水舟の池、熊の戸平といった道草を食うのに魅力的な場所がありそうだ。
永源寺ダムを越えて奥永源寺のあたりに差し掛かるとあたりは濃厚な朝霧が立ち込めている。杠葉尾の銚子ヶ口登山口の標識の前にはわずかに3台分の駐車スペースがあるが、6時過ぎに到着した時点では既に2台の車が停められていた。一台の方は車中泊されておられるようだ。準備を整えると獣除けのフェンスの扉を開けて薄暗い植林の中を歩き始める。
やがて登山道が尾根の東側トラバースするようになると林の中に朝陽が差し込み、黄葉の透過光を与える。銚子ヶ口へと至る尾根は距離は長いがなだらかな道が続くので快調に行程を消化することが出来る。銚子ヶ口の山頂に近付くと緩やかな谷の源頭部はあたり一面の鮮やかな黄色となっている。葉をよくよく見てみるといずれも一様に特徴的な三裂葉をしている。シロモジの樹々だ。
シロモジの樹林を抜けると見晴らしの良い低木の稜線に出る。東側には朝陽を反射して銀盤のように輝く伊勢湾が目に入る。振り返ると背後には正面に御池岳、藤原岳といった鈴鹿北部の山々が一望のもとだ。まもなく好展望の銚子ヶ口東峰のピークに出る。山頂の足元には朝露に濡れたアカモノの可憐な花と実が朝陽を受けて輝いている。
尾根伝いに歩き、銚子ヶ口の本峰を過ぎると黒尾山からの登山路と合流する。イブネへの登山路は尾根を曲がって南に下るのだが、時間に余裕があるので尾根先端部の南峰を訪ねる。ピークからは東側から南側に大きく展望が開けており、正面にはイブネからクラシにかけての平坦な山頂部とその手前にいくつもの小ピークが連なる尾根が目に入る。
分岐に戻り尾根を南下する。随所に好展望が広がり、南東には遠く綿向山も姿も見ることが出来る。まもなく水舟の池への道標が現れる。西側の杉の植林地を下ると林の向l公に水色に輝く水面が目に入る。すぐに植林地の中に紅葉の樹々に取り囲まれた美しい池が現れた。朝の池にはまだ陽光は届かず、時間が止まったかのような静寂が漂っている。
再び杉の植林地の中を歩くと植林地が切れて自然林の尾根に上がったところで小さな苔の広場が現れる。その大きさはイブネやクラシの苔の平原とは比ぶべくものないが、あたかも小さな箱庭のような心を和ませてくれる空間だ。黄葉の樹林の斜面を登り詰めるとすぐに大峠へと出る。
大峠からは尾根はS字状に大きく蛇行し、クラシへと向かう。これまでのなだらかな広い尾根から一転、痩せ尾根のアップダウンが連続する。まもなく南側に大きな崩壊地が現れた。崩壊地のナイフリッジからは見下ろすと佐目子谷の見事な紅葉が目に入る。急峻な尾根を登ると二人組の男性に出遇う。今日初めてすれ違う登山者だ。前夜はイブネでテン泊されたようだ。痩せ尾根でも紅葉真っ盛りだ。
クラシへと連なる広い山頂台地の一角にたどり着くと景色は一変する。緩やかな起伏を描く丘陵が連なり、ここが山の上であることを忘れそうだ。まずは西側のピーク銚子に立ち寄る。稜線上では疎らはあるが立派な山毛欅が立ち並ぶ。
南側には熊ノ戸平のなだらかな苔の斜面が広がっている。紅葉の谷を渡って熊ノ戸平の斜面を緩やかに登る。苔の美しい絨毯の上を歩かないように気をつけて歩くのだが、明瞭な登山道がついている訳ではないので、苔の迷路に行き場を失ってしまう。心の中で苔にお詫びを唱えて柔らかい苔の上を歩かせて頂く。
熊ノ戸平からイブネにかけても美しい苔の絨毯は続く。朝露に濡れた苔には宝石の欠片のような水滴がついており、朝陽を受けてキラキラと輝くのだった。あたりには人の気配は感じられず、この苔の庭園の静寂を独り占めする贅沢を堪能しながら、苔の間を逍遥する。イブネの山頂に近づくとようやく数人の登山者の姿を目にする。イブネに到着したのは10時過ぎ、この時間なら11時にはオフ会の会場にたどり着けるだろうと皮算用をする。
イブネからは北峰からの急峻な尾根を下り、小峠を目指す。尾根を下るにつれて紅葉が色鮮やかになってゆく。小峠からは左手のざれた谷を下り、愛知川の河岸に到達する。対岸への渡渉はさほど難しくないかと思われたが、水に濡れた岩の上に足を置いた瞬間、つるりと靴底が滑り片足を水に浸してしまう。
対岸に渡り河岸段丘を北に向かうと鈴鹿の上高地と呼ばれるエリアだ。丁度、紅葉の盛りのようだ。紅葉の樹林の中を歩くうちに、まもなくオフ会の会場に到着する。
下山ルートは神崎川に沿った道を歩き、荒れた瀬戸峠越とその後の長い舗装路を一人で黙々と歩くことを覚悟していたが、武平峠から来られたBさんが「杠葉尾なら帰り道やから車に乗せてったろか?」とご親切な申し出を頂く。同じく武平峠から来られたAさんとSさんもご一緒だ。
愛知川の広い河岸段丘には紅葉真っ盛りの樹林が続く。傾いた午後の陽光がさすと赤、黄、橙色と様々な色に輝く透過光がキラキラと音を立てて樹林の中を溢れ落ちてゆく。この美しい錦繍をレンズに収めようと努力をするものの写真のモニターに映る映像を見る度に幻滅を繰り返すことになる。
コクイ谷に入ると、谷沿いには上水晶谷と同様、青白色の石が多く見られ、紅葉の木々と美しいコントラスを呈する。午後の光が傾くの早いせいだろうか、それとも谷が深いせいだろうか、先ほどまでふんだんに降り注いでいた光は既に谷には届かない。透過光による紅葉の輝きはないものの、紅葉のコントラストは深みを増し、随所で色鮮やかな紅の色が目を惹く。
沢沿いには明瞭な踏み跡が続いている。踏み跡を辿ると次々とかつての炭焼き窯の跡の石垣が現れる。その窯跡はそれぞれがとても大きく立派だ。炭焼き窯の跡のみならずかつての住居の跡と思われる石積みも見られる。程なく右岸には数段に亘る長い石垣の段々が現れた。集落の跡だろうか。
散逸した一升瓶や食器の破片の間に土が詰まった小さな小瓶を見つける。Aさんによるとどうやら昔の海苔の佃煮の瓶らしい。ガラス瓶を頂いて、沢の水で中を洗って見ると、灰色がかった水色の瓶は何十年ぶりかで透明な輝きを見せるのだった。
往時の濃厚な人々の営みの痕跡とは対照的に険しい様相を見せる。炭焼き窯のあとで休憩していると、少し後ろを歩かれていたトレラン・スタイルの若者が「こういう険しい道は自分達は全く慣れていないので、後ろをついて行っていいですか?」と声をかけられる。
再び出発すると沢は広いV字谷となる。沢を離れたかと思うと、再び小さな流れと急斜面を落ちる小滝が現れる。滝の落ち壺の上を渡渉して、小さな沢沿に進むと流れの緩やかな平流となり、まもなく雨乞岳からの一般登山道と合流した。地図上では「クラ谷分岐」と記されているが、「沢谷分岐」と呼称するのが適切なのではなかろうか。ここで後ろをついて来られた若者二人は「どうも有難うございました」と丁寧にご挨拶をされ、先に行かれた。
沢谷峠にかけて沢谷の緩やかな源頭を辿る。峠にたどり着くと、鈴鹿スカイラインを走る車のエンジン音が急に大きく聞こえるようになる。Sさんからこの先から雨量計測器のところに下るルートがあるのでそれで降りましょうとのご提案を頂く。そういえば、前回、郡界尾根を下った時、このルートへの分岐を通りがかり、このルートも気になっていたのだった。沢谷峠から郡界尾根へのルートを少し辿ると樹肌に直接太いペンで「武平峠→近道(20分)」と書かれた案内がある。杉の植林地の中の急な斜面の下りは幾度か足元で靴がズルッと滑る。
雨量計測器にたどり着き、最初のカーブを曲がると先ほどの若者二人が武平峠を経て車に戻られたところであった。Bさんが愛車を停められたのはそのわずか10mほど上であった。Bさんにはかなりの遠回りをして頂くことになってしまったが、杠葉尾に着く頃にはすっかり夜の帳が降りたところであった。
コメント
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このルートはイブネのピストンしか頭に無かったものですから、未だ歩けていないルートなんです。こういうのもあるんですね〜 車が2台あると可能なんですね。チャリデポでは大変そうと言うか上りがキツイな〜
詳しいご案内ありがとうございます。
ののさん あまり人目につかないようにと時間が経ってからこっそりとあげたレポなのですが、訪れて下さった上にコメントまでどうも有難うございます。
いや、車がなくともイブネまで往復するという方法もありますよ。
当初は帰りは神崎川に沿って下り、瀬戸越を越えて戻るつもりでした。
私を送って下さったBさんは、武平峠を下ったところが杠葉尾と勘違いしておられたようで、結局、武平峠からは一度、三重県側に下り、石榑峠を越えて杠葉尾に至るまで大回りして頂くことになってしまいました。
銚子ヶ口に行かれてもしも天気が良ければ、少し足を伸ばすことになりますが、是非、南峰も。ここも素晴らしい展望地で、東峰とは異なる展望が開けますので。
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