経ヶ岳〜イチゴ谷山☆巨樹の尾根からの琥珀色の眺望


- GPS
- 03:03
- 距離
- 7.2km
- 登り
- 675m
- 下り
- 673m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
前日に日本海を通過した爆弾低気圧のせいもあってこの日は西高東低の冬型の気圧配置となる。京都は朝から晴れの予報ではあったが、朝起きると小雪がちらついている。午前中に市内で用事があったのだが、前夜から降り積もった雪を期待して午後から山に出掛けることにする。
大原を過ぎると権現山、ホッケ山が視界に入る。前日とはうって変わり、これらの山々はすっかり白くなっているようだ。午後の陽光を浴びてホッケ山が眩いほどに輝いている。
花折峠の下のトンネルをくぐると周囲の樹々の着雪の度合いが一段とグレードアップする。川端康成の小説の有名な一節を思い出すが、冬の時期はこのトンネルを境にまるで気候が異なるようだ。
権現山の登山口となる平のあたりには多くの車が停められている。このコロナ禍にあっては人の多い山にどうしても二の足を踏んでしまう。小女郎ヶ池への登山口の坂下に回ってもやはり登山者のもの思われる多くの車が目立つ。
午後になっても北の方は相変わらず天気が悪いようで、安曇川の流れる谷の下流は灰色の雲の中だ。R367を北上すると途端に雪になるが、午後には雪が止むいう予報を信じて北の山に向かうことにする。眺望はなくとも新雪のトレイルを歩く方が雪山の悦びは大きい。
久多の集落を通り過ぎて果たしてどこまで除雪されているか心配ではあったが、三軒屋と呼ばれる市後谷の出合のあたりまでは問題なく入ることが出来る。廃屋に隣接した道路脇の広地に車を停める。有難いことに雪も止む。
どうやらその先の浄水場まで除雪されているようだ。雪の降り積もった道路を歩くことになる。見後谷の出合にくるとこの右岸尾根が経ヶ岳に至る尾根になるのだが、まずは見後谷の左俣に入ったところにある滝を久しぶりに訪れる。以前、この見後谷を遡行した時にこの滝の前で家内とランチをしたのは三年近く前の山行だった。
滝は二段からなるのだが、下段の滝には杉の倒木が凭れ掛かり、すっかり見栄えが悪くなってしまっている。右岸の斜面を高巻いて上段の滝下を目指すが、数本の杉の倒木がアプローチを難しくする。倒木を越えて滝下に至る。滝を去ろうする段になって、前日の口ノ深谷の滝と同様、この日も滝に陽光が差し込み、途端に流心が明るく輝いた。この知られざる滝をわざわざ訪れた私を滝が歓迎してくれたかのようだった。
雲の合間から差し込んだ光はすぐに消える。そのまま斜面をトラバースして尾根芯にのる。すぐに植林から自然林に変わるのは有難いが、この尾根の下部はかなりの急斜面である。下降ルートに選択しなくて正解であった。薄く積もった新雪のせいもあり、下降はかなりの困難が予想される。尾根の急峻な取付きを避けるなら経ヶ岳の山頂に直接突き上げる見後谷の中尾根を選択する方が賢明だろう。
尾根の傾斜は登るにつれて次第に緩やかになる。下生えが少なく藪に煩わされることがないのが救いだ。ca650mを過ぎて尾根がそれまでの北向きから北東に向きを転じると、歩きやすくなだらかな尾根となる。ある時点から急に積雪が増えることが多いが、経ヶ岳の山頂が近づいてもさほど積雪が増える気配はない。しかし山頂が近くなると、足元の雪の下には根雪があるのがわかる。
山頂から西側には樹高の高い山毛欅の樹が立ち並ぶ自然林の山頂台地が広がっているが、経ヶ岳の山頂標があるのは東側の植林の中である。経ヶ岳の山頂は以前は山名標もない殺風景なところであったが、いつの間にかbiwaichiや高島トレイルの真新しい山名標が立てられている。
経ヶ岳の山頂からはしばらくは急下降であるが、ひとしきり山頂直下の下降が終わるとミゴ越にかけてなだらかな尾根が続く。尾根にはミゴ越が近づくとユズリハの藪が現れるが、最近、高島トレイルとして整備されたせいもあるだろうか、ユズリハの藪の中に切り開きがあり、通過に難儀することはない。
ミゴ越を越えて、植林の中をわずかに登るとca820のピークだ。このピークの南西斜面に出るとそれまでの薄暗い樹林から開放感のある広い雪原に飛び出し、経ヶ岳、三国岳から天狗岳に至る久多川の源流域を取り巻く山々のパノラマが視界に飛び込んでくる。正面にはp936の雪原もよく見える。ここは以前にも歩いているのだが、その度にこの展望地に気がつかずに通過しているのが勿体なかったと思うほどの好展望地だ。
山々の上からはすっかり雲が取れて、薄曇りの空から柔らかな日差しが降り注ぐ。何よりも嬉しい誤算であったのはこの好天だ。経ヶ岳の右手には白銀に冠雪した百里ヶ岳も見える。この江若国境のあたりの天気予報は大きく外れたようだ。
稜線に戻ると山毛欅が目立つ自然林の尾根を辿ってイチゴ谷山に向かう。イチゴ谷山は経ヶ岳と同様、山頂部が植林に覆われているのが残念だ。イチゴ谷山の植林の中の薄暗い山頂は相変わらずだが、ここも高島トレイルの真新しい道標が建てられ、さらに驚いたのは真新しい木彫りの大きな山名標が架けられていることだ。
午後の西陽の中を本日のハイライトP909を目指す。この山は無名峰ではあるが、実に素晴らしい大樹のプロムナードが続く。途中のほぼ中間地点にあるca890mの平坦なピークは大杉が印象的である。ここでも先ほどのイチゴ谷山の山頂標と同じ作者によるイチゴ谷山の中峰と彫られた真新しい山名標が架けられていた。
南側の源頭部にはひときわ大きなトチノキの巨樹が存在感を放つ。源頭の彼方には蓬莱山が西陽に白く輝いているのが見える。そしてp909へのたおやかな吊尾根には山毛欅の大樹が次々と現れる。夕陽が山毛欅の樹肌を柔らかい橙色に染め上げている。
p909の山頂が近づくとを金属的な光沢を帯びた蒼空を背景にリョウブの樹々のシルエットが浮かび上がる。空を目指して山頂に登り詰めると、山頂からは白倉三山の彼方に一気に蓬莱山から釣瓶岳に至るまでの比良の主だったや山々が、西陽を浴びて冠雪した山肌が琥珀色に染まっているのが目に入る。武奈ヶ岳の山頂部はひときわ白く輝いているのが遠目にも明らかだ。一晩で霧氷がついたのだろう。
この山頂にも新たに高島トレイルの標柱が設置され、イチゴ谷山と同様の木彫りの山名標も架けられている。真新しい高島トレイルの標柱にはカラ滝山という山名が記されている。この山の魅力は無名峰であるにも関わらず、という条件が付いていたのだが、山名がつくとなると話は別だ。そのうちに新たな山名が人口に膾炙することになるのだろうか。
山頂部では急に積雪が増え、20cmほど、膝下ほどまで沈むようになる。風もほとんどなく、なんとも穏やかな好天だ。山頂でゆっくりしたいところではあるが、時刻は既に16時を過ぎている。下山の尾根の様子がわからないので、あまりのんびりとはしていられない。
p909からは西側に広がる広い斜面を下降する。山頂を振り返ると、斜面の疎林の上いは驚くほど青い蒼空が広がっている。広い斜面は斜面はやがてなだらかな尾根に収束してゆく。尾根の右手のイチゴ谷の源頭にはここでも天に向かって手を伸ばすような枝ぶりのトチノキの大樹が圧巻の存在感だ。
尾根は下生えの低木の藪があるが、落葉しているせいもあり、藪漕ぎに難儀するような箇所はない。Ca710mで尾根が平坦になるとユズリハの藪が現れると、蛇行する尾根の先がユズリハのせいでわかりにくい。西に伸びる尾根に進むのにユズリハの密集を避けて南側から回り込むが、北側にもユズリハの藪の切れ目があったようだ。
尾根の下部では複雑に蛇行するがca600mで植林となる。尾根の末端は急峻であるが、間伐材の散乱する右手の斜面を下ってイチゴ谷の林道に着地する。短時間ながら新雪のトレイルに巨樹、そして望外の好展望を楽しめた山行であった。
久多川に沿って県道を走ると、路面でスリップしたのだろう。寒霞渓の急カーブのところでミニバンが横転している。道の脇では男性が携帯で救援を呼んでおられたようだ。横転の仕方によっては道を塞いでしまったことかもしれないが、なんとか車一台が通れるだけの余地がある。「大丈夫ですか?」とお声がけすると「体はなんともないんやけど」とのこと。それよりも深い谷間に車が転落しなくて何よりだった。
京都に向かうと空には明日にかけて再び天気が崩れるという予報が信じられないくらいの綺麗な残照が広がっているのだった。
コメント
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以前、厳冬期に訪れられた際にはガスの中で眺望を得られなかったと仰ってましたので、このp909には冬期に再び登られることと予想しておりました。
私が紅葉期に訪れたときには、錦繍の谷を俯瞰しつつ比良山系や白倉岳を望む絶景に驚嘆の声を上げたものですが、雪を纏ったその風景はまた格別ですね。お天気にも恵まれて、下山時刻が迫るが故に名残り惜しげに何度も眺望に見入っておられた姿が目に浮かびます。
驚くべきは経ヶ岳とp909に、秋には無かった高島トレイルの案内標柱が整備されていることです。しかもp909には名前があったのですね❗️
さらに驚きは色鮮やかなイチゴ谷山(ヘラ谷奥)の山名標。中峰は大杉のあるピーク?p909=カラ滝山=イチゴ谷山最高峰?でしょうか。
静かな稜線が賑やかになったものです。
トチノキの大木が尾根上で見られるのも前回驚いたのですが、次々と現れる山毛欅の巨樹や大杉に出逢いに、また新緑の頃にでも訪れたいと思いました。
しかしそれにしても相変わらず驚愕の瞬足ぶりですね!前日の武奈ヶ岳の山行もしかり😁
ウリさん コメント有難うございます。
紅葉期のウリさんが訪れた時は素晴らしいタイミングでしたね。私は紅葉のシーズンは訪れたことがないので羨ましい限りです。
新雪の積もった直後がいいのですが、同時に眺望が得られるという機会は滅多にないものです。この日は眺望は期待せず大樹に会うことのみを目的として訪れたのですが、図らずも山の上で晴れてくれました。雪がもう少し多かったらさらに素晴らしい景色になるのでしょうが、贅沢は言ってはいられません。
>中峰は大杉のあるピーク?p909=カラ滝山=イチゴ谷山最高峰?でしょうか。
その通りです。
>また新緑の頃にでも
新録の季節もグリーンのパッチワークが非常に美しいのですが、新緑の季節に限らず、積雪期でも是非どうぞ。経ヶ岳の登りの尾根を下降するのでなければ危険なところはないと思います。新緑の時期が過ぎるとダニが心配ではありますが。
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