武奈ヶ嶽〜三重嶽☆霧の山毛欅林から霧氷の煌めく山頂へ


- GPS
- 06:59
- 距離
- 14.7km
- 登り
- 1,233m
- 下り
- 1,238m
コースタイム
過去天気図(気象庁) | 2021年02月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
武奈ヶ岳から三重獄への周回を計画して石田川ダムに向かったのは丁度、三週間前の1/31。しかし、この日は角川の集落から先は全く除雪されておらず、計画を変更して南麓の杉山から周回する。武奈ヶ嶽の山頂から三重獄に至る雪稜を見ながら改めて捲土重来することを心に誓ったのだった。
降雪の後の晴天の予報の日、いよいよこの稜線を辿る計画を実行することにする。まとまった降雪の後の晴天の日を待っていたのだった。再び純白の雪稜と霧氷の樹々と相見える日を期待しながら。
駐車場の裏手はとても登れそうもないように思える。ダムの手前のヘアピンカーブのところから斜面に取り付く。しかし、登りやすかったのは斜面の下のあたりのみで、上部はかなり厳しい斜面となっている。一歩一歩、慎重に足場を確認しながら斜面を登るが、わずかな距離にかなりの時間を要することになる。
一度、尾根に乗ると取付きの急斜面とはうって変わって驚くほど歩きやすい斜面が広がっていた。樹々の間隔も広く、快調に高度を稼ぐことが出来る。本来のダムから登る一般登山道よりもはるかに快適な尾根筋のように思われる。
赤岩山が近づくと、植林の間の展望地からは右手に武奈ヶ嶽が綺麗な姿を見せる。しかし、その右手に見える筈の三重獄はどうやら雲の中のようだ。
赤岩山の植林を抜け出し、武奈ヶ嶽の南尾根に乗ると東の方向に大きく展望が開ける筈なのだが、なんと陽が昇る方角には雲が広がっている。山頂までの尾根を辿るうちに尾根の下の方で雲がかかり始めたと思うと、みるみるうちに雲が上がってきて、視界がなくなった。ご来光が見える完璧なタイミングでこの稜線に辿り着いたのに何とも残念なことである。
雲の合間から時折、光が見え隠れするので、雲はかなり薄いのだろう。ということは山にかかる笠雲だ。南風が運んてきた湿った空気が山に笠雲をもたらしているのであろう。雲の隙間から朝陽が差し込んだかと思うと周囲が金色に輝く。わずかに一瞬の幻のような光景であった。
山頂からは西隣りに三十三間山と南に伸びる長い雪稜が見えるが、三十三間山のあたりはすっかり晴れているようだ。
三重獄への雪庇の張り出した尾根を辿ると、尾根は完全に濃厚な霧の中となる。ふと気がつくと梢の高い山毛欅の樹々に取り囲まれていた。樹々の中に石田川ダムへの分岐を示す小さな道標があった。武奈ヶ嶽という山名からすると昔は立派な山毛欅の樹林が広がっていたのだろう。この分岐からの北側の尾根にはその山名に恥じない立派な樹林が広がる。
山毛欅の回廊の樹上では、霧とそのすぐ上に広がってい蒼空の色が混じり、何とも幻想的な色彩が広がる。尾根は大きく広がり、二重尾根となる。霧のせいで地形がよくわからないが、どこを下降しても最低鞍部にはたどり着けるだろう。立ち並ぶ山毛欅の樹々に導かれるように霧の斜面を降りてゆく。
やがて山毛欅の樹々が疎らに生える急斜面となる。最低鞍部が近いかもしれない。晴れていれば目の前に三重獄への登り返しが壁のように迫ってくるのかもしれないが、下降するに霧はますます濃くなってゆく。
鞍部からはところどころで地面の露出した細尾根の登り返しとなる。ひとしきり登り尾根が東に大きく向きを変えるところが水谷別れと呼ばれるところだ。突然、霧が晴れ、上空に青空が広がる。振り返ると武奈ヶ嶽からの稜線にはしっかりと雲がかかっている。
稜線は広々とした雪原が広がる尾根となる。無雪期には池があったと思われる窪地が目に入る。すぐ左隣には三十三間山がすっきりと見えている。どうやらこん稜線から西側には全く雲はないようだ。
稜線を時折、ちぎれ雲のような霧が気まぐれに通り過ぎてゆく。霧が山毛欅の樹々のシルエットの背景を黄金色に彩る。山毛欅の叢林の中には主のようにひときわ目立つ大樹がある。山毛欅の傍らで、通り過ぎてゆく霧と朝の陽光が戯れる様を楽しんだ。
山毛欅の樹林を抜けて、広い尾根の先についに山頂部が見えるようになると、山頂部の樹林が白く輝いている。霧氷が陽光に煌めいているのだ。雲ひとつない限りなく蒼い空に白銀の枝先を伸ばす山毛欅の樹々。
霧氷は先日の武奈ヶ嶽で見たような成長したものではなかったが、それでも樹々の枝先をガラス細工のように煌めかせるには十分であった。霧氷を眺めながら、雪原を辿って山頂に向かう。この雪原の下は無雪期は灌木の濃密な藪が広がっているのだが、今はどこでも歩くことが出来るのが嬉しい。広々とした雪原の山頂からは山名標がわずかに突き出していた。もう20cmほど積雪していたらGPS無くしてはこの山頂を認識することが出来なかっであろう。
ここからは立ち寄りたいところがある。三重獄の北峰への周回である。山頂の北側に広がる谷の源頭部に下降して、北峰から南に延びる尾根に登り返すと、右手には大御影山が雲の中から徐々に姿を見せる。なんとも幻想的な風景だ。
三重獄の北峰は無雪期には草原が広がっているところだが、三重獄から北側の好展望が広がる。大日岳へと続いてゆく雪庇の発達したなだらかな尾根を見ると必然的にこの稜線を辿る山旅を思い描くことになる。
北峰から尾根伝いに三重獄へと戻ると驚いたことにわずかな半時間ほどの間に先ほどまでの樹々の霧氷が急速に少なくなっている。気温が高いせいもあるかもしれない。2月とは思えぬ生暖かい南風がほおを掠めては、梢からパラパラと霧氷を落としてゆく。
下山は南にまっすぐ延びる尾根を辿るか、南東に向かって延びる尾根にしようかと迷っていたが、その逡巡は全く意味がなかった。ほとんどが霧の中であったこの好展望の尾根を戻らない理由はないだろう。武奈ヶ嶽には相変わらずしつこく雲がかかってはいるが、それも取れるのは時間の問題だろう。鞍部からの急斜面の登り返しが一瞬頭をよぎるが、山毛欅の疎林の斜面から三重獄の姿を眺めることが出来るかと思うと、その期待に心が躍った。
復路は新雪の上に自分のトレースのお陰でかなり楽に歩ける。とはいえ、しばしばトレースから外れては雪原や樹林の中に気儘に新たなトレースを刻むことになるのだが。期待通り、すぐにも武奈ヶ嶽が山上にかかっていた雲の中から姿を現す。その姿を眺めながら稜線を緩やかに下降する。
鞍部からの登り返しになると、やはり視界に広がる三重獄の大きな山容の景色が登りのしんどさを全く感じさせない。登るにつれて広がっていく山容が山行の充足感を高めてくれるようだった。山毛欅の樹林を抜けて石田川ダムへの分岐に戻ると再び武奈ヶ嶽が雪庇の尾根の先に姿を見せる。
名残惜しいがここからは石田川ダムに向かって降りることにする。武奈ヶ嶽まで行くと、赤岩山の東尾根の末端の下降が心配でもあったからだ。下降の尾根はすぐにも杉の植林となる。杉の樹林の中では杉に着雪した雪が融けて、まさに雨のごとく水が滴っている。
なだらかな尾根がp478まで続く。p478からは植林の急斜面の中の登山道がわかりやすい。最後は右手の谷の林道に着地する。石田川ダムの畔に出て林道をダムに向かうと、向こうから単独行の男性がやってくる。明らかにテン泊装備だ。聞くと登山が目的ではなく、林道を歩いて落合の東屋のあたりでテン泊して、翌日帰ってこられる予定らしい。
ダムに着いたのは12時をわずかに過ぎたところだ。普段の山行にしてはあまりにも早い時間の帰還ではあるが、この日は午後から家内が娘をつれて車で出かけたいらしく、京都の自宅に戻ることにする。二日続けてのサンセット・ハイクということも脳裏を掠めたが、ここは明日の山行に備えて体力を温存しておくことにしよう。
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