八経ヶ岳〜天川川合より☆涼風と天女花を求めて


- GPS
- 06:28
- 距離
- 23.4km
- 登り
- 1,770m
- 下り
- 1,757m
コースタイム
- 山行
- 6:11
- 休憩
- 0:15
- 合計
- 6:26
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
帰りは天川川合15:35分発 下市口16:38 |
写真
感想
6月だというのに既に梅雨が空けて、連日37度を越える猛暑が続く。関西で標高が高くて涼しいところ・・・というと真っ先に思いつくのが大峰だ。八経ヶ岳のオオヤマレンゲを見てみたかったこともあり、久しぶりに近畿の最高峰に向かうことにする。
朝起きだすと右脚の膝上に軽い痛みを感じる。ひと月ほど前の山行で転んだ時に痛めたのだと思うが、その後、なかなか痛みが取れない。行くのを思い留まって布団をかぶるが、無理せずに行けるところまで行こうと思い直して、急いで出発の準備をする。6時35分に京都を出発する近鉄の急行に乗れば橿原神宮から特急を使うことになるが下市口からの始発のバスに間に合う。
近鉄の車内は冷房がかなり効いており、念のためと思って持ってきたパーカーの上着が早速にも役に立つ。下市口で下車するとその前の各駅停車で到着された方達だろう、バス停には既に長い列が出来ている。まもなく洞川温泉行きのバスが到着するが、私が乗り込んだ時には最後の2席だった。数名は立つことになる。
天川川合で数名が下車する。ここで降りるのはほぼ八経ヶ岳に向かう登山者だろう。バス停のあたりは標高は500m以上ある筈だが、早速にも蒸し暑い。バスの中で立っていた一人のトレランスタイルの若者は早速にも走って行かれる。
登山口から植林に入ると早速にも急登が始まる。脚の調子は思ったほど悪くないようだが、この日は飛ばすのはやめておこう。そもそもこの気温では登りで走るのは難しい。やがて尾根に乗ると傾斜は途端に緩やかになる。標高が1000mを超えるようになると左手の谷から涼しい風が吹いてくるようになる。
尾根は依然として植林が続くが、その中にポツポツとブナの樹を見かける。林床には丈の低い笹が繁茂するようになり、雰囲気の良い尾根道となる。なだらかな尾根と涼しい風のお陰もあって少しスピード・アップしてみる。
栃尾の辻からは尾根伝いに歩いて天女の舞を目指す。足元で何やら蠢くものがあると思いきや蝮であった。気がついて避けることが出来て良かった。じっと潜んでいるところに気が付かずに進んだら・・・と思うとゾッとする。
尾根を進むとすぐに天女の舞と呼ばれる岩姫蕨の草原が広がる一帯に出る。谷から吹いてくる微風がなんとも心地よい。さすがに標高が1500mを超えると風も一段と涼しくなるようだ。開放的な草原の間に疎に生える楓やブナのの大樹の樹影も美しい。ここは霧氷の有名なところではあるが、この季節も美しいものだと思う。
天女の頂と呼ばれるp1516を過ぎてカナビキ尾根との分岐のあたりになると、広々とした尾根にはブナの大樹の疎林が広がり、林相が極めて美しい。頂仙岳は西側をトラバースして再び尾根に戻ると、尾根は低木帯となり、所々にシラビソやトウヒなどの針葉樹が混じるようになる。
高崎横手と呼ばれる分岐からは狼平に降る。ここで水を手に入れることを期待していたのだが、小屋の手前の谷筋で冷たい水を手に入れることが出来る。ここまでは麦茶をわずかに200mlほど消費しただけであったが、ペットボトルに一本分の汲んだばかりの冷たい沢水を一気に飲み干してしまう。
吊り橋を渡ったところに忽然と現れる避難小屋はまるでメルヘンの世界に足を踏み入れたかのようの感がある。狼はいない筈だが、赤頭巾ちゃんが訪ねたお婆さんの小屋はこんなところだったのではないかと空想する。
ここは四年前の厳冬期に八経ヶ岳に登ったときこの小屋で一晩お世話になったのだった。その日は一晩で数十cm積もる大雪が降り、翌日は頂仙岳のあたりで腰から上までの新雪に嵌ったことを思い出す。
狼平から弥山にかけてはそれなりの急登ではあるが、木製の階段のお陰でテンポよく登ることが出来る。再び尾根に乗ると立ち枯れの樹々が多く現れ、右手には八経ヶ岳の展望が目の前に大きく広がる。
立ち枯れの樹々の間を歩いていくと弥山小屋の手前で四人組のパーティーがオオヤマレンゲの話をしながら降りて来られる。オオヤマレンゲの咲いている場所を教えて頂くが、今年は鹿の食害のためか花が非常に少なく、葉もほとんどついていないとのことであった。
まずは弥山の山頂を踏んで小屋に向かうと、男性二人女性一人のパーティーが登って来られるところだった。弥山の小屋の前は大勢の人で賑わっている。ベンチは全て埋まっているので、石の上に腰掛けておにぎりを頬張る。
八経ヶ岳に向かうと先の方から女性の歓声が聞こえる。鞍部を過ぎるとオオヤマレンゲの群生地は柵で囲われており、フェンスを開けて中に入る。すぐにも右手にオオヤマレンゲが現れるが、確かに葉もあまりついていない。九州の祖母山や広島の恐羅漢山のオオヤマレンゲとは異なり樹高が低いこともあり鹿の食害に晒されやすいのだろう。先ほどの歓声の主だろうか。わずかに咲いている花に女性がカメラを向けておられた。女性が去った後で私も花に近づいて写真を撮る。
八経ヶ岳への山頂が近づき、好展望の岩場に到達すると前を行く先ほどの女性が「涼しい〜」と歓声を上げておられる。稜線の南東から吹き上がってくる風が心地より涼気をもたらしてくれる。同時に東は大台ヶ原から重畳と連なる山並みの展望が広がった。
八経ヶ岳の山頂は数組のパーティーが休憩しておられる。山頂では先ほどのパーティーの女性から南に聳える大きなピークを指して「あれ釈迦やんな?」と聞かれる。釈迦ヶ岳以外にないだろう。「以前に縦走したことがあるんやけど、近くに見えるな〜」とのこと。そこで思い至る。「今日は空気が澄んでいるから近くに見えるんでしょうね、つまり湿度がそれほど高くないということかと」「そやね、今日はラッキーやわ!」
賑わう山頂を後に明星ヶ岳に向かう。立ち枯れの樹が目立つなだらかな吊尾根を歩き、程なく明星ヶ岳の山頂にたどり着く。明星ヶ岳の山頂も展望の良いところだが、私が訪れた時には他には人はおらず、静かな雰囲気だった。時間は丁度13時だ。
明星ヶ岳から針葉樹が目立つ尾根を北上する。尾根には案内板があり、シラビソとトウヒの見分け方が記されている。このあたりがこれらの亜高山帯の針葉樹林の南限らしい。確かにそのせいでこのあたりは独特の景観が広がっている。
狼平との分岐に至ると先ほど弥山の山頂ですれ違った男性二人と女性一人のパーティーが休憩しておられた。ご挨拶すると、先方も先ほどすれ違ったことを覚えていて下さった。しばし立ち話をするが、下山後、chibipakuさん達ご一行であったことを知る。
脚の調子は予想以上に良好であり、走ることは控えておいたが、このペースで進めば15時半すぎのバスに間に合うことが期待できそうだ。天女の舞はパスして巻道を選択する。
栃尾の辻まで戻ると先ほど弥山の手前ですれ違った時にオヤマレンゲのことを教えて下さった四人組のパーティーが休憩されておられる。こちらはtakumikiqooさん達ご一行であった。
時間は14時23分、ここでバスの時間を確認すると15時35分なので、あと1時間12分。登りは登山口からそれくらいの時間で登ってきているので、あとは余裕で間に合うだろうと見込む。
川合に向かって尾根を下ると、先ほどのパーティーのリーダー格と思しき男性(takumikiqooさん?)が「先の方でゴロゴロと雷の音がするから雷雨になっているのかもしれない」と仰っておられるのが聞こえる。尾根から眺める南の方は晴れているのだが、北の方角では急速に積乱雲が発達しているようだ。
午前中はこのあたりは涼しかったが、午後になって気温が上がったせいか尾根上はもはや涼しさは感じられない。尾根を進むと先の方から妙に湿った涼しい風が吹くようになる。積乱雲が雨を降らせる時の下降気流のせいだろう。そのうちこのあたりにも雨がやってくるかもしれない。
バスの時間に余裕で間に合うだろうと見てゆっくり歩いていたせいか、最後の1kmほどのところでギリギリの時間となっていることに気がつく。最後は植林の中を駆け降りる。天川川合のバス停に到着したのはバスの到着する1分前だった。
バス停にはみたらい渓谷を散策して来られたと思われる若い二人の女性がバスを待っているばかりだった。バス停の前にある観光案内所では冷たい飲料は売られていないようだ。バスは本来16:38分に下市口に到着の予定であったが10分以上早く到着する。下市口のいいところは駅の北側にローソンがあるところだ。ここでビールを入手すると、電車を待つ間に瞬く間に一本開けてしまうのだった。
今回は改めてブナの美林から針葉樹の樹林とダイナミックに変化する八経ヶ岳の林相の美しさを堪能する山旅でもあった。目当てのオオヤマレンゲには遭えたものの鹿の食害で花が少ないとはなんとも残念なことだ。なんとか花の命を保ち続けてくれることを願うばかりだ。
やっぱりスーパーマン
この距離をこの時間で
驚くには値しません。
若い人には適わないのです
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する