入笠山〜大河原湿原☆霧のお花畑と湿原へ


- GPS
- 02:07
- 距離
- 8.2km
- 登り
- 346m
- 下り
- 342m
コースタイム
- 山行
- 1:55
- 休憩
- 0:12
- 合計
- 2:07
過去天気図(気象庁) | 2022年09月の天気図 |
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アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
行きは10時、帰りは15時 タクシーは¥1640 |
コース状況/ 危険箇所等 |
整備された遊歩道 |
写真
感想
この週は東京への出張の前に木曜日から休暇を取得し、甲斐駒ヶ岳からアサヨ峰を経て鳳凰三山へと縦走するつもりだったのだが、日本列島を横断するように秋雨前線がかかり、天気が芳しくない。金曜日の昼間は雨の確率が低いとみて、中央線沿線の入笠山に寄り道をすることにする。
幼少の頃、毎年夏になると両親が信濃境の古民家を借り、避暑のために長期滞在するのであった。ハイキングくらいしかすることはないので、毎年のように訪れたのがこの入笠山だ。当時は沢入の登山口から登るほかなかったのだが、いつも多くのハイカーで賑わっていたことを思いだす。
その入笠山が富士見高原パノラマリゾートとして開発され、山頂近くまでゴンドラが整備され、山の様子もすっかり様変わりしたようだ。かつての登山口までのバスもなくなり、ゴンドラの山頂駅まで登ってしまうと、もはや登山とは呼べないようなものになってしまうが、京都から東京への移動の途中に寄り道をして3時間ほどのハイキングを楽しむには格好の山といえる。
京都を早朝に出発し、名古屋から始発の特急しなのに乗る。中津川を過ぎて、木曽路の狭隘な山あいへと入って行くと早々にも雨が降り始める。松本盆地に入ると、雨は止む。空は明るいが雲が低い。
塩尻駅でしなのを降りると、すぐに中央線の各駅列車が出発する。次の特急あずさ号も富士見には停車するが、この各駅列車の方が先着する。パノラマ・リゾートへは無料の送迎のシャトルバスは10時であり、あずさ号に乗っても十分に間に合う。
ちなみに茅野から八ヶ岳方面に向かうバスは全て東京方面からの始発のあずさ号には接続するが、関西からの列車は数分の違いで接続しない。わずかに10分ほど出発を遅らせてくれたら良いのにと思うところだが、アルピコ交通には数少ない関西からの登山客にために便宜を図るつもりはないのだろう。
列車が茅野に着くと乗客のほとんどが下車し、車内にはわずかに数名が残るのみとなる。車窓の南側には入笠山が見える筈だが、勿論のこと雲の中だ。入笠山は好展望でも知られるところではあるが、八ヶ岳をはじめとした周囲の山々が雲に覆われている以上、山頂からの展望は期待すべくもないので、雨でも降らない限り雲の中の方がかえって涼しくていいだろう。
富士見の駅でホームに降り立つと、空気がひんやりしている。駅の改札口を出るとあたりには濃厚な出汁の香りが漂う。駅そばの丸政のものだ。シャトルバスが出るまでの間にこの駅そばを楽しみにしていたのだが、店の中には誰もいない。営業開始は10時かららしい。
駅前には富士見高原行きのバスが停まっており、二人の先客が乗り込んでおられた。バスの出発時間になっても新たに乗り込んでくる客は現れない。バスは駅を出ると10分ほどでパノラマ・リゾートに到着する。
パノラマ・リゾートと銘打つだけあってゴンドラの乗り場のあたりは登山用品店など店もいくつかあるが、さすがに閑散としている。同じバスに乗ってきた単独行の男性は山荘に泊まるので往復チケットは翌日も使えるか?とチケット売り場で聞いておられたが、その答えはどうやら「OK」らしい。
このゴンドラで標高1050mの山麓駅から1780mの山頂駅まで一気に運んでくれる。すぐにもゴンドラは雲の中へと入ってゆく。ゴンドラの山頂駅の温度計を見ると水銀柱は18度を示していた。さすがに涼しい。
ゴンドラの山頂のあたりは山野草園となっており、色とりどりの花が咲いている。山野草園を奥に進むと野草園の端で人目を憚るように小さな薄紫色の花が咲いていた。蓮華升麻の花だ。草丈が非常に低いが、花が下垂しているので写真に収めるのが難しい。自生しているものでないが、この珍しい花に出遭えるのは嬉しいものだ。
山野草園を過ぎると林床には丈の低い笹が繁茂する落葉松林となる。林を過ぎると入笠湿原に入り、青紫のトリカブト、薄紫のノコンギク、色鮮やかな赤い花ヤナギラン、黄色のだろう。疎に生える白樺のの白い樹肌が高原らしさを感じさせる。
湿原の向こう側には小さな山荘が現れる。やまびこ山荘というところで、先ほどの男性が投宿するのはここらしい。数名のパーティーがその前で休憩しておられた。
山荘を過ぎると落葉松林の中の小さな谷をへと入ってゆく。谷を通り過ぎると再び広々とした場所に出る。御所平峠と呼ばれるところだ。舗装車道が現れ、こんなところまで車道が通じていることに驚く。一台の車が停められていルガ、登山客ではなく、林道の管理者のようだ。右手にはいくつかの小屋があり、こちらはマナスル山荘らしい。
御所平峠からは広々とした緩斜面となり、ここでも多くの花が咲いている。「お花畑」と呼ばれるところだ。獣避けのフェンスの扉を開けて、お花畑の中に入ると色とりどりの花が咲く斜面をジグザグと九十九折りに登ってゆく。
お花畑の最上部に辿り着くと、再び落葉松の樹林となる。先ほどと様相が全く異なるのは、樹々が悉くレースのようなサルオガセを纏っているせいだ。樹影から落葉松と認識しなければ、まるで別の樹木のようにも思える。林間に立ち込める濃厚な霧と相俟ってそのシルエットは不気味にすら思える。
気がつくと入笠山の東麓をトラバースする道に入っていた。入笠山の山頂を訪れるのは後回しにして、まずは大河原湿原を訪れることにしよう。山頂からの道と合流すると、広々とした森の中を歩いてゆく。入笠山というのは山というより平坦な台地の中の小さな隆起のようなところのようだ。
ダケカンバの低木の樹林を抜けると、右手の谷に沿って草原が広がるようになる。やがて忽然と広々とした湿原に出る。湿原には霧が漂い、幻想的な光景だ。木道を辿って湿原の周囲を周回する。湿原の霧は生き物のように気まぐれに移動し、視界が晴れたかと思うと再び周囲の景色を白い靄に包み込んでゆく。
折り返して湿原の南側を辿る道に入ると、樹林の中へと入り湿原から離れてしまうのが残念ではあるが、一面の苔で覆われた樹林の景色はそれはそれで見応えがある。しばらく前に降ったと思われる雨のせいで木道は濡れており、非常に滑りやすい。
湿原の入り口に戻るとしばらくは林道を歩き、仏平峠から入笠山の山頂への登山道を辿る。山頂はやはりガスで全く展望はない。下山はお花畑の脇を下って再び御所平峠に戻る。入笠湿原に戻ると数組のパーティーが訪れておられた。
ゴンドラの山頂駅でタクシーを呼ぼうとすると、アルピコ交通の配車センターは「山麓に降りてきてからにして下さい、なかなかお客さんは降りて来られないので」と塩対応だ。ゴンドラに乗り込むところであり「乗り込みましたから」というと電話の向こうで不承不承(ふしょうぶしょう)タクシーの配車を受付てくれる。
ゴンドラか降りるとタクシーが待っていてくれた。ゴンドラの山麓駅から富士見駅までは10分とかからない距離ではあったが、タクシー料金は\1640であった。信号がないせいか意外に距離が長いのだろう。タクシーが早く来てくれたお陰で、予定の列車が到着する前に駅そばにありつくことが出来る。ここのそばは肉そばは馬肉であったりと変わったメニューが多いが、躊躇なく「こらちゃーそば」を注文する。大きな豚バラ肉が載せられたそばであり、他では食する機会のないものだろう。
食べ終わるとまもなく小淵沢行きの各駅列車が到着する。列車が富士見を出発すると雨が降り出し、車窓風景はすっかり雨に烟るのだった。
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