針ノ木岳南壁(初滑走)


- GPS
- 32:00
- 距離
- 27.7km
- 登り
- 2,603m
- 下り
- 2,603m
コースタイム
天候 | 23日:雪のち曇り、夕方若干晴れ 24日:高曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
飛び石連休の計画は天候を考えて取り止め。仕方ないのだが長年暖めているだけにいい加減滑らせて欲しい・・・。
が、縁のなかった山行は一旦切り替えて次にやるべき事を考える。そうなると針ノ木岳の南面滑走は悪くない。
ここはいっしーが見つけてきたプロジェクトだが、位置関係からして積雪期に正面から捉えた写真はほぼ見当たらず、黒部横断をきっかけに存在に気付く人がいる程度だろうか。また、単体の滑走対象としてはアプローチ/デプローチが相当面倒なので滑走記録は見当たらない。ともかく去年の秋ごろには滑走対象として狙いを定め、地道な偵察山行やタクティクスについて議論を交わすことが多かった。
初日の朝、日向山ゲートの前で簡単に装備を合わせてから入山。扇沢までの道はこれまで3度歩いたが、それは黒部横断なので片道のみ。今回はここを帰るのか…と若干憂鬱になる。
適当な所に靴をデポしてからシールオン。今年は雪が少なく、沢沿いのルーファイはかなり面倒。最初の堰堤までは車道沿いを進んだ方が楽だった。
堰堤を越えると猛烈なデブリ。先日の大雨の影響だと思うが2度、3度と雪崩が押し寄せたようで、沢の左岸・右岸ともに除雪車が通ったような壁が出来ていた。
デブリ帯の通過はかなり面倒だったが、これを抜けるとなかなかのラッセル。マヤクボ沢の出合のあたりからラッセルを交代しながら、ノロノロと針ノ木峠まで歩みを進めた。峠着は13時過ぎ。条件が良くない割には標準的なタイムで来れてホッとした。
小屋脇の吹き溜まりに雪洞を掘る。久々の重荷でお疲れモードなので19時頃に早々と就寝。
翌日、4時半に起床。予報を見ると9-10時頃が1番日の光が入りそう。8時半頃に山頂着のつもりで7時過ぎに雪洞を出る。雪も安定しており、夏道沿いにスキーを履いたまま山頂まで行く事ができた。
さて、山頂から懸案の南面を覗き込む。当初考えていた山頂からのダイレクト滑走は露岩が多くクライムダウンは避けられなそう。少し悩んだが、全体的なラインの美しさを考えてプランB、左手に食い込むガリーからの滑走を決定する。
9時半頃、いっしーから滑走開始。斜度は45-50°程度。雪は風でややパックされているがスキーの操作に不安は感じない。最初はジャンプターン主体で慎重に刻み、標高差で200mほど滑った所でピッチを切る。この先は滝らしき地形があるのでノッチからスキーヤーズライトのルンゼに逃げる。
次第に斜度は緩むが雪はサンクラスト気味、更にはデブリが増えてくる。やや難しい雪を慎重なコントロールでこなし、デブリを避けながら進むと針ノ木谷に合流した。正味40分、針ノ木岳南面の初滑走に成功だ!
ここからは針ノ木峠まで試練の登り返し。雪の多い年でも部分的に沢割れするのは過去の経験から把握していたが、今シーズンはかなり酷い。途中でドボンしかけたりしながらたっぷり3時間かけて峠へ到着。3月には黒部横断を狙ってる人もいると思うが、ちょっとオススメできるコンディションでは無かった・・・。
デポ品を回収してから扇沢まで滑走。デブリが多い割には思ったより順調に帰ってこれた。最後は我慢の林道歩きで無事下山。固い握手で初滑走の成功を祝した。
数年前から狙っていた初滑走。昨シーズンは前沢奥壁に引きたいラインを引くことが出来た。未知なる斜面にどうやってアプローチして、帰っていくのか。まっさらな斜面にどんなラインを引くのか。全てが特別で魅力的な活動だった。滑走では細かいところまでこだわりを持って自分らしいラインを引けたはず。ただ、自分の山ではなかった。
自分の山をやるために目をつけたのが針ノ木岳南壁だ。
登山していた時にたまたま目についたこの岩壁。記録を調べても全く出てこず、手付かずで残っているようだった。初冬にははっちさんと共に雪付き具合やアプローチを検討するために偵察山行を行い、あとはコンディションが整うのを待つのみ。
南面の壁であること、雪切れしやすそうなラインであること、アプローチデプローチで谷を詰めること。条件を掴むのはなかなか難しい場所だと感じる。今回は3日前に大雪が降り、白馬では強風に叩かれたとの報告。そこから1日は日射が当たったものの気温は低く、残り二日間は曇りと非常に良いコンディションを掴めたと思う。
最初の計画では日帰りするつもりであったが、今回は二日目の方がコンディションが良さそうだったので針ノ木峠で泊まってから滑走することとした。結果としてはこちらの判断が間違っていなかったと思える。不確定要素が多いので日帰りはリスクを感じた。
元々山頂からスキーヤーズライトに入り、上部の岩塔を横切る山頂からのダイレクトラインを想定していた。まだ未滑走のエリアと言うことで最高にカッコいいラインを引きたかった。初冬の偵察でも可能性が見えていたの期待して覗きに行ったのだが、今年の状態では全く可能性がなかった。風が抜ける場所なのでいつか条件が整うのか。希望は薄く感じるが、美しいラインが引けるので頭から離れない。
そうなると残りは左右の肩からの滑走となるが、上部は繋がっていることが確実に分かっていた正面から見て左手の肩から滑走することに決めた。
滑走。それはもう格別な体験であった。いつ出てくるかわからない滝やアイスバーン、悪雪を警戒しながら未知へのシュプールを刻んでいく。地形を読み切りスキーを脱ぐことなく最後まで滑り切ることが出来た。標高差900m、斜度45〜50度の大ルートであった。滑り切った瞬間、これまでどんな急斜面、パウダー、長期山行をした時とも違う興奮を覚えた。何が出てくるか分からない斜面。自分が見つけた斜面。想定外にカッコよく、綺麗な斜面。自分がやりたかったことはこれなんだと強く感じた瞬間だった。
今回滑走するにあたって、当該地の地名を調べたのだが名称を見つけることが出来なかった。
一応、南壁の左ガリールートと名付けさせていただく。
今シーズン、もう一度くらい自分の山ができるだろうか。
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