7月29日月曜は、一粒の籾が万倍にも実る「一粒万倍日」、天がすべての罪を許す「天赦日」、六曜の「大安」が重なる最強開運日とされている。サマージャンボ宝くじ7億円を夢見て購入される方もいるはず。買わなければ当たらない。

　七十二候では「土潤溽暑」「つちうるおいてむしあつし」。連日38℃の猛暑日と29℃の熱帯夜、29日は今季最高の40℃を記録した前橋市。アメダスでは本州のすべてが赤色や関東内陸は紫色になっていた。

　我が家のリビングのエアコンは5年前から壊れていて、私は暑さ寒さは全く気にしないし、何より金がないのでそのまま放置していた。しかし新妻まみむさんに苦痛な日々を送らせてたくはないので交換工事を依頼した。

　実はその前の週に、愚息部屋のエアコンも故障し交換を依頼して88600円。リビングのエアコンは14畳用200V仕様なので約15万円の見積もり。翌日に工事依頼した。金掛けるなら一気に徹底的の方が良い。高効率で合理的。

　奇しくもリビングエアコンの交換発注を依頼した日が、最強開運日の29日。違う意味で24万円が当たったと思うべきなのだろうか？宝くじを買う金すらない乏しさ。せめて「幸運の女神」に微笑みかけてもらえると良いのだが・・・。

　その女神の横顔と夏の花々を観賞に雨飾山へ。頚城三山や北信五岳は登頂しているが、雨飾山は初めて。百名山だが前橋からは遠く、花が多い火打山に比べ低山で全く興味がなかったのが本音。紅葉時期は混むから行く気すらなかった。行く理由はただ単に午前中は快晴予想だから。猛烈な蒸し暑さを体験することになる。

　前橋を3時40分に出発。熱帯夜で気温29℃。12時間後に40℃を越える凄まじい暑さが北関東平野部を襲うことになる。前橋南ICから高速道。八風山トンネルを抜け、有明山トンネルを抜けて更埴JCへ。外気温が24℃と下がった。

　平日の早朝は町の喧噪も無く、19号沿いの犀川には川霧が漂っていた。オリンピック道路に入るが、開催中のパリとは違い閑散としていた。小川村からは北アルプスが良く見えていた。

　美麻トンネルを抜けて白馬村に入る。少し下り込んだところで、反対車線の端に黒い塊が動いていた。クマ。最近よく見るので見間違えるはずはない。7月は野反湖、八幡平、白馬村と三回見たことになる。

　車を停め窓を下げ観察。こちらを伺っている。目が合った。左車線から反対車線の端まで約4mの至近距離。八幡平でクマ慣れしたので詳細に観察。小さくまだ若い印象。体長約70〜80cmで体重30〜40kg、2〜3歳と推測。親離れしたばかりと思われる。性別はしっぽで生殖器が見えないので判断できなかった。

　何事も無かったかのように、白馬美麻線を北上。八方尾根と唐松岳や不帰嶮がきれいに見えていた。国道148号線に入りさらに北へ。姫川の美しい流れと並行するように下る。トンネルを抜けてスノーシェッドの交差点を右折。小谷温泉方面へ。

　山田旅館と雨飾荘を抜け分岐を右折。雨飾高原キャンプ場に到着。10台ほど停まっていた。ほとんど長野県以外のナンバーだった。気温22℃と清々しいが、射るような夏の日差しが照り付ける。アブブヨが駐車場から多く、森林香を炊いた。またトイレにはカメムシが発生しているのでかなり臭い。

　休憩舎脇の登山口を下る。湿地帯の木道を歩いていく。背丈を越える葦が生い茂り、カツラの巨木が青空を覆っていた。沢にはエゾアジサイが群生し、水路にはメタカラコウが背丈を競うように並んでいた。

　生態系が変わりブナ林へ。根曲がりが豪雪を物語り、10m以上の巨木が生き残った証を見せつけ、堂々と私を見下ろしていた。登山道は、雨飾山南尾根の東側に位置し、午前はもろに日を浴び、風抜けが悪くかなり蒸し暑い。暑さに参ったまみむさんに扇風機を貸した。私は獣に近く鈍感なので、暑さ寒さはあまり気にしない。

　ブナ林の急坂を抜けると平地になり、携帯トイレブースがある。利用している人がいるのか分からない。その先から下り込む。布団菱と荒菅沢の景色が素晴らしい。水場で水分補給して岩稜帯の急登へ。

　岩の蓄熱と照り返しで暑さが増し、まみむさんが熱中症にならないように日陰で休みながら進んだ。冷えたゼリーなどで、体内から冷やすのが効果的。私は汗を拭かず、扇子で扇いで蒸発させ気化熱で身体を冷やした。また10分おきに水をひと口飲んで、脱水症状にならないようにした。大量に飲むと逆効果。

　見上げるような岩稜の急斜面。谷川岳西黒尾根氷河跡を思い出した。ここからお花畑の始まり。ヤマハハコ、ヨツバヒヨドリ、クサボタン、ハクサンオミナエシ、オオバギボウシなど斜面いっぱいに彩っていた。

　笹原に入ると、布団菱の真上にあたる斜面に素晴らしいお花畑。夏らしく色とりどりのカラフルな花たち。予想通り快晴の青空のもと、さらに進むと正面に後立山連峰と雨飾山山頂、右手に日本海が見えた。青い水平線と白い雲が美しい。

　お花畑を歩んで山頂手前が急坂。狭いので混み合う。コルに登り上げると右に山頂北峰、石碑や石仏が鎮座している。左に山頂南峰、山頂標が建っている。周辺もイワオウギやオヤマソバ、シモツケソウやハクサンシャジンなどお花畑。振り返ると雨飾の女神が微笑んでいた。

　南峰で記念撮影して昼食。気温22℃、北西の爽やかな風に吹かれ納涼。ただ日差しは強く、汗で濡れたシャツやパンツがすっかり乾いた。岩稜にシコタンソウを発見！二株あった。SNSで誰も掲載してないのが不思議。急斜面にあるので危険だと思い近づかないのかな？

　2千mの低山で標高差千mでも、暑さがあると下山が核心となる。登りは足を上げて身体も筋力で上げるが、下りは足を下げ身体も筋力で下げるので、体重だけでなく下がった時の衝撃を下半身と体幹で確り支えなければならない。ふくらはぎから膝周辺や太もも、腹筋と背筋などフルに使うことになる。

　道の途中で疲れ休む方や、足が攣って葛根湯を飲んで休まれていた方も居た。こういった高温状況では、のどや唇が渇いてから水を飲むのでは遅すぎる。前にも記したが10分おきにひと口飲むようにするなど、効果的に水分補給すると良い。

　また夏でも日頃から運動やストレッチなどして、軽く汗をかく習慣を身に付けると良い。自律神経の働きも養える。登山にエアコンは携行できない。エアコンに慣れ切った身体でいきなり動けば、突然の暑さに脳と身体が驚いてしまう。

　復路も荒菅沢の水場で休み、雪渓から流れ出る冷たい沢水を頭から浴びる。まるでサウナから上がって水風呂に入った感覚。「整いました」。ブナの林と湿地帯を抜け駐車場へ。管理棟でバッヂを買って移動。
　
　雨飾荘の南側にある露天風呂で汗を流す。無料ではなく協力金を箱に入れる。洗い場は無いので、かけ湯して簡単に体を洗って入る。やや熱めの湯は源泉かけ流し。身体がほぐれる感覚。アブブヨが多いのでタオルなど振り回して避けた。

　駐車場に戻り、道途中の「オタリアンジェラート」でジェラートを食べた。山行きと温泉で火照った身体を冷やし甘い栄養を補給。道の駅で買い物して帰路へ。平日でも17時を過ぎた19号は混むので、信州新町方面へ行き信更の山越えして更埴へ。

　買い物をしたので自宅に戻ったのは19時半過ぎ。気温36℃と夜でも暑い街。登頂記念で買ったバッヂには、山ブドウがデザインされていた。実るのは10月ごろ、美しい紅葉と布団菱を想像する。その頃にはこの街も涼しくなり、初秋の気配を感じている。

極暑の前橋から抜けだして、涼しい雨飾山でまったりできると思ってましたが、こちらも登山するにはなかなかに暑い日でした。ぐろさんから扇風機を借りて、濡れタオルを頭に被りヒーヒー言いながら登りました。
しかし、上まで登ればものすごいお花畑。疲れが一気に飛びました。
花の種類が多くて見応えたっぷり。赤青黄白の花々が何種類咲いていたことでしょうか。素晴らしい光景でした。
景色もよく、女神も拝めたし、暑くてもいい天気で良かったです。
昨年登った隣の金山も素晴らしい花の山でしたが、こちらは景色まで最高で、さすが百名山だなあと思いました。
帰りはもう爆睡（いつもですが）。ぐろさんいい山に連れてきてくれてありがとう。