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記録ID: 7864211
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
白山

【白山】第2の「氷の滝壺」なるか? 冬の紅滝を見に行く

2025年03月01日(土) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
21.4km
登り
1,620m
下り
1,623m

コースタイム

日帰り
山行
11:50
休憩
0:20
合計
12:10
6:00
20
駐車地
6:20
220
10:00
130
12:10
12:30
70
13:40
100
紅滝(にじたき)
15:20
160
鳴谷峠(鳴谷山の南東,鳴谷の源頭部に当たる鞍部)
18:00
10
18:10
駐車地
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2025年03月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
県道白山公園線のできるだけ邪魔にならなさそうな路肩に駐車した。
大杉谷林道は起点のヘアピンカーブの300mほど手前で除雪が終わっている。除雪終了点付近は除雪の邪魔になるので駐車しないほうがよいと思われる。
コース状況/
危険箇所等
・ 悪雪を警戒してスキーではなくスノーシューを使用したが,予想以上に雪のザラメ化が進んでおり,むしろ滑りやすそうな雪質で,スキーで来なかったことをかなり後悔した。まあスノーシューも好きだからいいけど。ラッセルはスノーシューで足首くらい,急斜面ではスネくらい。
・ 紅滝(にじたき)を見に行くために鳴谷を下降し目附谷を歩いたが,本来は冬期に谷底を歩くことは雪崩の危険が大きいため登山上の禁忌とされている。今回は,直近の降雪から数日が経過していること,また当日も新しい雪崩デブリを見なかったことからある程度雪が安定していると判断して行動した。
・ 大杉谷林道はかなり雪が多い状態で,特に上部は道形がわかりにくくなっている。雪崩により片斜面は何箇所かできているが通過は可能。

※ 国土地理院の地形図では,目附谷に描かれている2つの滝記号のうち上流側のほうに「紅滝」と書かれていますが,実際には下流側のほうが一般に紅滝と呼ばれている滝です(上流側のほうは一般的には「二重滝」と呼ばれている)。また,5万分の1地形図には「紅滝」に「にじたき」とルビがふられています。なお,「紅滝」の滝名については諸説あり,詳しくは以下の記録の感想欄を参照してください
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2563161.html
今冬の豪雪で,白峰周辺はどこもかしこも雪の壁のようになっている。除雪は大杉谷林道の入り口にさえ届いておらず,かなり手前からスノーシュー歩行となった。
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今冬の豪雪で,白峰周辺はどこもかしこも雪の壁のようになっている。除雪は大杉谷林道の入り口にさえ届いておらず,かなり手前からスノーシュー歩行となった。
最初のヘアピンから砂御前山を目指して尾根に取りつく。最初は植林だが,そのうちゴヨウマツや天然ヒノキ,ブナの混生する気持ちのいい雪尾根となる。
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最初のヘアピンから砂御前山を目指して尾根に取りつく。最初は植林だが,そのうちゴヨウマツや天然ヒノキ,ブナの混生する気持ちのいい雪尾根となる。
春山のような陽気の下,白山を眺めながら雪尾根を進む。雪質の悪さを警戒していたが,それを通り越して雪は早くもザラメ化し始めていた。しまったなぁ,スキーで来ればよかった…
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春山のような陽気の下,白山を眺めながら雪尾根を進む。雪質の悪さを警戒していたが,それを通り越して雪は早くもザラメ化し始めていた。しまったなぁ,スキーで来ればよかった…
雪がたっぷりある時期の鳴谷山は,堂々とした存在感のある山で好きです
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雪がたっぷりある時期の鳴谷山は,堂々とした存在感のある山で好きです
鳴谷山への斜面は,黒いヒノキが点々とリズミカルに散りばめられた広い斜面で素敵
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鳴谷山への斜面は,黒いヒノキが点々とリズミカルに散りばめられた広い斜面で素敵
鳴谷山山頂で休憩。季節外れの陽気で,気が付いたら10分ほど居眠りしてしまっていた。いかんいかん,本番はこれからなのに…
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鳴谷山山頂で休憩。季節外れの陽気で,気が付いたら10分ほど居眠りしてしまっていた。いかんいかん,本番はこれからなのに…
この時期の白山は,厳冬期特有の神々しいまでの白さをまだ失っていない
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この時期の白山は,厳冬期特有の神々しいまでの白さをまだ失っていない
加賀禅定道の稜線も目が覚めるほどの白さ
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加賀禅定道の稜線も目が覚めるほどの白さ
シゲジを経由して白山本峰へと向かう稜線
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シゲジを経由して白山本峰へと向かう稜線
さて,目附谷の紅滝を見るべく,鳴谷へと下降していく
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さて,目附谷の紅滝を見るべく,鳴谷へと下降していく
鳴谷のクリーミーな源頭部
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鳴谷のクリーミーな源頭部
雪崩を警戒しつつ下降していくが,雪崩の音も聞かず,デブリもほとんど見かけない。雪はそこそこ安定しているようだ。
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雪崩を警戒しつつ下降していくが,雪崩の音も聞かず,デブリもほとんど見かけない。雪はそこそこ安定しているようだ。
谷間にはよいブナあります
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谷間にはよいブナあります
鳴谷と目附谷本流との合流部に到着。無雪期は広い河原で沢登りの泊適地となる場所だ。しかし,豊富な雪に完全に埋もれており,せせらぎの音は全く聞こえない。
鳴谷と目附谷本流との合流部に到着。無雪期は広い河原で沢登りの泊適地となる場所だ。しかし,豊富な雪に完全に埋もれており,せせらぎの音は全く聞こえない。
そしてこれが目附谷本流。信じられないことに,目附谷本流もほぼ完全に雪に埋まっていた。鳴谷出合あたりはさすがに水流が出ているかと思っていたのだが…。やはり今年の雪の量は凄いようだ。
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そしてこれが目附谷本流。信じられないことに,目附谷本流もほぼ完全に雪に埋まっていた。鳴谷出合あたりはさすがに水流が出ているかと思っていたのだが…。やはり今年の雪の量は凄いようだ。
水音の全くしない,沈黙の谷を進んでいく。雪でかさ上げされているためか,谷底が異様に広く感じる。
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水音の全くしない,沈黙の谷を進んでいく。雪でかさ上げされているためか,谷底が異様に広く感じる。
一部,谷底の水流が露出している箇所があった。谷底まで高さ10mくらいはある不気味なクレバスとなっており,雪渓の厚みに驚くばかりだ。
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一部,谷底の水流が露出している箇所があった。谷底まで高さ10mくらいはある不気味なクレバスとなっており,雪渓の厚みに驚くばかりだ。
ついに前方に紅滝が見えてきた! かすかに水音が聞こえる。凍結はしておらず,水が流れているようだ。
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ついに前方に紅滝が見えてきた! かすかに水音が聞こえる。凍結はしておらず,水が流れているようだ。
ついに紅滝までやってきた。滝壺には巨大なスノーブリッジがかかり,すぐ近くまで接近できそうだ。無雪期では考えられないことだが…
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ついに紅滝までやってきた。滝壺には巨大なスノーブリッジがかかり,すぐ近くまで接近できそうだ。無雪期では考えられないことだが…
冬の紅滝の姿。でも,何だか妙に違和感が…。紅滝って,こんなに小さい滝だったっけ?
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冬の紅滝の姿。でも,何だか妙に違和感が…。紅滝って,こんなに小さい滝だったっけ?
しかし,じっくり眺めているうちに,違和感の原因が分かってきた。目の前に見えているのは,滝の最上部,落ち口の部分だけなのだ。
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しかし,じっくり眺めているうちに,違和感の原因が分かってきた。目の前に見えているのは,滝の最上部,落ち口の部分だけなのだ。
つまりどういうことかというと,これが2020年9月に沢登りで訪れた際に撮った紅滝(落差40m)の写真なのですが…
つまりどういうことかというと,これが2020年9月に沢登りで訪れた際に撮った紅滝(落差40m)の写真なのですが…
赤線の高さまで,雪で埋まっているということ! その高さ,約30m。信じられます?
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赤線の高さまで,雪で埋まっているということ! その高さ,約30m。信じられます?
写真だと見にくいが,滝壺の周りは青みがかった蒼氷で覆われていた。形はいびつだし,大量の雪で埋まってしまっていて分かりにくいが,もしかしたら百四丈滝と同じような「氷の滝壺」が形成されているのかもしれない? しかも高さは30m!
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写真だと見にくいが,滝壺の周りは青みがかった蒼氷で覆われていた。形はいびつだし,大量の雪で埋まってしまっていて分かりにくいが,もしかしたら百四丈滝と同じような「氷の滝壺」が形成されているのかもしれない? しかも高さは30m!
露出している瀑水部分には,ハーフパイプ状の氷の覆いがかぶさっていた。ここ数日の気温上昇で崩壊してしまったようだが,少し前までは滝を完全に覆っていて,氷瀑のような状態になっていたのかもしれない。
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露出している瀑水部分には,ハーフパイプ状の氷の覆いがかぶさっていた。ここ数日の気温上昇で崩壊してしまったようだが,少し前までは滝を完全に覆っていて,氷瀑のような状態になっていたのかもしれない。
足元の雪渓の下には高さ30mの滝壺の暗黒空間が隠れていると思うと何だか空恐ろしい。また険しい地形で雪崩の恐れもあるので,長居は無用。早々に立ち去ることにした。
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足元の雪渓の下には高さ30mの滝壺の暗黒空間が隠れていると思うと何だか空恐ろしい。また険しい地形で雪崩の恐れもあるので,長居は無用。早々に立ち去ることにした。
帰りは鳴谷峠へ。白峰や尾添の里人たちも通った,隠れた歴史の道。
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帰りは鳴谷峠へ。白峰や尾添の里人たちも通った,隠れた歴史の道。
鳴谷峠から,白山の峰々へ別れの挨拶を送る。
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鳴谷峠から,白山の峰々へ別れの挨拶を送る。
鳴谷峠から大杉谷林道を目指して下降。鳴谷峠付近のブナの森も素晴らしい
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鳴谷峠から大杉谷林道を目指して下降。鳴谷峠付近のブナの森も素晴らしい
気持ちの良い,広い尾根
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気持ちの良い,広い尾根
林道に着地。豊富な雪に埋もれて,ほぼ斜面と同化しているが…。
このあと,イノシシに襲われました。
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林道に着地。豊富な雪に埋もれて,ほぼ斜面と同化しているが…。
このあと,イノシシに襲われました。

装備

備考 スノーシュー使用。ピッケル,アイゼンは携行したが雪が緩んでいたため未使用。

感想

 冬季白山の奇景といえば,百四丈滝の「氷の滝壺」があまりにも有名である。百四丈滝と並ぶ(?)白山の秘瀑である目附谷の紅滝(にじたき,落差40m)も,それなりに規模のある直瀑だし,それなりの標高にあるし,もしかしたら同じようなスペクタクルが期待できるのではないか。そう考えて,2月に続いた寒波が明け,最後の大雪から数日を経てある程度雪が安定したのではないかと思われる今週末,紅滝まで行ってきました。
 冬の紅滝に対面しての第一印象は,「無雪期に見た時よりも,なんだか妙に小さいなぁ…」 しかし,その原因は滝を眺めているうちにすぐに分かった。なんと,落差40mある紅滝のうち,大半の30mまでが雪渓の下に埋もれていたのである。つまり,目の前に露出しているのは,滝の最上部,落ち口に過ぎなかったのだ。自分の足下には,高さ30mぶんの滝壺の暗黒空間が隠れている…。日常的な想像力を超えた今年の白山の豪雪ぶりに,それだけで絶句してしまった。
 露出している水流の周りはモコモコした蒼氷が取り囲んでいるのも確認でき,もしかしたら不完全ながら百四丈滝のような「氷の滝壺」が発達しているのかも? 大量の雪に埋もれてしまっていて,はっきり確認することは難しかったが,もしこれが氷の滝壺に近いものだとしたら,その高さは何と30mあるということになる。そんな可能性も期待させてくれる冬季紅滝の眺めだった。


 余談ですが,下山中,イノシシに襲われました。
 雪に埋もれた大杉谷林道を下っていくと,林道から一段下の斜面を,一頭のイノシシがラッセルしているのに出会った。冬の登山でラッセル中のイノシシに会うのは珍しいことではないので,ああイノシシか,という感じで通り過ぎようとしたのですが,イノシシに背中を見せる形になったのがいけなかったのかもしれない。あるいは,たまたまイノシシが向かおうとしていた方向をふさぐ形になってしまったのかもしれない。急にイノシシがこちらに突進してきた。最初,手にしていたストック(残念ながらピッケルはザック取り付け状態)でイノシシを叩いたものの,全く効かず,イノシシは依然として突進してくる。仕方なくスノーシューで蹴りつけたが,イノシシは雪の中で転びながらも再び起き上がって向かってくる。5,6回必死に蹴ったところで,やっと退散してくれた。
 やはり野生動物に対して油断してはいけないと痛感した。無頓着に通り過ぎようとするのではなく,まず立ち止まってイノシシを見送るべきだったかもしれない。イノシシの突進で牙に突き刺され亡くなった人もいるのだ。無言でこちらに向かってくるイノシシの眼は殺気に満ちていた。これからは,「あ,イノシシだ,かわいいなぁ」なんて軽く思わず,丁重に接するようにしようと思いました。

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コメント

おお……これはすごい……
19枚目の写真からして、無雪期に紅滝が遠くから見え始めたときの画角とは全然違いますね!
今年目附谷を遡行するのは困難を極めそうですね笑
2025/3/2 21:46
alpine3Bさん
とにかく風景が違いすぎて、終始同じ場所に見えなかったです。この分だと二重滝なんかは完全に埋まってるのでは😅
今年はどの谷も雪渓が遅くまで残りそうですね〜。恐怖の雪渓くぐりの年になるかもしれません…
2025/3/3 20:19
プロフィール画像
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