月山


- GPS
- 03:30
- 距離
- 7.0km
- 登り
- 559m
- 下り
- 566m
コースタイム
- 山行
- 3:05
- 休憩
- 0:23
- 合計
- 3:28
天候 | 晴れ時々ガス |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
2025/6/19(木)〜6/22(日) 名古屋6/19→東京駅JRバス早割2800円4座 東京駅→6/20山形駅6:20着深夜バス5700円 独立3座快適 山形駅→姥沢駐車場 レンタカー使用 駐車場協力金1000円 月山ペアリフト往復1600円 姥沢駐車場→鳥海山象潟口5合目鉾立駐車場→6/21山形駅 レンタカー使用 山形駅→6/22東京駅5:45着深夜バス6100円 3座快適 東京駅→名古屋駅JRバス3700円4座 ※仙台まで直行バスのほうが良かったかも |
その他周辺情報 | ゆ〜Town450円,茶色のお湯いいです |
写真
感想
街が夕焼け色に染まりはじめたころ、私は旅立った。
喧騒と日常のすべてを背に、向かう先は日本百名山東北の霊峰・月山。
バスの窓越しに見える空は、刻一刻とその表情を変えていく。夕焼けはやがて群青に溶け、街の灯りだけが静かに流れていった。
深夜バスの静けさの中、自分の中にある“何か”が静かに目を覚まし始めていた。
「なぜ山に向かうのだろう」
問いは言葉にならず、胸の奥に沈んでいく。ただ、未知の場所へ向かうその感覚が心地よかった。
東京を経て、夜明けとともに山形駅に到着。空は白み始め、町全体が静寂な空気に包まれていた。
レンタカーの開店まではまだ時間があった。
私は松屋へ向かい、湯気立つ大盛の朝定食を頼んだ。
湯気に包まれた味噌汁、ご飯の温もり——すべてが夜行バスの疲れを優しくほぐしてくれた。
これが、これから始まる登山への“儀式”のように感じられた。
その後、レンタカーのハンドルを握る。徐々に変わってゆく車窓の景色。
都市の輪郭は次第に薄れ、山々の稜線が少しずつその姿を見せはじめた。
月山が近づくにつれ、空の色も空気の密度も、まるで異世界への通路のように変化していく。
雲の上には、いったいどんな物語が待っているのだろうか——。
姥沢駐車場に到着した。車のドアを開けた瞬間、澄みきった空気が肺の奥まで染みわたり、まるで身体のすみずみまで覚醒していくようだった。
まずは協力金——登山道の整備と自然保護への感謝を込めて、1000円を支払う。
この一歩こそ、月山との“約束”のような気がして、私は心の中で静かに頭を下げた。
ふと顔を上げると、目の前には——
青空にくっきりと浮かぶ、残雪をまとった山の雄大な姿。
白と蒼のコントラストに思わず息を呑んだ。まるで天と地の境目がそこにあるかのようだった。
テンションは一気に跳ね上がる。
「ああ、来てよかった」
身体が軽くなり、心が山の鼓動に呼応するように高鳴っていた。
テンション最高潮で身支度を整え、ザックを背負い、さあ出発だ!と足を踏み出す。
頭の中では、数分も歩けばすぐにロープウェイの乗り場…ではなかった。
駅までは、意外にも距離があった。しかも、緩やかではあるが確実な登り坂。
朝の冷たい空気が、早くも汗ばむ頬にやわらかく当たってくる。
「これは…山はもう始まってるってことか?」
そんなことを心の中でぼやきながらも、歩く足は止まらなかった。
鳥のさえずり、木々の間を抜ける風、そして遠くに見える山頂の白。
すでに月山は、静かにこちらを試していたのかもしれない。
ロープウェイ乗り場で往復1600円のチケットを購入し待つことなく乗り込み揺れるゴンドラに身を預けた。ゆっくりと空へと昇っていく。
眼下には緑の斜面、遠くには残雪の斑模様——そして見上げれば、快晴の空がどこまでも広がっていた。
日差しは強いのに、空気は冷たく澄んでいて、まるで空そのものが清めの儀式を施してくれているようだった。
やがてロープウェイは静かに山上駅へ到着する。
「さあ、ここからが本番だ」
背中のザックを整え、ストレッチで脚を目覚めさせて、登山の一歩目を踏み出す。
不思議だったのは、平日にもかかわらずスキーヤーが意外なほど多かったことだ。
板がキリリと雪面を切ってゆく音が耳に残る。
登山靴とスキー板、まるで違う装備をまとった者たちが、同じ山の息吹を分かち合っている——そんな景色が、どこか心を躍らせた。
ロープウェイを降りたその先、登山道はすぐさま牙を剥いた。
目の前に現れたのは、青空へと突き上げるように立ちはだかる雪の壁。
高まる気持ちを抑えながら、ザックからチェーンスパイクを取り出し、靴に装着する。
雪面に靴をしっかりと叩き込みながら、一歩ずつ、一歩ずつ。
太陽は燦々と照りつけていたが、空気は冷たく、全身が研ぎ澄まされていくのがわかった。
雪の壁を登りきると、突然目の前が開け、木道が現れる。
残雪の白から、湿り気を帯びた木道の茶へと変わる足元の感覚に、季節が一気に切り替わったようだった。
ほどなくして、姥ヶ岳のピークに到着。そこには、高山植物の鮮やかな生命が咲き誇っていた。
小さな花々が風に揺れ、私の登頂をそっと歓迎してくれているかのようだった。
しかし、その先に目を向けると——
月山の山頂方面には、重たそうなガスが漂っていた。
晴れ渡る空とガスがせめぎ合う稜線は、まるで山の“機嫌”を図る境界線のように見えた。
登山道はいったん高度を下げる。ここまで上げてきた標高を、もったいなくも吐き出す。
だが、それもまた稜線歩きの宿命。再び始まる登り返しに、静かに気持ちを切り替えていく。
斜度がゆるやかになったあたりから、再び残雪が道を覆い始めた。
私はチェーンスパイクを装着し直し、雪に慣れた足取りで進んでいく。
周囲には“つぼ足”で歩く登山者の姿もちらほら。
踏み抜かれた跡が残雪にリズムを刻み、それぞれの登山の軌跡が見えてくるようだった。
やがて、雪が完全に姿を消すと——
始まった、最後の登り。
いつの間にか空からガスが晴れ、緑と花々が溢れる尾根道が目の前に広がる。
青空へ向かって続くその一本道は、まるで“導かれている”かのようだった。
風が吹くたびに、火照った頬が心地よく冷やされる。
だが、日差しは容赦なく、私は日焼け止めを塗り直し、帽子とサングラスで身を守った。
急登の最中は、何度も立ち止まり、写真に夢中になりながらゆっくりと進む。
やがて、稜線に出ると道は平坦となり、目の前に“ピラミッド”のような頂が姿を現した。
——ついに山頂か、と思ったその場所は、なんと神社だった。
ヤマレコで現在地を確認し、いったん軌道修正。
残雪の白がもう一度行く先を照らし、私は本当の山頂へ向けて歩を進めた。
だがその頃、下から立ち上るようにガスが押し寄せてくる。
山頂に着いたとき、世界はすっかり灰白色の靄に包まれていた。
一面の霧。その静けさと孤独感こそ、月山が最後に見せた“神域”の姿だったのかもしれない——。
山頂にたどり着いた時、世界は真っ白だった。
濃密なガスがあたりを覆い、風の音すらも呑み込んでいく。
登頂の喜びを噛み締めるには、あまりに静かで、あまりに視界がなかった。
けれども、そこには自分とほぼ同時に辿り着いた登山者がいた。
知らぬ者同士なのに、互いにわかり合っているような穏やかな空気が流れる。
彼にシャッターを頼み、ガスの中に微かに浮かび上がる道標のそばで、静かに立つ。
その一枚の写真が、言葉にならない喜びを刻んでくれた。
しばらくその場に佇んでいると、不意に雲がゆっくりと薄れ始める。
ガスの隙間から、あの“ゼブラ柄”が顔をのぞかせた。
残雪の白と、新緑の深い緑が織りなす縞模様。
この時期、この場所でしか見られない奇跡のような風景が、ほんの数分だけ、目の前に現れた。
その瞬間、すべてが報われたように思えた。
険しい登りも、汗と冷たい風も、あの雪壁も。
すべてはこの一瞬のためだったのだ、と。
私は静かにザックを背負い直し、足を下山道へと向ける。
山は背中に、「また来いよ」と小さくつぶやいた気がした——。
下山は、登りとはまったく異なるルートを選んだ。
ゴールは同じロープウェイ山頂駅。けれど、行き先を知っていても、そこに至る道は予測がつかない——そんな感覚が残雪の上を進む足元に広がっていく。
目印は、自分の目と勘。
斜面の起伏とヤマレコの位置を頼りに、目の前の“今”に向き合って歩く。
標高を下げすぎれば登り返しになる、という焦りを抑えつつも、何度か現れる急斜面にはズリズリと身を預けた。
たまに現れる夏道がほっとさせてくれるが、道を外れてしまえばまた雪、また斜面。
最後は結局、登り返しだった。
ヘロヘロになりながら、息を切らせて山頂駅に到着
下りのロープウェイに私は乗り込み、ゆっくりと眼下に広がっていく斜面を見つめる。
遠くに見えた、堂々とした山容がひとつ。
「あれもそのうち登る山だな」
そう思ったとき、風がすっと肌をなでていった。
「整った」
身体よりも、むしろ心が整ったのだと思った。
ふもとの売店で山バッジを手に入れたとき、旅は静かに第一章を閉じた。
だが物語はまだ続く。
次なる目的地は、鳥海山——月山とはまた違う表情を見せてくれる、もう一つの神の座。
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