北岳☆弾丸往復してきた・・・だけ


- GPS
- 06:12
- 距離
- 10.8km
- 登り
- 1,749m
- 下り
- 1,748m
コースタイム
- 山行
- 5:45
- 休憩
- 0:27
- 合計
- 6:12
天候 | 晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
特に危険箇所なし |
写真
感想
金曜日は東京で夕方に仕事があったので、ついでに実家で泊まろうと目論んでいたのだが、米国から帰国する筈の母がフライトがキャンセルとなる。日帰り程度のハイキングの用意は携行していたので、急遽、山行先を探すことにする。まずは上高地を考えたのだが、新島々から上高地に向かうバスは今年から全て予約制となっており、松本からの始発のバスは既に満席となっている。
上高地は諦めて宿泊先を甲府にホテルを探す。甲府であれば翌朝は韮崎に移動して、金峰山にでも往復しようかと考える。仕事の後の打ち上げを兼ねた食事会が終わり、いざ新宿に移動すると、21時発の松本行きの特急あずさ号が満席となっており、その次の22時はつの甲府行きのかいじ号しか押さえることが出来ない。
列車が遅れたため、新宿で1時間以上待つことになる。この日は関東のすぐ南東を台風が通過している影響で、列車が新宿を出るとすぐにも雨滴が車窓を敲く。甲府駅のホテルに投宿したのは既に深夜0時を大きくまわったところであった。
翌朝、部屋の空調が強すぎたせいか未明の4時に目が覚める。この時間であれば4時半の南アルプス行きの登山バスに間に合うところではあるが、流石に睡眠時間が短いかと思い、二度寝をすることにする。再び目が覚めたのは6時過ぎ。外はからりと晴れているようだ。金峰山の登山口となる瑞牆山荘行きのバスは9時前までないので、甲府から南アルプスに向かう次発となる6時55分発のバスに乗り込むことにした。
これまで幾度か北岳を訪れているが、北岳の山頂はいつも雲の中であり、山頂からの展望を眺めたことがないことに思い至る。この天気であれば山頂に到着するまで天気がもってくれないだろうかと都合の良いことを考える。
バスに休日であるにもかかわらずバスに乗り込んだのは数名と意外にも少ない。もう一台、空車のバスを後に従えて、出発する。途中の芦安中駐車場から南アルプスに向かう乗客が見込まれるからだ。バスが甲府の市街を出るとバスのフロントガラスには大きく鳳凰三山と甲斐駒ヶ岳、左手には農鳥岳の景色が飛び込んでくる。右手には八ヶ岳、背後には金峰山から大菩薩嶺にかけての山並みがすっきりと見える。
芦安駐車場でも後続のバスに乗り込んだ乗客は二組ほどだった。どうやら台風の影響のせいだろう、山小屋でも相当な数のキャンセルがあったそうだ・・・とバスの運転手達が会話しているのが聞こえる。
夜叉神峠に至ると半分以上の乗客が下車する。峠を過ぎるとそれまでは山陰に隠れていた間ノ岳から北岳にかけての稜線が視界に飛び込んでくる。展望スポットに至るとバスのガイドが写真を撮りたかったらどうぞ、とバスを停めて車外に出してくれる。このようなことが許されるのも乗客がほとんどいないからであろう。
広河原にバスが到着するとすぐにも早川にかかる吊橋を渡って出発する。いくつかの小沢を横切るとすぐにも急登の尾根が始まる。前のバスからかなり時間が経っているので、先行する登山者はほとんどいないものかと思われたが、意外にも時折、先行者を追い越すことにことになる。おそらくは早朝に北岳の肩の小屋を出発した人達だろうか、上からは続々と降りてくる下山者とすれ違う。すれ違いざまに私の小さな荷物を見て「軽装だな〜」と驚かれる方もおられる。よくよく考えると北岳に日帰りで登る登山者はほとんどいないのだろう。
尾根には展望ベンチが二ヶ所設けられているが、いずれからも背後に鳳凰三山の稜線が綺麗に見えている。急登がひとしきり終わると、白根御池にかけてのトラバース道となる。
白根御池の小屋は大勢の先行者で賑わっている。既にテントをいくつか張られているが、テントを設営して北岳へ往復しておられるのだろう。大パーティーが草すべりに向かって出発して行くところであった。小屋で水を補給するとすぐに出発する。
草滑りに差し掛かると早速にもお花畑が広がるが、樹々が全くないので急に暑さが感じられる。再び樹林の中に入ると白根御池までの高木の樹林と全く様相が異なるのは、ダケカンバの低木の樹林となったためだ。標高2700mほどで樹林を抜けす。南アルプスの標準的な森林限界はおよそこの標高だ。稜線を見上げるともう少しのように思えるが、急登が続く。
ようやく稜線に乗り、小太郎山へと続く尾根を俯瞰することが出来る。その先にある甲斐駒ヶ岳は既に山頂に雲を纏っている。右手の鳳凰三山の稜線にも雲が出てきたようだ。
北岳への尾根を歩き始めると足元には再び多くの花が見られるようになる。先ほどの草すべりとは見られる花が異なり鮮紅色のタカネシオガマや紫色のチシマギキョウが目を惹く。すぐそばでに小さな鳥が二羽、鳴き声をあげながらせわしく動き回っているのに気が付く。岩雲雀(イワヒバリ)だ。完全に周辺の景色と同化しているので、カメラのモニターを見ても鳥がどこにいるのか確認することが出来ないが、鳥がいると思しき方向にレンズを向けてシャッターを切る。
肩の小屋に到着すると小屋の前のテーブルでは多くのパーティーが賑やかにランチを楽しんでおられるようだ。山頂までは南から急速に雲が上がってきているようなので、先を急ぐ。とはいえ岩稜の急登が続くのでここはスピード・アップ出来ない。既に東側の視界は雲に遮られ、鳳凰三山は雲の中に隠れてしまっている。
山頂に到着した時には西側のみ視界は晴れており、目の前には仙丈ヶ岳が綺麗に見えているが、山頂では女子一人を含む若者のパーティーが記念撮影をしているところであった。彼らの後で山名標を撮影した直後、西側にも雲が回り込み、瞬く間に視界が遮られていく。「山頂が雲の中だとすぐに下山しようという気になっちゃうのよね」と先ほどの女の子が話しているのが聞こえる。まさにその通りの心境であった。後からきたカップルも山頂ですぐに踵を返して下山の途についたようだ。
登りに要した時間は3時間半なので、下山に要するのは2時間半と読む。肩の小屋の前では相変わらず多くの登山者達がベンチで談笑を楽しんでいる。小太郎尾根の分岐を過ぎると、再び急下降が続く。大きなリュックを背負った20名ほどの学生達のパーティとすれ違う。荷物の大きさからすると南アルプス南部にかけて数日の縦走をするのだろう。女子でも私の二倍ほどの大きなリュックを背負っていることに驚かされる。
樹林が近づくと、登山道脇の樹の枝の上で脚の間に挟んだ樹の実を器用につついている鳥がいる。ホシガラスである。高山帯のハイマツなどの樹の実を好んで食べるらしい。ダケカンバの低木の樹林を抜けて草すべりに差し掛かると、高度が下がったせいだろう、徐々に気温が上昇するのが感じられる。しかし日差しが雲に遮られているので、幾分かましなのだろう。
白根御池の小屋が近づくと、美しい蝶が二匹、お花畑の中を優雅に飛び回っている。先週も大峰の八経ヶ岳の近くで見かけたのだが、浅葱色の鮮やかな羽を有する蝶は見まごうべくもない。アサギマダラである。一匹は私のすぐ目の前の花に止まって吸蜜をする。連写モードにしておけば良かったのだが、再びシャッターを切ろうとした時には蝶は高く舞い上がって金谷飛び去って行ってしまった。
白根御池の小屋で一息つくと、再びまだ続々と登って来られる登山者達がいる。尾根には二ヶ所のベンチが設けられているが、下のベンチを過ぎたあたりでも再び樹林の中を優雅に飛び回るアサギマダラの姿を見かける。
急坂が終わり、登山道が右手の大樺沢の左岸に沿って緩やかに降るようになると、小さな沢を二つほど横切ることになる。汗でびしょ濡れとなった髪に沢の水を浴びせると心地よい冷たさを感じる。広河原のインフォメーション・センターに到着したのは予定通りほぼ15時である。芦安駐車場行きのタクシーの運転手が行先を確認しにくる。甲府行きの次のバスは16時40分、1時間半以上の待ち時間がある。
広河原の山荘の前ではテラスで数名の男性客が缶ビールを飲んでおられる。山荘の中では自動販売機で冷えたビールが売られており、350ml缶は¥450であるが、500ml缶は\550である。躊躇なく後者を選ぶと、テラスでビールを開ける。目の前を流れる早川の対岸には北岳に続く稜線が見えるが雲は徐々に下降しつつあるようだ。
甲府行きのバスが来ると朝に乗った時と同じ車掌がおり、先方も私が朝の乗客であったことに気が付かれたようだ。「へぇ〜、日帰りで行って来られたの!」と驚かれる。バスが甲府に戻り、車外に出るとなんとも蒸し暑い。台風により湿った東の海上から湿った空気が流れ込んでいるせいかもしれないが、空気が京都に勝らずとも劣らぬ暑さのように思われた。西に向かう中央線が甲府を出発するとまもなく大粒の雨が車窓を敲くのだった。
この日は小淵沢に宿泊し、翌日は飯田線に乗って京都に帰る。下山後は脚の疲れはそれほどでもないと思ったのだが、京都に帰宅した頃には先週の大峰の山行以上の筋肉痛に見舞われるのだった。以前に北岳から塩見岳や蝙蝠岳に縦走した時にはほとんど筋肉痛はなかったように憶えている。これも最近、登山の機会が少なかったせいなのだろう。
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