登山初心者が箱根ガイリーンで遭難しかけた話


- GPS
- 28:32
- 距離
- 55.3km
- 登り
- 3,678m
- 下り
- 3,680m
コースタイム
- 山行
- 19:17
- 休憩
- 1:38
- 合計
- 20:55
- 山行
- 4:29
- 休憩
- 2:59
- 合計
- 7:28
天候 | 晴れときどき曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
車中泊らしき車が数台。余裕で停められました |
コース状況/ 危険箇所等 |
普通 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
ズボン
靴下
グローブ
雨具
日よけ帽子
靴
ザック
昼ご飯
行動食
飲料4.5?
ライター
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
針金
常備薬
ロールペーパー
保険証
携帯
|
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感想
男は後悔の念に押しつぶされていた。
そう、あれは数日前、山行記録を読みつぶす中で目にした「ガイリーン」というキーワード。
どうやら箱根の外輪山を指す通称で、かなりの体力がいるようだ。早い人で10時間を切るなら、18時間ぐらいあれば大丈夫だろうと考える。根拠はない。自信だけ。体力には自信があった男は夏休みに挑戦することに決めた。
その日から箱根の天気を気にするようになった。
できれば、一日あけて日曜日以降がよかったが、ほとんど曇りか雨で晴天にめぐまれるのは、仕事の次の日の土曜日くらいだった。
どうしても達成したかったため多少の無理があっても土曜日に決めた。
仕事が終わり、準備をして寝ずにそのまま出発。3時に到着。装備の確認をし、いざ箱根ガイリーン!
登山口の発見と同時に熊の出没注意の看板を発見。ヘッドランプを点灯し、熊鈴を装備。
写真を撮りつつ順調に登っていたところ、獣の動く気配が。
猫か狸と信じ、足早に山頂へ。水筒の水を少し飲み、小休憩してから下山。
順調に登頂と下山を繰り返し、明神ヶ岳のあたりで水筒の水は空になり、6本あったペットボトルも5本が空に。
金時山で買い足すことを決意し、いざ金時山へ。金時山では体力的につらくなり、山頂が近づくにつれ心臓の鼓動も早くなる。
50歩すすむごとに2,3分の休憩を繰り返し、17時過ぎに山頂へ。残りのペットボトルも全て空になってしまった。
ここで大誤算が。時間が遅かったせいか山頂の茶屋が閉店。水分の追加を考えていたが、追加ができない自体となった。ただ、幸いなことにカップラーメンを食べるために用意したお湯が500mlあった。下山すれば自販機くらいあるだろうと考え、お湯は口を潤す程度に口に含む。ここまでまめに風景の撮影をしていたが、今は撮影する余力もない。これからの水分事情を考え足早に下山。辺りは薄暗くなり、ヘッドランプを準備し、長尾山に向かう。
水のありがたみを感じつつも、落合三角点の時点ではお湯も残り半分程度に減っていた。ここまで水分の追加はできていない。
次は富士見ヶ丘公園。「公園」というくらいだから自販機くらいはあるだろうと期待。
富士見ヶ丘公園に到着。ライトで周辺を照らすが何もない。あるのは駐車場と光で反射する標識のみ。
公園の芝生に横になり、茫然と夜空を見上げる。ここまで水を我慢したのは中学の部活のとき以来。自販機見つけたらコーラをガブ飲みしたい思いを募らせる。
体力も回復したので、次の芦ノ湖展望公園に出発。道中、息切れにより舌がざらざらしてくる。ガブ飲みしたい衝動を抑え、水を少し含み舌のザラザラをとる。口での呼吸を我慢しながら歩をすすめる。
芦ノ湖展望公園に到着。やはり自販機はない。自販機もないのに「公園」を名乗るなと考え、湖尻峠に出発。
湖尻峠に到着。ヘッドランプを消し充電する。駐車場があり、たまに車が入る。水がない状態で三国山へは登れない。携帯の電波も届かない。もう限界。登山を中断し助けを求めることを考え、全てのお湯を飲みつくす。ただ、何て声をかける?事情を説明し、麓まで乗せてもらう?こんな夜中に怪しい男から声をかけられたら、相手はどう思う。残念なことに男はひどいコミュ障だった。
そうこうしているうちに、車がいなくなる。コミュ障がたたり、下山のチャンスを失う。そもそも箱根の水分事情にも計画が不足。登山初心者の分際でガイリーンに挑戦なんてあまりにも無謀。
男は後悔の念に押しつぶされていた。
このまま休んでいても仕方がない。自力で下山できなければ、遭難扱い。登山の続行を決意。水分となるものがないかザックを漁る。あるのは空のペットボトルばかり。あとは、食べるはずだったカップラーメン、おにぎり、チョコやラムネ等の行動食。水分が欲しい。そこで考える。おにぎりの米にも水分は含まれる。おにぎりを口に含み、ぐちゃぐちゃになるまで租借し喉を通す。三国山へ出発。登りと休憩を繰り返し、なんとか三国山へ到達。すでに撮影する気力もなく、コメントも適当に。喉が渇いているが、次の芦ノ湖スカイラインレストハウスを目指す。確かあそこは24時間営業。水分の補充に期待。
レストハウスが近づき、登山道から脇道へ移動しレストハウス到着。レストハウスは消灯し、常夜灯だけが煌々としている。水分の補充をあきらめ、岩に腰掛けるヘッドランプを充電。再び出発しようとしたところ、霧が立ちこみライトをつける。光が霧に反射して足元が見えない。危険と判断し、レストハウスに戻る。ふと見ると電気の消えた自販機を発見。でもよく見ると販売中の文字が点灯中。「え、動く?」10円玉は釣銭切れの文字が点灯している。財布を取り出し、中身を確認。小銭がたんまり。男は登山前には、お賽銭やトイレチップ用に小銭を用意するようにしていた。急いで100円玉と10円玉9枚を投入。コーラのボタンを押し、ペットボトルを取り出す。ボトルキャップをはずし、口元へ。久しぶりの水分が喉元を勢いよく通る。「あ゛ー」。生き返る感じがする。糖分が体をいきわたる。水のありがたみに改めて感謝。引続き二口、三口。ペットボトルを空にし、2本目のコーラを購入。半分ほど飲むと疲労と水分の満足感で眠気が強まる。雨が強くなったので、明るくなるまでこのまま軒下で休憩。2時間か3時間。辺りが明るくなりはじめ、残りのペットボトルを飲み干す。紅茶花伝を購入し、出発。水分があるだけで気持ちに余裕が生まれる。
海の平へ向かい、途中で車が駐車されているのを見つける。脇道から車のある方向へ。料金所だ。自販機もある。紅茶花伝を飲み干し、アクエリアスを購入。もう水の心配はない。登りも少ない。歩みも早くなる。
順調に歩を進め、車が走る音が聞こえてくる。登山道も終わり、なんとか下山。
自販機で紅茶を購入。土砂降りの中駐車場へ向かう。駐車場へ着き、登山終了。
今回のような登山計画は遭難の危険が伴いあまりに無謀。でも、今回の失敗を改善し、また挑戦したい気持ちがある。
なぜだろう。だから山の魅力は怖い。
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