瓶ヶ森


- GPS
- 06:53
- 距離
- 15.9km
- 登り
- 1,697m
- 下り
- 1,719m
コースタイム
- 山行
- 3:03
- 休憩
- 0:12
- 合計
- 3:15
- 山行
- 2:53
- 休憩
- 0:45
- 合計
- 3:38
過去天気図(気象庁) | 2025年09月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
この週末は高松に出張の予定があるので、ついでに四国の山に登ることを考える。当初、笹ヶ峰の丸山荘に泊まることを考えたが、残念ながら完全に廃業してしまったようである。そこで、瓶ヶ森の避難小屋に泊まることを考える。
瓶ヶ森を日帰りで周回したのはコロナ禍が始まる前、2019の12師走のことだった。瓶ヶ森の笹原の草原に真新しく小綺麗な避難小屋が建てられていることを知る。前回と完全に同じルートとなるが、今回はこの避難小屋に泊まる山行を計画する。この週は日本の南岸で発生した台風が四国を横断する予報となっているが、9/5(金)の午前中のうちには台風は通過するようであり、午後のバスで登山口に向かえば、避難小屋には程よく夕方に時間に到着することになるだろう。
京都の自宅を出発した時は雨が降っていたが、岡山から特急に乗り換えて瀬戸内海を渡る頃には期待と通り、上空には晴れ空が広がり始める。しかし、台風がもたらした雨によるせいだろうか、四国の山々の上には依然として厚い雲がかかっている。
伊予西条は駅前にはいくつかのホテルとコンビニがあるものの、店がほとんどなく閑散とした雰囲気である。駅から10分ほど歩いて、喫茶店マハロを訪ねる。一見、住宅街の中にあるなんの変哲もない喫茶店ではあるが、ここは伊予西条のご当地グルメである鉄板ナポリタンの名店との呼び声が高い。運ばれてきた鉄板の上に乗せられたナポリタンは麺も程よい弾力があり、確かに美味であった。
石鎚山行きにバスに乗り込んだのは私の他は若い男性が一人。登山の格好には見えなかったが、石鎚ロープウェイの駅で降りて行ったので、ロープウェイに乗り、成就の宿に泊まるつもりなのであろう。
終点の西之川で降りると、深い谷間を流れる川は緑白色の濁流となり、轟々と音を立てて流れている。上流に向かってしばらくは林道を歩くことになる。歩きはじめると早速にも数匹の虫が体の周囲を飛び回る。虫除けスプレーを袖に振りかけるが、手掌んい鋭い痛みを感じて手を見ると、蠅ほどの大きさの虫が吸血している。ブヨにしては大きいのが、アブにしては小さい。
谷沿いは独特の冷気が漂っているが、林道が高度を上げて谷底から離れるとその冷気も薄まり、高い湿度を感じるようになる。対岸にいくつかの民家が現れる。名古瀬の集落らしい。いくつかの民家は明らかに廃屋と化してはいるが、明らかに人の気配の感じられる家もある。
さらに上流に進む間にも次々と先ほどの虫の襲来により両手に刺される箇所が増えてゆく。
橋で林道を対岸に渡り、登山道に入ると最初は植林の中を九十九折りに上がってゆく。再び先ほどの林道と交叉し、標高が800mほどに達したあたりでようやく虫の襲来から解放される。虫の毒が強いのだろう、急速に手が腫れ上がり、ドラエモンの手のようになっているのだった。
斜面をトラバース気味に進み、小さな尾根を乗り越えるところで常住と呼ばれる小さな広場に出る。名称からすると山仕事のために人が常駐していたところだろうか。地図では次の鳥越までの間で水場があることになっている。沢を横切るところで、水を補給するが、少し次の谷に入ると大きな岩の下から水が湧き出している。前回の山行記を読み返すと、ここで水を汲んだことを記してあった。
登山道は鳥越に向かってしばらくはこの谷を登る。谷には霊気のような白い靄が漂っている。鳥越の手前に至ると忽然と立派な石垣と広場が現れ、荘厳な雰囲気のところだ。石垣からして、おそらくはなんらかの寺社があったではないだろうか。
鳥越からは一気に500mほどの急登である。九十九折りに斜面を登ってゆくことになる。苔むす岩が多いのは雨が多いせいだろう。標高が上がると林床には丈の低い笹が繁茂するようになる。いつしか雲の中に入ったのだろう。登山道の周囲には濃厚なガスが立ち込める。
登山道が急に平坦になったかと思うと樹林を抜け出し、広い笹原に出る。氷見二千石原と呼ばれる広大な山頂台地の一角に辿りつく。笹原の中では流れる沢が岩盤に穴が空いている。甕壺と呼ばれるものであるが、典型的な甌穴またはポットホールである。すなわち長い年月の間に水流によって礫が岩盤の上に穴を開けたものである。甕壺に流れ込む沢は以前に来た時より明らかに水が多い。
時間は17時半、ここまでかなりの時間を要してしまったが、避難小屋まではあとわずかな距離だ。18時までは辿り着くことが出来るだろう。笹原の上はかなり濃い霧が立ち込めており、10mほど先の樹の輪郭する覚束ない。笹原の中にポツリポツリと立っているのはほとんどが針葉樹であり、ウラジロモミらしい。
氷見二千石原を横断する道に出ると、あとは避難小屋までは10分足らずの水平な道である。しかし、この道に意外な難儀を強いられることになった。笹原の斜面から流れ出す水によって道は完全に水没しているのである。それでも底の厚い登山靴ならなんとかなったのかもしれないが、この日はトレラン・シューズだったのでたちまちのうちに靴の中はびしょ濡れとなる。
ようやく避難小屋にたどり着いて、小屋の中に入ると暗がりの中には三人の若い男子達がいた。前日の台風の強雨の中を石鎚方面から登ってきて、昨夜はしらさ小屋、明日は笹ヶ峰方面に縦走するらしい。避難小屋には広い2Fがあるので、昇降が多少面倒ではあるものの、2Fを占有させて頂くことにする。
まずは小屋の外で伊予西条のコンビニで求めてきたジャコ天をつまみにビーを空ける。夕食はバケットとポテト・サラダに照り焼きチキンを温める。食事を終えて、就寝すると、程なくして雨の音が聞こえたかと思うと、猛烈な雨となる。登っている間にこの雨に降られなくて何よりだった。
夜半に目が覚めると部屋の中が明るい。西側の窓から満月の光が差し込んでいるのだった。空はすっかり晴れているようだった。階下の若者達は3時に起床し、ラーメンとを茹でているようだ。満月が西に沈んだ頃を見計らって外に出ていると、逆さまになったカシオペアのW字の下で天の川が淡い光を放っている。
若者達が出ていった後で再び外に出ていると星空が霞んでいる。出発の準備を整えるて、瓶ヶ森の山頂に向かうと、雲の下から石鎚山が辛うじて見える。山頂に向かう登山道は次第に濃い霧の中に入っていく。山頂に到着すると、驚いたことに山頂はすっかり晴れているのだった。山頂の周囲では西側から雲が滝雲となって東側に流れ落ちてゆく。
「お早うございます」と声をかけてくる登山者がおられる。UFOラインを辿って、駐車場にから朝の4時に登ってこられたらしい。男山を越えて山頂まではわずかに1時間ほどとのことであった。東の方角からはUFOラインをこちらに向かってくる車のライトが目に入る。
まもなく東の剣山のあたりから朝日が顔を出す。早速にも朝陽が周囲の雲を茜色に染め上げてゆく。次第に周囲の稜線を流れる滝雲も少なくなり、稜線上の男山が雲の中から姿を現す。やがて背後の石鎚山の山頂が朝陽に輝き始めると、
再び避難小屋に降ると男女二人のカップルがおられる。避難小屋の裏手にあるテント場でテン泊されておられたとのこと。朝陽の山影となっている東乃川への登山道を下降する。ここでも登山道は水路のようになっている。果たして以前の山行はどうだったかと振り返ってみると、前回は12月であり、完全に水が凍りついていたのだった。
しばらくは九十九折りの急下降が続くが、細尾根を辿るようになると尾根の周囲はほとんどが五葉躑躅であることに気が付く。おそらくはシロヤシオであろう。花の季節に訪れることが出来れば、純白の躑躅のトンネルとなるに違いない。尾根の突端は台ヶ森と呼ばれる小ピークであり、立ち寄ってみる。ピークは樹木に囲まれて展望はなかったが、その手前からは石鎚山が綺麗に見えていた。
斜面に刻まれた細いステップでトラバース気味に下降する箇所が多いが、大雨などによりいつ崩壊してもおかしくないような箇所も少なくない。実際、この道が崩壊による通行止めを免れているのは入念な整備の賜物なのだろう。
高度が下がると当然ながら徐々に暑さが感じられるようになる。植林の中を下って行くと唐突に廃屋の民家の裏手に出る。民家を通り過ぎて東乃川にかかる小さな橋を渡ると舗装路に合流する。あとは30分ほどの林道歩きとなる。
虫除けのスプレーを振りかけるが、歩き始めるとすぐにも虫が襲来する。白い帽子を被ると頭の周りの虫は少なくなったようだが、今度は右手を二箇所ほど噛まれる。山行後、調べてみるとイヨシロオビアブと呼ばれる吸血性の虻で、一般的な虻よりも小型ではあるが、かなり攻撃的な性格らしい。最初の報告されたのが石鎚山の南麓を流れる面河渓であることに名称は由来するが、渓流には広く分布するようで、ブヨと同様に朝夕に活発に活動するらしい。これまでにもブヨと思っていたが、噛まれた時に痛みを感じるのはこの虫だった可能性が高そうだ。
防虫スプレーの効果だろうか、幸いにしてその後は噛まれることなく西之川に無事、帰還することが出来る。川の手前には小学校の校舎のような白い建物がある。かつての高宮小学校のもので、廃校となったあとは西之川少年自然の家になったが、それの使われなくなって久しいようだ。
西之川のバス停に時間は8時43分、避難小屋から2時間と少々、台ヶ森の往復に10分ほど時間を要したとはいえ、コースタイムをわずかに短縮した程度だろう。訪れる度に思うが、四国の山のコースタイムはかなりタイトに設定されているので、他の山域と異なりコースタイムの短縮は期待出来ない。
伊予西条行きのバスの時間は9時10分なので十分に余裕がある。バス停ではすでにバスが到着していたが、石鎚ロープウェイまで歩くことにする。バス停に到着すると、売店のご主人がバスの乗車券を売りにくる。バスを待つ間、冷えたコーラで休憩する。伊予西条の駅に着いたところで背後を振り返ると、山々はすでに雲に覆われていた。稜線からの景色が眺めることが出来たの朝のわずかな時間のことだったようだ。
特急いしづち号で伊予三島に移動する。ここも伊予西条と同様、駅前は閑散とした雰囲気ではあるが、駅前の通りを歩いて国道に出るとスーパーなどがあり栄えているようだ。温泉施設の湯遊び広場を訪れると、午前中であるにもかかわらず賑わっていた。湯上がりにスーパーに入っていると近辺の血酒が色々とあるので、思わず2本ほど購入する。近くのラーメン店りょう花で珍しい塩つけ麺でランチをとった後で、出張先の高松に向かうのだった。
夜に京都に帰宅しても依然として左手はドラエモンの手のように腫れ上がった状態のままであった。夏の季節にここを再訪する際は虫対策に気をつける必要があるということだ。
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