【ソロ】槍ヶ岳【ノントレース】


- GPS
- 24:06
- 距離
- 32.4km
- 登り
- 2,870m
- 下り
- 2,848m
コースタイム
- 山行
- 5:30
- 休憩
- 0:03
- 合計
- 5:33
- 山行
- 10:55
- 休憩
- 2:56
- 合計
- 13:51
天候 | 1日目 曇り 2日目 雪のち霧(半分以上は小屋内で寝てたから分からない) 3日目 快晴 稜線上でやや曇り 4日目 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス
松本までは夜行バス |
コース状況/ 危険箇所等 |
登山ポストは林道ゲート手前にある 槍平小屋まではしっかりとしたトレースあり。雪の後だと少し歩きにくくなる 槍平以降は雪が降るとトレースは消える 飛騨乗越手前300m付近までは雪崩斜面、以降はクラストした礫混じりの雪 槍ヶ岳山荘は東側に吹き溜まりが形成されており入り口に入るには西を巻く方が楽。東側にトレースは付けたがどうなってるか不明 |
その他周辺情報 | 新穂高ロープウェイ駅で槍ヶ岳バッジと手拭い購入 平湯温泉、ひらゆの森でお風呂 |
予約できる山小屋 |
槍平小屋
|
写真
槍ヶ岳山荘のライブカメラ映像。
写ってくるわ!とヘルメットも被らず飛び出した時、ここで帰ったら意味ないだろ?と悪魔の囁き。
レーションは食った。一気に行くしかないとアタック開始
多分死ぬ気だった
感想
雪山を始めて3年目
最初の年はワンゲルに入った最初の2月。2回とも隊で最も弱く、行程6時間程度の間に1時間以上休憩を貰うという情け無いところを見せた。
2年目は強くなった。体力も技術も。より高くより遠くを目指してみたくなった。
そして現在3年目のシーズン。ワンゲルの冬プランはほぼ全てで悪天&敗退。爺ヶ岳に関しては入山後300m程しか上がれなかった。
クリスマス。富士山へソロで突っ込んだ。アイスバーン化する前。少しでも高くまで行くために。初めての冬季単独登山だった。
今回もう一歩レベルを上げたくなった。どうせならみんなが知る3,000m以上へ最初は仙丈ヶ岳を組んだ。夏も行った。せっかくなら冬も行きたい。
そんな折、春合宿として槍ヶ岳に行きたいという後輩の声を聞く。
ワンゲルのレベルで行ける?なら、俺に行けない理由はない。そう思い立ち急遽山域を変更。3日で何本もルートを引き、結局1番メジャーなこのルートを行くことに決めた。
今までの単独行では全てある友人と連絡を取り続けながら歩いてた。独りな気はしなかった。ただ今回は谷間にルートが位置しそれが封じられた。寂しかった。
2日目。悪天予報は理解しつつも電波を取りたくて上へ上がる。なんとか連絡は取れたが吹雪が近づいてくる。トレースを追うのすら厳しくなり、撤退と翌日の再アタックを連絡し下がる。
3日目。小屋の前にトレースがあり埋まらなかったか、先行者がいる!と心が躍る。
しかし、出発と同時にヘッドライトの灯りが遥か遠くから見えてくる。言葉を交わさなくともわかった。彼は帰るのだ。
電波が取れるよりも手前、永遠に続くと思われたトレースがピタリと消えた。
まだ大丈夫。そう言い聞かせて足を出す。沈む。膝上丈…これなら爺ヶ岳よりは余裕だ。さらに足を出す。沈む。その繰り返し。
途中空荷ラッセルを試す。何も持たなければ当然早くなる。しかし疲労の蓄積が大きくなりすぎやめた。
ペースが上がらない。10分で15mしか標高が上がらない。苦しい。ザイル、ハーネス、予備レーション、安全の為の装備をデポする。
下にある天国ではなく上にある地獄を目指し顔を上げる。
さらに空荷のまま高度を上げ荷物を拾いに戻る。やはり意味がない。荷物を背負ったまま歩くことに集中する。ここから下界の友人と連絡が取れる様になる。連絡を見てくれるのがありがたい。
独りじゃなくなった。1人ペースを上げてゆく。
帰りたい。帰ってもみんなは暖かく迎えてくれるはず。逃げたい。飛騨乗越までは壁の様なパウダースノー。時間も掛かりすぎてる。ここまでよくやったよ。全てが帰る自分を正当化してくれる。天使の囁きは何度も何度も足を止めさせる。
だから俺は悪魔に鞭打った。悪魔とダンスしてる方が俺らしい。さぁ、死んでやる。だからお前も一緒に苦しんでくれ。
11:30
友人とLINEで話す。
手拭いを締め直す。
チョコを食べる。
ココアを飲む。
上を目指す。
後450m上がろうぜ。誰に言うでもなく叫び歩き出す。少しすると赤旗が岩や礫の混ざる斜面に翻っているのが見えた。あそこまで行こう。あそこがきっと飛騨乗越。あそこまで歩けば俺の勝ち。
行動準則なんてとうに捨て去った。ここまで5時間掛かったが槍平まで1.5時間もあれば帰れる。最悪槍ヶ岳山荘もある。だから俺は進む。無理を押してより高く。
13:00
雪面がクラストした。赤旗も目前に見えた。ワカンで雪面を叩き割りながら赤旗まで歩く。僅かに平らな場所でアイゼンを履く。ここからは俺の得意分野だ。
13:15
一気に高度を稼ぎ飛騨乗越へ。
そのままフラフラと稜線を登っていき槍ヶ岳山荘。
14:00
アイゼン換装後レーションも水分も補給しておらず心が折れていた。下界の友人へ引き返すと連絡を入れる。ザイルもハーネスも無く、降りる自信もなかった。
チョコを食べ、ドライマンゴーを食べ、水を飲む。
14:20
心折れ、寒さに震えながら下山計画を立てる。
そんな時友人からライブカメラの画像が送られてくる。
写りいくわ!小屋の外へ。ヘルメットもザックも全部小屋。カッコ付けのためにサングラスとピッケルは持ち、アイゼンも締め直す。
1時間ごとに映るんだって。そう送られてきたメッセージ。知ったことか。山荘に背を向ける。穂先に取り付く。
14:30
氷と岩と鎖と梯子と。全てを利用して上を目指す。
鎖は4本、梯子もルート取り次第だけど確か4本。全部夏の下りルートを通った。
14:35
ここでやめてなんになる!ここまで来てチキるのか?それで良いわけないだろ!とさらに高度を上げていく。いつしか2本の長い梯子。これがきっと…
14:40
登頂
景色は残念だが、自分には十分だった。
念願の北アルプスの頂
厳冬期槍ヶ岳ノートレースソロ
3年目が引っ提げる肩書としては最高の栄誉と言える様に感じた。
14:50
下界の友人に取れちゃったと連絡を入れる。それから慌てず急いで下山開始。梯子も言われてたほど恐怖感はなかった。
鎖を氷の下から引っ張り出し、アイゼンとピッケルを利用しながら下がっていく。
15:15
槍ヶ岳山荘に戻る。
征服した岩峰を見上げる。
最高。
一気に下山開始。
15:30
槍ヶ岳山荘キャンプ場から飛騨沢を見下ろす。
自分が歩いたトレースが見える。最高の気分だった。また叫んだ。やってやったぞ!と。
15:50
アイゼン換装地点で槍ヶ岳山荘を目指す人とすれ違う。"トレースありがとう"その言葉の重みを理解した。
17:00
槍平山荘。ここにも2人。
電波が欲しいからと無理を言って下山をし続けるが
19時過ぎ、疲労困憊。ビバークに切り替え、翌朝下山した。
きっといつまでも記憶に残る山行になると思う。それくらい最高の経験をした。
ノートレースの感激。またいつか、知らぬ世界へ。
トレース本当に助かりました、あらためてありがとうございました。
ワンゲル3年目なんですね。
ぼくもワンゲル3年目の、現役として最後の合宿は3月の表銀座からの槍ヶ岳でした。
もう約40年前なので懐かしいです。
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