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Yamareco

記録ID: 7732157
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
槍・穂高・乗鞍

【ソロ】槍ヶ岳【ノントレース】

2025年01月22日(水) 〜 2025年01月25日(土)
情報量の目安: S
都道府県 長野県 岐阜県
 - 拍手
体力度
8
2〜3泊以上が適当
GPS
24:06
距離
32.4km
登り
2,870m
下り
2,848m
歩くペース
標準
1.11.2
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
山行
5:30
休憩
0:03
合計
5:33
距離 10.1km 登り 955m 下り 73m
10:49
20
11:10
49
11:59
12:00
53
12:52
127
15:00
15:03
3
15:05
15:06
78
16:24
2日目
山行
3:20
休憩
0:00
合計
3:20
距離 4.4km 登り 529m 下り 530m
4:34
200
3日目
山行
10:55
休憩
2:56
合計
13:51
距離 12.3km 登り 1,355m 下り 1,773m
7:00
191
10:12
10:39
155
13:15
13:17
13
13:31
14:24
20
14:44
15:07
5
15:12
15:27
11
15:38
34
17:20
18:13
22
18:36
137
20:53
宿泊地
4日目
山行
2:00
休憩
0:11
合計
2:11
距離 5.7km 登り 31m 下り 472m
7:03
45
宿泊地
7:47
35
8:23
8:34
22
8:56
18
9:14
0
9:15
ゴール地点
天候 1日目 曇り
2日目 雪のち霧(半分以上は小屋内で寝てたから分からない)
3日目 快晴 稜線上でやや曇り
4日目 曇り
過去天気図(気象庁) 2025年01月の天気図
アクセス
利用交通機関:
バス
東京→松本→平湯温泉→新穂高ロープウェイ
松本までは夜行バス
コース状況/
危険箇所等
登山ポストは林道ゲート手前にある
槍平小屋まではしっかりとしたトレースあり。雪の後だと少し歩きにくくなる
槍平以降は雪が降るとトレースは消える
飛騨乗越手前300m付近までは雪崩斜面、以降はクラストした礫混じりの雪

槍ヶ岳山荘は東側に吹き溜まりが形成されており入り口に入るには西を巻く方が楽。東側にトレースは付けたがどうなってるか不明
その他周辺情報 新穂高ロープウェイ駅で槍ヶ岳バッジと手拭い購入
平湯温泉、ひらゆの森でお風呂
予約できる山小屋
槍平小屋
やっほー新穂高ロープウェイ。
初めての北ア主脈ど真ん中
2025年01月22日 10:31撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 10:31
やっほー新穂高ロープウェイ。
初めての北ア主脈ど真ん中
最初の林道はトレースの高速道路
サクサク進める。涸沢分岐を越えても槍平小屋までずっとあった
2025年01月22日 11:07撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 11:07
最初の林道はトレースの高速道路
サクサク進める。涸沢分岐を越えても槍平小屋までずっとあった
堰堤を乗り越えて進む
2025年01月22日 11:09撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 11:09
堰堤を乗り越えて進む
穂高平小屋。今回は使わなかったけど非常に綺麗。
⚠️電波はここまでしか届かない⚠️
もう少し奥にあったら恐らく利用してた
2025年01月22日 11:50撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 11:50
穂高平小屋。今回は使わなかったけど非常に綺麗。
⚠️電波はここまでしか届かない⚠️
もう少し奥にあったら恐らく利用してた
相変わらずトレースはしっかりしてる。若干踏むこともあるがツボ足で充分
2025年01月22日 12:59撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 12:59
相変わらずトレースはしっかりしてる。若干踏むこともあるがツボ足で充分
ワカンへ換装
疲れて休憩がてらという感じ。ここから先の谷の出合いのトラバースではあった方が無難そう
2025年01月22日 13:27撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 13:27
ワカンへ換装
疲れて休憩がてらという感じ。ここから先の谷の出合いのトラバースではあった方が無難そう
気持ちいいくらいのパウダー
2025年01月22日 15:04撮影 by  iPhone 15, Apple
1
1/22 15:04
気持ちいいくらいのパウダー
スキートレースが混ざって雑に歩いてると踏み抜くこともあった
2025年01月22日 15:18撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 15:18
スキートレースが混ざって雑に歩いてると踏み抜くこともあった
振り返る。北アの規模感は聞いていたよりも素晴らしい
2025年01月22日 15:45撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 15:45
振り返る。北アの規模感は聞いていたよりも素晴らしい
2025年01月22日 15:59撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 15:59
日が暮れてゆく。黄金に輝く山々
2025年01月22日 16:13撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 16:13
日が暮れてゆく。黄金に輝く山々
そろそろ着いてくれと思ってたら…
2025年01月22日 16:19撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 16:19
そろそろ着いてくれと思ってたら…
じゃん!
槍平小屋(夏の姿)
2025年01月22日 16:24撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 16:24
じゃん!
槍平小屋(夏の姿)
冬用は少し奥にあり
2025年01月22日 16:25撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 16:25
冬用は少し奥にあり
電波が取れないか試すべく少し開けたところに出て一枚
2025年01月22日 16:44撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 16:44
電波が取れないか試すべく少し開けたところに出て一枚
真ん中下の大きいのが冬季小屋小さいのがトイレ(使用不可)
2025年01月22日 16:47撮影 by  iPhone 15, Apple
1/22 16:47
真ん中下の大きいのが冬季小屋小さいのがトイレ(使用不可)
朝4:30からヘッデン山行
トレースはあるけど暗いし人は居ないし寒いし天気は悪くなりそうだし嫌になる。
電波はこの辺からところにより通る様に
2025年01月23日 06:38撮影 by  iPhone 15, Apple
1
1/23 6:38
朝4:30からヘッデン山行
トレースはあるけど暗いし人は居ないし寒いし天気は悪くなりそうだし嫌になる。
電波はこの辺からところにより通る様に
霧が降りてきて本格的に嫌になったので撤退してきた。そーゆー日もある。
2025年01月23日 07:45撮影 by  iPhone 15, Apple
1/23 7:45
霧が降りてきて本格的に嫌になったので撤退してきた。そーゆー日もある。
真っ暗な中の行動は怖い!ってことで日の出後少ししてからスタート
6時過ぎに足音がした気がしたら人が歩いてた!
戻ってきてたからトレースは無いだろうなと覚悟を固める
2025年01月24日 07:00撮影 by  iPhone 15, Apple
2
1/24 7:00
真っ暗な中の行動は怖い!ってことで日の出後少ししてからスタート
6時過ぎに足音がした気がしたら人が歩いてた!
戻ってきてたからトレースは無いだろうなと覚悟を固める
うん。ここまでやってくれて感謝。
ここから先は俺が行く
2025年01月24日 07:41撮影 by  iPhone 15, Apple
1
1/24 7:41
うん。ここまでやってくれて感謝。
ここから先は俺が行く
モルゲン?美しい
2025年01月24日 08:10撮影 by  iPhone 15, Apple
1
1/24 8:10
モルゲン?美しい
奥に見えるのは乗鞍とかかな?
左は多分穂高系?
2025年01月24日 08:22撮影 by  iPhone 15, Apple
1/24 8:22
奥に見えるのは乗鞍とかかな?
左は多分穂高系?
ノートレースが厳しすぎる。
荷物を捨てて空荷ラッセルを敢行。
一人じゃキツい
2025年01月24日 08:31撮影 by  iPhone 15, Apple
1/24 8:31
ノートレースが厳しすぎる。
荷物を捨てて空荷ラッセルを敢行。
一人じゃキツい
ただこの景色が全てを忘れさせてくれる
笠ヶ岳とかを見ながらさらに進む
2025年01月24日 09:27撮影 by  iPhone 15, Apple
2
1/24 9:27
ただこの景色が全てを忘れさせてくれる
笠ヶ岳とかを見ながらさらに進む
昨日はこの辺で心折れて下がった。
でも今日は先が見える。見えたら見えたで辛いです。
2025年01月24日 11:14撮影 by  iPhone 15, Apple
2
1/24 11:14
昨日はこの辺で心折れて下がった。
でも今日は先が見える。見えたら見えたで辛いです。
槍ってあんなもんなん?とか千丈沢乗越辺りの岩を見ながら訝しむ。間違えてるのは自分です
2025年01月24日 11:14撮影 by  iPhone 15, Apple
3
1/24 11:14
槍ってあんなもんなん?とか千丈沢乗越辺りの岩を見ながら訝しむ。間違えてるのは自分です
泣きそうになりながらラッセル終了
クラストした氷の音に心が弾む
2025年01月24日 12:48撮影 by  iPhone 15, Apple
1
1/24 12:48
泣きそうになりながらラッセル終了
クラストした氷の音に心が弾む
アイゼンへ換装!
よーやくラッセルから解放されて安心
2025年01月24日 12:49撮影 by  iPhone 15, Apple
1/24 12:49
アイゼンへ換装!
よーやくラッセルから解放されて安心
飛騨乗越
エビの尻尾の化け物
2025年01月24日 13:15撮影 by  iPhone 15, Apple
1
1/24 13:15
飛騨乗越
エビの尻尾の化け物
槍ヶ岳小屋
小屋前の広場は電波が入るけど中は入らない(当たり前)
トイレもあるし、風は防げる。中は2段になっててかなり快適そうだった。
2025年01月24日 13:46撮影 by  iPhone 15, Apple
1
1/24 13:46
槍ヶ岳小屋
小屋前の広場は電波が入るけど中は入らない(当たり前)
トイレもあるし、風は防げる。中は2段になっててかなり快適そうだった。
ただここで心が折れる。ヘルメット以外の安全装備をデポしてしまっているためアタック断念を下界に伝えた
天気もこんな調子で一気に穂先への恐怖が募る
1
ただここで心が折れる。ヘルメット以外の安全装備をデポしてしまっているためアタック断念を下界に伝えた
天気もこんな調子で一気に穂先への恐怖が募る
しかし、下界からこんな写真が送られてきた。
槍ヶ岳山荘のライブカメラ映像。
写ってくるわ!とヘルメットも被らず飛び出した時、ここで帰ったら意味ないだろ?と悪魔の囁き。
レーションは食った。一気に行くしかないとアタック開始
多分死ぬ気だった
1
しかし、下界からこんな写真が送られてきた。
槍ヶ岳山荘のライブカメラ映像。
写ってくるわ!とヘルメットも被らず飛び出した時、ここで帰ったら意味ないだろ?と悪魔の囁き。
レーションは食った。一気に行くしかないとアタック開始
多分死ぬ気だった
着いた…着いた。着いた!
2025年01月24日 14:47撮影 by  iPhone 15, Apple
2
1/24 14:47
着いた…着いた。着いた!
槍ヶ岳山頂
間違いなく今日の初登頂
2025年01月24日 14:50撮影 by  iPhone 15, Apple
3
1/24 14:50
槍ヶ岳山頂
間違いなく今日の初登頂
着いたぁぁぁ!!!
初北ア主脈は厳冬期槍ヶ岳ダァァァァァァ!!!
2025年01月24日 14:51撮影 by  iPhone 15, Apple
1
1/24 14:51
着いたぁぁぁ!!!
初北ア主脈は厳冬期槍ヶ岳ダァァァァァァ!!!
ここで危険箇所を写真に撮ってないことに気付く。
こんな霧だもんしょーがないよね
ちなみに小屋の北側(こちらから手前左)はめちゃくちゃ吹き溜まりが出来てて、南側を回って登ってきた
2025年01月24日 14:57撮影 by  iPhone 15, Apple
1/24 14:57
ここで危険箇所を写真に撮ってないことに気付く。
こんな霧だもんしょーがないよね
ちなみに小屋の北側(こちらから手前左)はめちゃくちゃ吹き溜まりが出来てて、南側を回って登ってきた
下山中
大天井や常念かな?
2025年01月24日 15:31撮影 by  iPhone 15, Apple
1/24 15:31
下山中
大天井や常念かな?
2025年01月24日 15:33撮影 by  iPhone 15, Apple
1/24 15:33
見え辛いけど
俺がこのトレースを作った。次の雪まではみんなが使う。そう思うと自然と絶叫してた。
ワカンで作ったからスノーシューだと歩きやすいよ
2025年01月24日 15:33撮影 by  iPhone 15, Apple
1/24 15:33
見え辛いけど
俺がこのトレースを作った。次の雪まではみんなが使う。そう思うと自然と絶叫してた。
ワカンで作ったからスノーシューだと歩きやすいよ
大喰岳。3000mあるらしいし時間があれば取りたかったが今回は断念
2025年01月24日 15:34撮影 by  iPhone 15, Apple
1/24 15:34
大喰岳。3000mあるらしいし時間があれば取りたかったが今回は断念
これに登ったとか信じられなかった。
画質悪いけど1番上の梯子の右側だけは見えてるね。
岩場で恐怖心を抱いたことがなかったからある程度スルスルいけた
2025年01月24日 15:38撮影 by  iPhone 15, Apple
2
1/24 15:38
これに登ったとか信じられなかった。
画質悪いけど1番上の梯子の右側だけは見えてるね。
岩場で恐怖心を抱いたことがなかったからある程度スルスルいけた
トレースを見下ろしながら一枚
単独行。バカのすることだと思っていた。
バカのすることだと思う。でも楽しい
2025年01月24日 15:48撮影 by  iPhone 15, Apple
2
1/24 15:48
トレースを見下ろしながら一枚
単独行。バカのすることだと思っていた。
バカのすることだと思う。でも楽しい
デポした安全装備(ザイル&ハーネス)を回収
梯子で懸垂が要るかもと用意したが結果的に不要だった。と言うよりもラッセルがエグ過ぎて山頂を望むにはデポるしか無かった。
2025年01月24日 16:07撮影 by  iPhone 15, Apple
1/24 16:07
デポした安全装備(ザイル&ハーネス)を回収
梯子で懸垂が要るかもと用意したが結果的に不要だった。と言うよりもラッセルがエグ過ぎて山頂を望むにはデポるしか無かった。
2025年01月24日 16:35撮影 by  iPhone 15, Apple
1/24 16:35
Q.夕日でモルゲンはなんていうんだっけ?
A.アーベントロート
団体登山だと日暮前にテントを張るからあんまり見れない綺麗な景色
2025年01月24日 16:37撮影 by  iPhone 15, Apple
1/24 16:37
Q.夕日でモルゲンはなんていうんだっけ?
A.アーベントロート
団体登山だと日暮前にテントを張るからあんまり見れない綺麗な景色
本当に美しい
北アはやっぱりすごいわ。
2025年01月24日 16:39撮影 by  iPhone 15, Apple
1
1/24 16:39
本当に美しい
北アはやっぱりすごいわ。
下山を強行したがお腹空き過ぎて動けなくなったのでビバーク
ただ疲れ過ぎてて夜ご飯も作らずに寝た。朝ごはんも面倒になりレーションだけ食べて下山開始
2025年01月25日 07:03撮影 by  iPhone 15, Apple
1/25 7:03
下山を強行したがお腹空き過ぎて動けなくなったのでビバーク
ただ疲れ過ぎてて夜ご飯も作らずに寝た。朝ごはんも面倒になりレーションだけ食べて下山開始
イェーイ
2025年01月25日 07:53撮影 by  iPhone 15, Apple
1/25 7:53
イェーイ
デポった下山着を回収。サンダルは間違えて一緒に小屋まで行ってた笑
2025年01月25日 09:07撮影 by  iPhone 15, Apple
1/25 9:07
デポった下山着を回収。サンダルは間違えて一緒に小屋まで行ってた笑
ゴール
安心した。
2025年01月25日 09:13撮影 by  iPhone 15, Apple
1
1/25 9:13
ゴール
安心した。
撮影機器:

感想

雪山を始めて3年目
最初の年はワンゲルに入った最初の2月。2回とも隊で最も弱く、行程6時間程度の間に1時間以上休憩を貰うという情け無いところを見せた。
2年目は強くなった。体力も技術も。より高くより遠くを目指してみたくなった。
そして現在3年目のシーズン。ワンゲルの冬プランはほぼ全てで悪天&敗退。爺ヶ岳に関しては入山後300m程しか上がれなかった。
クリスマス。富士山へソロで突っ込んだ。アイスバーン化する前。少しでも高くまで行くために。初めての冬季単独登山だった。
今回もう一歩レベルを上げたくなった。どうせならみんなが知る3,000m以上へ最初は仙丈ヶ岳を組んだ。夏も行った。せっかくなら冬も行きたい。
そんな折、春合宿として槍ヶ岳に行きたいという後輩の声を聞く。
ワンゲルのレベルで行ける?なら、俺に行けない理由はない。そう思い立ち急遽山域を変更。3日で何本もルートを引き、結局1番メジャーなこのルートを行くことに決めた。

今までの単独行では全てある友人と連絡を取り続けながら歩いてた。独りな気はしなかった。ただ今回は谷間にルートが位置しそれが封じられた。寂しかった。
2日目。悪天予報は理解しつつも電波を取りたくて上へ上がる。なんとか連絡は取れたが吹雪が近づいてくる。トレースを追うのすら厳しくなり、撤退と翌日の再アタックを連絡し下がる。
3日目。小屋の前にトレースがあり埋まらなかったか、先行者がいる!と心が躍る。
しかし、出発と同時にヘッドライトの灯りが遥か遠くから見えてくる。言葉を交わさなくともわかった。彼は帰るのだ。
電波が取れるよりも手前、永遠に続くと思われたトレースがピタリと消えた。
まだ大丈夫。そう言い聞かせて足を出す。沈む。膝上丈…これなら爺ヶ岳よりは余裕だ。さらに足を出す。沈む。その繰り返し。
途中空荷ラッセルを試す。何も持たなければ当然早くなる。しかし疲労の蓄積が大きくなりすぎやめた。
ペースが上がらない。10分で15mしか標高が上がらない。苦しい。ザイル、ハーネス、予備レーション、安全の為の装備をデポする。

下にある天国ではなく上にある地獄を目指し顔を上げる。

さらに空荷のまま高度を上げ荷物を拾いに戻る。やはり意味がない。荷物を背負ったまま歩くことに集中する。ここから下界の友人と連絡が取れる様になる。連絡を見てくれるのがありがたい。

独りじゃなくなった。1人ペースを上げてゆく。

帰りたい。帰ってもみんなは暖かく迎えてくれるはず。逃げたい。飛騨乗越までは壁の様なパウダースノー。時間も掛かりすぎてる。ここまでよくやったよ。全てが帰る自分を正当化してくれる。天使の囁きは何度も何度も足を止めさせる。
だから俺は悪魔に鞭打った。悪魔とダンスしてる方が俺らしい。さぁ、死んでやる。だからお前も一緒に苦しんでくれ。

11:30
友人とLINEで話す。
手拭いを締め直す。
チョコを食べる。
ココアを飲む。
上を目指す。

後450m上がろうぜ。誰に言うでもなく叫び歩き出す。少しすると赤旗が岩や礫の混ざる斜面に翻っているのが見えた。あそこまで行こう。あそこがきっと飛騨乗越。あそこまで歩けば俺の勝ち。

行動準則なんてとうに捨て去った。ここまで5時間掛かったが槍平まで1.5時間もあれば帰れる。最悪槍ヶ岳山荘もある。だから俺は進む。無理を押してより高く。

13:00
雪面がクラストした。赤旗も目前に見えた。ワカンで雪面を叩き割りながら赤旗まで歩く。僅かに平らな場所でアイゼンを履く。ここからは俺の得意分野だ。
13:15
一気に高度を稼ぎ飛騨乗越へ。
そのままフラフラと稜線を登っていき槍ヶ岳山荘。

14:00
アイゼン換装後レーションも水分も補給しておらず心が折れていた。下界の友人へ引き返すと連絡を入れる。ザイルもハーネスも無く、降りる自信もなかった。
チョコを食べ、ドライマンゴーを食べ、水を飲む。

14:20
心折れ、寒さに震えながら下山計画を立てる。
そんな時友人からライブカメラの画像が送られてくる。
写りいくわ!小屋の外へ。ヘルメットもザックも全部小屋。カッコ付けのためにサングラスとピッケルは持ち、アイゼンも締め直す。
1時間ごとに映るんだって。そう送られてきたメッセージ。知ったことか。山荘に背を向ける。穂先に取り付く。
14:30
氷と岩と鎖と梯子と。全てを利用して上を目指す。
鎖は4本、梯子もルート取り次第だけど確か4本。全部夏の下りルートを通った。
14:35
ここでやめてなんになる!ここまで来てチキるのか?それで良いわけないだろ!とさらに高度を上げていく。いつしか2本の長い梯子。これがきっと…
14:40
登頂

景色は残念だが、自分には十分だった。
念願の北アルプスの頂
厳冬期槍ヶ岳ノートレースソロ
3年目が引っ提げる肩書としては最高の栄誉と言える様に感じた。

14:50
下界の友人に取れちゃったと連絡を入れる。それから慌てず急いで下山開始。梯子も言われてたほど恐怖感はなかった。
鎖を氷の下から引っ張り出し、アイゼンとピッケルを利用しながら下がっていく。

15:15
槍ヶ岳山荘に戻る。
征服した岩峰を見上げる。
最高。

一気に下山開始。

15:30
槍ヶ岳山荘キャンプ場から飛騨沢を見下ろす。
自分が歩いたトレースが見える。最高の気分だった。また叫んだ。やってやったぞ!と。

15:50
アイゼン換装地点で槍ヶ岳山荘を目指す人とすれ違う。"トレースありがとう"その言葉の重みを理解した。

17:00
槍平山荘。ここにも2人。
電波が欲しいからと無理を言って下山をし続けるが

19時過ぎ、疲労困憊。ビバークに切り替え、翌朝下山した。


きっといつまでも記憶に残る山行になると思う。それくらい最高の経験をした。
ノートレースの感激。またいつか、知らぬ世界へ。

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コメント

「アイゼン換装地点で槍ヶ岳山荘を目指す人」です。
トレース本当に助かりました、あらためてありがとうございました。
ワンゲル3年目なんですね。
ぼくもワンゲル3年目の、現役として最後の合宿は3月の表銀座からの槍ヶ岳でした。
もう約40年前なので懐かしいです。
2025/1/26 17:20
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利用交通機関: 車・バイク
技術レベル
3/5
体力レベル
4/5
積雪期ピークハント/縦走 槍・穂高・乗鞍 [3日]
槍ヶ岳中崎尾根
利用交通機関: 車・バイク
技術レベル
5/5
体力レベル
5/5
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利用交通機関: 車・バイク、 電車・バス
技術レベル
3/5
体力レベル
5/5

この記録で登った山/行った場所

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