ジャンダルムダイレクトルンゼスキー滑降(岳沢〜扇沢経由)


- GPS
- 17:14
- 距離
- 21.6km
- 登り
- 2,830m
- 下り
- 2,806m
コースタイム
- 山行
- 6:29
- 休憩
- 0:48
- 合計
- 7:17
- 山行
- 5:08
- 休憩
- 2:24
- 合計
- 7:32
- 山行
- 1:45
- 休憩
- 0:15
- 合計
- 2:00
天候 | 1,2日目 晴れ 3日目 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
扇の要は埋まっているが1カ所絶妙に滑りづらい。 |
写真
感想
ジャンダルムダイレクトルンゼ。初めてその単語を目にしたのはロックアンドスノーの山岳滑降特集だったと思う。個人的になんて格好いい響きの単語だろうか。
その頃はジャンダルムからスキーで滑降なんてとんでもない物好・・凄い人達がいるのだろうと、遠い世界に感じたのを覚えている。
昨年同時期に扇沢を登り奥穂高岳山頂へ。その途中ロバの耳とジャンが視界に入り、そこへ通ずる斜面はフラット、見た感じそこまで斜度もキツくなく、あれ、これ行けるんじゃないか。その際は奥穂からの滑降が目的だったためそのまま登ったが、次は行ってみるか・・何となく思う。
コブ尾根からアプローチできればそりゃ最高に格好いいが、アイゼンクライミングと雪稜の経験は乏しく現実的ではない。ではやはり扇沢から・・登路は決まった。
GW入りと同時に上高地から岳沢へ。仕事で1カ月以上山に行けておらず体力が一番不安だったが、岳沢までの登りはそこまで苦にならず少し安心。
例によって扇沢ノドの偵察へ。小屋の方の話だと繋がっているとの事だったがやはり自分の目で確認しておきたいし、身体慣らしの意味合いもある。
思いの外早く出てきたデブリ帯にガッカリしながらアイゼン登行。小屋から上げる事400m強、まあまあシンドイが無事にノド到着。なるほど埋まっている。埋まっているが・・水流出ている上の辺りがU字に抉れていて横滑りでも難儀しそう。まあ今考えても仕方ない、なんとかなるさと気持ちを切り替え下降、小屋に戻り明日に備える。
27日0300起床、外は手持ちの温度計で-8度、放射冷却で冷え込んでいる。作ってもらった朝弁当を腹に詰め込み0400過ぎ出発。暗い中一人扇沢を登っていくが内心は不安で一杯。
0430頃には薄明るくなり少しホッとする。後ろから来た南稜に行くと思われるパーティーを見送り扇沢へ。雪は固いが昨日自分が付けたトレースがあるので少し楽。特に問題なくノドを通過、昨年は朝から気温上昇し、石や氷礫が飛んできて肝を冷やした細い通路も今年は落下物なし。
ノドを抜ければあとは体力勝負、ひたすらツボで高度を上げる作業。昨年はコブ尾根、南稜の両方からクライマーのコールが聞こえてきて気分が上がったが、今年は全く聞こえないし人の気配もしない。少し寂しく思いながら高度を上げていく。
やがてロバの耳、そしてジャンダルムが視界に入りルート認識は間違ってなかったと確信、少しテンション上がる。が、見えてからが遠いのが山の常・・30~40度くらいの斜面が延々と続き、行けども行けども稜線が近づいてこない。20歩上げたら一息、のペースをひたすら繰り返す。
稜線まで160mの地点で傾斜がさらにキツくなり、体感45度〜それ以上に感じるようになる。フロントポイントとダガーポジションでひたすら登るがまあ辛い。ここの登りが全行程で最高に辛かった。
最後は稜線に倒れこむようにして乗っこし、コブ尾根の頭とジャンダルムのコルへ到達。もう雪壁登らなくて済む・・ザックを下ろし一息。
ジャンダルムを見上げる。やはりここまで来たら行かねば。無雪期には2回来ているので登山道は分かる。登山道を外すとザレまくりとんでもない目に会うことも知っている。無難に登山道から登る。
夏靴ではなんてことない登山道だが、ブーツアイゼンでの岩登り経験は少なく出だしのトラバースから既におっかない。滑る閾値が分からずたまにガリッと足が滑りビビる。それでも登りはまあ何とかなる。
0905ジャンダルムピーク到達。来れた・・積雪期にジャンダルム、自分ひとり。喜びが込み上げ快哉を叫ぶ。年甲斐もなくヤッホーと行ってみると結構響くので、もう一回デカい声でヤッホー。
今日は快晴、風もそこまで強くなく360度の絶景。槍、奥穂、前穂、明神、今年1,3月に登った笠、抜戸、杓子平まで見渡す限りの大パノラマ。独り喜びを噛み締めているとコブ尾根を登ってくるクライマーが見えた。あの人もジャン登るだろうからクロスする前に降りねばと下降開始。
登りより下りがおっかない。慣れぬブーツアイゼンだと余計。いや夏靴なら何てことないのに・・と思いながら正対で超おっかなびっくり降りていく。かなり時間を要してしまったが無事コルまで戻ってこれて一安心。
さっきのクライマーの方はコブ尾根の頭から来るよな・・と思っていたら凄い所をトラバースしてきた。何とお一人でザックもなく装備はハーネスと少しのガチャ。コブ尾根上がってきたんですか!と聞くと微妙な反応。あれ、と思いながら見送るとジャンのピークへは行かずそのままロバ方面へ。・・夏道行かれると思いきや手前で雪壁をクライムダウン、まさか雪壁をトラバースされるのか、いやここまで単独で来られる方なので全く問題ないのであろうが・・見ているこちらが滅茶苦茶怖いし足も震える。下にクラックがあるので尚更。
クラックの辺りで下降を止めしばらく逡巡していたが、雪壁トラバースを諦め戻ってきてくれたのでホッとする。一応「どちらまで行くんですかー!」と聞いてみたが明瞭な返答はなかった。
クライマーの方が夏道トラバースを終えるのを見送りながら滑降準備。本当にどこまで行かれるのか・・不思議な出会いだった。
1032頃稜線からドロップ。斜度は体感50度くらい。雪は緩んで重ザラメなのでターンする度大量のスラフが流れる。ここを連続ターンで行ける技量は残念ながらないのでシュテムとペダルターンを1ターンずつ決め確実に高度を落とし、一番斜度のキツイ160mほどをクリア。
その後は縦溝の走る斜面を滑り降りていく。重ザラメと固雪で板は走るがボコボコなので快適とは言えず、それでもジャンから滑っている、という思いで気分は上々。体感的にはあっという間に核心のノドへ。
ノドの狭い部分は去年より雪付き良く広かったが、逆にボコボコ波打っており滑りづらい。横滑りとシュテムで高度を落とし流水部分に差し掛かる。
流水部分、ほんの1mほど落とせば横にトラバースし横滑り継続できるのだが、その1mがU字に抉れており、しかもトップとテール部分が固くずらせない。自分は空中に浮いた状態、バランス崩すと谷側にすっ転ぶため泣きそうになる。ミリミリと板を動かし、ダブルウィペットを全力で雪面に突き刺しながら何とかトラバース出来る部分まで板を落とし、横に抜けて事なきを得る。去年より大分アドベンチャーだった。
核心部岩を挟んだスキーヤーズレフトの斜面、雪が切れていればこちらを懸垂で行くのが定石のようだが、今年は完全に雪がついていてしかもフラット、普通にこっち行った方が楽そうだったがまあ結果オーライ。
最終核心終えあとは無事下りるのみ。しかしデブリ帯が中々厄介、腿パンパン、板が引っ掛かりすっ転びそうになりながら下っていく。ようやくフラットバーンが出てきた所で完全滑降の成功を確信。振り返り扇沢を見上げると何やら感謝の気持ちすら込み上げてくる。
最後のフラットバーンは快適ザラメ、今日一番のスピードで大回りを決めあっという間に小屋へ。板を脱ぎ小屋のベンチで脱力。やり切った・・独り喜びを噛み締めた。
翌日平日で天候悪化予報の為か、小屋泊はまさかの自分含め2人のみの個室待遇。楽しみにしていたカレーバイキングではなかったが、カレーやおかずは一人分綺麗に盛り付けられ、揚げ物と野菜以外はお代わり出来た為カレー2杯で安定の腹パンパン。味噌汁も美味かった。
28日朝は高曇り。何となく名残惜しさを感じながら小屋を後にした。
ジャンダルムダイレクトルンゼ、初めて見た時には自分が滑るなんて想像もしていなかったが、天気と条件に恵まれ今回完全滑降することが出来た。正直スティープに関してはまあまあこれぐらいで打ち止めでも良いのではないか、なんて思いも浮かんでくるが、西穂や北穂からも滑ってみたいし魅力あるルートは北アルプスのみならず他にも沢山ある。身体が思い通りになるうちはまた新たな目標を見つけていきたいと思う。
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