木曽駒ヶ岳〜宝剣岳☆木曽路から賑わいの千畳敷へ


- GPS
- 06:05
- 距離
- 11.1km
- 登り
- 1,914m
- 下り
- 600m
コースタイム
- 山行
- 4:35
- 休憩
- 1:27
- 合計
- 6:02
天候 | 曇り時々晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
下山は千畳敷ロープウェイで |
コース状況/ 危険箇所等 |
全般に良好に整備された一般登山道。 しかし宝剣岳の登降は鎖場が連続 |
写真
感想
連日の酷暑にアルプスの稜線への憧憬がかきたてられる。思い切って日帰りで中央アルプスを訪れることにする。名古屋からバスに乗って、駒ヶ根からロープウェイでアプローチするのは意外と時間がかかり、千畳敷に到着するのは早くても11時頃だろう。それならばいっそのこと木曽福島から駒ヶ岳に登ることを考える。早ければ12時には山頂に着くだろうと踏む。
木曽福島で下車すると、同時に20人程の登山客が降りる。驚いたことに私以外の登山者達はいずれも御嶽山のロープウェイ行きのバスに並ぶのであった。しかし、困ったことに木曽福島の駅前には一台もタクシーがいない。タクシーが乗客を乗せてきたかと思うと、次の予約があるのでとすげなく断られてしまう。タクシー会社に電話をしても今は空きの車がありませんと打つ手がない。御嶽山行きのバスはまだ発車前だったので、行き先を御嶽山に変更しようかと心が揺れ動いたところでゴルフ場からと思われる上品な出で立ちの紳士を乗せてきたタクシーが乗せてくれることになった。
タクシーの車内に乗り込むとさすがに冷房はかかっていない。京都と違い、さすがに涼しく感じられる。運転手の話によると連日、午後2時頃になると雷雨に見舞われるとのことだ。いまのところ、空には殆ど雲は見当たらない。今頃、稜線は絶好のの好天に恵まれていることだろう。登山口が近づくとトレラン姿の若者が走っているのを追い越す。このお二人は間違いなく木曽駒ヶ岳の山頂を目指すランナーであろう。
登山口からは林道を快速で歩き始める。20分程で林道終点にたどり着くと、左手の幸の川を渡渉して、山道に入る。カラマツの美林の尾根を登ってゆく。四合半の標識に力水と書かれている。わずかではあるが樹の根元から流れでる水がある。水場に用意されているカップで水を掬い、喉を潤す。ここまでは40分ほど、コースタイムの1/3程で快調に思われるのだったが・・・
六合目を過ぎたあたりで突然、左足が攣り始める。登山中に脚を攣るという話はよく聞くが、私自身はこれまで全く無縁であったが油断していた。再び歩き始めると今度は右脚が攣る。まずは発汗による脱水が最大の要因だろう。ここまで大量の汗をかいているが、水分の補給が追いついていなかったためだろう。初歩的なミスでをいまさらながらに反省する。
水分補給をして少し休憩するとペースを大幅に落とし、一歩毎に足を持ち上げる高さを極力低くして歩き続ける。幸いにして急登はほとんど終わり、このあたりからは平坦な道となる。
七合目の避難小屋にたどり着くと眺望が広がる。しかし、上昇気流のせいで瞬く間に雲が出てきたようだ。一瞬、駒ヶ岳の山頂方面が雲の中から姿を現わすが、すぐに稜線は雲の中へと隠れてしまう。
8合目はトラバース道の尾根を回り込んだところだ。すぐ下から絶え間なく流れる沢音が聞こえる。ピンクテープがついているので、踏み跡を辿ってみると、大きな岩の下から轟々とほとばしるように水が流れ出ている。水は氷水のように冷たい。
八合目を過ぎると玉の窪と呼ばれる小さなカールに出る。その手前で若い学生の4人組のパーティを追い越すが、先行者に追いつくのはこの日始めてである。カールに入った途端に、一気に森林限界越えたようだ。
玉の窪を上まで上がると霧がはれて、途端に霧の中から小屋が出現する。稜線の雲がとれて、彼方に宝剣岳が尖鋭なピークを姿を現す。
山頂直下の木曽小屋にたどり着くと、あと一息で山頂なのだがここでエネルギー不足である。おまけに木曽福島で塩飴なり塩分を補給出来るものを入手しようと思っていたのだが、タクシーを探すのに夢中になり、すっかり失念していたのだった。小屋でカップヌードルを頂くことにする。
木曽小屋では気さくな山小屋のご主人から色々とお話をいただく。昨年は山頂のあたりでも熱風が吹いていたらしく、やはり異常気象だったらしい。来年は旧暦では一年に月が13ヶ月ある年に相当するらしく、どういう理屈かはわからないが夏の暑さが少しましな可能性があると云う。長いこと寛がせて頂いたが私の元気もすっかり回復したように思う。私が塩飴を忘れてしまったので、塩分補給させて頂いて助かったとお礼を申し上げると、小屋の奥から塩飴を鷲掴みで取り出してきて下さり、どうぞと私に持たせてくれた。
小屋から木曽駒ケ岳の山頂はわずかばかりの距離ではあるが、山頂にたどり着いた途端、それまでの静寂が嘘のように大勢の人で賑わう。千畳敷までロープウェイで登ってきた人々のほとんどが峻険な宝剣岳を避けて、この木曽駒ヶ岳の山頂を目指すからであろう。折しも稜線からは雲が晴れて、宝剣が再び顔を見せる。
山頂でのんびり寛いでいると、先ほど登山口の手前で見かけたトレイル・ランナーのお二人が到着するので、ご挨拶をさせて頂く。少なくとも一人の方はこの木曽駒にはよく来られているようだ。下山のコースのことを色々と教えて頂く。
タクシーの運転手もいっていた通り、午後になると雷雲が発達する可能性が極めて高そうだ。昨年、宝剣岳に向かっておられる稜線で雷雲に遭遇したお話もされる。無難に下山するならば、ここから福島か上松を目指して下山の途につくべきところであろう。しかし、南に延びる稜線に天を突くがごとく峻険な姿を見せている宝剣岳の姿を見ると、やはりそのピークを踏んでおきたいという欲が頭を擡げる。以前、ロープウェイで千畳敷から登って来た時も悪天で宝剣を諦めたのだった。
ここから宝剣岳に向かうということは下山は千畳敷のロープウェイで伊那谷に下る他、選択肢がなくなることを意味するが、「千畳敷のあたりを散策して、駒ヶ根からバスで名古屋に向かうというのもいいですよ」とランナーの方にもお薦めを頂く。
宝剣岳に向かって稜線を南下する。最初のピーク、中岳もやはり千畳敷から登ってこられた多くの人で賑わっている。この時は木曽駒ヶ岳は山頂に光が当たってすっきりと見えているが、宝剣岳の山頂へと向かうと、木曽駒ヶ岳の山頂は瞬く間に雲に覆われてゆく。
宝剣岳の登りに差し掛かると急に人が少なくなるようだ。宝剣岳を背景に父娘連れての二人が写真を撮っておられるので、お二人の写真を撮って差し上げる。千畳敷の方向はすっかり雲の中であるが、頻繁にロープウェイの発車を合図するベルの音と拡声器からのアナウンスが聞こえる。「青の整理券番号481番から540番をお持ちの方は乗車口にお集まり下さい。」宝剣岳の急峻な岩場の登りとこのアナウンスが非現実的感をもたらす。
宝剣の山頂まで、先ほどの父娘連れとほぼ同じペースで進むことになった。私のスピードを自慢するつもりは毛頭ないが、お嬢さんは鎖場も楽々とハイペースで進んで来られる。宝剣の山頂直下で下山の登山者達を通過を待っている間に「相当、山慣れておられるんですね」とお嬢さんに話しかけると「ボルダリングもやっているので」・・・とのこと。山頂に着いたのも父娘連れと私だけであったので、お二人の登頂写真のシャッターを切らせて頂いた。
一瞬、雲が切れて島田娘が雲の合間から顔を覗かせる。久しぶりの森林限界の上の稜線歩きが出来る悦びに胸が踊る。前回はインドネシアで森林限界の上を歩いているわけだが、改めて日本の高山ならではのハイマツの緑が美しく感じられる。
若い三人組とすれ違う。「ここ初心者が来るところじゃないっすよね〜」「落ちたら死にますよね〜」と若者の一人が私に話しかけてくれる。トレラン・シューズで身軽な格好をしている私であったが初心者には見られなかったようだ。若者達はいずれもいい登山靴を履いているようだ。「危険なところは鎖を掴んで、三点支持をしていけば大丈夫ですよ」とお答えする。
宝剣からの急峻な下りが終わると三ノ沢岳からの尾根と合流する。雲の中から朧げにシルエットを見せていた三ノ沢岳もみるみるうちに雲のヴェールを脱いで、美しい山容を見せる。ここも近い将来、縦走したい山の一つだ。
極楽平からは整理券を早く取りに行かねばと思い、千畳敷に下りかける。すぐにお花畑に差しかかると多数の鳥の鳴き声がする。鳥は詳しくないのだが、岩雲雀に思われる。ふと空を見上げると青空が見える。再び稜線に登り返し、島田娘のピークを訪ねる。南に延びる稜線が晴れることを期待したが、ピークから先は雲の中である。宝剣から辿って来た稜線も雲の中にのみ込まれていた。
再び極楽平に戻り、千畳敷へと下る。登山路の周囲には多数の猿が寛いでいる。子供が生まれる時期なのだろう。小さな子猿を連れたファミリーが目立つ。
千畳敷の駅にたどり着き整理券を受け取るとロープウェイの発車時間は1時間半後の16自半頃という。臨時便を増発して9分おきに運行をしているらしい。1時間半ということはこの時点でおよそ600人がロープウェイを待っている計算になる。幸い雷はまだ訪れる気配がない。外のベンチに座ってビールを飲んでいると、若者達の会話が聞こえる「この1時間半はもったいないっすね〜」。
待っている間に駒ヶ根から名古屋へのバスを予約する。菅野台からのバスは18時半の便に乗るしかない。いよいよ整理券の順番が回って来てロープウェイに乗り込むと先ほどの父娘と再び一緒になる。ロープウェイのしらび平の駅で降りると、気温は24℃、湿度は36%と表示されている。
菅野台のバスセンターからバスを降りたところで、父娘と色々とお話をさせて頂く。お嬢さんはロープウェイの急な下降で気分が不良になったらしい。高山病になるとされる2400m前後を急に下降するので、下降に伴う体調不良が生じてもおかしくないだろう。「それにしてもお嬢様とこうして山に行けるなんて幸せですね」と申し上げると「こんなに一緒に山に行けるとは思っていませんでした」と素直に頷かれる。父親の方は終始、ご満悦の様子であった。来週は富士山らしい。
駒ヶ根からのバスが大変であった。瑞浪で生じた交通事故による渋滞で名古屋に到着したのは40分の遅れ。両足のふくらはぎにこむら返りによる痛みを覚えながら京都の自宅に到着したのは23時過ぎであった。
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