横尾右俣・大キレット 50歳の挑戦 本命／リトライ 上高地〜横尾本谷右俣(黄金平)〜南岳〜大キレット〜穂高縦走〜岳沢〜上高地
長野県
岐阜県
kumahige
- GPS
- 56:00
- 距離
- 27.1km
- 登り
- 2,481m
- 下り
- 2,480m
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9/22 5:40南岳小屋−7:13A沢のコル−8:32北穂小屋−8:58北穂高岳−11:00涸沢岳−11:25穂高岳山荘
9/23 5:15穂高岳山荘−6:00奥穂高岳−7:57前穂高岳−10:07岳沢ヒュッテ−11:43上高地
| 天候 | 3日間、絶好の晴天が続きました |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2013年09月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
バス 自家用車
|
| コース状況／ 危険箇所等 |
横尾右俣 晴天が5日続いたので沢の水量は少なく、ほとんど沢を通過することができました。水苔はとことん滑りますが、乾いた石が出ていたので苦労することなく通過できました。 黄金平 誰にも会うことはなく、静かな山行を楽しめる最高の場所です。踏み跡は途切れがちですが、最短の水が流れた跡をたどれば何とかなりました。「ビバークしたい」と素直に思えます。 横尾尾根コルまでのルート 先人の情報を生かし、ガレ場をまわるルートを通りました。最上部は足下が不安定で注意が必要です。整備された登山道の歩きやすさを実感できます。 |
| 予約できる山小屋 |
横尾山荘
|
写真
北穂高岳 出発直前で、昨日横尾本谷で出会った女性と再会。左俣を登り、A沢のコルに突き上げたとのこと。お互いの健闘をたたえ合いました。
1
装備
| 個人装備 |
秋山装備一式
ダブルヤッケ(冬用)
簡易コンロ
レスキューシート
ツェルト
|
|---|
感想
昨年の10月11日、大キレットを目前にして南岳小屋から撤退してから1年、再び穂高の縦走を目指して大キレットに挑んだ。南岳小屋をスタートとするが、同じルートを通ってここに立つのは正直イヤだった。撤退してからいろんなルートを模索していたら、横尾本谷の右俣を登めると黄金平という場所があることを知った。奇しくも、南岳から下山に使った横尾尾根から電池が切れそうなデジカメで最後に撮影したのが横尾本谷右俣であった。1年間の再トレーニングとヘルメットなどの装備を補充して、リ・トライの山行に挑戦した。
9月21日(土)、多少の睡眠不足は感じていたが、朝5時前に沢渡大橋駐車場に到着した。1週前の3連休が雨にたたられてしまったので今回の3連休は混み合うことは覚悟していたが、この時点で駐車場が満車に近い状況に驚いた。5時過ぎに往復切符2000円を購入した際に、バスが5時40分発であることを確認したら… なんと連休中は「4時40分」が始発で、次が「5時15分」であることを教えられてショックを受けた。慌てて荷物をとって返すと… タクシーの運転手に「タクシー、使わない？ 4人そろえば一人1000円だよ。」と言われ、少しでも時間を稼ぎたい気持ちがあったので、ちょっと悩んで往路のバス代を捨てることに決めた。単独行の男性一人、母娘の二人の4人でタクシーをチャーターして上高地に向かった。
5時20分、予定より約1時間早く上高地に到着できた。保険の手続きをして5時40分に上高地バスターミナルを出発した。昨年の反省を生かした「運動靴での移動」は有効であった。サルにも目をくれず、路面を見続けながら明神(6:17)、徳沢(7:02)を通過し、7時55分に横尾山荘に到着した。
ここからは初めての横尾谷なので景色を見ながら少しゆっくり進む。北穂高岳の頂上にある北穂小屋に驚いたり、今日の目的地の南岳を見ながら息を整える。8時59分に本谷橋に到着した。
本谷橋を渡らずに左岸をちょっと進んだところで登山靴に履き替える。朝食を取りながらルートを探すが… サッパリ分からない。沢を行くのか？ それともブッシュをこぐのか？ 悩んでいると、後ろから来た単独行の女性が休憩を取らないで沢に入っていった。これはチャンス！ とばかりにパンを口いっぱいに放り込み、後を追った。
沢に先行者の姿は見えない。右手のブッシュを見るとかすかな踏み跡と木々の揺れが見えたのでブッシュに突っ込む。しばらくすると先行者に追いついた。容貌が容貌でましてやブッシュなので、自分から「こんにちは」の声をかけたが、先行の女性は大いに驚いたようである。お互いの目的地と情報を交換し合う。この方は「横尾本谷左俣」から「北穂池」を目指すとのことだが、自分同様に横尾本谷は初めてとのこと。初めての割には躊躇なく横尾谷に突き進む姿に経験の多さを感じた。その方はゆっくり行くとのことで先頭を交代して先行し、横尾本谷で再び遇うことはなかった。
すぐに沢に出た後は、水量がそんなに多いと感じなかったのでそのまま沢を登めた。9時44分に涸沢出合に到着したが、本当に涸沢で水は流れていなかった。ルートの間違いはないとは思っていても不安はあったが、先人の誰かが名付けた「ギアナ高地」の大岩を見つけたときは正直安心した。
10時47分、右俣と左俣が合流する二股に到着した。左俣には3人のグループが挑んでいた。今日、横尾本谷にいるのは5人だが、右俣に行くのは自分一人であることをこのとき認識した。しばらく進んで後ろを振り返ると、あの女性が二股に達しており、何のためらいもなくお互いに大きく手を振って互いの健闘を誓い合った。「一期一会」とはこういうことなんだろうと思えた。
二股を越えると、沢は細くなり傾斜がきつくなる。細くなるということは乾いている岩も少なくなるということで、ルートファインディングは難しくなる。濡れた岩に付着している「茶色の水苔」はとにかくよく滑る。少しでも横方向に力が掛かると滑る。渡渉する際は乾いた岩を探すが、どうしてもないときは運を天に任せて垂直に力が掛かるように足をそっとおいた。水没は1回もなかったがヒヤヒヤものだった。
右俣も上部に達すると傾斜はさらに厳しくなる。高度を稼ぐことはできるが、息が上がる。先人の記録にある「フィックスロープの大岩」が見えてきた。高巻きができそうな踏み跡があったのでそこを辿ると大岩の上に出てしまい、ロープをほとんど使うことなく越えることができた。高巻きしたのはこの1回だけだった。
青空から水があふれてくるような右俣の最上部を越えると… 一気に視界が広がり、12時15分に黄金平に到着した。紅葉には少しばかり早いが、ハイマツやナナカマドの緑色が目に飛び込んでくる。南岳や横尾尾根の稜線が青空との境をつくる。誰もいないカールを独占できる喜びを疲労感の中で感じることができた。「ビバークしたい」「もう歩きたくない」の気持ちを押さえて歩を進める。ここで水を補給し、時間短縮のために源流部をショートカットするために先人の記録を参考にモレーンのブッシュ(藪)に突っ込む。ブッシュと格闘して抜け出た先に横尾尾根のコルが異常な高さにそびえていた。
足を前に出す体力はあったので、亀のあゆみのごとくガレ場を登る。横尾尾根のコル直下は傾斜が急なだけでなく足場が非常にもろいので、この日一番の緊張感を味わった。「この足場が崩れたら、振り出しに戻る(落ちる)のかなぁ」とぼんやり考えてしまうほど疲れ切っていたが、14時36分にコルに到着できた。そこにいた3人の方と言葉を交わしたが、5時間ぶりの会話だった。
そこからは、さらなる亀足歩行で稜線に出て、16時25分に南岳小屋にたどり着いた。どんなに急であろうとも、整備された登山道の歩きやすさをしみじみ感じることができた2時間だった。
南岳小屋は普段は宿泊者が少ない静かな山小屋だ。しかし、この3連休はそうでもなかった。予約の電話を入れていたので、ラッキーなことに一人で「1枚の布団」を使うことができた。そうでなかった人のいたと言うことである。
9月22日、2日目も快晴でキレイなご来光が望めた。大キレットが混み合うことが十分予想されたので、予定を早めて日の出と共に南岳小屋を出発する。ヘルメットを装着して歩き出すとまもなく「大キレット」の下りが始まる。最低鞍部に着いてから顧みる南岳は穏やかな北側とは打って変わった厳しい山の表情だった。
6時53分に長谷川ピークを越えた頃から高度感でビビり始めたのが自分で分かった。7時13分に到着したA沢のコルから見上げた北穂高岳の登りは圧巻で、登ってから振り返ったときの高度感による怖さは、大キレットより大きかった。滝谷も恐ろしさを感じた。北穂小屋が見えたときは… 正直安心感がわき、「よくぞこんな所に作ってくれた」と感謝できた。
8時32分に北穂小屋に到着、しばしの休憩の後で北穂高岳に立った。北穂高岳を出発したら… 「赤いザックのお兄ちゃん！」と大きな声で二度呼ばれた。一度目は分からなかったものの、二度目になると… 自分のことかぁ？ と思って振り向くと…なんと、昨日横尾谷で一緒になった女性が手を振っていた。すぐに分かった、昨日の女性だと。お互いに駆け寄る。「何でこんな所に？」と言ったけれど、「お兄ちゃんが出発するのが見えたから。」と会話がかみ合わない。でも、一緒に、同じ苦労をした人とは心が通じ合う。2度と会うことはないと思っていた人に会える喜びの気持ちが落ちついたら、やっと会話がかみ合う。自分は「横尾右俣」を登めて南岳小屋で一泊。この女性は「横尾左俣」を登めたところでビバークし、今日はA沢のコルに突き上げて北穂高岳に来たという。やっぱりすげぇ。お互いの「右俣」、「左俣」の情報を交換し、二人で記念写真を取った。この女性はザイテングラードを涸沢に下り、下山するという。多分… これが本当に2度と会わない本当のお別れになるのだろう。
ひとときの「単独行ではない安心感」を味わった後の「北穂高岳〜涸沢岳」はヤッパリ… 厳しかった。やっぱり… 大キレットより怖かった気がする。11時00分に到着した涸沢岳では、ヘルメットを脱ぐ余裕もなく写真を撮ったのがその証拠です。ただ、穂高山荘が見え、険しい箇所がないことを確認してからやっと安心できた。
11時32分に穂高山荘に着き、やっぱり昼食でカレーライスをいただくとともに、ビール500mlを一気飲みして、今日の健闘を祝した。宿泊手続きを済ませると…ヒマでヒマで…。大渋滞の奥穂高岳の登山路を眺めながら、もう1本500mlのビールを買い込み、持参した焼酎をグビグビ。酔いが回ったら昼寝して… 最高のバケーションでした。
ただ、穂高山荘はチョ〜チョ〜混み合い、「1つの布団に2人」の状態。それでも間に合わず、山小屋の乾燥室や通路も宿泊スペースに変わり、山荘前の展望スペースにはテントが並んだ。ここまで混み合うとは…。夜寝るときには半袖でも暑く、毛布をはいで寝た。気温は氷点下になろうとするのに。
穂高山荘でも出会いがあった。これも「一期一会」で2度と会うことはないだろう。と言いながら、翌日の前穂高岳で再会した。その再会も「単なる再会」ではなく、同じ(混み合った山荘で一夜を明かした)苦しみを共有した仲間意識があった。
9月23日、チョ〜チョ〜混み合った山小屋で朝食を食べることをあきらめた。朝食の料金は1300円であったが、その朝食をキャンセルした。直前のキャンセルなので返金はもちろんない。なぜキャンセルするという結論に達したかというと… 早朝4時に大きい方のトイレに行ったが、その時点で20分待ったからだ。おまけに、100人は並んだ朝食の順番待ちをしていたら、食べ始めるのにどれだけ時間が掛かるか全く想像できなかったからだ。後日談ながら、大きい方のトイレは2時間ほど待つ行列になったそうだ。朝食キャンセルができたのは非常食を用意していたからで、その非常食が3日目の朝食となった。
5時15分に穂高山荘を出発して奥穂高岳に向かう。頂上の直前で右前方に見える「ジャンダルム」は圧巻。「行きたい」、「行けるものなら行ってみたい」とは思うが、これまでのルートの高度感でビビっている今の自分では難しい。でも、いつか… もしかしたら… と思える近さにジャンダルムがあった。素直に感動した。
6時00分に奥穂高岳に立ち、つり尾根を通って7時57分に前穂高岳に到着。30年前に購入していた1/25000の地図には前穂高岳を通過する道があったのでザックを持ったまま登頂しましたが、今は廃道になっており、時の流れを実感する。
とてつもなく急ではあるがよく整備された重太郎新道を、自分なりののんびりと下る。抜きつ抜かれつした単独行の高校生(？)の男の子と話す機会があった。新穂高から槍を経て、2泊3日で縦走してきたという。すげぇなと素直に思えた。
上高地の遊歩道に出ると「登山道」が一気に「遊歩道」にかわる。そんな変化に戸惑いもするが、生きて還ってこられたことを素直に喜べた。
もう2度とヘルメットをつけた登山はしないだろう。でも… 時には「ちょっとの緊張感」を感じたいと思うかもしれない。でも、自分の山行に一区切りがついたことを実感しました。
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kumahigeさん、こんばんは。
大キレットのリベンジと穂高縦走＆横尾本谷、お疲れ様でした。
天気も最高で楽しまれたご様子、何よりです。
ちなみにcountryboyは私の別アカウントで、以前の質問箱から気になっていました。
やりましたね！おめでとうございます！
きっと、行けますよ
ジャンダルム！
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