槍の穂先を目指した夏休み。晴天に恵まれた北アルプスの3日間。


- GPS
- 21:07
- 距離
- 43.7km
- 登り
- 1,877m
- 下り
- 1,868m
コースタイム
- 山行
- 7:08
- 休憩
- 1:53
- 合計
- 9:01
- 山行
- 5:05
- 休憩
- 0:38
- 合計
- 5:43
- 山行
- 6:47
- 休憩
- 0:44
- 合計
- 7:31
天候 | 晴々 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
予約できる山小屋 |
横尾山荘
|
写真
感想
富士山と槍ヶ岳は、日本の山を代表する2つのタイプである。(中略)一生に一度は富士山に登りたいというのが庶民の願いであるように、いやしくも登山に興味を持ち始めた人で、まず槍ヶ岳の頂上に立ってみたいと願わない者はないだろう。-- 深田久弥、『日本百名山』
うん。そうだ。確かに。イメージは槍の様に先の尖って、とても険しそう。そしてとても小槍では踊れない。
というイメージを持っていた。
3回目の上高地。3年目の北アルプス。
1年目は9月の連休を利用して、無謀な1泊2日の計画で電車とバスで上高地に入り、涸沢カールでテント泊をして、その翌日は奥穂高岳に登頂出来たのは良いものの、岩場の渋滞で下山が遅れ、結局、上高地バスターミナルのバスに間に合わなくなってしまい、もう1泊テント泊をする気力はなく、急遽、徳沢園を尋ねるとたまたま相部屋に空きがあり、お風呂も入れてホッとした。
2回目の去年はお盆休み。
最初から2泊3日の計画にし、1泊目は涸沢カールでテント泊、2泊目は事前に徳沢園を予約して、夜行バスで上高地に入った。けれど、台風の接近もあり涸沢カールから上へ上がるのは危険と判断して、下山し徳沢園界隈でゆっくり過ごした。
徳沢園は相部屋といってもカプセルホテル的な(カプセルホテルに泊まった事はないけど、、)1人1人が完全に個室になっていて、とても居心地が良かった。
そして、3年目の今年。
今回は涸沢へは行かずに、槍ヶ岳を目指す計画を立てる。もちろん槍ヶ岳から南岳、大キレットを経て北穂高から涸沢へ下って涸沢カールでテント泊。なんてのルートも引いてはみたものの、テント装備を担いでそんな稜線を越えれるのだろうか。たぶんきっと背伸びし過ぎだ。
ここは、槍ヶ岳1本に集中すべきだ。ということで、少しだけ寄り道、南岳までは行ってみて、今回は大キレットというのを実際にこの目で見てみることにして、横尾尾根で槍沢ルートに戻る計画にした。
と、心を決めるまで時間がとても掛かった。お天気のことも気になるけど、夜行バスは6月に予約をしておいた。
テント装備を担いだまま、もしかすると稜線を歩かないといけないかも知れない、とか考えていると、少し無理している様に感じた。
今回はまず1泊目は殺生ヒュッテを予約した。1日目は上高地から槍ヶ岳山荘まで、いい時間には辿り着けないかもしれない。少しだけだけど、余裕を持って殺生ヒュッテに決める。
2日目の予定がなかなか決められない。まだ涸沢までのルートが心に残っていたけど、テント泊装備を担いで大キレットを越えていくなど、流石に飛躍し過ぎだ。どうしようかなぁと考えて、槍沢ロッジを予約する。今回は小屋泊で身軽に時間の余裕を持って行くことに決めた。出発の1週間前だった。
通行止めにヤキモキ。
雨が降り続いた夏休み前半。その影響で出発前の8月11日に上高地公園線、上高地へのトンネルが雨量規制の為、通行止めとなる。12日も終日通行止めが続き、うぅこれまでか。。と、ヤキモキした。
バス会社へ問い合わせると平湯温泉までは行くというが、それではこの計画が完全に狂ってしまう。
お天気は好天へ向かっているとはいうが。
続く通行止めに悶々としながら寝るのだが、通行止め解除の知らせが夢に出てくるほどだった。
出発日の13日の早朝にWebサイトを見てみると、徐々に解除の知らせが、そして無事に全線開通となる。
ヤキモキした。一時は諦めようとしたところだった。
DAY 1
1番頑張らないといけない1日目。
夜行バスは2度の休憩をして、スムーズに5時過ぎには上高地バスターミナルに着いた。テーブルベンチのところではもう準備をしてある人たちで賑やか。今日はお天気が良さそう。
とりあえずは横尾まで、ちょっと勇み足で歩いて時間を稼ぐ。3時には殺生ヒュッテに着きたい。
朝靄に包まれる河童橋、水嵩の増した梓川、煙る北アルプスの山々。まだ涼しくて、湿度もいい感じで、汗もかかない気持ちいいハイキング。夏の様で夏ではない感じ。明神や徳沢園と、ちょっと休憩したいポイントがあるけど、横尾までは休まないで進む。と、心に決める。
横尾では山岳警察の人がいつも問いかけてくる。大雨後の槍沢の様子を聞いてみて、水も治っているようで、ここから先の、初めてのルートに取り掛かる。
ここからはトレッキングルートですよ、ここからは登山道ですよ、と、上高地から奥深くになるほどその忠告の段階が上がっていく。
横尾から槍沢ルートへ、ここからが長かった。
槍沢沿いをずっと歩いて行くルート。一ノ俣、二ノ俣と沢沿いの木陰を涼やかに歩けて、やっぱり上高地は避暑地なんだな~いいなぁと、10時に槍沢ロッジに到着。少し休憩をする。まだゆっくり出来ないのだけど、1時間ほど歩いた所のババ平キャンプ場まで頑張ることにする。
流石にお腹が減って、ババ平の片隅でラーメンをゆがく。
売店もあって、一瞬、ビールを飲みたくなったが、まだこれからも登り通しなので止める。地図を見るとここはまだ、登りは全然始まってなかった。
樹林帯から抜けてしまう。
炎天下、時折、冷たい風が吹くのだけど、延々と炎天下の元を歩くことに。一気に汗だく。
今朝の涼やかな空気はなんだったのだろうか。。
先の大雨の影響か、沢の水量は割と轟々としていて、登山道も時折水が下っている。溢れた沢を横切ったり、徐々に登山道の難易度が上がって行く感じがする。途中に見えた赤沢山がとても良かった。
暑くて辛くて、長い登り道。
歩けど、歩けど、槍ヶ岳の姿なんて見えない。
暑い陽射しの元、大きな山々に囲まれた水嵩が増した大きな沢の横をずっと歩いている。水俣乗越、氷河公園分岐を過ぎて、ヒュッテ大槍の分岐に差し掛かった時、ようやく槍ヶ岳の姿が見えた。おおっ槍ヶ岳。鋭く尖った穂先は空を突いている。
遠くからしか眺めたことのなかった槍の穂先が、今すぐ目の前にある。
長かった。槍ヶ岳の真下にちょこんと山小屋が見える。見えたけど、まだ遠そう。
なかなか近づかない。登るスピードが落ちる。かれこれ9時間くらい歩いていて、足があちこち痛いし、暑い。
途中にあった岩屋。
また暑くなってきた。標高 2692mのところに、坊主岩小屋(播隆窟)「播隆上人、1828年(文政11年)7月28日に槍ケ岳に初登頂とされる」という岩屋があった。この岩屋で寝起きして槍ヶ岳を開いた、とされる。
ようやく登り着いた殺生ヒュッテ。
もう登りたくない。と思いながらもこんなに登るのはこの日だけ。しんどくて嫌になるけど、そう思うと、大事に登ろうっと思った。
14時半、殺生ヒュッテに辿り着いた。上高地を出て9時間が経っていた。よく歩いた。涸沢カールより全然遠かった。
ビール!ビール!
受付をして荷物を置いたら真っ直ぐビール。ああぁ、、、
眺めの良いテラスに、槍ヶ岳が聳えて、振り返ると今日歩いてきた谷が見えて、その向こうにも山々が見えて、何処かの下界が見える。あまりにも涼しくて、まどろんでしまう。
身体を拭いて着替えたらサッパリして眠くなって、夕焼けを期待してタイマーをかけて少し昼寝をした。
夜ごはんの30分ほど前に目が覚めて、外に出てみると、もうすっかり寒くなっていて、上着がないとじっとしていられないくらい寒い。ここは2856m。真夏でもこんなに寒いのか。
夕焼けの時間。富士が見えた。富士山が見えると嬉しくなる。少し東の空が焼けて日が暮れた。そして雲が降りてきて、槍の穂先はすっかり隠れてしまった。
夜ごはんはシンプルだけど、こんな山奥でこんなに色々な種類のおかずが食べれることに感謝する。山岳警察の講話が少しあって、装備をしっかり、低体温症に気をつけること、と。
お天気に恵まれて、無事に辿り着いた山小屋でこんなにゆっくり出来ることに感謝をする。
寒っ。
布団を被って、タイツも履いて、フリースも着て寝ていたのに、ガタガタ震えて目が覚める。山小屋なのにこんなに冷えるなんて。。布団を1枚借りてさらに化繊ダウンを着て寝たら、その後はぐっすり寝られた。
DAY 2
朝、少し早く起きて、朝焼けを待つ。思ったより寒くない。槍の穂先がくっきり見えている。今日は今からあそこは登るのだ。
と思うと、本当にあんな所へ登れるのだろうか、という気持ちと、やっぱり登ってみたい。という気持ちが揺れた。
朝ごはんを頂いて、6時、出発である。ちょうど良い気温で、登っていてもそう暑くは、、、やっぱり暑い。直ぐに暑くなって上着を脱いだ。槍ヶ岳がどんどんと迫ってくる。すごい。とんがっている。もうすでに山に取り付いている人たちが見えている。
あそこを登るのか。。と不安になる。
槍ヶ岳山荘に着いた。SNSやYouTubeで見た景色が、実際の目の前に広がっている。見上げると槍の穂先の上を雲が走る様に駆け抜けている。迫力があるなぁ
とりあえずザックはデポして必要なモノ、雨具と水をアタックザックに詰めて身軽に、ヘルメットを被って、いざ。
核心部。
もう最初から岩をへつる様に、岩にかじりついて、登って行く。周りを見ると恐ろしい景色が広がっている。ここちょっと落ちたら一発アウトだな。と、そんな険しい岩場をへつる。
そもそも高所恐怖症で、怖がりでこんな岩場や身が縮む様な危ない場所は嫌いである。
なんで来たのだろう、やっぱり来なければ良かった。。などと言う気持ちも湧いてくる。
それでも、少し渋滞し始めて、また、下ってくる人たちとすれ違って、老若男女、様々な人が登っている事に、少し勇気をもらった。
逆反りのハシゴもゆっくりと、一歩一歩行けばそんなに怖くはない。というか、目の前のハシゴしか見ていなかった。
いよいよ最後のハシゴが渋滞で詰まって、割と待つ時間が多くなってきた。風は冷たくて、凍えるくらい冷たく、上着を着直した。
周りの景色は、飛ぶ様に過ぎ去る雲の合間を縫って、素晴らしい景色を見せてくれる。うわぁ。すごいなぁ。なんてすごいんだろう。
7時半、ついに山頂の台に乗った。狭い山頂には三角点と、その先に祠と山頂看板のフォトスポットの列が折り返していた。
三角点は地面に埋まっていなくて、石に挟まれて立っていた。あとで調べてみると、2等三角点(基準点名:鎗ケ岳)が設置されたが、現在は標石が地面に埋設・固定されておらず、国土地理院で「亡失」扱いとなっており、でも槍ヶ岳山頂は単なる標高点扱いとなっている。とあった。
標高3000mで写真の順番待ちをする。どこへいっても同じである。
待ってる間には何回もブロッケン現象が現れて、虹が一重二重、三重と、そして雲が切れると北アルプスの山々を見下ろす大絶景が競演していた。
珍しく、前の人にスマートフォンを手渡し記念写真を撮ってもらった。そんなことをしたのは、奥穂高岳と赤岳くらいなものだったけど、槍ヶ岳はちょっと特別だった。
さて、下り。
憂鬱だ。緊張感は変わらないけれど、登りよりはそんなに怯える事なく、割とスムーズに下りてこれた。
下り終えて、振り返ると槍の穂先はどんどんと雲に包まれていた。ギリギリのタイミングだった。
槍ヶ岳山荘でお買い物をする。その間にどんどんと気候が変化していた様で、山荘の外へ出ると、冬になっていた。
辺りは真っ白。まだこれから登ろうという人たちが準備をしていた。
今日は午後からにわか雨の予報。真っ白な中を南岳を回るのは厳しそう。もう槍ヶ岳へ到着出来たことで満足した。
このまま、天気が変わってしまう前に下山して、次の宿泊地へ移動する事にする。
とても寒くて、だけど下るにはいい感じ。殺生ヒュッテより上は雲に覆われていた。200m下るだけで、下は晴れ間が広がっていた。
陽射しを浴びて段々と暑くなってきた。さっきの凍える様な風は何処へ。。
長い道のり。
ヒュッテ大槍分岐を曲がるともう、槍ヶ岳は見えなくなった。炎天下の下、氷河公園分岐、水俣乗越分岐を経て、ババ平までの道のりは長かった。
支流の沢のほとりで休憩、冷たい沢の水で顔を洗ったり、ババ平の売店でビールを想像したりしながら下った。
ババ平キャンプ場1994mまで下りてきた。もう槍の穂先から1000m以上、下っていた。
ば、売店は、、、閉まっていた。あと30分も下れば槍沢ロッジだ。登山道は樹林帯に変わっていた。頑張ろう、とさらに下って、11時半過ぎに槍沢ロッジに到着する。
もう喉も乾いて、身体は干上がっていたので、受付より前に、ビールを始める。今日の山歩きはこれにて終了。後は、ゆっくり過ごす。
「ロッジ」というだけあって、槍沢ロッジの床はピカピカとしていて、とても綺麗で、シャンプー類は使えないが、お風呂もついている。お風呂は15時から、それまで特製ガパオライスを頂いて、のらりくらりと過ごす。
空は晴々、木々の隙間から山々が見えて、気持ち良い風が通り抜ける。ベンチでウトウトしかける。
今日は槍ヶ岳に登頂できて、今はもうこんな安全な所でまどろむことが出来ている。
お風呂の時間。ここでもお風呂待ちの渋滞が起きていた。順番が回ってきてお風呂場へ、綺麗なステンレス製の湯船が2つ。
汗を流すだけなので回転は早いけど、あまりの気持ち良さに長居してしまう。お風呂を上がって綺麗な服に着替えて、布団に寝転ぶと、簡単に眠りに落ちた。
夜ごはんは17時。同じ系列だからなのか、殺生ヒュッテとよく似た献立だった。ビールと一緒に頂いた。
食後はまたウトウトしてしまって、日の入り時間まで少しゴロゴロしていた。その頃に外へ出てみると、小雨が降っていた。予報より少し遅かったけど、雨は降った。
結果的に今回、山歩き中は雨に当たることもなく良かった。
明日は午前中は晴れだけど、午後からお天気が崩れる予報。明日から槍ヶ岳へ行く人たちが天気予報と睨めっこしてソワソワしていた。
お昼寝をしたからなのか、なかなか寝付けない。同部屋のイビキの競演が耳につく。そのうちに眠りについた。その競演に加わっていたかもしれない。
DAY 3
4時半起床。少し朝焼けして、お天気は良さそうである。
5時からの朝ごはんを頂いて、雨に当たりたくないので、少し早めに、6時前に槍沢ロッジを後にした。
ぶらぶらと気持ちの良い空気の中を、ぶらぶらと下っていく。高峰の絶景も良いけど、こういう呑気で長閑なハイキングが好きだ。
沢を幾つか越えて、1時間くらいで横尾に着いた。すごい良いお天気で、これからお天気が崩れるなんて微塵も感じられない青空が広がって、夏らしい雲がもくもくと山の稜線に被っていた。
少し休憩して、また小一時間、徳沢園に到着。ここまで来ればもう良かろう、と、小さいビールを飲んだ。朝ビール。美味い。
そしてまた小一時間、明神に着いて、穂高神社奥宮に寄り道して、お参りとお守りを頂いた。境内は観光客が溢れていて、神社前にあるお食事処に長い列をなしていた。
槍ヶ岳までの道中とのギャップが可笑しかった。
11時過ぎに上高地バスターミナルに着いた。今日は上高地温泉ホテルで日帰り湯を頂く予定、日帰り湯は12時半オープンだったので、先にレストランでお昼ごはんを食べた。生ビールが冷たくて美味かった。
少し早いけどお風呂へ向かう事にする。梓川を下って穂高橋を渡り、西穂高岳登山道入口を過ぎると、上高地温泉ホテルがあった。いつかはこの登山口から登ってみたいものである。
12時半オープン予定だったけど、12時にオープンになった。1番ノリである。その後も続々と登山帰りの人たちがやってきた。普段、泊まることもできない様なリゾート地のホテルのお風呂は広々としてとても綺麗。
久しぶりに石鹸で身体を洗い、頭を洗った。気持ち良かった。
上高地バスターミナルへ戻って、15時のバスの時間まで湯上がりビールを飲みながら、のんびりとしていた。
高速道路は帰省ラッシュと重なって、少し混んでいたけど、予定の1時間ほど遅れで新宿に着いた。思っていたより早かった。あぁ無事に帰ってきた。
今年もまた、夏の上高地、北アルプスへ訪れることが出来たことに感謝しかない。今年の北アルプスは先月の立山といい、今回の槍ヶ岳といい天候に恵まれた夏山の山歩きを満喫できた。また、来ることが出来たら良いなと思う山歩きでした。
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