ふんわり歩く、秋の大菩薩。

- GPS
- 05:32
- 距離
- 12.8km
- 登り
- 515m
- 下り
- 1,313m
コースタイム
- 山行
- 5:08
- 休憩
- 0:24
- 合計
- 5:32
| 天候 | 晴々 |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2025年11月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
ほぼちょうど1年ぶりに大菩薩へ来た。大菩薩を歩く時はだいたい、上日川峠から大菩薩峠を経て、大菩薩嶺を踏んで、丸川峠へ下り、大菩薩峠登山口へ下山する。その方が沢山歩くことが出来て、帰りバスにも余裕がある。
累積標高的にも登りよりも下りの方が長いので、呑気に歩ける。なんてのもある。登りよりも下りの方が好きなので、どちらかと言えば、山登りではなく、山下りに行こう。の方が、自分的には合っているのかもしれない。
また、上日川峠から大菩薩嶺と、大菩薩嶺から丸川峠の、雰囲気がガラッと変わり、奥秩父の少し淋しげで、鬱蒼とした雰囲気も、とても好き。
なぜ山に登るのか。それはビールが美味しいから。
2025年も、何となく、暮れの雰囲気が漂ってきて、それに伴って、仕事の方もちょっと忙しくなって、山歩きの事に頭を悩ませる時間が押され気味である。
いくつも、いくつも、山を越えても、次々と山が現れて、終わりのない山歩きが続いているよう。
仕事の山を越えてのビールも、もちろん美味しいけど、山歩きの後のビールには負ける。へとへとになるまで身体を使うと、ビールはもっと美味しくなる。
忙しかった今週も終わり、もっと美味しいビールを味わうために、やっぱり山へ出掛ける。
眠気まなこを擦って。
久しぶりにあずさではなく、中央本線の鈍行に揺られる。
気がつくと、窓の外は紅葉が真っ盛りの景色が、車窓から見えた。
朝陽に照らされる、色とりどりに彩られた山肌を眺めながら、朝、頑張って起きて、頑張って来て良かったかも。
と、心の中でニンマリしていた。
バス。バス。と急ぐ。
甲斐大和駅に着くと、周りはダッシュしている。焦る、けど、少し早歩きでバス停へ向かった。
すでにバスは一杯、補助席も全て使い切っていた。もう一台バスが止まっていて、安心した。無事に席に座れた。補助席も満席。少しの立ち客。まだ並んでいるお客さんを乗り溢して、バスは出発した。
いつも思うのだけど、この状態で何かあっても、何も身動きが取れないな、と。人の頭の上を、盛り上が過ぎてダイブしたライブ客の様に泳いで行くしかないな。と。
今日はここまで。え?
そんなバスは山道を登って行く。と、上日川峠の手前、1.2kmのところでバスから下ろされた。バスはこの先、上日川峠までは行けない、という。え?
とにかく、バスから下ろされた。トイレに行きたかったこともあり、とりあえず直ぐに歩きだす。
ちょっと行ったところで、脱輪した乗用車が道端に置き去りにされていた。これのせいの様だった。
何にも原因を告げられず、ただ突然、途中でバスを下ろされて、満額の運賃を取られた。支払いの時、1人前の外国人は目的地まで行っていないのに、なぜ運賃はそのままなんだ?、と、運転手に詰め寄っていた。
仕方がないけど、満額取るなら、その理由くらいはアナウンスをしても良かったのではないか、ただ急に理由も告げられずに、途中で下ろされた。それでは、ちょっと、と、その外国人の気持ちも分かる。当たり前だ。と思いながら、脱輪した乗用車の横を通り過ぎた。
落ち葉が吹き溜まって、側溝は完全に覆い隠され、ただの側道の様に見えていた。そりゃ落とすか。
さて、スタート。
思いもよない事態からの始まりだったけど、それによって良い感じに登山客はほどけて、ロッジ長兵衛をスタートして行った。
あぁ、良いお天気。木漏れ日の中を、ゆっくり歩き始める。大菩薩のルートのこの緩く、長閑な登り始めはとても癒される。右手には付かず離れずで、車道も走っているくらい。何か、身が軽いな、と思ったら、既に1km以上歩いてからのスタートだったからだろうか。図らずもウォーミングアップは万全。
程なく、まずは福ちゃん荘に到着。だいたい皆さん、ここで1枚上着を脱ぐ。ここからは道が分岐していて、唐松尾根から大菩薩嶺を目指すルートと、大菩薩峠を経由して、大菩薩嶺を目指す、表登山道のルートに分かれる。
そういえば、唐松尾根は一度も歩いた事がない。いつも表登山道だ。今日もぶらぶらと、長閑な道を歩いて、まずは大菩薩峠を目指す。急な登りは苦手である。
小休止。
青空に映える、熊笹の大海原が見えてきて、大菩薩峠へ至る。陽射しが暖かくて、もう寒いからだろうと、今日はビールを持って上がって来なかったのを少し後悔した。
少々悩んだけど大菩薩峠の山小屋、介山荘で1本ビールを買った。とりあえずザックのサイドポケットへ詰め込んだ。
富士はまだ居ない。
大菩薩峠からの眺めはとても良い。雲が湧き上がってくる青空に大菩薩嶺へと連なる稜線が綺麗に見える。西側の富士は、まだ、雲隠れしている。
稜線をゆるゆると、ゆるゆると登って行く。行き交う人たちもとても多く、やはり人気のお山である。上から下りてくる人が多いのは、みんな大体、唐松尾根から登っているのかな。などと思いながら登る。
お昼ごはん。
神部岩と雷岩の間の、見晴の良い少し広場になっている所に出た。お、富士山がお顔を出している。流石、秀でた麗しさ。南アルプスの山々が、もう山頂付近を雪景色をして聳えている。眼下には紅葉の海が広がって、上日川ダムの大菩薩湖が鏡の様に、陽射しを照り返している。
端の方をお借りして、お店を広げる。お湯を沸かしながら、ビールをひと口、富士山と南アルプスを取っ替え引っ替え眺める。暑くもなく、寒くもなく、風も然程なく、暖かくぽかぽか陽気。
そんなぽかぽか陽気に誘われて、沢山の人が目の前を通り過ぎていく。
大菩薩嶺2056m
雷岩を過ぎて、再び樹林帯の中に入ると、山頂、大菩薩嶺に着いた。眺望のない山頂である事は有名だけど、誰も居なかった。去年倒れていた古い方(?)の山頂標は、再び寄り添う様に備え付けられて、傍にちょこんと三等三角点。あ、あまりこれは記憶に無かった。タッチしておこう。
奥秩父な山歩き。
下山と共に丸川峠の方向へ進む。ここから先は静かな樹林帯を歩く。大菩薩峠側を陽とするならば、こちらは陰かも知れない。あれだけ沢山居た登山客の姿はなく、時々、登ってくる人と、時々、すれ違うだけ。いかにも奥秩父らしい静かな山道を、ふんわりと歩く。
熊鈴。
こちら側を歩く前に、熊鈴をセットした。今まで、持ち歩いているだけで、自発的に鈴を鳴らす事はなかったけど、
やっぱり昨今のクマ事情に敏感に成らざるを得なかった。
バスの時間やお天気に、そしてクマ情報に、と、事前に調べる事が増えた。
流石にこちらのルートになると、登山者らしい人たちとしかすれ違わない。
落ち葉。
吹き溜まりにはもう、足首くらい埋まるくらいの、フレッシュな落ち葉で山道が埋まっていて、時々ツルツルと滑る。雪庇ならぬ、葉庇(?)を踏み抜いて、崖に落ちない様に気をつける。今朝の脱輪した乗用車を思い出した。
麓に近くなるほど、木々の隙間から、陽に照らされ鮮やかにいろめきだった紅葉の木々が、山肌にチラチラと見えた。そんな景色に目と心を奪われていると、尻餅をついた。
丸川峠。丸川荘。
どんどんと落ち葉を掻き分けながら、下っていくと、少し広場の様な丸川峠へ出た。見下ろすとポツンと、青い山小屋の屋根が見えてきた。よくもまぁこんな所に、と、いつも訪れる度に、思う。既に団体の登山グループが休憩をしていた。
いかにも山小屋という佇まいは、実は気後れして中へは入った事がなく、いつも、軒先の隅をお借りして、休憩をする。今日はとてもお天気が良くて、丘陵から顔を覗かせた真っ白な雲が、ふんわりと青い空に映えていた。
熊笹を横切る一本道をチリンチリンと歩き出す。
再び樹林帯へ入り、いよいよ麓へ下りてくると沢の音が聞こえ始めて、山道は沢沿いの道になった。
林道をてくてくと歩きながら、登山口へ出て、バス停のある所まで来た。バスにはまだもう少し時間があって、その先の菩薩の湯まで、下ることにした。
菩薩の湯前でバスに乗り込み、考える事はただひとつ。
お腹が減った。今日の下山メシは。
塩山の駅前に、色々メニューを取り揃えているご飯屋さんをGoogleマップで見つけた。ここにしよう。
暖簾を潜ると、老夫婦が切り盛りしている昔からある雰囲気のお店だった。微妙な時間だったからなのか、お客さんはまだ誰もいなかった。
馬刺し。
どうもこの甲斐国は馬刺しが名物なのかな。馬モツ煮なるものもあったけれど、うな丼と馬刺しにする。
そして、瓶ビール。大瓶である。嬉しい。
馬刺しに薬味を乗せる。口に入れた瞬間、ふわっと溶けてなくなってしまいそうな、とても美味しい馬刺し。さらに、わさびとニンニクが練り込んである薬味に、強烈なパンチを喰らう。これはすごい。でも、旨い。舌がビリビリするくらいに、フレッシュなニンニクに完全にノックアウト。
久しぶりの鰻。鰻重はちょっと値段が高かったので、丼にしたけど、こういう時にしか、なかなか食べる機会もない。美味しかった。
そうこうしているうちに、ゾロゾロと、登山帰りのお客さんが入ってきた。ビールを注文している。
山を登る理由は人それぞれだけど、これだけは同じである。なぜ人は山に登るのか。それはビールが美味しいからである。
塩山駅からは臨時特急のかいじで帰る。のんびりと暮れゆく車窓を眺めながら、ピリピリする舌と、充満している口内のニンニク臭を再び、ビールで潤す。いや臭い。自分でも臭い。
最後に。
あまりにも長かった晩夏からの秋雨の週末。ようやく、晴天が戻ってきた秋の週末でした。もはや紅葉には出遅れたか、と、少し淋しい気持ちもありましたが、麓はまだまだ、中央本線の車窓から見た紅葉が、とても綺麗でした。
表の賑やかな大菩薩の稜線、そして静かな奥秩父の雰囲気を味わいながら、落ち葉の上をふんわりと歩いた秋晴れの山歩きでした。
しみじみ山歩き











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