槍ヶ岳



- GPS
- 18:34
- 距離
- 28.0km
- 登り
- 2,153m
- 下り
- 2,160m
コースタイム
- 山行
- 9:19
- 休憩
- 1:05
- 合計
- 10:24
- 山行
- 6:09
- 休憩
- 1:38
- 合計
- 7:47
天候 | 1日目は晴れ後雨 2日目は快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
第二駐車場(有料)に停めた |
コース状況/ 危険箇所等 |
大きめの石がゴロゴロしていて歩きづらい |
その他周辺情報 | ひがくの湯でさっぱり満腹。 |
予約できる山小屋 |
槍平小屋
|
写真
装備
個人装備 |
ヘルメット
|
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感想
2年ぶりの師匠との山登り。
前回の反省(仙丈ヶ岳・甲斐駒ヶ岳2連登テント泊in北沢峠 初日の仙丈ヶ岳でギブした山行)を踏まえて「軽めのテント泊で」と言う始まりだったのだが。冗談混じりにフォロワーさんの「槍ヶ岳一泊二日テント泊山行」の活動日記をLINEで送ってしまったのをきっかけに、「軽くない小屋泊」に路線変更されてしまった。
「双六岳・天空の滑走路満喫テント泊山行」と最後まで迷ったが、奇跡的に槍ヶ岳山荘の小屋泊が予約できたと言う事で 「新穂高ルートで行く槍ヶ岳一泊二日小屋泊山行」に落ち着いた。
登山経験豊富な健脚ハイカーであれば、それほどでもない山行計画なのかもしれない。(事実、日帰りピストン予定のお二人と早朝の穂高平小屋でお話しさせて頂いた)しかし、アラフィフ・メタボおじさんにはかなり背伸びな山行となる。1日目に頑張って登り切れば快適な寝床と食事を用意されていて、2日目は最高の御来光を眺めてあとは無理のないよう、早めに下山を開始出来れば下山後にお風呂を楽しむ事も可能な山行ではある。が、1日で登る標高が2000m超え。距離は14km。言わずもがな、過去最高最長。
正直言って「多分無理だな。なんとか師匠が考え直して標高差1000m以下のイージーな宿泊山行に変更してくれないかな」などと本気で願っていた。しかし、過去や後ろばかり振り返っているしょぼくれお爺の私と違って、明るい未来と上しか見ていない若い師匠の気が変わるわけもなく。1週間前であるにも関わらず奇跡的に槍ヶ岳山荘の小屋泊が予約できたレア感も手伝って、何としてもあの頂に行くぞ。といった師匠の揺るぎない決意を感じていた。
前日 7/26(土)
am6:50 起床。
いつもより1時間早く起床して明日訪問できない実家へ出向き食糧を補充。
pm18:00過ぎ 終業。
奇跡的に1時間早く仕事が終わり急いでシャワーを浴びて夕食を済ませて、姫路から迎えに来てくれる師匠の到着を槍ヶ岳のYouTube動画を観ながら待ち構える。
pm21:20 師匠到着。
ザック、登山靴、風呂道具を積込みいざ出発。直後に「忘れ物ないですね?」と言う師匠の一言にドキッとしたが最悪靴とお金さえ有ればなんとかなるか。と、春に開通したばかりの本巣ICへ。
1日目 7/27(日)
am0:45 新穂高第二駐車場に到着。
有料(¥2400)だが山行時間と体力がギリギリとなる事は読めていたので背に腹はかえられぬと、迷わず入場。
道中、ひるがのSAでトイレ休憩。一般道に降りてから当日の朝食と昼食を買いにセブンイレブンへ立ち寄った。3時間超えの車内では衝撃の報告が。長年シングル貴族で意気揚々と世界中を飛び回って遊びまくっていた師匠に「彼女ができた!」と。しかもめちゃくくくちゃ可愛い子。仕事もプライベートも順風満帆。向かうところ敵なしの太陽みたいなthe陽キャ。頭も良くてコミュ力もあり、行動力も備わっていてサッカーも上手い。足りないモノは彼女だけ。だったのに、、なんかムカつくな。でもまぁ、そんな師匠が定期的に連絡をくれて一緒に遊んでくれると言うのは幸せな事だな。
am1:00頃就寝。
その前に新穂高登山センターで歯磨き、トイレを済ませてワクワクと不安を噛み締める。ドキドキしていて眠れるかなと不安だったが、秒で意識がなくなった。
am3:30 起床。
2人のアラームが同時に鳴って2人ともパッチリと起床。直ちに行動開始。前日(さっき?)セブンイレブンで買ったおにぎりを2つ平らげてそそくさと身支度を整える。
am4:05 登山届けを提出していざ出発。
まだ薄暗い林道をヘッデンの灯りを頼りにテクテク進んでゆく。体調は悪くない。悪くなくて順調に歩いてはいるけど、この山行計画で今日中に槍ヶ岳山荘に辿り着けるとは思っていなかった。
am5:05 穂高平小屋到着。
出発して30分程で明るくなってきて早々にヘッデンは不要となった。この頃にはすっかり陽が登って緑が美しく輝いて穂高平小屋の雰囲気はとても良かった。完全に陽は昇っていたもののまだ夜の冷ややかな空気が残っていてとても気持ちの良い空間だった。今振り返るとこの頃はまだ元気だったなぁ。周りの景色に目を向けるゆとりがあった。水分補給程度の小休憩の間にトイレをお借りした。
ここで日帰りピストンに挑戦中の強者ハイカーさんと挨拶を交わした。「キツいですね。まだ先は長いですね。」みたいな事を話していたが、私が千丈沢分岐の辺りで死にかけている時に槍ヶ岳からの帰り道でスライドした。おそらく余裕でピストン達成したに違いない。世の中には凄い人がいるものだ。
am8:30 槍平小屋到着。
ここまでの道のりはゴロゴロ大きめの石が転がる樹林帯を進んできた。途中、まあまあ下ったり(下山時の登り返しが思いやられる)沢を渡ったり楽に歩ける道は少なくて、徐々に体力を削られて行く。槍平小屋で少し長めの休憩を取ったが、日陰が少なく、火照った身体をしっかり休める事はできなかった。
スタートから「多分オレには無理だな」と言う考えで歩いてきた私。じつはこの槍平山荘で宿泊する事を目論んでいた。前日まで小屋泊のキャンセルが出ないか、サイトを頻繁にチェックし。空きがないとなると、コソッとテントを持って行ってテン泊しようか。と、師匠の足手まといとならぬよう色々と画策していた。しかし、タダでさえ2000m超えの登りに不安を感じているのに重たいテントを持って行くなんて、初めから投げている様なもんだしなぁ。まぁもし本当にダメならテント泊の受付をして野宿するしかないな。などと考えがまとまったかどうか微妙な心持ちでスタートを切っていた。
そして今、槍平小屋に到着してみると「野宿を強いられる程、追い込まれてはいないな」となってしまう。この新穂高ルートは序盤は緩やかに標高を上げて行き、千丈沢分岐の辺りから一気に急登となる事は知っていたので、槍平小屋では多少のゆとりを感じるのは当然。この先の行程を考えると更にキツくなるのは目に見えていた。でも今元気なのにギブアップできないな。と。結局トイレを済ませて水を補給させてもらって、先へ進む事を決断した。いろんな景色や感情を明確に覚えているのはこの辺りまでで、この先の記憶はあまり当てにならない。
am11:30 千丈沢分岐到着。
ここからが急登の始まりでここまでは前哨戦みたいなものだった。。はず。が、情けない事にここまでの間に既に体力の限界を迎え大幅にペースダウン。槍平小屋から4時間近くの時間を要した。それだけ疲労していたが、さすがにここから撤退は、考えられなかった。撤退するにしてもここからだと2000m近く降りなければならない。槍平小屋を出発した時点でもう登る以外に選択肢はなかった。
ここからのコースタイムを計算すると今日中に槍ヶ岳山頂に立つためには、今までのペースではギリギリ。しかもガスが上がってきている為出来るだけ急がねばならない。「ゆっくり慌てずに体力を温存して行きましょう」と優しい言葉を掛けてくれていた師匠にもやや焦りが見られ始める。この時点で私は今日中の登頂は無理だな。時間的にも体力的にも難しいと判断して、目標は「槍ヶ岳山荘の受付時間に間に合う事」としていた。出来れば今日中にガスで覆われる前に登頂したい師匠と私の間に目標のズレが生じた。ここからは飛騨乗越を目指して九十九折りに根気良く一本道を進むだけで道迷いの可能性は低い。前回の甲斐駒断念の責任を感じていたのもあり、ここからは師匠に先行してもらった。「宿泊受付時間に間に合わなかったら助けに来てよ」と。
ここからはほぼほぼ記憶がない。途中何度も倒れ込む様に休憩をした。ザックをベッドにして目を閉じてしまい、いつの間にか眠ってしまう。慌てて起きて時計を見ると、「やばっ3分寝てた。」みたいな事を何度か繰り返した。睡眠2時間で未体験の運動量は、気を抜くと眠りに落ちてしまう。やばいやばいと立ち上がって進み始める。本当にほんの少しずつ。「これ進んでる?この一歩意味ある?」などと考えながらまた立ち止まる。視線を上げると、ゴソゴソ蠢く物体と微かな鳴き声。なんと雷鳥の親子を発見。初めまして雷鳥さん。噂に違わぬカモフラカラーでよーく目を凝らさないと確認できない。オマケに疲れと老眼で目が霞んで仕方がない。などと雷鳥観察をしている間に雲行きが更に怪しくなり、パラパラと降り出す始末。ザックカバーとレインウェア(我らがworkmanのイナレム)を取り出して、これまた初めての雨装備を装着。雲に隠れて先がまだまだ見えない。あまりにも辛すぎて50歳超えてるいるのに泣きそう。文字通りボロボロ。
pm14:15 飛騨乗越到着。
ここから山荘までは目と鼻の先。と、思い込んでいたが。「山荘が見えないけど、、右だよな。ん左?」ここまでルートの確認を師匠にお願いしていた為、把握できていなかった。MAPを開いて確認すると「え?左なの?ウッソ、まだ登るの?コースタイム19分て。ムリムリムリムリ。」
この頃から雨は本降りとなりベタベタのボロボロでヨレヨレ。槍ヶ岳山荘のテン場に辿り着いてからがまた、長げーこと。
やっとの思いで山荘到着。雨のせいで山荘受付ロビーは人でごった返していた。そんな中散々待たされていた師匠が笑顔で出迎えてくれた。おそらく1時間以上待ったに違いない。またも迷惑をかけてしまった。私が到着しないと必要事項の記入が出来ず、チェックインできないでいた。毎度申し訳ない。
チェックインの手続きも全て師匠に丸投げ。靴紐を解くのもままならない状態で、何をするにも時間がかかってしまう。ヨレヨレと宿泊部屋へ。(何という部屋だったか名前を覚えていない)更衣室で長袖のシャツに着替えた。ボディーペーパーで身体を念入りに拭いてかなりさっぱりできたのだが、ここでズボンを忘れたことに気づいた。やや丈の長いスポーツ用インナーパンツしか持ってこなかった。余りにも疲労が酷くてもう一度取りに戻る事は考えられなかった。「まぁ、ちょっと丈が長いしシャツをいい感じに出して靴下をちゃんと履いておけばなんとかなるだろう」と、その変態まがいの格好で更衣室を出て自室へ向かった。誰とも目を合わせないよう、ただただ前だけを見つめて足早に進んだ。下界であれば間違いなく通報されるレベル。ここ山小屋でも怪訝な目を向けられていたに違いない。しかしそんな事に構っていられないほど私は疲れていた。
着替え、荷物が落ち着いて「1時間ぐらい寝ますか」と師匠の言葉を最後に黄泉の国へ。
おそらく2時間近く寝たんだと思う。とにかく記憶が曖昧。いわゆる高山病の症状で頭が痛くて目が覚めた。側に置いてあったカロリーメイトを食べてから頭痛薬を飲んだ。
pm17:55(曖昧) 夕食。
酢豚、シューマイ、杏仁豆腐の中華ディナー。ご飯お味噌汁はおかわり自由。だったが、疲れていて食べきれなかった。普段から出されたものは意地でも完食するバリバリの昭和スタイルでやってきたので、食べ物を残す事に躊躇いがあったが、「無理して食べない方がいいですよ。消化するのにエネルギーと酸素を使うので」と、師匠の的確なアドバイス。シューマイだけ師匠に食べてもらって、あとは割り切って残す事にした。最後にかき込んだワサビふりかけご飯がとても美味かった。食事を済ませた辺りから頭痛薬が効いてきたのか、やや回復し積極的に会話ができる様になった。
pm18:15 食後の散歩。
雨が弱まり外に出られそうだったので師匠と2人で表へ。辺りは真っ白のガスに包まれ眺望はゼロだった。しかし、暫くすると一気にガスが抜けて夕日に照らされた槍ヶ岳の全貌を目にすることができた。更に視界はクリアになってオレンジ色に染まる雲海の隙間から常念岳が姿を表した。今日1日のご褒美にこんな絶景を眺める食後のひと時を槍ヶ岳様が用意してくださったように感じた。
pm19:00 就寝準備。
薬のおかげで体調は回復して、これぞ高山の世界と言わんばかりの絶景を目にして気持ちが高揚しているとはいうものの、今日の疲労がゼロになるわけはなく、明日の槍ヶ岳ピークハントと、2000m超の下山を考えると早々に就寝するべきだと分かっているし、身体が強烈に睡眠を欲していた。床に着いた直後はやや暑くて寝苦しかったが、「この身体の疲労度で明日あの急勾配を登頂出来るだろうか?朝起きたら絶好調に回復していてくれ。あー仙豆欲しい」などとどうしようもないことを考えていたらいつの間にか落ちていた。ただ、やはり睡眠中の呼吸が良くないようで頭痛が再発して、後半はかなり浅い眠りとなり、寝返りのたびにうっすら目を覚ますような状態が続いた。
2日目 7/28(月)
am2:00過ぎ
あまりに頭痛が酷くなって、たまらず寝床を出た。フラフラとロビーまで来て腰掛けに座る。静かなロビーで前夜にセブンイレブンで買った稲荷おにぎりを食べる。食欲はなかったがお稲荷さんの甘じょっぱい味がとても美味しく感じられて、身体が少し回復しているのを実感した。完食し水で頭痛薬を流し込んで、長く細く息を吐き出す高山病対策の呼吸を静かなロビーで実践した。人気の少ない薄暗いロビーで50過ぎのおっさんが「ふぅぅぅぅぅぅ、、」と深呼吸している姿は余りにも不気味だったに違いない。
不意に肩を叩かれて振り返ると師匠が立っていた。そして2人で外へ出た。
am2:30満天の星空。
夜のうちにすっかり天気は回復していて、頭上には満天の星空が広がっていた。やっぱり3000mの高さから見上げる星空はまさに手が届きそうな距離に感じられた。星がこぼれ落ちてきそうだなと、感動している私の心を見透かす様に幾つもの流れ星を見せてくれた。「あれ。天の川が見えますね」「へぇ天の川かぁ」師匠はなんでも教えてくれる。そしてiPhone pro maxの実力を遺憾無く発揮して私のSE2では到底撮影出来ない星空を撮影して写真を提供してくれた。
寒くなってきて、寝床に戻った。その頃には薬が効き始めて頭痛がおさまりつつあったのも手伝って再び眠りに落ちた。
ゴソゴソと周りのハイカーさんたちが準備する物音でらうっすら目が覚めて「どうします?山頂行けそうですか?」と師匠が私に槍ヶ岳登頂の意思確認をする声掛けでぱちりとスイッチが入った。
am4:00 再び起床。
「山頂行けそうですか?」と、昨日朝食の代わりに食堂で受け取ったチマキをほうばりながら、師匠が寝起きの私に尋ねてきた。薬が効いて頭は非常にクリアになった。足腰はどうだろう?就寝前に足の裏と違和感のある膝辺りにシップを貼っておいたのが効果があったのか、思ったほど傷んでいないように感じた。
昨日、ヨレヨレになって槍ヶ岳山荘に到着した事で、言葉にできない程の達成感に浸ってしまった。ただ、この山行計画の本当の標的はまだ堕とせていない。昨日夕食後に姿を現したあのラスボスを未だ仕留めてはいない。
私「ここまで来たら行きたいよね。山頂。」
師「、、であれば4:30には出たいです。」
的確な出発時間の提示で、私も行動がスムーズになる。星を観に外へ出た時の寒さを参考に一応ライトダウンを羽織った。奇しくも西穂に登頂した時と同じ服装だった。これまたあの時と同じ巾着袋型アタックザックにペットボトルと手拭いを入れた。ヘルメットはこの山行の直前にAmazonで一番安かったマムートのskywalkerを購入した。その新品のメットにヘッドマウントを着けて、GoProを装着した。せっかくなら少しでも映像を残しておけばよかったと、西穂高登頂時に後悔したこともあって、今回は職場の後輩がジャンク品を自力で直したGoPro5を借りてきた。
さぁ、安全第一でラスボス退治に出かけるぞ。と、靴紐をいつになく念入りに締めて外へ出た。
am4:25 御来光。
私「そろそろ行きますか?」
師「⁉︎行かないですよ。」
私「?」
師「今、登り始めたら御来光逃しますよ」
私「あ。そっか。」
どうにもポンコツな私。
そんな反省をよそに槍ヶ岳越しに太陽が顔を出し始めている。シルエットとなった槍ヶ岳に張り付く幾つものヘッデンがチラチラ動いている。なんとも言えない感動的な時間。
am4:55 ピークハント。
師「さぁ、行きますか」
御来光の余韻もそこそこに、足早に槍ヶ岳の取りつきへと歩みを進める。私たちの前には数えるほどの登山者しかいない。なるほど空いているうちに登ってしまおうということか。
とはいうものの、なかなかスムーズには進めない。3点支持を意識して、急がず確実に登った。高所が得意なわけではないが、一歩一歩一手一手攻略していく感覚が楽しかった。途中で暑くなってライトダウンを脱いだ。中盤では小槍を間近にカメラに収めたり、山小屋側を振り返ってみたり。
終盤に差し掛かると、ほぼ垂直の岩壁に取り付けられた梯子を登る。嫌でも力が入ってしまう。「力抜いて。リラアーックス」と、小声で自身に声掛けして、ついに山頂に足を踏み入れた。
am5:22 槍ヶ岳登頂。
「やったーっ!」梯子から顔を出した瞬間思わず声が出てしまった。正面に座っていた外国人カップルの女性と目が合って「オメデトウ」と声を掛けて頂いた。
想像はしていたがそれを上回る絶景。下から見てあれだけ尖っているのだから山頂は狭いんだろうと予想していたが、想像以上に狭く感じた。360度遮るものは一切無かった。今まで登ったどんな山よりも最果て感がズバ抜けていた。自然に笑顔。もうとにかく笑えてしょうがない。最高としか言いようがない。
am5:35 下山開始。
どれくらいの時間、そこに留まっていただろうか。「そろそろ下山しましょうか」これまた的確なタイミングで師匠が下山を促す。それほど広くない山頂がこの後混雑する事は目に見えていた。
さぁ、下山。いきなり梯子を降りていく。焦らず一歩一歩足の置き場を確かめて降りていく。下山時の滑落に十分注意して無事下山完了。
ほっと一息つきたいところだが、のんびりもしていられない。ここからまた長い下山が始まる。
疲れ切った足腰は踏ん張りが効かず、ちょっとした油断、安易に踏み出した一歩で大変なことになる可能性もある。出来るだけ時間にゆとりを持って山荘を出発したい。まとめてあったザックを持って師匠がトイレを済ませている間に山荘前のベンチに腰掛けてチマキを食べた。
実に美味かった。十分なボリュームであったが、しっかりとした塩味が食欲を刺激し、あっという間に完食してしまった。
am6:25 下山開始。
これからの長丁場に備えてしっかり身支度を整えた。「千丈乗越から稜線歩きを楽しみながら帰りましょう」師匠の提案はいちいち的を射ている。
下山開始後程なくして槍ヶ岳が見えなくなった。西鎌尾根?を眺めながら、いつかはあんな稜線を歩いてみたいなと思わせてくれる素晴らしい景色だった。
千丈沢分岐で西鎌尾根から槍ヶ岳まで歩いて来たタフなハイカーさんと少しお話しした。命の危険も感じるほどの痩せ尾根を歩いて来た様でだいぶ疲労しているとおっしゃっていた。果たして私が西鎌尾根を歩く日は来るのだろうか?
ここからはとにかく長い下山道だった。樹林帯ではゴロゴロの大きめの石が湿っていて、かなりスリッピー。沢を渡る場面ではこれまたゴロゴロ大きめの岩が浮いて動いたり。油断しているとすぐに怪我をしてしまいそう。
下山時の怪我。遭難に気をつけよう。「温泉までが登山ですよ」と師匠と2人で励まし合ってひたすら下山道を進んだ。
白出沢以降はひたすら林道が続いた。天気が良すぎて暑さとの戦いでもあったが、予定よりは早く下山することができた。途中、調子に乗って足の進め方を速くしていたら右足が木の根に引っかかって前に出ず転倒した。1週間経った今も鈍痛が残っている。
pm12:40 下山完了。
何はともあれ、2人とも無事に下山することができた。駐車場から2分のひがくの湯へ移動して、2日分の汗を流した。950円とややお高めの入浴料だったが、露天風呂が最高に気持ちよかった。
居心地の良い温泉施設だが、今日中に姫路まで帰る師匠のことを考えるとそうそう長居する事はできなかった。少しボリューム多めの唐揚げ丼を平らげて帰途についた。
助手席でこの2日間を振り返った。まさか本当に標高差2000mを登り切れたのが驚きだった。自分が限界だと感じた限界は、実は限界では無かった。初めから自分を制限してしまう様な思考を改めよう。山頂から下山後に師匠と交わしたグータッチが妙に印象に残っている。
初、2000m超え。
初、小屋泊。
初、雷鳥。
初、雨装備。
そして何より初、槍ヶ岳登頂。
それもこれも師匠のおかげだ。
姫路までのロングドライブの負担を少しでも軽減できる様にと、道の駅で運転を交代した。いつもはほぼノンストップで運転して帰宅しているのでどうって事はない。ただ運転のお供にいつも聞いているラジオが聞けなかったのは残念だったな。
帰宅後、服、ザック、ペットボトルホルダー、スマホホルダーに至るまで全ての装備を洗って乾かした。大事をとって翌日に有休を取っておいて正解だった。まともに歩く事も出来ないだろうから。
昨年は白山登頂で燃え尽きた感があり、山から遠退いてしまった。
達成感で言えば今回の槍ヶ岳の方が上回っている。また燃え尽き症候群とならない様、早めに次の目標を立てなければ。
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