大井川 赤石沢クズレ沢〜裏赤石沢〜大雪渓沢〜シシボネ沢〜小雪渓沢


- GPS
- 43:33
- 距離
- 28.5km
- 登り
- 4,808m
- 下り
- 4,803m
コースタイム
- 山行
- 8:43
- 休憩
- 0:45
- 合計
- 9:28
- 山行
- 10:48
- 休憩
- 0:26
- 合計
- 11:14
- 山行
- 9:36
- 休憩
- 1:13
- 合計
- 10:49
天候 | 1~2日目:晴れ、3日目:晴れ→雨→曇り、4日目:曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2025年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
○赤石沢(南沢):3級上(今回主に遡行) 澄んだ水に赤いラジオラリアチャートが映える、超グラビア沢。北沢出合より下流は、通常時は取水されており難しい所はなくなった。門の滝や大ゴルジュの最初の滝は、通常巻かれているが、平水であれば直登可能である。魚影は濃い。 ○クズレ沢:3級上(今回遡行) 序盤に4段90m程度の大滝があるが、水線通しの登攀は困難で、左岸から巻き気味に登ることになる。以降も滝が結構あるが、大高巻きするような箇所はなくスムーズに標高を稼げる。集水域の割に水量は少ない。源頭はカール状のガレとなる。登るにつれてヌメる。 ○シシボネ沢[獅子骨沢]:3級上(今回下降) 出合付近から総落差100m程度の連瀑帯となっており、ここが遡行でも下降でも核心となる。下降の場合は懸垂下降の連続となる。上流はガレゴーロが殆どであり水は伏流気味で遡行価値は低い。継続遡下行時の下降ルートとしては価値がある。 ○小雪渓沢:4級(今回遡行) ゴルジュが非常に発達した沢で、登っても登ってもゴルジュに滝がある。多くの滝は直登可能で、直登できない滝も小さく巻けるため、飽きることなく登れるが、それなりに悪い物が多いため、中上級者向け。豪雪地に特徴的な悪さがある。 ○大雪渓沢左俣:4級下(今回遡行) 豪雪に磨かれたスラブが発達した沢で、開放的で景観が良い。難しい滝は殆どなく快適に標高を稼げる。2300二俣で右俣に入ると上流は長大なガレとなるようだが、今回左俣へ入った結果、水涸れまで滝が続いており、詰めの藪も無くて良かった。 ○裏赤石沢:3級上(今回下降) 百間平沢出合より下流は、登るのも下るのも苦労しない、手頃な滝が多い。2100m付近の赤いゴルジュは見応え有。二俣より上流も滝はあるが、ゴーロの割合が高い。赤石岳にほぼ直接詰め上がる遡行ルートとしては価値がある。 |
その他周辺情報 | 【地名】 赤石沢には昔から伐採等で人が入っていたようで、滝や淵や支流に多くの地名がある。 牛首峠より上流の支流名は、下流から順に前北沢、北沢、白アイ沢、クズレ沢、シシボネ沢[獅子骨沢]、間ノ沢、小雪渓沢、向沢、大雪渓沢、滝沢、裏赤石沢(その右岸支流は百間平沢)である。このうち前北沢、奥北沢、白アイ沢、間ノ沢、向沢、滝沢は1954年に昭和山岳会が遡行した際に付けた地名である(山と溪谷185号初出、現代登山全集 第5巻再掲)。奥赤石沢と百間洞のどちらを本流とするかは文献によって異なる。奥赤石沢の支流として奥雪渓沢、百間洞の支流として中盛丸山沢がある。 ・白蓬ノ頭と白アイ沢について 「白蓬ノ頭/白蓬沢ノ頭」の山名は明治37年にこの地に設置された三等三角点「白蓬沢」に拠ると思われる。この三角点名の由来は小字名と推測され、この山に詰め上がる沢として「白蓬沢」があったわけではない。その後、草冠を見落とした者により「白逢ノ頭/白アイノ頭/白アイ沢ノ頭」という誤称が流布していた時代があり、これに基づいて、赤石沢の門の滝に右岸から流入する沢に「白アイ沢」の名称が付された(現代登山全集 第5巻)が、この沢は山頂よりはるか下に源頭がある。実際に白蓬ノ頭を源頭とする沢の名称は無いか、現代まで伝承されていないと思われる。 【他の記録】 ・本流(南沢) 記録多数。初めて紹介したのは平賀文男(「赤石溪谷」,1933)だが、奥赤石沢から北沢出合付近までの下降に留まっている。当時は北沢出合付近に鉄砲堰や小屋があったらしく、そこで下降を終了している。椹島から通しでの初遡行は、1954年に昭和山岳会により為された(現代登山全集 第5巻,1961)。 門の滝、大ゴルジュの滝を登った記録は未見。大ゴルジュの最初の滝は大木輝一らにより2023年に登られているが、記録は出されていない(大木、私信)。 ・クズレ沢 改訂 現代登山全集 第5巻(1965)に、昭和山岳会による1964年8月の初登記録が掲載。なお、同書の初版には掲載されていない。他、登山大系に掲載。 ・シシボネ沢 登山大系に掲載。岳人337号(1975年7月)に石間哲男らによる遡行記録掲載(未読)。岳人397号(1980年7月)に遡行記録掲載(?)(未読)。 ・小雪渓沢 岳人325号(1974年7月)に、蒼山会同人による1973年7月の遡行記録(恐らく初登)が掲載、新岳人講座 5 (1981)に再掲。他、登山大系に掲載。 ・大雪渓沢 改訂 現代登山全集 第5巻(1965)に、1958年に昭和山岳会により初登された記録が掲載。その他、登山大系、沢登りルート図集100選、関東周辺の沢に掲載。 ・裏赤石沢 登山大系に掲載。現代登山全集 第5巻(1961)に、昭和山岳会による1955年8月の遡行記録が掲載。岳人337号(1975年7月)に石間哲男らによる遡行記録掲載(未読)。 近年の記録としては、2013年7月に泉州山岳会が百間洞と誤認し、左俣の百間平沢を遡行。 http://senshu-ac.jp/sacblog/?p=5739 |
写真
装備
備考 | ・概ねラバーソール適 ・ロープは50m1本、シシボネ沢懸垂下降でフルに使用 |
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感想
【計画の経緯】
赤石沢は大井川上流部で代表的な沢の1つであり、今年実施中の大井川上流部集中調査の対象として、欠かせない1本である。百間洞だけは近年もよく遡行されているものの、クズレ沢、裏赤石沢、大雪渓沢、小雪渓沢等の支流は登山大系等に掲載されているにもかかわらず、近年の遡行記録を見ない。しかも、大雪渓沢や小雪渓沢は讃辞と共に紹介されているにもかかわらず。そのため、今回はこれら支流の現況の調査を主目的として、3泊4日の日程を確保し、継続溯下行してみることにした。
【感想】
初日、登攀した記録を見たことがない門の滝を直登でき、嬉しかったが、登山大系では左岸を直登できると書かれているクズレ沢大滝が、直登とは言えないようなラインでしか登れず、ちょっと残念だった。どうやら後で分かったが、これは登山大系の誤りと言ってもいいと思う。
2日目、クズレ沢上部は悪くはない渓相だったが、北沢に比べると劣るのかもしれないと思った。そのうち北沢にも行ってみようかな。裏赤石沢上部は殆どガレゴーロで残念だったが、百間平沢が合流する周辺から滝が増えてきて、まずまずだと思った。
3日目、大雪渓沢は越後のような渓相で、南アにもこんな沢があったのかと驚かされた。シシボネ沢は上部はほとんど何もなかったが、下部の連瀑帯が想像以上に立派でまた驚かされる。50mロープでぎりぎり残置なしで懸垂下降できて良かった。大ゴルジュ最初の滝は意外と簡単に登れたが、その先が厳しく、夕闇迫る中で巻きに入った所、結果として非常に効率的に巻けてほっとした。
4日目、小雪渓沢も越後のような沢だったが、これは険悪な方の越後の沢だった。終わらないゴルジュと滝にげっぷが出そうになるくらいだった。最後は聖岳東尾根をまっすぐ下り、綺麗に出発点へ繋げて美しい軌跡が完成。
全体としては、思い描いたとおりの継続溯下行を完遂でき、大変満足である。中央新幹線工事により水量等の環境が悪くならないことを祈りたい。
赤石沢の支流群の中でも大雪渓沢、小雪渓沢は特に遡行価値が高いと感じた。本記録を参考に、百間洞だけでなく支流ももっと遡行され、この山域の多様性を味わう人がもっと増えれば本望である。
リニア調査の関係で林道通行許可をいただき、赤石沢流域ローラー調査を敢行。
トンネル掘削予定地よりやや下流だが、一部の見立てでは赤石ダムより上流部は影響を受ける可能性がある区間内とされている。
ラジオラリア(チャート)や石灰岩は、海の底だった山脈の過去を教えてくれた。チャートは固いので、本流と各支流ともに赤い岩盤が出る場所はゴルジュや大滝が発達。各沢の個性を存分に味わう沢旅が出来た。
赤石沢本流区間は魚止めの概念が無く、釣れたイワナは全てヤマトイワナの特徴を持っていた。
皮肉なことに、リニアで水枯れが懸念されてる大井川上流部よりも、赤石沢含め魚止めが効いてる中部支流たちの方が純血ヤマトが元気に暮らしてる気がする。近現代の放流と切り離されて、残っているのだろう。
良い沢で良いラインが引けて大変満足である。
どうか、この環境が後世まで続いてほしい。
コメント
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