真教寺尾根〜赤岳〜権現岳〜三ツ頭〜観音平


- GPS
- 07:56
- 距離
- 19.0km
- 登り
- 2,182m
- 下り
- 1,894m
コースタイム
- 山行
- 7:25
- 休憩
- 0:48
- 合計
- 8:13
天候 | 晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
下山は観音平へ(小淵沢駅までタクシーで約\4000) |
写真
感想
実家に帰省する用事があるので、ついでに八ヶ岳に寄り道することを考える。美濃戸口まで入るバスの時間は遅いので、必然的に清里からアプローチし、真教寺尾根を登ることになる。昨年にも八ヶ岳を縦走して赤岳を登ったところではあったが、東側からのルートを歩いたことがなかったのと、昔学生時代に歩いた権現岳との間のキレットを再び歩いてみたかったこともあり、赤岳から権現岳を繋ぐ縦走を計画する。
京都を23時過ぎに出発する甲府行きの夜行バスに乗って、早朝に小淵沢ICで下車する。小淵沢ICのバス乗り場からはしばらく未舗装の林道のような道を歩いて高速道路の下を潜る。ICの南側の車道に出ると小淵沢の駅まではおよそ15分ほどの道のりだ。同じく高速バスを降りた女性が前を歩いておられる。
南に鳳凰三山から甲斐駒ヶ岳を眺めながら、朝の清々し空気に満ちた高原を歩いて小淵沢駅に向かう。小淵沢の駅が近づくと先ほどの女性が早く到着されるのが目に入る。女性は近道を歩いて来られたのだろう。駅のコインロッカーに荷物を預けると、小海線の出発時刻が迫っている。小海線に乗り込んだのは私の他には先ほどの女性のみだった。
車窓の左手に八ヶ岳を眺めながら清里に向かう。清里駅は標高が12?mもある。清里からは美し森の登山口までタクシーで移動したいところであったが、清里の近辺のタクシーの営業の開始時間はかなり遅く、早朝は営業しているところがない。そもそも早朝に清里駅で下車する人も滅多にいないのだろう。
それでも駅前のファミリーマートが6時から空いているのは有り難かった。店の棚にはサンドウィッチやおにぎりの類はほとんどなかったが行動食のためのパンを入手することが出来る。ファミリーマートはヨーロッパ風の瀟洒な作りであるが、もとはペンションかレストランだったのだろう。他にも同様の瀟酒な建物が目立つが売物件となっている。かつてのリゾートとしての賑わいは過去のものになりつつあるようだ。
駅前から美し森まではおよそ3kmほどだ。八ヶ岳高原ラインを緩やかに登っていくと左手の林の中にモダンなコンクリートの建物がある。アール・デコのガラスの美術館だったようだが、今は大きな廃墟となっている。
美し森の駐車場にたどり着く数台の車が停められている。展望台に登る階段の道は工事中で通行止となっているので、一度、八ヶ岳横断歩道の林道を進み、斜面を登ることになる。階段を登り切って展望台にたどり着くと人の声が聞こえる。大学生らしい若い男女二人づつのグループがおられた。羽衣池まで行かれるらしい。
展望台からは赤岳がその峻険な山容を見せている。南に視線を向けると鳳凰三山から北岳、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳と南アルプス北部の名峰がずらりと並ぶ様はなんとも壮観だ。甲府盆地の彼方には富士山が見えるが、黄砂のせいだろうか、そのシルエットが朧げに霞んでいる。
展望台を過ぎるとすぐにも道は笹の繁茂する落葉松の林の中を進んでゆく。先を歩く先ほどの若者のグループを追い越すと登山道には全く人の気配が感じられなくなる。樹林の中には早速にも左手の谷から涼しい風が吹いてくる。
羽衣池は湿地の中にわずかに池がある。おそらくは池の水分が失われて湿地化しつつあるのだろう。落葉松の樹林を緩やかに登ってゆくと忽然と右手にリフト・トップが現れる。サンメドウズ清里スキー場のリフト・トップらしい。すぐ下には広場があり、テラスが設けられているようだ。
先に進むとすぐに樹木のないザレ地の広場が現れ、正面に牛首山と赤岳の展望が広がった。賽の河原と呼ばれる場所のようだ。再び樹林帯の入り牛首山のピークを目指して緩やかに尾根を登ってゆく。いつしか笹原は消えて、八ヶ岳らしい苔むした林床が広がるようになる。牛首山の山頂は樹林に囲まれた地味な広場であった。
しばらくはアップダウンの緩い樹林の尾根が続く。展望が広がる場所はないが、樹間から正面にまるで壁のよう赤岳の東斜面が垣間見える。急登が始まるとまもなく樹林を抜け出し、立ち枯れの白骨樹が立ち並ぶ低木帯に入る。
標高2500mあたりで森林限界を抜け出すと、岩場の登りが連続するようになる。同時に足元には様々な高山植物が多く見られるようになる。黄色い花はシナノキンバイだろうか。赤紫色のヨツバシオガマや青紫色のイワギキョウが
斜面を登り権現岳からのルートと合流すると山頂まではあとわずかな距離だ。足元の岩場の間にはびっしりとチングルマと思われる白い花が咲いている。山頂に登り詰めると一気に八ヶ岳の北側の展望が飛び込んでくる。左に視線を移すと霧ヶ峰から美ヶ原へとなだらかな高原が続いている。その先には広がっている筈の北アルプスの山並みは残念ながら霞の中だ。
山頂小屋のある山頂の北側に移動して、八ヶ岳北部の景色を眺めながら食事休憩をとる。昨年は北八ヶ岳からこの赤岳まで縦走したのだが、山頂は大勢の登山者で賑わっていたのだった。さすがに平日であり、時間も早いせいか人影も少ない。
山頂を後にすると南尾根を引き返す。文三郎尾根を登って来られる数組のパーティーが目に入る。権現岳との間のキレットに向かっての急下降に入ると、すぐに二人組の男性のペアとすれ違うが、その後は全く登山者の気配が感じられなくなる。急峻なガレ場が連続し、落石の危険性があるので登山者が前後にいないのは有難い。
このキレットを通過したのは大学時代、編笠山から八ヶ岳全山の縦走した時のことだ。夕陽を浴びながら赤い岩肌のガレ場を登ったことを微かに憶えている。おそらくここを登れば初日の行程が終わるという気持ちが、このきつい登りを登る駆動力となったのだろう。当然といえば当然であるが、登りよりも下降の方がスリルを感じることになる。ここはスピードをあげることなく、慎重に足場を選びながら下降してほかない。
ガレ場を通過して再び樹林帯の中に入ると、下降も緩やかになりホッと一安心する。最低
鞍部にはキレット小屋がある。こんな場所に物資を運ぶのはさぞかし大変だろうと思うが、小屋は閉まっていた。ここで水を補給出来るかと期待していたが水場の案内も見当たらなかったので、諦めて通過することにする。
キレット小屋からツルネと呼ばれる小ピークに欠けて、ハイマツとシャクナゲの低木帯の中を登り返す。シャクナゲの花が満開であり、まさにシャクナゲ・ロードといったところだ。
ツルネのピークは樹木のないザレ地が広がっている。そのザレ地の間に小さなピンク色の花が数多く咲いているのが目に入る。まさか、と思ったが近づいてみるとなんとコマクサであった。今回はコマクサには出会えないだろうと思っていたので、これは嬉しいサプライズであった。
権現岳は遠目にはかなり峻険に見えるが、実際の登山道は見た目ほどは険阻ではないように思われる。シャクナゲの花が続く登山道を登って行くと上から降りて来られる男性とすれ違う。縦走の装備ではないように思われたので、どちらまでとお伺いすると「権現岳に登りに来たけど、トレーニングのためにもう少しだけ歩こうと思って」とのことだった。眼下に見えているツルネのピークにコマクサが咲いていることを教えて差し上げると「それはヤバい」と目を輝かされる。
山頂の北側の長い鉄梯子を登ると権現岳のピークはすぐであった。山頂に聳える大きな岩には意外と難なく登ることが出来る。岩場には長い鉄の剣が置かれていた。果たしていつ頃からあるものだろうかと気になるところだ。
権現山の山頂からもしばらくは低木帯が続き、三ツ頭のピークにかけてシャクナゲの花に囲まれながら好展望の尾根を降ってゆくことになる。空にはいつしか薄曇りの雲が広がっている。快晴であれば強い日差しに照り付けられることになっただろうから、それはそれで有難かった。
三ツ頭のピークで振り返ると、権現岳と赤岳の鋭鋒はなかなかの迫力だ。ピークでは電波が通じるので、ここで小淵沢のタクシー会社に連絡して、観音平にタクシーを予約する。予約した時間を過ぎるとメーターを倒して、超過料金が生じるというので15時10分に来てもらうことにする。
三ツ頭からは樹林帯に入り、緩やかに丈の低い笹の繁茂する尾根を緩やかに降ってゆく。しばらくは尾根芯の東側をトラバース気味に下降するが、やがて広々とした針葉樹の樹林となる。編笠山には今年の春先に登ったところであり、編笠山から南に伸びる尾根と林相はよく似ているが、その時とは異なり笹原はすっかり緑色に変化している。
笹原の広がる樹林はどこに視線を向けても絵になるような美しい林相が広がっている。午後の柔らかい陽射しが笹原の林床に鮮やかな碧の輝きを落としていた。林の中に苔むした大きな岩が現れたかと思うと、その岩の上で一輪の花が黄金色の煌めきを放っている。なんとにニッコウキスゲの花だった。よくぞこんなところで花を咲かせたものだ。私の身長よりも遥かに高いところで凛とした花を咲かせるニッコウキスゲの花の気高さにはただ驚嘆するばかりだった。
途中で幾度か道標が現れるが、いずれも「延命水→」と記されている。山と高原地図にも尾根の下部に延命水と記されている。ペットボトルの水が残り少なかったが、延命水で水を補給することを期待して最後の水を飲み干してしまう。
やがて尾根の樹林は落葉松の植林となるが、植林でも落葉松は林相が美しく感じられる。前方から人の話し声が聞こえると思うと、男性二人と若い女性一人が休憩しておられるところだった。女性は明らかにテン泊の重装備だ。男性二人は日帰りのようだ。男性の一人が「この尾根は長いですね」と仰る。尾根の途中で合流し、話をしながら降りてきたという。確かに若い女性がご一緒だと退屈しなくて済むだろう。
丁度、三人が休憩されておられたところで尾根の右手に入ってゆく細い踏み跡がある。その踏み跡の先にある大きな岩に「水」と古いペンキで書かれていることに男性の一人が気がつかれる。踏み跡はすぐにも不明瞭になるが、斜面をトラバースした先の平坦地に水の反射が目に入る。近づいてみると泥濘みがあるばかりだった。樹に打ち付けられた古いプレートには「延命水」と記されているが、水が流れていたのは過去の話なのだろう。
再び登山道に戻り、先ほどの三人に追いつくと、タクシーの時間が樹になるので先に進む。観音平に到着したのは15時少し前だった。前回、編笠山に登った時にここを通過した時には正面に鳳凰三山と甲斐駒ヶ岳が綺麗に見えていたが、既にこれらの山々のシルエットはすっかり霞んでしまっている。
すぐにタクシーが到着する。幼少の頃、観音平は編笠山や三ツ頭、権現岳に登るために何度も訪れているのだが、そのすぐ手前に清水が湧いていたことを朧げに憶えている。タクシーで観音平を後にするとすぐにも道路脇に渾々と水の湧き出す水場が目に入る。タクシーを止めて、水を汲みに走る。この水も延命水と名付けられたいるようだ。渇いた喉にはこの水が何よりも有難かった。45年ほど前、少年時代の私もこの水の美味しさに感動を憶えたのだろう。
再び小淵沢駅に戻るとあずさ号の到着時間までの間に駅そばを食べる。中央線は駅そばが美味しいところが多いように思う。トッピングはこのあたりの名物、豚バラ肉を選ぶ。登山の後のせいだからだろうか、少し辛めのそばの汁がなんとも心地よく感じられた。
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