【滑落顛末記】残雪期裏銀座縦走(笠新道↑ブナ立尾根↓)


- GPS
- 36:10
- 距離
- 56.6km
- 登り
- 4,518m
- 下り
- 4,788m
コースタイム
- 山行
- 8:29
- 休憩
- 2:12
- 合計
- 10:41
- 山行
- 13:29
- 休憩
- 1:01
- 合計
- 14:30
- 山行
- 10:00
- 休憩
- 0:46
- 合計
- 10:46
過去天気図(気象庁) | 2025年04月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
名鉄バス 名古屋23:10ー4:23新穂高ロープウェイ ▪️復路 ・ふれあい号(平日のみ、1日3本、200円) エネルギー博物館15:35ー16:22信濃大町 https://www.city.omachi.nagano.jp/00003000/00042000/fureai_2.html ・アルピコ交通 扇町線(1時間に1本) 上原16:18ー16:40信濃大町 https://www.alpico.co.jp/traffic/local/hakuba/ogizawa/ ・信濃大町16:36ー17:31松本(夕食)18:25ー22:20名古屋 記録を書きながらのんびり帰宅 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・全体的に雪は多め。三俣山荘~烏帽子小屋は夏道が出ている所が多いが、雪が全くないわけではないため、適切なアイゼン着脱が必要。 ・雪庇はクラック多数、笠新道はヒドゥンクレパス的な箇所もあり。 ・気温上昇に注意。雪が緩むとアイゼンが効きにくく、難所や急登の通過時にどうなりそうか、予測を立てておいた方が良い。 |
予約できる山小屋 |
七倉山荘
|
写真
一瞬トレースを見失い、見つけたトレースについて行ったのが失敗の始まり。おかしさにすぐ気付いたものの、登り返さずトレースにならって10m程の斜面を横切って復帰しようとした。この日は雪が緩く、滑ったらヤバそうとは分かっていたが、フラットステップで進んでしまった。谷足で刻んだステップが確認中に崩れ滑落発生。すぐにピッケルを打ち込んだが、雪が緩いせいで全然止まらなかった。怪我はなかったが水筒を失った。
一旦右側の尾根に退避し、トラバースして元ルートに復帰した。
出発時刻まで数分しかなく、600mをひたすら走ってなんとか乗車できた。
感想
残雪期にイグルー泊をやってみたい、昨年の続きで裏銀座縦走したい、ついでに笠ヶ岳にも登ってみたい。そんなやりたいことを詰め込んだ山行です。
滑落という致命的なミスをしてしまったため、感想後半では反省点をまとめました。他山の石となれば幸いです。
▪️残雪期のイグルー泊
イグルスキー米山さんも書いていたが、この時期にイグルーを作るのは難しかった。稜線上はどこも氷化していて適地を発見できず。テントは必携。ビバーク手段が1つ減るので、荒天時などの撤退判断はいつもより早くすべきだろう。
▪️裏銀座縦走
体力的には問題なかったが、滑落した事実を踏まえると、安全マージンが足りないのかもしれない。年齢的にも衰えが出始めるので尚更。
笠新道は踏み跡無し。1900mで森林限界を超えた後は夏道を無視して尾根を狙って歩いた。滑落したら止まれない急斜面の連続、ヒドゥンクレパスもあり、かなりリスキー。ブナ立尾根も雪が腐っていたこともありかなり難易度が高く感じた。
3日間を通して片手で数えられる程度のパーティとしか合わず、静かな山行を満喫できた。
▪️滑落の顛末
写真に記載した通り、50mほど滑落した。
場所はブナ立尾根の1930m地点、三角点から70m程降ったところ。地図には表れない小さな尾根が分岐する場所で、その手前でも道を間違えかけていた。
一瞬トレースを見失い、見つけたトレースについて行ったのが失敗の始まり。おかしさに気付くと同時にトレースの方向が変わったところで地図を見ると別の尾根を降り始めている事が分かった。戻ればよかったがトレースにならって10m程の斜面を降りつつ横切って復帰しようとした。この日は雪が緩く、滑ったらヤバそうとは分かっていたが、フラットステップで進んでしまった。右足(谷側)でステップを作り踏み込んだところ足場が崩れ、右足だけズルズル落ちて行き、ピッケルで体勢を維持できなくなったところで滑落発生。すぐに滑落停止を行ったが、雪が緩いせいで全然止まらない。足は守るように折り曲げていた。水筒が飛び出したのが横目に見えたが、視線は胸元のピッケルに集中しとにかく力を込めるだけ。何かの拍子に制動が効き始めなんとか停止。怪我はなく、失ったのは水筒だけだった。
体勢を整えて一旦右側の尾根に避難。そこから登り返すのと、トラバースを天秤にかけ、フロントポインティングでいけばリスクは同じと判断してトラバースで元ルートに復帰した。
なお、トレースは真新しいのが1つと、消えかけているのが2~3程度。
▪️原因分析
山行中の問題点を時系列で考えた結果、疲労により面倒くさいという思考が生まれた事が原因で、計画に問題があったと結論づけた。
・なぜ道を間違えたか
三角点までは尾根が明瞭で、トレースもあったので、方角への意識が薄れていた。また三角点から2方向に尾根が分岐し、北に向きを変える事は認識していたが、細かい支尾根の存在を読み取れていなかった。そのため、トレースを見つけた際、それは北ではなく北東の支尾根なのに、それしか尾根が見えなかったので疑いを持たなかった。
・なぜ登り返さなかったか
腐った雪と急斜面の連続で思うように下れず、半ばイラつきのようなものがあった。間違った方向に降り始めて10m程度。普段なら登り返すが、面倒くさいが勝ってしまった。
・なぜフラットステップで進んだか
これも面倒くさかったから。雪の状態的にフロントポインティングで行くべきだとは思ったものの、トレースは普通に歩いているし、自分も大丈夫だろうという根拠のない自信、慢心もあった。また判断を他人任せになんて普段はしないが、やはり疲れていたのかもしれない。
・なぜ滑ったか
ステップを作り、足場を確認してから体重を乗せるように歩いていた。が、問題の一歩は確認中に足場が崩れ、体重も乗せすぎていて足を引き戻せず、山側の爪だけが雪面に掛かった状態でズルズルと滑っていった。今思うとペースを上げたいという気持ちが心のどこかにあって、重心移動が雑になっていたのかもしれない。
・計画の問題
いずれも普段と違い雑な行動を取っており、その原因は疲れと時間の焦りが根本にあるだろう。
焦りについては少なくとも予備日を設定し、予備日を使う可能性があることも家族に連絡しており、下山はどんなに遅くなっても良いと言い聞かせたがそれでも時間への意識を消すことが出来なかった。
体力的にはまだ余裕があるつもりだったが、滑落した事実を踏まえると、もっとマージンを設けるべきだったのだろう。疲れが溜まり始める頃と、雪が緩む時間帯、危険箇所を通過する時間帯が重なっており、そこも考慮不足だった。
挑戦的な計画ではあったが、今までの延長線上のステップアップという認識だった。しかし、初日は悪天候、急登と名高いルートを組み込み、残雪期イグルー、行程も最長クラスと、要素を組み合わせると大きな一歩になっていたかもしれない。安全マージンを犠牲にするようなステップアップになっていないか、客観的に考えようと思う。
予備日とエスケープも設定していたし、それも考えたが、結局それを選択する事はなかった。余裕のあるうちにその判断をするのは本当に難しいことだと感じた。
・残雪期の認識の甘さ
計画上の安全マージンが不足したのは、残雪期リスクをまだまだ十分に認識できていなかったのが一因と思われる。
残雪期は気温変化により雪の状態が目まぐるしく変わり、雪崩れ、落石、シュルンドなど読みにくいリスクが多く、厳冬期より厄介とさえ思っていた。実際、イグルーは作れないし厳冬期装備でも荒天時は厳しく、怖さを再認識した。
腐った雪の急斜面を歩く経験があまりなく、残雪期リスクとしての認識が浅かった。
▪️その他
ザック重量23.5kg
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